コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~ 作:チェリオ
クロヴィスランドでのオデュッセウス達のデート計画。
こんな面白そうな話をシャーリーから耳にしたミレイが逃すはずなかった。
ならば自分達もと付いて行こうとしたがルルーシュという難関が立ち塞がった。
さすがにシャーリーの頼みと言えども聞き入れなかったが、そこはルルーシュ特効を持っているナナリーからの説得により突破。
来年からまたアッシュフォードに通うライラと共に尾行を行っているのだ。
「会長ぉ、まだ続けるんですか?」
「「当たり前じゃない!!」」
ぐったりとした様子で聞いてみると同時の答えに「そうですよねぇ」という諦めとため息が漏れる。
正直多少ならば興味はあったけれども、朝から夕方までへばりつくほどの熱意の無かったリヴァルはすでに尾行に飽き飽きしていた。
というか鼻息を荒くしているミレイとシャーリーも熱意に押されている。
いや、これはシャーリーだけに言うべきではないな。ルルーシュもなにしてんだかな…。
「これから面白くなるところじゃない」
「それより今の会長はリヴァルさんでは?」
「いや、そうなんだけどさ…」
一緒に居ると昔の癖で読んじゃう的なのあるじゃない。ねぇ?
そもそも会長になったのも消去法なんだからあまり自覚もないし…。
ミレイ会長は学園から去って社会人になっちゃうし、ニーナも学園を辞めたし、ルルーシュは黒の騎士団関連の仕事に関わっているらしいし、カレンは黒の騎士団所属であるから何時呼び出しがあるか分かないので生徒会からも抜けた。
残っているのは俺とシャーリーだけだけど、シャーリーは水泳部との掛け持ちという事もあって会長は無理。
結果、生徒会の仕事を知っていて、会長になれる自由に動ける人材は俺しか居なかったというだけの話。
「ほらほらしゃきっとする」
「と言いましても朝からずっとですよ。なにやら進展もないようですし」
「だからこれからだって!」
「あまり大きいお声を出されると気付かれますよ」
言われて気付いたのかシャーリーは今更ながら両手で口を押えて確認する。
建物の陰から頭だけを覗かしてオデュッセウス達を見つめるがこちらに気付いた様子はなく、そのまま四人で進んで行く。
気付かれてない事に安堵しながらシャーリーは小声で話しかけてくる
「この先には観覧車があるの」
「あー、そう言う事ですか」
「どういうことなのですか?」
「夕暮時の観覧車にデートしている恋人同士となると」
「ドラマやアニメではお決まりのシーンですね」
ライラ一人理解しておらず疑問符を浮かべているが、下手に教えてあの兄弟・姉妹に目を付けられるのは怖いのでやめておく。
どうやら情報をルルーシュから伝えられたのかアーニャ達も周囲に潜みながら観覧車へと向かっている。
「さぁ、ルルーシュに伝えて私達も乗り込むわよ」
小さく「おー!」と声を出すライラとシャーリーを眺めながらリヴァルは何度目になるか分からないため息を漏らすのであった。
何か不審な視線を感じる。
オデュッセウスは振り返り周囲を見渡すがその視線の正体を掴めないでいた。
これは気のせいなのだろうかと思い悩む。
ユーフェミアに己の感情を気付かされたからには、心を決めてニーナに想いを伝えようとしているのだが、思い悩み過ぎているのか周囲が気になり始めた。
勘違いの可能性もあるが、出来れば二人っきりの空間を作りたい。
そう考えるとちょうどいい乗り物があるではないかと観覧車へ来たのだが、ここにきて一層視線を感じるようになったのだ。
「順番が来ましたね」
「ユフィ。スザク君と二人で先に乗りなさい」
意図を察せれなかったスザク君はきょとんと顔をしかめたが、ユフィはニコリと微笑んで頑張ってくださいねと言って乗り込む。四人で乗るものとばかり思っていたニーナは恥ずかしそうに俯いたが、オデュッセウスは嫌な予感からそこまで素直な感情を出す事は無かった。
ユフィとスザクが乗り込んだゴンドラが進み、次のに乗り込むと自然とユフィたちが乗り込んだゴンドラを見える座席に付く。
暫し黙りこくったまま様子を伺う。
徐々に上部に差し掛かるにつれて夕日に照らされた街並みが遠くまで広がる光景を目の当たりにする。
目を輝かして眺めるニーナを見つめてから、オデュッセウスもその光景を眺める。
綺麗だとは思う。
中々見れる光景ではないのだが、どうも
「さて、そろそろかな」
「どうかしましたか?」
オデュッセウスはそう呟くとさっと背後を振り返り、次に観覧車乗り口付近を睨む。
ゴンドラには双眼鏡でこちらを覗いていた人物がいた。
さっと伏したが隠れる反応が遅れた者も居て、髪色と同乗者がリヴァルとライラだったことからミレイとシャーリーだと理解する。
下にはアーニャと伯父上様が居た事から彼女・彼らが感じた視線の主だったのだな苦笑いを浮かべる。
「ははは…どこで漏れたのだろうかな」
「何か見えるのですか?」
「下にアーニャ達に後方にミレイさん」
「え!?ミレイちゃんが」
言われてニーナが見つめているとひょことシャーリーの頭が見えたが、すぐに引っ込んだ。
ため息交じりに立ち上がったオデュッセウスはゴンドラ内を調べ始める。
考えすぎかも知れないが彼女らだけでは無いような気がする。
クロヴィスランドに訪れることを知っているのはユフィやスザクを除けばアーニャにジェレミア、あとはチケットをくれたクロヴィスぐらいだ。
アーニャはミレイとは学園で出会っているから可能性としては一番大きいが、条件を設けたクロヴィスランドに入れるだけのことが出来るだろうか?
アッシュフォード家のコネで入った可能性もあるのは否定できないが、アーニャと一緒に居たのがマオとダルクとなればナナリーも噛んでる可能性がある。ならセットでルルーシュも居るんだろうな。そしてルルーシュが動くのであればロロも…。
なんか想像しただけで凄い面子が揃いつつあるな…。
想像であって欲しいと思いながらも当たりをつけて探っていた所にカメラを見つけて本気で頭を抱える。
携帯を取り出してジェレミアに連絡を取る。
現状の説明以上に二人っきりになる為にも。
ルルーシュはカメラと盗聴器を見つけられた事に冷や汗を流した。
シャーリー達が尾行していた事に気付いたから調べた訳ではないだろう。否、シャーリー達が居ることなどから逆算して理解した可能性がある。
となればこちらの大方のメンバーに当たりを付けている?
兄上ならばあり得なくないか…。
こういう場合はどうするべきかと悩むルルーシュを他所にマリーベルはオルドリンを連れて
そんな二人の様子を知っているかのようなタイミングでロロの携帯が鳴り出す。
今作戦の頭脳である二人の視線がロロに向く。
乾いた笑みを浮かべながら予想しながら電話に出る。
ルルーシュもマリーベルもオデュッセウスの声は聞こえないが、ドキドキと焦りながら会話を聞こうと聞き耳を立てる。
「はい、もしもし。―――あ、まぁそうですね」
ちらりとルルーシュとナナリーへと視線を向けた事から二人の関与を問われたのだろう。
その瞬間マリーベルはバレてないと安堵する。
「はい?…ここに居るメンバーなら出来ない事はないですけど…はい。了解しました。では後程」
「どうしたロロ」
ため息交じりに電話を仕舞う様子に不安を覚えずにいられない。
しかも胃の辺りを押さえているなら尚更だ。
色々過去を聞いただけに不安が募る。
「怒ってないからナイトメアで空中散歩できる用意してくれないか…と」
「お兄様は怒ってないのですか」
「らしいですよ。ただこれ以上は……」
続きを言わずとも察せられる。
これ以上の監視は危険。さすがにお兄様を怒らせるのは避けたい。
ならばやる事は速やかに撤退及びお詫びに準備を行う事だ。
お客はそのまま楽しんでもらうとして、配置したナイトメア部隊を回収し、ナナリーの騎士団には作戦の終了を通達。最大の問題はシャーリーとミレイをどうやって止めるかだ。いや、騒ぐ時には騒ぐ人だが、基本的に周りに気配りが出来る人だ。話せばわかってくれるか。
「マリーベル。機体の用意頼めるか?」
「構いませんが少し手間ですね」
「自由に動かせる騎士団があった時なら楽だったな」
「今では黒の騎士団の戦力ですからね。出来ない訳ではありませんが」
面子が面子なだけに手段なら幾らでも考えられる。
それに相手が相手なだけに手を貸してくれる者も多くいる。
例えばシュナイゼルにオデュッセウスが――と伝えれば幾重もの手段と理由を用いて戦力をかき集めるだろう。
元オデュッセウスの騎士団に声を掛けたら三個師団ほど集まりそうで怖いがな。
「お兄様。お兄様はどうなさるのでしょう」
ナナリーの問いに答えたいところだが、ここから先は…。
「後で兄上に聞いてみよう。すぐに分かるさ」
微笑ながら答えるとルルーシュは撤退の指揮を執るのだった。
当然のことながら恋沙汰に興味津々のシャーリーの説得にかなりの時間を費やす事になったのだった…。
クロヴィスランドを出て、ユーフェミアとスザクと別れたニーナは戸惑っている。
オデュッセウスに一緒に来てほしいと言われ、用意された車に乗って数十分。食事に誘われたのかな程度に思っていなかった為に飛行場に到着した時は心底驚いた。
「何処へ行かれるのでしょうか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。すこし空中散歩しようってだけだから」
「散歩ですか…」
「殿下!いえ、先帝陛下」
飛行場に入るや否やロロが駆け寄り頭を下げ、ナイトメアの起動キーを差し出して来た。
散歩と言いながらナイトメアフレームを出してくるあたり、やっぱり常識から外れている気が…。
「準備は整えております」
「すまないね急に頼んで」
「……いえ、その色々と――」
「良いさ。おかげで心も決まったしね」
何の話をしているのだろうかと疑問符を浮かべるも、微笑み返してくるばかりで答えてくれる気はないらしい。
飛行場の端には運ばれてきたであろうフロートユニットを装備したヴィンセントを含んだナイトメア四個小隊が待機している。
どうやってこれだけのナイトメアを用意したのだろうかは、考えない方が良いのだろう。
考えることを放置したニーナはオデュッセウスに促されるままにヴィンセント脇まで歩み寄ると、抱き抱えられてコクピットへと連れていかれる。
急な事に戸惑い膠着し、そのままコクピットへと運ばれる。
「よっと、ちょっと狭いけど我慢してね。さすがに
「い、いえ!だだだ、大丈夫れす!」
膝に座らされ、シートベルトを長くしたとは言え密着する形で座らされたニーナは呂律が周らない程緊張していた。
やったことに対して今更ながら顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっているオデュッセウスに気付かないほどに。
ヴィンセントが離陸すると正面を一個小隊、左右後方に二個小隊、両脇に一騎ずつ展開して護衛する形で空へと飛び立った。
速度を上げずにゆるやかに上昇していく。
モニター越しに外を眺めながら、背中より伝わる体温を感じる。
「ちょっときついかな。一応しがみ付いてくれるかい」
「え?なにを――きゃ!?」
どういうことか理解出来ぬまま、言われる通りにしがみつくとコクピットが開かれ、冷たい空気が直に身体を撫でる。
速度を停止させ、フロートユニットで浮いているだけの状態なので、風も負荷もきつくない。
驚いて目を閉じたがゆっくりと瞼を開け、周囲を見渡して見る。
傾きかけた夕日に合わせて夜が顔を出して、半分は夕方、半分は夜空という幻想的な光景を目の当たりにして感嘆の声を漏らす。
「綺麗だろう」
「はい。とても綺麗です」
「観覧車からの光景も良いけども、こういう光景を知っていると物足りなくてね」
確かにこんな光景を目の当たりにしたらそうだろうと思う。
飛行可能なナイトメアに騎乗した者でしか見られない。
逆に言えば皇族なのに見ることが出来るほど騎乗しているという事は、どれだけ周りの人間が苦労を掛けた事か…。いや、それはオデュッセウス様だけではなかった。コーネリア皇女殿下もだった。
広がる幻想的な光景に魅入っていたニーナと違って、風景でなくニーナを見つめオデュッセウスは思い悩み、一呼吸おいて口を開いた。
「ねぇ、ニーナ君」
「は、はい」
「前に恋愛感情が解らないって言ったの覚えているかな」
忘れる筈もない。
初めて告白、それもオデュッセウス様からされたあの日の事を忘れるなんて出来ないだろう。
…料理の味は緊張とかで全く覚えてないけれど…。
「今日のデートで分かったよ。どうも私は独占欲が強いらしくてね。君とスザク君が二人で話しているだけで嫉妬したんだ」
「嫉妬ですか!?」
「あはは、私も驚いたよ。でもまぁ、これでよく分かった。私はどうしようもなく君が欲しい」
「――ッ!!」
「だからさ…これからも付き合ってほしい。今度は結婚を前提に」
二度目の告白。
けれど前のような控えめな物でなく、強い意志を持っての告白にドクンと心臓が高鳴る。
目を合わせる事が出来なくなり、そっと俯く。
「で、どうだろうか」
「えと、あの…不束者ですがよ、宜しくお願いします」
心臓が苦しいほど高鳴っている。
嬉し過ぎて、恥ずかし過ぎて耳まで真っ赤になっているだろう。
ちらりとオデュッセウスの顔を伺うと、何事も無いように微笑んでいるが、耳は真っ赤に染まっている。
同じ気持ちなのかと思うと余計に嬉しく思う。
「良し。ならハワイへ行こうか」
「はい………はい?」
ニカっと笑ったオデュッセウスの一言に流れるまま返事を返したが、後から何故ハワイなのかと疑問を浮かべる。
それが何を意味するのかを理解するのはまた先の話である。
次回はこのままハワイに向かいたいところですが、その前に一話入れます。