コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 二週間前に投稿する筈でしたがインフルエンザに掛かり、書ききれずに他の予定もズレてしまったために今日の投稿になってしまい申し訳ありませんでした。


第130話 「準備」

 レオンハルト・シュタイナーは自分の迂闊さを恨む。

 ダモクレスでの戦闘から一年が経とうとしている最近になって、オデュッセウス殿下より連絡が入った。

 今でこそシュタイナー家を継いで、家名に恥じぬように貴族としての職務に邁進しているが、戦時中はマリーベル皇女殿下の騎士団所属していた事からオデュッセウス先帝陛下と接点があったので連絡があってもおかしくはない。

 おかしくはないがどのような用件で連絡されたのだろうと伺ってみると、何とオデュッセウス先帝陛下が結婚式を執り行うとのこと。

 これはめでたいと思いながらも招待状ならまだしもうちにわざわざ連絡をわざわざ為さることかと疑問が残る。

 やはりというべきか、結婚の報告以外にも連絡してきた理由があった。

 なんでも周りで恋人は居るものの結婚していない身近な人物に一週間ほど式場を借りるから使わないかという誘い。

 貴族であるのでお金には余裕があるものの、伝え聞いた式場はどう考えても身の丈に合わない程豪華な場所。

 本当に良いのかと聞けば、祝いの席は盛大にしたいではないかと楽し気に話していた。

 資金は先帝陛下持ちで豪華すぎる式場…。

 何かあるのではと疑ってしまうのは仕方ないだろう。

 けど、仕掛けて来る要素が全くなく、家を継ぐために勉強やら家業の習いで忙しくてマリーカと式を挙げていなかっただけに有難い。

 それに話と式場を聞いたマリーカが喜んでいた事から感謝を述べながら話を受けた。

 ………迂闊だったというしかない。

 式場はブリタニア本国の帝都にある歴史あるブリタニア皇族御用達のものであった。

 写真よりも現物を目にするとその壮大さと見事な装飾、美術品のような建造物に目を奪われて自然とため息を漏らす。

 この時点で場違い感があったのだが、それをあざ笑うかのように合流した面子に驚愕した。

 

 オデュッセウス先帝陛下と結婚が決まったニーナ・アインシュタイン。

 現ブリタニア皇帝のユーフェミア・リ・ブリタニア皇帝陛下に皇帝の騎士である枢木 スザク卿。

 元皇族で今は妹君の手伝いをしながら世界を飛び回るルルーシュ・ヴィ・ブリタニア(ランペルージ)元皇子にお相手のシャリー・フェネット。

 そしてルルーシュの付き添いで訪れているナナリー・ランペルージ元皇女殿下にロロ・ランペルージ、後は護衛が周囲を固めている。

 皇族関係者ばかりに緊張しかないのだが…。

 

 彼ら・彼女らもオデュッセウス先帝陛下に声を掛けられた人達で、この式場を使って結婚式を行うらしい。

 皇 神楽耶や藤堂 鏡志郎にも声を掛けたのだが、立場的問題があってブリタニアで式を挙げる訳にもいかないので断られたとのこと。

 ただし、歴戦の猛者である藤堂が結婚に対しては腰が重いので、この期に千葉がやる気満々なので神楽耶が協力して近日中に式を挙げさせるらしい。

 

 「これなんて似合うと思うのだけれど」

 「えぇ?こっちの方がよくないですか?」

 「いえ、あの…私はもっと落ち着いたものの方が…」

 

 今日は打ち合わせと衣装合わせとの事で、男性陣はサンプルや資料を眺めてとっとと決めたが女性陣はかれこれウェディングドレスの並んだ一室で一時間は品定めを行っている。

 ニーナを囲む形でユーフェミアとシャーリーが違うデザインのウェディングドレスを手に持って進めているが、当の本人は困り果てておろおろと慌てていた。

 正直どれも同じに見えるがちょっとした差異で他人に与える影響は異なる。

 元とは言えブリタニアの頂点に立った人物と結婚するならば服装に関して色々と気にして選ばなければならない。

 貴族や皇族などの立場ある人間に課せられた仕事の一環とレオンハルトは捕らえている。

 だから地位や権威にあった服装と言うものを選ばなければならず、先帝陛下との式に挑むニーナが持っているドレスは質素過ぎる。なので他の二人がドレスを選んでいるようなのだが、着せ替えさせて楽しんでいるようにしか見えない。

 案の定というかやっぱりと言うかマリーカもその流れに捕まり、立場の違いなどからレオンハルトに視線を送る。が、レオンハルトは敬礼して見送るのみである。

 視線で訴えて来るが笑みを浮かべてスルー。

 さすがに現皇帝陛下も混ざってドレス選びをしているのを止めるだけの話術は持ち合わせていないのだから。

 

 「良いのかい?助けを求めていたようだけど」

 

 スザクに声を掛けられて敬礼しようとするが制止される。

 

 「敬礼は不要だよ。今はだけど」

 「了解しました枢木卿」

 

 敬礼を取りやめて大きく頷き、返事だけ返す。

 一応そんなに堅苦しくならなくてもいいというつもりだったスザクは、それでも堅苦しい反応に苦笑いを浮かべる。

 レオンハルトも何となく察しているものの、勘違いで失礼に当たったら大変なので言葉遣いだけは変える事は出来ない。

 一貴族と皇帝陛下に皇帝陛下直属騎士では立場が違い過ぎるのだ。

 苦笑いを浮かべていたスザクだが、なんだかユフィと出会った頃の自分みたいな反応に自然と笑みが零れる。

 

 「で、行かないのかい?」

 「さすがに皇帝陛下をお止するのは…」

 「あぁ、そうだよね。昔の僕もそうだったから分かるよ」

 「でしたらお止願っても宜しいでしょうか?」

 「最近執務が立て込んでてね。あんなに楽しそうなユフィは久しぶりなんだ」

 「それは何よりでしたね」

 

 代わりにカリーヌも含めた犠牲者が出た訳ですけどね。とは口が裂けても言えず、微笑を浮かべて眺めるのみ。

 カリーヌにニーナが試着室で着替えさされ、男性陣とルルーシュに付いてきたナナリー達は個々に談笑しつつ待つ。

 

 「ナナリーも着てみたいのかい?」

 

 ただただ眺めていたナナリーにルルーシュが気にして声を掛けたのだが、そのせいで自分も巻き込まれるとは露とも知らずにレオンハルトは耳を傾けていた。

 少し恥ずかしそうにナナリーは告げた。

 

 「その…以前学園祭でお兄様がドレス姿をしたと聞いたので、もしよければ見てみたい(・・・・・)のですが」

 「―――ッ!?いや、それは…」

 

 断ろうとしながらも前回は見れなかったナナリーの頼みを断れないルルーシュはどうすべきか戸惑う。

 そしてその一言を聞き逃さなかったシャーリーが目を輝かせて反応する。

 

 「ルル、これなんてどう?」

 「なんでそんなに着せる気満々なんだ!?」

 「良いから良いから」

 「良くない!」

 「ロロも如何かしら?」

 「・・・・・・え!?」

 

 ルルーシュに続いてロロまでドレスを着せる話が広がった事にレオンハルトは焦る。

 前にグリンダ騎士団所属していた頃に女装させようかと女性陣が話題に出した事があり、それを思い出したレオンハルトはゆっくりと下がろうとして、捕まってしまった。

 振り返ればドレス姿のマリーカがしっかりと腕を組んでいた。

 ここで恋人のドレス姿に見惚れて「綺麗だよマリーカ」などと囁くなどすれば脱したかも知れない窮地であるが、焦り逃げ出す事に必死だったレオンハルトはそんな言葉を口に出来なかった。

 …いや、正常時でも思うだけで口に出来たかは怪しいが。

 

 「マ、マリーカさん?」

 「シャーリーさん、レオンハルトも着たいそうですよ」

 「ちょっと!?」

 

 まさかの裏切りに戸惑うレオンハルトだが、先に着せ替え人形にされたマリーカを見送ったので人の事を言える立場ではない。

 唯一無事であろうスザクに救援求むと視線を送る。

 

 「スザクも着てみません?」

 「良いよ。どれがいいかな?」

 

 一番ノリノリでユーフェミアと話ながらドレスを見て回っている。

 女装など別にスザクが恥ずかしがるようなものではない。

 学園祭のコスプレ喫茶では腹部を晒すタイプのチアガール衣装を照れる事無く着た猛者なのだから女装ぐらいで戸惑う事などない。

 救援どころか退路がない状態に絶句し、レオンハルトはされるがまま着替えさせられるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 一方オデュッセウスは書類を眺めながら頭を痛めていた。

 皇族兄弟での写真集後の喫茶店にてシュナイゼルが結婚式は何時為さるのですかとの問いから、確かにと思ってニーナに告白して返事を貰い、早速と式の準備に取り掛かったのだ。

 すると自分以外にも付き合っているけども式を挙げていない弟妹に知り合いが居る事を思い出して、式場を一週間ぐらい借り切ってこの期に挙げるのも良いだろうと話を持ち掛けた。

 結婚式と言うのは式場の準備やドレスの用意など時間や手間もかかる。

 動こうにも意思を持つか、期が無ければ中々重い腰が上がらない。

 特に藤堂とかね…。

 

 連日の結婚式を提案しておいてなんだが、ナウシカファクトリーでの仕事が溜まっているので急ぎ片付けようと赴いた。

 結果、差し出された資料と会議室に集まった技術者の諸君によって頭痛が発生した訳だ。

 集まっている面子の中から最初の報告書を提出したラクシャータとラクシャータが集めた天才児達“パール・パーティ”の子らに視線を向ける。

 

 「本当によくやってくれているよ。うん、本当に…けどこれは何だい?」

 

 ラクシャータはミルビルと並ぶナウシカファクトリーの稼ぎ頭。

 主にミルビルがブリタニア製ナイトメア関連を担い、日本やインドが開発して黒の騎士団で使用されていたナイトメアをラクシャータが担当している。

 ロイドも居るのだが自由気ままに研究し、ファクトリーを空ける事も多いので納期が決まった仕事を任せられず、ミルビルがそれらを担う事になったのだがロイド本人は気にも留めていない。

 今回ラクシャータの報告書には紅蓮の改修機に蜃気楼から発展したナイトメア開発、白炎烈火のメンテナンスに改修など多くの仕事を熟している。

 ただし蜃気楼の発展型は二機の予定だったが、式典用の機体のみ完成してもう一機はまだ未完成。

 烈火白炎は改修を終えた後に追加装備まで準備したと記載されているのだが、浮遊艦サイズでの小型ブースターに多段式ミサイル、ナイトメア用重機関銃などなど何処か要塞でも高速で空爆するのかと疑いたく装備がずらりと並んでいる。

 ここらは然程頭を痛める問題ではない。

 未完成の発展型は別段納期が決まっている訳でもないし、烈火白炎の追加装備は出費が大きいものの平和を維持する必要経費と思えば何でもない。

 

 ……だけど最後の一機は無理だ。

 

 「作ってみたの」

 「作って見ちゃったかぁ…」

 

 無垢な瞳で何の感情の起伏も無く幼い少女シャンティに告げられた言葉に、オデュッセウスは納得したような呆れる様な返事しか出来なかった。

 ラクシャータ達が提出した最後の報告書にはパール・パーティの少女が作り上げた拠点防衛可能な大型装備――“フレイムコート”。

 以前

 二機分のフレイムコートが書かれているのは良い。

 だけど三機目のフレイムコートは私は知らないし、知りたくはなかった…。

 二機に比べて特殊武装ではなく現行兵器の亜種や改造品を使い、サイズも一回り程小型のなので二機よりは予算は掛かっていないのは懐に優しくていい。――――いや、元々デカいから優しくはないか…。

 装備する予定機はランスロットタイプなのだが、そのランスロットタイプに問題があったのだ。

 

 「詳しい経緯を聞きたいのだけど…ミルビル博士」

 

 話を振られたミルビル博士は苦笑いを浮かべながら頬を掻く。

 それとセシル・クルーミーも気まずい表情を浮かべる。

 理由は解かり切っているがまずは説明を聞くべきだ。

 

 「この機体は私の見間違いや勘違いでなければランスロット・リベレーションだよね?」

 

 そう、問題はフレームコートを装備して扱う際にコアとなるナイトメアが私のランスロット・リベレーションになっているという点。

 つまり私専用の拠点防衛大型装備と言う訳だ。

 

 「はい、殿下…いえ、先帝陛下が注文されたランスロット・リベレーションの改修機です」

 「それが何故にフレイムコートのコアナイトメアに?」

 「…その…いつの間にかとしか言いようがなく…」

 

 ため息が自然と漏れてしまった。

 機体の強化の為にもミルビル博士にパール・パーティと共に共同改修してくれと頼んだのは私だ。

 性能も以前のリベレーションに比べて格段に上がっており、操作性も扱いやすいように調整がされている。

 ランスロット・リベレーションはトリスタンの様に可変して、フロートユニットを背中に背負わずとも高速で移動可能な機体。

 性能上昇に伴ってパイロットに掛かる負荷も大きくなっているが、そこはコクピットフレームの変更や機構の向上、パイロットスーツとして使っているラビエ博士の強化歩兵スーツも負荷に耐えれるように改良したものを用意して貰っているので着忘れさえしなければ問題はないだろう。

 けどエナジーウイングが組み込まれているのも聞いていないんだけど。

 

 「フロートユニット関連で仕事があった筈だけど」

 「えーとですね。思ったより早く済んでミルビル博士にユニットの件で相談を受けて…気付けば趣味に…」

 「ランスロット・アルビオンほど趣味に走る前で良かったと思うべきか。強化し過ぎと注意すべきか…」

 

 さすがにアルビオンクラスまでにされてたら私では決して動かす事は出来ないだろう。

 扱えるレベルの機体で本当に良かった…。

 とはいえ予想以上の高性能な機体に専用のフレイムコート。

 予算がゴリゴリ減っていく…。

 

 「ラビエ博士は身体能力向上の強化スーツは順調。ランスロット・リベレーションブレイブ(改修機)の件は置いておいてフロートユニットの向上は成功。クレマンさんのアレク(アレクサンダ)も受注した通りに生産完了。ロイド博士は?」

 「新型ランスロット設計図は完成していますよぉ」

 「なら制作だけか。解かりました。後は烈火白炎を秘密裏に輸送するだけか」

 

 さすがに正規の手段で裏で動いているオルフェウス達に届ける訳にはいかない。

 手間やお金がかかるが何とかするしかないか。

 そう輸送手段を考えているとミルビルが質問があるようで手を挙げた。

 

 「何かな?」

 「接近戦仕様のヴィンセントの注文されましたがアレは正規の手段で宜しいか?」

 「あー…宜しくないです。そっちも裏ルートで運びます」

 

 それこそ表立って送る訳にはいかない。

 なんたってマリアンヌ様に頼まれた品なのだ。

 オルフェウスに運んでもらう事も出来るが、相手がマリアンヌとバレたらだけでも問題なのに、シャルルやビスマルクの存在を知られると世界を揺るがすほどの大問題だ。

 頭が痛い…。

 

 大きなため息を吐くと同時にそれらを早く解消すべく検討を続けるのであった。


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