コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第132話 「のんびりライフ休業のお知らせ」

 ナナリーは座っている車椅子をアリスに押されながら青空を眺めていた。

 周囲にはナナリーの警護を行っているアリスを含めた元特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)に所属し、オデュッセウスの直属部隊にもなったサンチア、ルクレツィア、ダルク、マオの面々。

 後、同じ目的の為に行動を共にしていたルルーシュとシャーリー、ロロの三名。

 

 「大丈夫でしょうか?」

 

 不安から言葉を漏らす。

 本当なら今頃ナナリーは飛行機に乗ってこの大空を飛んでいたところだ。

 世界人道支援機関(WHA)に関わって、各国の難民支援を手伝いをしており、今回はハシュベスの難民キャンプを訪れる予定を組んでいた。けれど向かう難民キャンプは三国が領有権を口に未だに小競り合いをする地域。

 その一国には小国でありながらも神聖ブリタニア帝国の侵攻を防いだ“戦士の国”と言われるジルクスタンがある。

 危険地域の上に超合集国に加盟していない力のある国家が関わっている場所にナナリー達だけで行かせられるかと、ルルーシュはロロを連れて同行する話も出ていたのだが、そもそも行かせる自体が危ないとオデュッセウスがストップをかけたのだ。

 大事な弟妹にそんな危険地域に行かせれないよとオデュッセウスがWHAと交渉し、WHA上層部もあのオデュッセウスなら周辺国家も手出しし辛いし、影響力も大きいのではと判断してオデュッセウスからの頼みであったが逆にお願いする事に。

 結婚式を挙げて間もないというのにオデュッセウスは護衛としてジェレミアにアーニャ、オデュッセウスが行くならとニーナとヴィー達と共に飛び立ってしまった。

 “大事な弟妹”と言われたように、こちらも大切だと思っているのに自身の危険は気にしない辺りは変わらないんだが、そろそろ周りに与えている心配を考えて貰いたい。

 

 「大丈夫よナナリー。だってあの方なんだよ」

 

 ナナリーの不安に満面の笑みでアリスが答える。

 護衛している面子は表向きのオデュッセウスだけでなく、裏側を知っている者達。

 そんな彼女達からして危険地域に単身で足を踏み入れたとしても大丈夫だろうと安心感すら抱いている節がある。

 

 「って言うか逆の心配はあるけどね」

 「行くことによってナニカが起きる」

 

 ニタニタと期待しているかのように言うマオの言葉に、ダルクが笑いながら同意する。

 警護中と言う事もあってサンチアが無駄話&周辺警戒の緩みにため息を漏らす。

 真面目な彼女は険しい表情を浮かべながら口を開く。

 

 「違うな。起きるではなく起こすが正しいだろう」

 「そこ否定するんじゃないんだ」

 「なら否定してみるが良い」

 「……ごめんなさい」

 

 色々考えてみたのだろうけど結局否定するモノは出て来ず、悩んだ末にルクレツィアは頭を下げた。

 これはサンチアに対するよりもオデュッセウスの弟妹であるルルーシュやナナリーに向けたもので、受けた二人もまぁ、そうですよねみたいな妙に納得して苦笑いを浮かべる。

 確かにその方が正しい。

 …いや、別の予感がしてならない。

 以心伝心と評すれば良いのかナナリーはルルーシュと同時にお互いを除くこの場に居る全員に視線を向けた。

 

 「お兄様」

 「なんだいナナリー?」

 「思った事を一つ言っても宜しいですか?」

 「あぁ、多分同じモノを俺も思い浮かべたが…」

 

 二人して微笑む様子を周りが見つめる。

 その中で言おうとした言葉を呑み込み、小さく呟いた。 

 

 「お土産(・・・)が楽しみですわね」

 

 意味を理解してルルーシュだけが大きく頷き、ナナリーは大空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 オデュッセウスを皮切りに執り行われた結婚式に参列したオデュッセウスは、今カールレオン級浮遊航空艦にて空の旅と洒落込んでいた。

 隣ではニーナがすやすやと眠っており、その向こうでは携帯を弄るアーニャに雑誌を眺めるヴィー、静かに座って銃器の手入れをするジェレミア。

 結婚式を挙げたのだから新婚旅行へ………なんて言えたら良かったのだが、今回の目的はそうではない。

 というかそうであるならば黒の騎士団の所有しているカールレオン級で向かうなんて事は無い。

 現在搭乗している面子の誰も黒の騎士団所属ではないので余計にだ。

 

 今回カールレオン級に搭乗しているのはナナリーの代行として紛争地域に赴くからである。

 行先はラクシャータの故郷であるインドの近場。

 近場と表記するのには理由があって、行先の地域が何処の国か定まっていない。それこそが紛争地域の理由でもあるのだが、何で自国の領土だと主張する国が隣接して、超合集国が出来上がった今となっても争いが耐えないのだ。

 争いと言っても黒の騎士団所属のコーネリアが睨みを利かせているので、ここ一年近くはナイトメアを持ち出すような大きな戦闘は起こっていない。

 超合集国としては加盟国が近くにある為に仲裁に入りたいが、主張する国の中には超合集国に不参加の国があって強く出る事が出来ない。武力を背景に言い聞かせるという案も提案されたらしいが、それではシャルル皇帝時代のブリタニアと変わりないと批判されて当然のように却下。

 軍事介入も意見が分かれたために、世界人道支援機関に在籍しているナナリーに白羽の矢は立ったのだ。

 名目は難民キャンプで難民達の声を聴く事であるが、同時に周辺各国にも顔を出すので注意を促す役割を一人の少女に願う様に託すかねと疑問を抱くが、それだけの影響力をナナリーに期待されているというのは嬉しくも感じる。

 で、私が代行として赴く理由としては主だった戦闘行為は確認されなくなったとしても、小規模で確認されてない小競り合いは起こっている可能性が高いという事実からナナリーに危険が及びのを避けるために名乗りを挙げたのだ。

 警備を担当するアリス達の実力はよく解っているし、ナナリーが行くのならルルーシュだって行くだろう。

 戦力から指揮官まで一流揃えであるならば危険はかなり下がるだろうけど、万が一の場合は車椅子のナナリーは逃げ難い。

 そこで自ら名乗りを挙げた訳だが、ならば私もとジェレミアとアーニャが護衛を申し出て、海外に行くのならついでに旅行もしませんかとニーナとヴィーが付いて来て今に至る。

 

 「……でんかぁ…」

 

 肩に寄り添って寝ているニーナより殿下呼びをされて、起きたかなと顔を覗き込むと安らかな寝息を立てていた。

 可愛い寝顔に笑みが零れ、ツンツンと頬を突いて反応を見る。

 カシャリとシャッター音が耳に届き、振り向くと携帯のカメラをこちらに向けるアーニャが…。

 無音で口を動かし「撮った?」と問うと無言で頷かれた。

 これはアーニャのブログ待った無しですねと、クスリと微笑む。

 また後でギネヴィアやコーネリアから色々聞かれるんだろうなぁ…いや、コーネリアはすぐにでもか。

 なにせ向かう先はコーネリアのテリトリーであるのだから。

 だったらいっそのこと会いに行くのも有りか。向こうは職務が忙しいだろうし。

 

 「ジェレミア卿。予定にコーネリアの下に向かう事を加えて貰って良いだろうか?」

 「構いませんが向こうの予定を確認しない事にはなんとも…」

 「ならコーネリアではなくギルフォードに連絡してくれるかな。コーネリアだと仕事を放って来そうだから」

 「そこは兄妹なのですね。了解致しました。到着次第連絡を入れてみます」

 「頼むよ」

 

 銃の手入れをしていたジェレミアが手を止めて、メモ帳に書かれていた予定を確認する。

 難民キャンプでの事も大事だが、ニーナとも行くのだからゆっくりする時間も作らなければ。

 これが終わったら新婚旅行もちゃんとしないと。

 行先は日本で良いのかな?でもニーナが何処が良いのか聞いとかないといけない。

 先の事を考えると自然に頬が緩む。

 

 というかあまり今を考えたくないだけかも知れないが…。

 オデュッセウスは危険に飛び込んでは行くが、平和を好んでいる。

 現在カールレオン級で移動しているのはナナリーの代わりに難民キャンプに向かうだけではなく、難民キャンプとその後に行われる平和になった今を祝う式典に持っていく荷物を積んでいるからだ。

 カールレオン級の中には生産して貰ったばかりのアレクサンダ・ヴァリアント・ドローン数十機に、ドローンを操作する指揮官機としてのアレクサンダ・ブケファラス・ドゥリンダナ。そして難民キャンプ後に行う式典で展示する真母衣波 壱式。

 これらはオデュッセウスの護衛機としても扱われているが、主は式典警備で用いられる事になっている。

 ただ壱式は黒の騎士団を率いた英雄であるゼロの機体“蜃気楼”をベースに制作された新機種で、現在のナイトメア技術のお披露目とゼロの人気で人を集めようという思想の元、式典に展示されるものである。

 危険地域であることから使用も考えているが、出来れば使う事無く済ましたい所である。

 行くと決まった時には「フレイムコートは持って行かないの?」と問われたが、あんなもの持っていったら現場がピリピリして争いのタネにしかならないので却下した。

 駄々をこねられたがそれでもだめなものは駄目。

 ようやく手に出来た平和を大事にしようよ。

 

 (ま、もう原作の出来事は終了(・・・・・・・・・)したんだし大丈夫でしょ)

 

 “コードギアス 反逆のルルーシュ R2”までしか知らないオデュッセウスは危機感を抱かずに向かう。

 その先に最後となる争いが待ち侘びているとも知らず。

 

 「そう言えばジルクスタンの王家って姉弟だったね。仲は良いんだろうか?一度会って話してみたいねぇ」

 

 ふと、まだ会った事の無い人物を想い呟く。

 

 

 

 

 

 

 オデュッセウスの結婚式にサプライズで訪れたマリアンヌは、愛するシャルルが待つ自宅―――ではなく緊急避難用に用意させた建物に訪れていた。

 そこにはシャルルと隣室にであるがビスマルクも居り、なんとも険悪な雰囲気を漂わしている。

 この雰囲気は先のマリアンヌの行動に対したものではない。

 そもそもマリアンヌは向かう前にシャルルに話は通しており、シャルルもマリアンヌなら大丈夫だろうと送り出したのだから言うべき事は何もない。

 雰囲気の元凶はまた別で、隣の一室にて今は気絶している男にあった。

 

 実はマリアンヌとシャルルはハワイにて襲撃を受けたのだ。

 ハワイや一部ではシャルル・ジ・ブリタニアとマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアのそっくりさんとして知られている。

 そっくりさんと言っても髪型は違うし、それを売りに何かしている訳ではないので何者かに狙われる事無く周囲に受け入れられてきた。

 なのに今更襲ってきた阿呆が居たのだ。

 人数は全員で歩兵一個小隊規模。

 閃光のマリアンヌと元ナイト・オブ・ワンを相手に一個小隊では相手にならずに、三分の一が捕縛され残りの三分の二は文字通り瞬殺された。

 久しぶりに暴れれた事はマリアンヌにとって楽しい一時であったが、その襲撃者の装備諸々は無視できない程の問題を抱えていた。

 

 装備は最新式の物ではないとしても、そこいらのテロリストに比べて上質な物を所持していたし、彼らの腕前も軍で訓練された動きであったことは、交戦した二人がすぐに見抜いている。

 喧嘩を吹っ掛けてきたチンピラ程度の三流以下だったら気にする事は無いが、装備も腕前も二流以上となればそれなりの組織が動いていると考えるのが妥当だろう。

 自分達の事情に加えて、オデュッセウスからルキアーノの一件から色々思い当たる節がある。

 

 静まった空気の中に扉が開く音だけが響く。

 振り返れば隣室よりビスマルクが入って来た。

 白いハンカチで手を拭き、何故かハンカチが赤色に染まっていく。

 そのことに興味がなく、触れる事無くマリアンヌは問いかける。

 

 「で、どうだったの?」

 

 聞いては見たものの答えには予想がついており、あまり意味がないものだと理解している。

 そしてそう思われている事を理解していながらビスマルクは答えを返す。

 

 「予想通り奴の部下でした。目的は我々の勧誘、または監視だとか」

 「でも襲って来たわよね?」

 「それは先手を打ったからでは?」

 

 ビスマルクの言ったとおりである。

 襲撃者たちはまずは様子見と言う事で監視に行動を限定していた。

 が、それに気付いたマリアンヌは鬱陶しさと遊び半々で襲い掛かったのだ。

 勿論反撃に転じたが肉体は強化され、技量はラウンズという人外に奇襲を仕掛けられては太刀打ちできない。

 これではどちらは襲撃者か分かったものではない。

 その行動の余波として焦った他の者が、シャルルだけでも捕縛しようと動いたのだ。

 とんだとばっちりである…主に返り討ちにしたビスマルクが。

 なんにせよ気持ちの良い話ではない。

 

 「また面倒な事になりそうね」

 「儂らは表舞台から隠居した身だというのにな」

 

 マリアンヌは何処か楽しそうに笑い、シャルルは苛立ちを表情に表す。

 対比の感情を出しているようで根本は怒りを抱いている二人に、ビスマルクは嫌な予感がしてため息を漏らす。

 この予感は的中するだろうと自信を持って言える。

 何なら全財産どころか自身の命をかけたって良い。

 それほどに解かり切ったものなのだ。

 

 「ねぇ、折角迎えを頂いたのだからパーティー出席しなければ申し訳ないわよね」

 「確かにそうだな。なら着飾って行かねばなるまいな」

 「ドレス(・・・)ならオデュッセウスが一着用意してくれたから問題ないわ」

 「なら後は南瓜の馬車でも用意するか」

 

 本来ならば止めるべきところだろう。

 しかしながらビスマルクは止める気はないし、止めれるとも微塵も思ってはいない。 

 マリアンヌ様一人でも無理なのに、シャルル陛下も揃えば諦めが先に立つ。

 で、あるならば自分が行うはお二人が満足するように手伝いをする事。

 馬車の選定と馬車を入手する方法…。

 さて、どうしたものかと悩みながら苦笑いを浮かべるのであった。


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