コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第141話 「改変(未来)に対し改変(原作)す」

 コーネリアは苦悶の表情を浮かべていた。

 列車を降りてすぐに奇襲を受け、無線封鎖で連絡が取れなくなったという事から状況を察し、王城に突撃して混乱を生み出して体勢を立て直そうとグラストンナイツとギルフォードと共に攻め込んだのだが、それすらもジルクスタン王国は読み切っていたらしい。

 突入しようと突っ込んだあたりで、手厚い出迎えを受けた。

 バルボナ・フォーグナー大将軍率いるジルクスタン王国主戦力による一斉砲撃。

 まるで未来を見通していたように待ち構えていた大部隊の一斉砲撃によって撃破されなかったのは各々の技量によるものが高いだろう。

 ただ防いだだけで有効な手段は一切ないと言う窮地に変わりないが…。

 いや、寧ろ一斉砲撃を放たれた時より悪化していると言っていい。

 正面には大部隊が立ち並び、頭上には戦闘ヘリが抑え、後方は王城まで伸びていた橋の一部が落とされて退路を断たれた。

 こうも未来を見通したような作戦でありながら、橋を落としてこちらを呆気なく全滅させられたというのにしなかったという所から、敵は全滅させるでなく捕縛に主眼を置いていると見える。

 しかし最初の砲撃は威嚇半分、撃破半分と言った風に撃破も狙っているように感じられ、絶対に捕縛しようという訳でもないらしい。

 最悪の状況の中で、微かにだが光明も残されている。

 突入前にジェレミアとアーニャをゼロの下に向かわせられた。

 連絡がつかない状況下なので連絡係と向かわせた反面、あの二人は腕前同様に機体性能が秀でている事から何かしらの作戦を命じられても、最悪単騎でも作戦を行えるだろうと思ったからである。

 エリア11であれ程手を焼かされたゼロであれば、この窮地を脱する事も出来るだろう。

 それまでは何とか耐え凌ぐしかない。

 グラストンナイツ、ギルフォード、コーネリアは円陣を組んだまま、頭上に正面の攻撃をブレイズルミナスで防ぎ続ける。

 エナジーが尽きるか。

 ゼロが策で全てをひっくり返すか。

 どちらが早いだろう。

 

 『姫様!』

 「どうし――――ッなんだ!?」

 

 冷や汗をタラリと流したコーネリアにギルフォードの声が届く。

 何事かと視線を向けるとブレイズルミナスを展開しつつ、上空を指差していた。

 視線を凝らして見つめてみるとナニカがこちらに向かって飛翔しているのが見えた。

 ミサイルか何かかと思ったが、それにしたら小さ過ぎる。

 ナイトメアフレームにしては大き過ぎるし、ナイトギガフォートレスにしてはミサイル同様小さ過ぎる。

 敵の援軍かとも思ったが、敵の反応が明らかにおかしい。

 こちらだけでなく、上空の飛翔物にまで警戒を示している。

 

 そのナニカが近づくにつれて、自然と頬が緩むのが自分で分かった。

 

 『アレは一体…』

 「安心しろ。頼りになる援軍だ」

 

 黒の騎士団が動くならば超合集国の多数決が必須で、動くにしても大部隊での侵攻作戦を行う筈。

 飛翔体一つの援軍などあり得ない。

 そう、黒の騎士団ならばである。

 黒の騎士団に所属せず、非公式であるが武力を保持し、最新の情報を入手して自由に動ける存在。

 思い当たる部隊…否、組織に覚えがある。

 関りの有るギルフォードは理解し、関りの無かったグラストンナイツは疑問符を浮かべる。

 

 純白の紅蓮タイプの機体。

 オルフェウス・ジヴォンの愛機である烈火白炎。

 ユフィの仇とギアスの痕跡を追っていたあの頃、共に行動し戦場を駆けたのだ。

 見間違う筈がない。

 ただ烈火白炎が一回り大きい上に複数の小型ブースターが背中に取り付け、煙と炎を吐き出す代わりにかなりの速度を持って飛翔していた。

 

 オルフェウス達“火消し”を担当する彼らはブラッドリー追跡を続けながら、シュナイゼルより齎されたジルクスタン王国の情報を伝えられ、周辺海域にて待機していたのだ。

 そこに外部に情報を発信したミレイ達の放送に、首都近辺で戦闘らしき爆発が確認されたので駆け付けたのだ。

 まさかコーネリアと再会するとは思いもせずに…。

 

 飛翔していた烈火白炎の左右よりミサイルが発射され、目標とされていた大部隊に向かい、空中でばらけたと思ったら複数の小型ミサイルが群れを成すように着弾していく。

 敵もただ受けるだけでなく、回避や弾幕を張って迎撃するなどして被害はかなり下げていた。

 そこに切り離した小型ブースターまでも突っ込んで、内部に残っていた燃料に引火して大爆発を起こす。

 爆炎と黒煙によって視界が遮り、その隙に烈火白炎を着地する。

 ブレーキをかけながら着地するも、スピードが乗り過ぎていたのブレーキをかけたランドスピナーより火花を散らしながら。地面にブレーキ痕を残しながら滑る。

 

 『助けに来たぞネリス(・・・)

 「あぁ、助かるオズ(・・)。全機反撃に転じよ!」

 

 近くで見る烈火白炎は外装に追加走行を取り付け防御力を上げ、両手には大型のアサルトライフルを一丁ずつ手にしていた。

 いきなりの攻撃にて隊列は崩れ、混乱に陥っている大部隊に対して攻勢をかける。

 数で勝っていてもこの状況下ではその利点を生かす事は出来ないだろう。

 ばらけた上に連携の取れない敵機を次々撃破していく。

 勿論これだけで状況を打破する事は不可能であることは理解している。

 ゆえに時期を見計らったコーネリアは態勢が立て直される前に海に跳び込ませ、一旦敵部隊より姿を暗ます。

 オルフェウスによって生まれた機会に大変助かり、安堵の吐息を漏らす。

 後は頼んだぞゼロ。

 

 

 

 

 

 

 そのゼロことルルーシュは片腕と片足、頭部を失った状態で落ちてゆく。

 機体は損傷激しく戦闘継続困難な状況に、敵は一機に対して大部隊を派遣し、包囲したまま。

 ナイトメアがあったとしてもスザクやカレンでも無ければ突破は難しい。

 悪態を付きながら落ちるしかないルルーシュは、何時までもやってこない地面に激突した衝撃がない事に疑問符を浮かべ、モニターを見つめると真母衣波 零式をお姫様抱っこするように支えている月虹影の姿があった。

 

 「C.C.か!?月虹影は置いて来るようにと…」

 『なんだ助けて貰ってその言い草は。それに今更世話を焼かせるなよ』

  

 予定外の行動であるが助かったのは事実。

 礼を口にすることはなく、真母衣波 零式から月虹影に飛び移り、ガヴェイン同様に複座型となっているコクピットに入り込む。操縦席にはC.C.しか居らず、マオの姿が無かった。

 

 「マオはどうした?」

 「アイツなら街の方に行ってもらったよ。アイツのギアスは役に立つだろうからな」

 

 範囲型で周囲の思考を読むギアス。

 市街地であるならば姿を隠せ易いし、周囲に隠れている敵を察知することだって容易い。

 察知だけでなく動きを理解して脱出も容易となる事が予想される。

 

 「なるほどいい手だな」

 「それよりこれからどうするんだ?」

 「どうするかか…」

 

 本当にどうしたら良いのだろうか。

 シュナイゼルのように策と策の読み合いになるのなら理解しよう。

 スザクのように異常な個によって突破されたのなら諦めもしよう。

 兄上のようになんやかんやしてぐちゃぐちゃに引っ掻き回されるならまだ打つ手はあっただろう。

 しかし策の全てを先読みして完璧に近い対応をする敵にどうすれば良いと言うのだ。

 策は意味を為さず、スザクやカレンの様な文字通りの一騎当千の猛者を封殺し、物量を持ってこちらを呑み込まんとする国に何をすればいいのだ?

 時間にしてみれば数秒もない間であったが、考えている間にも砲撃が集中し、月虹影のブレイズルミナスで防ぐ。

 あまり長考は出来ず、そんな中で状況を打破する策を練らねばならない。

 

 『こちらでしたか』

 

 どうやってと何度目かの自問自答をジェレミアの声が遮る。

 敵の包囲網をサザーランド・ローヤルとモルドレッド・ビルドアップが突破して合流し、サザーランド・ローヤルより通信用の線が投げつけられる。

 これで通信を駄々洩れにせず直接伝えられる。

 

 『報告致します。コーネリア皇女殿下は王城に突入しましたが、敵の待ち伏せに合いました』

 「咄嗟の動きも対応仕切るか…」

 『が、援軍の到着により皇女殿下は一時的に撤退で気て窮地を脱しました』

 「援軍だと!?」 

 

 あり得ない。

 援軍などと…。

 そう思っているとレーダーに新たな機影が映り込む。

 敵…ではなく味方識別コードであったことに余計に混乱する。

 黒の騎士団が来たにしたら早すぎる。 

 確認しようと見上げるが恐ろしく感じる速さを持って、流れ星の如くに空を駆け抜けて行って見えはしない。

 しかしおかげで光明は見えた。

 

 味方識別コードによればあれは“ナウシカファクトリー”の実験機に当てられるモノ。

 つまりそう言う事なのだろう…。

 

 「まったく兄上はどうやって…いや、この好機を生かさせてもらおう」

 

 ルルーシュは息を吹き返したかのように思考を回す。

 策が通じないからと諦めるほど素直でもないしな。

 

 

  

 

 

 

 一機の飛行機が低空で飛翔する。

 通常の飛行機、または戦闘機であるならば首都上空に差し掛かる前に発見されてしかるべきなのだが、この機影が未だジルクスタン王国に捕捉されずに居た。

 それはこの機体に施されたステルス性の高さによるものである。

 ゲフィオンディスターバーの副作用によるジャミングにレーダー波を受け流すように設計された曲線の外装、そしてマッハ3という規格外の速度を得た試作強行偵察機。

 オデュッセウスのナウシカファクトリーで試作段階である偵察機であるが、未だ完成の見通しがつかない欠陥機として倉庫の奥底で置物のように鎮座していた。

 高いステルス性に驚異的な速度を得る事には成功したのだが、その為か機体は出来るだけ小型化が行われ、速度やジャミングシステムを積み込むと充分な情報収集機器が詰めなくなるという本末転倒な結果になり、当時はすぐに改善策を探ろうと研究者は頭を悩ましたが、世界が平和になり始めると強行に偵察する任務自体が少なくなり、この試作強行偵察機の存在価値が急速に薄れて行き、倉庫の端へと追いやられる事となったのだ。

 そんなお蔵入りした機体がジルクスタン上空を飛んでいるのは、未来を見通したかのようにオデュッセウスが用意した援軍―――と、言う訳ではなく個人の独断であった。

 

 「これ結構早いわね」

 『世界最速の偵察機ですから。非公式ではありますが』

 

 くすくすと笑うマリアンヌに、操縦しているビスマルクが淡々と答える。

 マリアンヌ達は襲撃を受けてすぐさま、仕掛けてきた償いをさせようと行動を開始。

 ナウシカファクトリーで移動手段を入手しようと未だ使用可能だった皇族専用コードを用いて入ったのだが、この偵察機を気前よく貸してくれた(・・・・・・)のだ。

 これは運と偶然も合わさった結果である。

 皇族コードと言えどもシャルルが現役だった頃の皇族コードなどすでに変更されており、使用など出来る筈がない。なのでマリアンヌは口八丁で言い聞かせるつもりだった。

 が、使用したコードとちらりと伺えた顔よりオデュッセウスの案件かと勝手にそう思い込んでしまったミルビル博士により渡されてしまったのだ…。

 こればかりはオデュッセウスの普段の行いも勘違いの要因として大きかったんだろうなぁ…。

 そんな事など正直どうでも良く、ただただこの乗り物の清々しいほどの馬鹿げた速度にマリアンヌはご満悦である。

 

 「蔵に仕舞い込んでおくぐらいなら自家用機に持って帰っちゃ駄目かしら」

 

 冗談のようで本気なのだろうなとビスマルクは、どう返せばいいのか迷って口を閉ざす。

 もしこれを勝手に持って帰ったりすればあの勘違いした博士は胃に穴が空くどころか吐血でもするんじゃないかとビスマルクは少しばかり心配するのであった。

 ただでさえ急ごしらえでナイトメア一機積み込めるように偵察機器を降ろして簡易のハッチを取り付けて貰ったりと急な激務を押し付けてしまったんだから…。

 これからの事を楽しみにしているマリアンヌには届かないだろうけど。

 

 「じゃあ、行ってくるわねアナタ」

 『あぁ、楽しんで来い』

 『ハッチ解放します』

 

 速度を緩め、降下体勢を取った偵察機後部が開き、一騎のヴィンセントが姿を現した。

 一般機に多少接近戦用にカスタマイズしただけのナイトメア。

 あのコ(カリバーン)に比べて物足りなさはあるものの、これはこれで面白いものだ。

 

 飛び降りたヴィンセントは急速に高度を落とし、ギリギリでパラシュートを展開するが、降下速度が機体が潰れぬ程度に落ちたらさっさと切り離して着地。

 アシュラ隊にレイラ隊に向かおうとしていたゲド・バッカ三個中隊は突然降ってきたナイトメアに驚き、ランドスピナーが急速に回転した事で迎撃態勢を取るが遅すぎる。

 彼女を降ろした時点で彼ら・彼女らの運命は決定してしまっているのだ。

 

 「あはっ!」

 

 満面の笑みを浮かべたマリアンヌは恐怖など微塵も感じていないかのように、ペダルをべた踏みして砲撃の中へと突撃する。

 ヴィンセントと言えどもゲド・バッカの砲撃を直撃すればただでは済まない。

 否、一撃で上半身がパイロットごと吹き飛ぶだろう。

 が、自分の腕に絶対的な自信を持ち、冷静かつ獰猛に戦力差を見抜いた結果、問題ないと彼女は判断した。

 微々たる動きだけで砲弾を回避していく様は、砲弾が彼女を避けているかのようだ。

 ナイトメアと言うのはランドスピナーを用いて滑るように進むが、システムには無い地面を蹴り進むモーションや壁を蹴っての方向転換などを手動で入れ込み、素早くも獣の様に荒々しく駆け抜ける。

 MVSの一本を一機に投げつけて貫き、もう一本で斬り込む。

 二機目、三機目、四機目と横や頭上を通るたびに切り裂き、投げて突き刺さったままの一本を流れるように回収し、剣状のMVSから接続させて両刃にして振り回す。

 砲身から腕部、胴体や頭部を細切れに刻むだけでは飽き足らず、蹴りや殴りで吹き飛ばして二機纏めて撃破したりともはや無双していた。

 敵兵にすればふざけるなと怒鳴り、泣け叫びたくなるだろう。

 一瞬で、瞬きする間もなく仲間の命が刈られていく。

 三個中隊の指揮を任されていた隊長は指を動かす程の気力も戦意も残されておらず、振り下ろされる刃を見つめながら彼らの死神を見つめる。

 最後の一騎を狩った(・・・)マリアンヌは満足そうに笑みを浮かべ、そしてつまらなさそうにため息を漏らす。

 

 「狩りとしてはまぁまぁ(・・・・)楽しかったのだけど、物足りないわね…」

 

 思い浮かべるはダモクレスで戦ったあの赤いナイトメア(紅蓮)白いナイトメア(ランスロット)

 もう一度あの血潮が沸騰するような戦いに興じてみたいものだわ。

 危なく危険な輝きを瞳に宿すも今回は味方なのだから手出しできないと言い聞かせては特大のため息を吐き出す。

 

 「まだあっちの方が騒がしいようね。ならあちらのパーティに混ぜて貰いましょうか」

 

 掠れるように消え失せた光が再び灯り、レイラやアシュレイ達が居るであろう方向に向けられる。

 まだまだこの戦場は荒れそうだ…。


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