コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 投稿が遅れに遅れて申し訳ありません。


第149話 「兄妹・兄弟での温泉①」

 温泉に入りたい…。

 最近よく思うようになってしまった。

 ニーナがジルクスタンでハマムで楽しんだという話を聞いたり、身体の疲れをギアスでとる事に味気なく感じてしまったのが原因なのだろう。

 別にブリタニア本国に温泉がないわけではない。

 元々療養として温泉は知られていて、現在はマッサージやアロマが楽しめるスパとしても存在している。

 中には温泉プールなんてのもあるらしいのだが、どうも慣れずに日本行きを検討していた。

 その事を会話の中で呟いたら、アーニャからコーネリアかギネヴィアに伝わり、最終的にクロヴィスの下にまで行き、今私は立派過ぎる木造建築の屋敷の前に佇んでいた。

 

 「立派だねぇ…」

 

 まさか他愛ない一言からクロヴィスが動き、和風の温泉施設を作り上げるとは思わなかった。

 呆れ半分嬉しさ半分のオデュッセウスは薄っすらと微笑みを浮かべて建物内へと入って行く。

 

 「兄上!」

 「わぷっ!?」

 

 潜った先に待ち受けていたのはキャスタールの助走をつけたハグであった。

 いきなりの不意打ちに身体が後ろへと傾くも右足を後に滑らせて踏ん張り、そのまま転倒する事は避けた。

 

 「久しぶりだね。元気だったかい?」

 「勿論。それよりなんでボクをジルクスタンに呼んでくれなかったのさ」

 「私は奇襲を受けたんだよ。呼ぼうにも呼べやしないよ」

 「ちぇ…蹂躙出来たのにな」

 「こらこら物騒な事を言わないの」

 「良いんじゃないの。あんな小国滅ぼしても」

 「それこそフレイヤを撃ち込んだら早かったのでは?」

 「キャス、それにカリーヌまで…」

 

 互いにハグをし合いながらパラックスの発言に困ってしまう。

 勿論冗談なんだろうと思うも実際にやりかねないだけに非常に困る。

 しかもキャスタールとカリーヌまでも賛同するものだからどうしたものか…。

 

 「うふふ、皆愛情の裏返しね」

 「笑いごとで済ますべきか、一応ながら注意すべきなのか」

 「抱き締めて撫でてあげれば良いと思いますよ」

 

 私の事を心配していたからこそ皆は怒りを抱き、過激な発言をしている。

 そう笑いながら言っているユーフェミアの言を受けて、そういう事ならと三人を優しく抱き寄せる。

 「ありがとう。そして心配をかけてすまないね」と感謝と謝罪を口にすると、三人とも無事でよかったとにこやかに笑って抱き返して来た。

 そして追加で「私も!」背中にライラが抱き着く。

 背中で受け止めながら振り返るとニンマリと笑顔を向けるライラと、奥より姿を現すクロヴィスとシュナイゼル、コーネリアと見えた。

 

 「ライラ、止めなさい」

 「えー…分かりました」

 「よくお越しくださいました兄上」

 「招待嬉しいよクロヴィス。君は本当にサプライズが上手いね」

 「お褒め頂き光栄です」

 

 ライラもクロヴィスの横に並び、演技らしい動きで礼を述べると習って同じく頭を下げた。

 二人の想いを受け取っている最中、その横を通り過ぎてコーネリアが「私は助けに駆け付けたがな」とどや顔でキャスタールとパラックスを言い放ち、羨ましさと苛立ちから言い返すも優越感交じりのコーネリアにはどこ吹く風…。

 大人げない光景にシュナイゼルがやれやれと肩を竦ませる。

 

 「大人げないですよ」

 「事実だからな」

 「もう…そんなに気にしないでキャスタール、パラックス。―――私は参加しましたけど」

 「「言うと思ったよ!!」」

 

 仲裁に入ったのか揶揄いに来たのか…。

 マリーベルによって喧騒は突っ込みを境に一応落ち着いた。

 

 「これで全員…あれ?ギネヴィアはどうしたんだい?」

 「あ、兄上。こ、ここ、来られたのですね」

 

 ルルーシュにナナリーは別件で居ない事を除いて見渡すとギネヴィアの姿だけがない。

 別段強制ではないが、久々に弟妹達に逢えると思っていた分、多少は寂しいものである。

 しかしギネヴィアの声が廊下の先より聞こえてきた。

 来ていたのかと思うよりも、どこか歯切れが悪い。

 首を傾げながら声のした方を見つめていると、恥ずかしそうに浴衣姿のギネヴィアが現れた。

 派手過ぎず、地味過ぎない鮮やかな着物姿に「おぉ…」と声が自然と漏れた。

 

 「良く似合っているじゃないか。すごく綺麗だよギネヴィア」

 「―――ッ、まずは形からと言いますし、用意して良かったです」

 「本当に良かったですねお姉さま。時間をかけて選んだ甲斐がありましたわね」

 

 クスリと悪戯っ子らしい笑みを浮かべて暴露したカリーヌにギネヴィアは振り返り、手を伸ばすと頬を引っ張った。

 痛い痛いと抵抗するも全く効いてはいない。

 妹達のじゃれ合いに微笑を浮かべ眺める。

 

 「全員揃ったところでメインである温泉に行きますか?」

 「そうだね。最近忙しかったからゆっくりさせてもらおうか」

 

 クロヴィスに案内されて男湯の方に入っていく。

 中まで日本風にしてあり、脱衣所は銭湯に近しい。

 そう言えば入り口前の広間に牛乳の自販機もあったな。

 思い返しながら脱所にて服を脱いで籠に入れ、タオルを肩にかけて浴場へ。

 

 水風呂に何十人も入れるであろう大きな風呂に温度熱めの湯船にサウナ室にジャグジーと種類豊富な上に露天風呂まで完備している事に驚き、よく調べて作ったなと改めて感心する。

 遅れて男性陣が入って来るが皆はやはり腰にタオルを巻いていた。

 別段巻くなと言う気も無いし、湯船に浸けようとしたらやんわりと注意することにしよう。

 

 まずは身体を洗おうと洗い場の椅子に腰を下ろす。

 慣れた様子でどんどん先に行くことから、銭湯や温泉に親しみがないキャスタールやパラックスが隣の椅子に腰かけて伺ってくる。

 

 「キャス。こっちに背中を向けなさい」

 「こう?」

 

 見様見真似しようとしているのを察し、ならばとキャスタールに背中を向けさせる。

 取り付けてあったシャワーの温度を確かめ、勢いは弱過ぎず強すぎずに設定して髪を濡らしてやる。

 最初は戸惑っていたもののシャンプーを泡立てて髪を洗い始めると気持ちよさそうな声を漏らした。

 

 「どうだい?気持ちいいかい?」

 「はい、とっても気持ちいいですぅ…」

 「キャスだけズリィ!後で僕も!」

 「順番ね」

 

 爪を立てないように気を付け、指の腹でマッサージするように洗っていく。

 次にパラックスが居る事を考えてしっかり洗いながら素早くしなければならない。

 まだ濡れていないとはいえ、さすがに寒いだろうから。

 シャカシャカと小気味いい音を立てて頭を洗ってやり、二人が身体を洗っている間に自分を洗い湯船に浸かる。

 熱い湯が身体を一気に温め、その影響で汗がタラリと垂れる。

 

 「あぁ、良い湯だねぇ」

 

 タオルを折りたたんで頭の上に乗せて呟く。

 湯船には遅れてシュナイゼルとクロヴィスが入る。

 キャスタールとパラックスと言えばジャグジーやサウナに興味を持ったのか行ったり来たりしていろんなお風呂を楽しんでいた。

 

 「まったく子供だね」

 「昔は同じようにしていたさ」 

 「私はいたって大人しかったと…」

 「ルルーシュにチェスで負けて意地になって挑んでいたのは誰だったかな?」

 

 口で敵う筈もなくシュナイゼルに良い負けたクロヴィスはぐぬぬと不満げに頬を膨らませる。

 よしよしと頭を撫でてやると「もう子供ではありませんよ」と言うも、その手を払い除けようとしないのでとりあえず続ける。

 

 「そう言えばルルーシュとナナリーは不参加なのだね。ニーナ君は家族での温泉でしたが呼んでも良かったのでは?」

 

 話題に出たこともあってシュナイゼルがルルーシュ達の事を気にかける。

 主催者であるクロヴィスと事情を知っている私を除けば誰も理由を知らない事に気付いた。

 

 「三人ともアッシュフォード学園で同窓会。ヴィーもそっちに行ったよ」

 「それでアーニャも居なかったわけですか」

 「そういう事」

 

 いつも一緒に居るのだからこういう時ぐらい各々で楽しんだ方が良いだろう。

 私など向こうに行くと絶対恐縮したり、気を使わせてしまうので返って邪魔をしてしまう。

 

 「今日は兄妹・兄弟水入らずで楽しむさ」

 「昔みたくケーキを賭けてチェスでも打ちますか?」

 「それともあの二人みたいに身体を動かしますか?」

 「さすがにそこまでの元気は無いさ。歳をとるとああいった元気さが羨ましく、眩くも感じるよ」

 「それだけ我々が大人になったという事ですね」

 「なら大人な我々はワイン傾かせ飲み明かしますか」

 「良いかも知れないけどまずは温泉を充分に堪能することにしよう」

 

 そう言ってオデュッセウスは本気で満喫することにする。

 体の芯まで温まり切るまで浸かり、ジャグジーで泡を楽しみ、サウナで汗を流す。

 腕組んだまま腰かけていると私が居るからかキャスタールやパラックスも入って来て、同じように腰かけて顔を真っ赤にして耐えている。

 我慢大会じゃないんだから。

 シュナイゼルなら涼しい顔で……いや、涼しい顔しときながらのぼせてそうで怖いな。

 

 「熱い…」

 「なら出ればいいじゃないか」

 「む…」

 

 なんてことを思っていたらぽつりと二人の会話を聞き逃していた。

 どこか負けた気がしてならないパラックスは出て行かず、けど熱いからと言う事で熱源(・・)に用意されていた水をかけた(・・・・・)のだ。

 火に水をかけて鎮火させるというのは解るが、サウナの場合は焼け石に水なのでかけた分の水が水蒸気として室内に熱気が増す。

 一瞬で温度があがった事で嫌でも気付いて二人を抱えて外へ。

 

 「サウナって水かけると熱くなるんだね」

 「うん、一つ学習したね」

 

 熱かった二人は身体を冷やそうと冷水風呂にと入って行った。

 いやぁ、あれも若さだよねぇ…。

 年齢が過ぎて行くにつれて身体と言うのは知らず知らずに弱り、熱さに慣れた後に冷たい風呂など心臓が止まりそうだ。

 苦笑いを浮かべながら再び湯に浸かる。

 するとシュナイゼルやクロヴィスが居ない事に気付いた。

 あの二人は上がったのかとパラックスとキャスタールはと見ると、水風呂から上がってジャグジーに浸かっており、もう上がろうと脱衣所に向かって行った。

 ならばそろそろと自分も上がるかと脱衣所に向かい、綺麗に拭き取って服を着て出る。

 するとマッサージチェアに腰かけている第二皇子の姿が…。

 あまりに自然体で居るから妙に馴染んでいるという事実。

 突っ込むべきか悩むも喉がカラカラで、水分の消費の方が酷かったので牛乳を買いに行く。

 

 「オデュッセウス兄様。何飲むの?」

 「お風呂の後は牛乳って相場が決まっているからね」

 「そういうものなの?」

 「そういうものなの」

 

 理解してくれないかもしれないが、こればかりは前世に引き摺られているから、“こういうもの”として魂魄に刻まれてしまっている。

 意味や意図を察せなくとも真似してみようとパラックスとキャスタールも買おうと並ぶ。

 他の皆はと見渡すとクロヴィスはソファでゆったりと寛ぎ、シュナイゼルはまだマッサージチェアで休んでいた。

 女性陣はまだ姿が見えない事からまだ浸かっているのだろう。

 

 牛乳瓶を空け、腰に手を当ててグビグビと飲み干す。

 習って二人も飲みだし、ぷはぁと息を吐き出した。

 

 余韻を楽しみながら皆が揃ったら何をしようかと楽しみにするのであった…。

 次回に続く。


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