コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第22話 「力を持っていても心が追いついていないと意味が無かった」

 アニメ第一期の内容に入ってからオデュッセウスは極秘裏に皇帝陛下からの勅命を受けているという大義名分を持って、エリア11の観光地巡りや日本の料理に舌鼓を打ち続けていた。その間にも原作通りの出来事が起こり続けた。

 

 新総督のコーネリアにより中部最大の反ブリタニア組織『サムライの血』が壊滅させられたり、サイタマゲットーに潜伏する反ブリタニア組織の撲滅とゼロを誘き出す作戦を実行したりと数日の間にエリア11では多くの日本人が亡くなった。

 

 原作通りの出来事の中でも憑依転生したオデュッセウスが存在する事によりほんの少しだが変わった事もある。サイタマゲットーでの作戦は確かに行なわれたが死者の数は異なった。作戦開始前にブリタニア本国に居る白騎士よりコーネリアに連絡が入ったのだ。内容はテロリストを壊滅させる前にセカンド・ブリタニア人制度を呼びかけてくれないかというものだ。話を聞いた時こそ反対したコーネリアだったが逃がした中にテロリストが居れば、他の反ブリタニア組織と合流する。そうなれば芋づる式に見つけられるのではないかと判断して許可を出したのだ。これによりサイタマゲットーの多くの子供とその両親の命は助かった事になる。勿論、諜報部の監視対象になっているが…。

 

 戦闘前にセカンド・ブリタニア人制度に参加するイレブン達を護送したのはジェレミア・ゴッドバルト率いる純血派である。オレンジ疑惑をもたれる前より参加していたメンバーはかなり減ってしまったが、この事をジェレミアはまったく気にしていなかった。と言うのもこれはジェレミアがオデュッセウスに頼んだ事なのだから。今でも皇室の傍近くで仕える事を目標にしているが、オレンジ疑惑以来純血派そのものが疑いの目で見られてしまっている。自分ほどではないにしても彼らの忠誠心をそんな疑惑で潰すわけにはいかないと彼らを他のエリアで活躍できるように配置換えを申し出たのだ。ほとんどのメンバーがパラックス・ルィ・ブリタニアの下に送られ、前線で活躍している事だろう。

 

 同じ志の者を潰さず活かせる事が出来て、これで良かったんだと納得したジェレミアに嬉しい誤算が生じた。ひとつはヴィレッタ・ヌゥが残ったことだ。彼女はシンジュクゲットーでナイトメアを奪われるという大失態をしており、自分にはここ以外に這い上がれるところはないと残った。それだけでなくジェレミアを粛清しようとしたキューエル・ソレイシィも純血派に所属している。急な異動に疑問を覚えてすべては分かりきれなかったがジェレミアが何かをした事に気付き、何か考えはあるのだろうが表向きにはまだオレンジの疑惑は晴れてないから監視するとの事。しかし、以前のような疑惑を向ける眼差しではなく、むしろジェレミアの行動には別の何かがあったのではないかと疑っている様子だ。元々純血派はひとつの部隊ではなく純血派というコミュニティである。それが今はひとつの部隊として作られ総勢六名の騎士が所属している。

 

 ところで途中で白騎士ことロロがブリタニア本国に居ると書いたがこれはオデュッセウスのお願いと騎士団長としての白騎士に命じた事である。白騎士としては現在護衛としてオデュッセウスと共にエリア11に入っている騎士達のナイトメア搬送準備である。お忍びで総督のコーネリアに内緒の時点でナイトメアを持ち込むのは断念していたのだが、そろそろナリタ連山もあって必要になるだろうから準備に入ってもらったのだ。そのうち頃合を見てコーネリアには連絡を入れるつもりらしいが理由は現在考え中である。それと皇帝陛下の勅命であるC.C.捜索の経過報告をしにである。原作知識を持つ事からアッシュフォード学園を包囲すれば一発なのだが、捕縛する気も無く捜索もしていないのでそれらしい情報を書いただけの物になる。最後にお願いというのがコーネリアがゲットー壊滅作戦が起きた際にはセカンド・ブリタニア人制度を推すようにとの事と、すぐに受け入れるだけの準備をして欲しいと言うもの。本国に戻った際にゲットー壊滅作戦が起きたので通信履歴上も本国からなので今のところお忍びでエリア11入りした事はばれてない………はずだ。

 

 オデュッセウスはロロが居ない状況だからこそ出来る事がある。ルルーシュとナナリー、そしてアッシュフォード学園に通う事になったスザクの様子を遠くから見る事とか。決して…決してゼロのマスクを黒猫『アーサー』に奪われた猫騒ぎの際に放送室から発せられたナナリーの「にゃあ~」という声を聞きに行った訳ではない。当日にアッシュフォード学園前に黒一色の服装を着た男性がボイスレコーダーを持ち歩いていたという不審者情報があったが…。

 

 何にしてもロロが居ないからといって遊んでばかりはいられない。やるべき事が出来たのだから…。

 

 河口湖のコンべーションセンターホテルで行なわれるサクラダイトの国際分配レートを決定するサクラダイト配偶会議。ブリタニアと諸外国とのパワーバランスを決定するといっても過言ではない。その会議を狙って日本解放戦線の草壁中佐が人質を取って立て篭もるという話が原作であった。

 

 憑依転生した当初の自分であればこんな危険なイベントに参加するなどと考える事などしなかった。けれどここでオデュッセウスとして生きている中にいろいろと情が移りすぎた…。愛しくて可愛くて堪らない妹の一人であるユーフェミアがこの事件に関わるとあっては黙っていられなかった。

 

 が、問題が山積み過ぎた。一番最初に頭に浮かんだのは警備の強化、もしくはユーフェミアに行かないように伝える。この場合はどうやって説明するのか考えが出てこなかった。テロの情報を掴んだなんて理由は私じゃなくてテロ対策の部隊を持っているシュナイゼルが言うなら問題ないがそんな情報網は持ち合わせてない。ならばユフィに忠告………は、人質を無視して攻める選択をコーネリアが選ぶから却下。ならば初っ端からナイトメアで地下道に突撃!!………しても突破出来る自信は無いからこの案は捨てる。

 

 そして私は最後の手段を取る事にしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 人の影どころか気配すらほとんどしない河口湖のコンべーションセンターホテルのとある通路を三人の男が辺りを警戒しながら歩いていた。深緑色の旧日本軍服に軍帽を身につけ、手にはアサルトライフルを持った彼らは日本解放戦線と名を変えた日本軍残党である。すでに草壁中佐の部隊だけでコンベンションセンターホテルを手中に収め、今は建物内に隠れている者が居ないか捜索しているところだった。

 

 隠れそうなトイレに足を踏み入れて個室を空けながら銃を構える。が、そこには誰も居らずに息を吐くと同時に緊張を解きつつとっととトイレから出て行く。しかし最後尾を歩いていた兵士は出ようとした時に後ろから聞こえた物音で振り向いた。天井から振って来た黒尽くめの男と目が合った。

 

 「出合って早々で悪いがお休み」

 

 銃を向ける間もなく黒尽くめの拳が無防備だった顎を打ち抜いた。グルンと白目を向いた兵士は糸が切れたマリオネットのように力無くタイルに倒れそうになる。倒れられたら大きな音が立つので倒れないように受け止めて奥の個室に入れる。

 

 最後尾を歩いていた兵士が消えた事に気付いたひとりが肩を竦めてトイレに入ってきた。何かあったと判断したのではなくてそのまま用を足しているんだろう程度にしか思っていなかった。だから入った瞬間に銃を掴まれた手に対応しきれず、速攻で意識を刈り取られる。

 

 さすがに二人も帰って来ないことを不審がった最後の兵士は警戒しつつ足を踏み入れる。一番最初に視界に入ったのは奥の個室より伸びた二本の足だった。顔は見えなかったがズボンの色で日本解放戦線のメンバーだと理解出来る。唾をゴクリと飲み込みながらゆっくりと近付く。心臓はバクバクと高鳴り、頭の中ではヤバイと危険信号を発している。

 

 背後で物音がして振り向くとそこにはトイレットペーパーが転がっているだけで誰も居ない。何だったのかと考える時間は与えられず、首に衝撃が走り気絶した兵士はトイレのタイルに伏した。

 

 手際よく気絶させた黒尽くめの男――オデュッセウスは両手を合わせて小さく謝りつつ三人目の兵士を個室に連れ込む。体格が近い兵士の軍服を脱がして着用し、兵士達の手足をきつく結んで動けないようにする。勿論、口には猿轡がわりに布で塞いで騒げないようにするのは忘れない。

 

 オデュッセウスが悩んだ結果に選んだ手段は自分が乗り込む事だった。ナイトメアの技術だけでなく対人格闘術に射撃の腕前を叩き込まれた彼が一般兵程度に遅れをとる事はない。なにせあのビスマルクとマリアンヌに鍛え上げられた彼なのだから。

 

 作戦としては日本解放戦線の兵士に紛れて人質が集められているエリアに潜入し、監視している兵士を無力化する。撃つ前に気付かれなければ十人程度なら反撃を許す間もなく無力化できる。後は部屋内にあるもので入り口にバリケードを築いて立て篭もればこちらの勝ちだ。原作でもナイトメアを倒せるほどの武装は無かったらしいから強力な爆破物は持ってないという事が前提だが…。五分でも持ち堪えれば携帯でコーネリアに連絡すれば救出作戦ではなく、人質が居るエリア以外に対してテロリストに対する殲滅戦を行なえる。自分がこの場に居る言い訳は助かった後で考えよう。

 

 無線機のひとつを拾い上げて通路へと一歩を踏み出す。ユーフェミアにミレイ達を含んだ人質を救出する為に!

 

 

 

 

 

 ………の、筈だった。

 

 河口湖のコンべーションセンターホテルで人質が集められた部屋に前と同じく黒尽くめの服装にマスクで髭を、サングラスで目を隠したオデュッセウスは黙って座っていた。

 

 相手を簡単に伸すほどの技術を持ち、多数を相手に長時間戦えるだけのスタミナを持ち、モブ達を圧倒するほどの肉体的ステータスを誇っていたのだが心までは強くなかった。トイレの天井に張り付く前に見付かり銃を突きつけられた時、返り討ちにも出来たのだが銃を向けられた恐怖で足が竦んでそのまま連行されたのだ。幸い自分の身分を示す物は持っていないので自分が第一皇子である事は気付かれてない。

 

 泣きたかった。助ける為に来て不甲斐なく捕まった事もあるが、自分の真後ろに助けようと思ったユーフェミアが居るのに何も出来ない事にだ。

 

 オデュッセウスより後に来たユーフェミアは護衛と思われる女性と共に端の方に腰を降ろしたのだが、ユーフェミアはまだ後ろに居るのがオデュッセウスだとは気付いていない。背中合わせで座っているのもあって気付いていないのだろうが護衛の方は顔を顰めながら微妙に覗いてこようとしている節がある。出来れば気付かずに時間が過ぎて欲しい。時間が過ぎればスザク君が何とかしてくれるだろう。時間が経てば人質が屋上から突き落とされるがアニメではひとりしか飛んでいない筈だから自分の命は安全なのだ。アニメでは男性が落ちたと思うのだがこの世界ではツインテールの活発そうな少女が連れて行かれた。男性じゃないからと気にしてなかったがその後戻ってきた兵士の話によると落としたらしい。他の手段を選んでいれば助かった命を助けられなかった事にすでに罪悪感でいっぱいになっている。

 

 少しだけ顔を動かして反対側にいる少女達を見つめる。そこにはアッシュフォード家のミレイ・アッシュフォードにニーナ・アインシュタイン、シャーリー・フェネットの三人が不安を隠せずに震えていた。ミレイは何とか自身を奮い立たせ、不安がるニーナの手を握り、背を擦りながら不安を少しでも和らげようと支えていた。

 

 ユフィと彼女達だけでもここから助けてあげたい気持ちはあるが、この状況下では出来る事はない。…ひとつだけあるにはあるがそれは出来るだけ選びたくない。これは最後の手段として封印したいのだけど…。

 

 そんなオデュッセウスの考えはすぐに消し飛んだ。ミレイ達の近くで解放戦線の兵士が立ち止まる。人質を監視しているというよりは暇だから適当に辺りを見渡しているように見える。実際ここまでブリタニア軍が来るとは思ってないだろうから当然と言えば当然か。

 

 「…イレブン」

 

 ボソッと呟いた…呟いてしまった一言で無表情に近かった兵士の顔が一気に険しい物へと変貌した。

 

 「今何といった!!」

 

 顔を真っ赤にして銃を向けて怒鳴りつける。ミレイは怯えるニーナを庇うように抱き締め銃を向けないように言うが頭に血の上った彼を止める事は不可能だ。訂正を求める彼の声に反応して付近に居た解放戦線の隊員達が集まってくる。シャーリーが訂正すると強気に言ってしまうものだから余計に相手は怒ってしまっている。

 

 「貴様ら隣まで来い!じっくり教え込んでやる!!」

 

 三人を隣の部屋へ来るように怒鳴る中で私は冷や冷やしながらユフィに視線を移す。周りは見て見ぬ振りをするがユフィは何とか助けようと立ちあがろうとする。それに気付いた護衛の女性が腕を掴み、険しい顔で止めるように首を横に振る。しかしここまで原作通りなのだからこの後の展開も同じと考えて間違いはない。先ほどの考えを放棄して覚悟を決める

 

 何をされるか分かりきった状況で自ら動こうとはしないだろう。そんな三人に業を煮やした兵士がニーナの腕を掴んで無理やりに連れて行こうとする。悲痛な叫び声が部屋全体に響き渡る。護衛の手を振りほどき立ち上がろうとしたユフィの肩を優しく掴んで立たない様にする。代わりに立ち上がって兵士の視線を浴びる。今にも胃に穴が空きそうだ。

 

 「なんだ貴様!」

 

 急に立ち上がったオデュッセウスに怒鳴りながら銃を構える。無理に引っ張られ、連れて行かれまいと抵抗していたニーナは手を離されて床に倒れこむ。兵士だけでなく人質の視線を浴びて大きく深呼吸をする。マスクとサングラスに手を伸ばす段階でユフィの護衛が大きく目を見開いて気付いた。だが、止める気は無い。この行動こそ彼女達を助ける最善の手なのだから。

 

 「私を君たちの指揮官に会わせてくれないかい?」

 「なに!?」

 「私は神聖ブリタニア帝国第一皇子、オデュッセウス・ウ・ブリタニア」

 

 マスクとサングラスを勢い良く外し、名乗りを挙げると兵士も人質も驚愕の表情を晒す。特にユフィとミレイは驚きというよりも信じられないといった表情をしていた。

 

 この行動で彼女達は助かるはずだ。問題はこの後の私が原作通りだとゼロであるルルーシュと出会ってしまう事だ。もしもギアスでマリアンヌ様の暗殺事件の事を聞かれたらどうなるか分かったものじゃない。これは今まで生きてきた人生の中での大きな分岐点である。しくじれば命は無いものと思うと心が折れそうだ。

 

 「君、大丈夫かい?」

 

 自身の不安を隠すように倒れこんだニーナに微笑みながら問いかける。

 

 心の中ではスザク君早く来て下さいと願いながら…。


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