コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第34話 「プールって良いよね……」

 ルルーシュ・ランペルージは生徒会の皆と共にクロヴィスランドに来ていた。

 

 今日はクロヴィスランドのプール施設の完成式という事で、地元の名主であるアッシュフォード家に招待状が届いたのだ。その招待状を使って生徒会の皆で行こうとミレイ会長が誘ってきたのだ。

 

 メンバーは黒のブリーフ型海パンにカッターシャツのような上着を羽織ったルルーシュ・ランペルージ。

 髪をツインテールにして桃色のチューブトップのナナリー・ランペルージ。

 首の後ろで結んだ赤いホルター・ビキニのミレイ・アッシュフォード。

 トップがタンクトップに似た形状をした水浅葱色のタンキニのシャーリー・フェネット。

 シャーリーと同じタンキニと呼ばれる水着だが、シャーリーが着ているタンクトップ型でなく黄緑色のキャミソール型タンキニに小さな麦わら帽子を被っているニーナ・アインシュタイン。

 バンドゥという横長の帯状になった黒いトップの上から胸元が肌蹴た上着を着こなしている病弱設定のカレン・シュタットフェルト。

 会長の水着姿を楽しみにしていたオレンジ色のサーフパンツのリヴァル・カルデモンド。

 

 そして本国よりアッシュフォード学園に転入してきたナナリーと色違いのチューブトップ姿のライラ・アスプルンド。ナナリーと同じ中等部で同じクラス。仲が良い友達のひとりで会長が勝手に準生徒会員としている。会長から聞いた話ではロイド・アスプルンド伯爵というブリタニア貴族の養女らしい。

 

 あとは黒の騎士団から日本解放戦線に移り、再び黒の騎士団に合流した蒼いサーフパンツをはいたライだ。ライとは考えの違いにより離反した訳だがすでに水に流している。ナイトメアの操縦技術はカレンに次ぐ実力者で部隊指揮官としても有能。ラクシャータが調べた血液検査の結果では100年前に途絶えたとされるキョウト六家の皇家の親戚。血筋もあってかキョウト六家の皇家当主である皇 神楽耶とは親しく、キョウトからの支援が以前よりも良くなった。それに黒の騎士団から離れた際にナリタで散り散りになった四聖剣と藤堂の捜索に尽力。日本解放戦線の藤堂 鏡志朗中佐と部下の四聖剣から多大な信頼を勝ち得て、黒の騎士団に戻る際には藤堂達も共に来たぐらいだ。

 

 記憶喪失と怪しい点も多かったが今では黒の騎士団になくてはならない存在となっている。ただディートハルトはライの血筋に素質からゼロのカリスマ性が危うくなると発言し、排除すべきと進言してきたが…。

 

 ルルーシュは大きく息を吐き出し、考えを追い払ってプールへと視線を向ける。ライがナナリーとライラの面倒を見て一緒に泳ぎ、ミレイとニーナはビーチチェアで寛ぎ、リヴァルは輪に入ろうとして失敗してひとり泳いでいる。

 

 ここまでは良いのだが問題は病弱設定のカレンだ。初日という事もあって人が多く、知り合いが俺達しか居ないからって病弱とは思えないほどの泳ぎを見せるか?しかもシャーリーの目に止まってしまい二人は競争を開始している。素とは正反対の病弱設定や学園と騎士団との二重生活でストレスが溜まっているだろうから息抜きは必要だろう。だが、それが今行なうべきかと言えば違うだろ。

 

 「ルルーシュ」

 「ん?あぁ…スザクか」

 

 頭を痛めていると青いサーフパンツのスザクがゆっくりと近付いてきた。スザクは軍の仕事が入っていたらしいのだが急遽仕事が無くなって一緒に行くことになったのだ。ルルーシュ達には仕事の機械が故障してしまったと嘘をついているが、実際はライラ・ラ・ブリタニアの護衛任務に代わったのである。

 

 「どうしたの?ぼーっとして」

 「いや、ちょっとな」

 「熱中症?ちゃんと日除けできる所で休んでないと」

 「大丈夫だ。熱中症じゃない」

 「ルルーシュ。スザク君」

 「会長?」

 「そろそろお昼にしない?」

 「え?あー…もう十二時だったんですね」

 

 時刻を見ると針は十二時に達しており、意識すると自身のお腹が空いている事に気がついた。ニーナが他のメンバーにも声をかけに行った為にゆっくりとだが集まってきた。

 

 「所でスザクはどうするんだ?」

 「僕?」

 「ほら、来ていた上司の人が俺達と食べるか作ってきた弁当を一緒に食べるか聞いていただろう」

 「うっ…皆と食べると言っておいたから」

 「そうか」

 「あれ?スザク君、顔色悪くない?」

 「あははは…なんでもないよ」

 

 青ざめたスザクの反応からあのセシルとか名乗った女性の弁当は食べたくないのだろう。昔と違って周りに優しすぎるスザクがそんな反応を見せる弁当は別の意味で興味は惹かれるがおいておこう。

 

 プールからライに抱き抱えられて車椅子に腰を降ろしたナナリーもライラに押してもらって合流した。

 

 「じゃあ、メシにしますか」

 「と言ってもあれじゃあ…ねぇ」

 「凄い行列ですね」

 「お昼食べる前にお昼過ぎちゃいそう」

 

 ここプール施設内にも飲食店が並んでいるのだがここに集まった客が一斉に向かった為にどこも列が出来てしまっていた。もう少し早く行っていれば問題もなかっただろうが今更遅すぎた。並んだとしても最低一時間ぐらい待たなければならないだろう。

 

 「ねぇ、あの店はどうかな?」

 「あの店?ああ…奥の店ね。確かに誰も並んでないけど」

 

 カレンが指差した先には誰も並んでない店が建っていた。木材で簡易的な小屋のような建物には誰も並んでいないが、それはそれでなにかがあると考えてしまう。料理が不味かったり店員に問題があるとか…。

 

 「どうします会長」

 「うーん…ものは試しって事で!」

 「楽しんでますね会長」

 「楽しんでいるというか面白がってるねこりゃあ」

 「本当に不味かったらどうするんです?」

 「そのときはリヴァルが犠牲になるだけだから」

 「って俺ですか!ひでぇ…」

 「決まったんなら行かないか?ライラもナナリーもお待ちかねだよ」

 「もうライさん!それじゃあ私達が食いしん坊みたいに聞こえるんですけど」

 「ああ、ごめんよ。でもライラも空いているだろう」

 「そ、それはいつもより動きましたから」

 「ふふふふ」

 

 二人のやり取りを見てナナリーが笑う。自然と頬が弛んで自分も笑ってしまう。

 

 とりあえず店まで行ってみると客が集まらない理由が分かった。料理や店員がどうのこうの言う前に店の名前に問題があった。

 

 『日本風 出張海の家』

 

 ここの店主はどうしてそうしたのか分からない。今日はプール施設の完成式でトウキョウ租界にいる貴族や盟主に招待状が送られ、プールの客のほとんどが意識の高いブリタニア人ばかりだ。しかも招待状の送り先を選んだのは差別意識の高いクロヴィスだ。日本風と書かれた店に行く訳がない。

 

 ふとクロヴィスの事を思い出すと完成した挨拶をした者を思い出す。

 

 ここに来ていたのだ。エリア11の総督であり、神聖ブリタニア帝国第二皇女のコーネリア・リ・ブリタニアが。どうやらクロヴィスはまだ歩き回れるほど本調子ではないらしく、代わりに挨拶に出てきたのだろう。ここには黒の騎士団のカレンとライが居たというのに何も出来なかった。もし知っていたならば何かしら手を打って………いや、止めよう。今日のプールをナナリーが楽しみにしていたのだから。

 

 「お客様ですか?いらっしゃいま――っせ!?」

 「その声……アリスちゃん?」

 

 店前で客が来ないか見ていた店員に声をかけられたと思ったらその店員はナナリーの同級生で友人のアリスであった。アリスは黄色い花柄のトップがフリル状になったフレア・ビキニに『出張海の家』と荒々しく書かれたエプロンを着て困った顔をして固まっていた。

 

 アリスも会長は準生徒会員と呼んでいる事から誘ったのだが仕事で来られないと断られたのだ。確か軍の事務系の仕事についていると聞いたが。

 

 「あれ?アリスさんは今日お仕事があるって」

 「それが…ここにコーネリア殿下を始めとする皇族の方々が来られたでしょう。一応警備強化の為に呼ばれたのよ」

 「ユーフェミアね…皇女殿下の事ですね」

 「皇族が二人も来るなんて警備も大変でしょう」

 「……うん…あ!わ、私達は予備の予備だから。それより食べていくでしょ?どうぞどうぞ」

 

 何処と無く余所余所しく受け答えするアリスに違和感は感じるものの、促されるまま店内に入ると店内には流木をイメージした荒々しい木で出来た机や椅子が並べられていた。店員はアリスを除けば眼帯で片目を隠す少女と自分達より年上らしい黒髪長髪の女性の二人だけだった。

 

 入り口に置いてあった氷水の入った桶にラムネと書かれたビンを見つけて懐かしがっているスザクにもろには出してないが気になっているカレン。初めて目にするライラは別として席について品に目を通す。机にはメニュー表はなく、木札に書かれて壁に立てかけられていた。

 

 ラーメンやカレー、焼きそばに丼ものが並んでいる中でだいたいがカレーかラーメンを選んだ。ナナリーのはメニューの中で時間が経っても美味しく食べられそうなものを探して結果的に焼きそばにした。

 

 「殿k…コホン。店長、お帰りなさい」

 「ああ、戻ったよ。おっとお客様が来ていたのかい?急いで用意をするとしよう」

 

 入り口から店長と呼ばれた人物に目を向けると皆が皆、唖然とした表情で固まった。アリスは頭を押さえながら大きくため息を吐いていたが。

 

 

 

 

 

 

 元エリア11の総督であるクロヴィスは公共事業としていろんな物に手をかけた。本人の趣味でもある絵画や彫刻などを集めた美術館に、エリア11のブリタニア人達が楽しめるように自身の名前が入った『クロヴィスランド』というアミューズメントパーク。まだ建設中だがカジノなどなど。

 

 公共事業であるクロヴィスランドの一角にエリア11最大規模のプール施設が完成した。大型のスライダーに200メートルもの流れるプール。50メートル・25メートルに子供・幼児用プールは勿論、人工的に波を起こしてサーフィンを楽しんだり、ボート用の水路でボートを体験したり、水球を行なうコートなど多種多様に楽しむ事が出来る。プール以外にも飲食店や日焼けサロンなども入っており、遊ぶ事以外にも充実している。

 

 出来たばかりのクロヴィスランドのプールをひとりの男性が微笑みながら歩いていた。『出張海の家』と書かれた袖の無いティーシャツにジーンズ、日差しより守る為の大きめの麦藁帽子を被った男性は良く冷えたラムネのビンを二つ持って辺りを見渡して探している人物へと視線を向けた。

 

 「お~い」

 

 手を振りながら声をかけるとかけられた女性はビーチチェアから飛び起きて姿勢を正した。近くで泳いでいた少女は女性の態度を見て理解して、慌ててプールから出て横に並んだ。

 

 「こ、これは殿―」

 「は、禁止でお願いしたよね」

 「申し訳ありません。お…オデュさん」

 

 ラムネを持ったオデュッセウス・ウ・ブリタニアは困ったような笑みを浮かべながら二人にラムネのビンを差し出す。恐る恐る受け取る二人は上官であり、雲の上の人物である相手にどう接していいか分からずにほとんど固まってしまっていた。

 

 受け取った二人は最近オデュッセウスによりギアス饗団からオデュッセウス直属の特殊部隊になったルクレティアとダルクだ。二人とも護衛の任務を受けて来ているのだがルクレティアは薄い水色の三角・ビキニでダルクは純白のバンドゥと護衛には適さない水着姿である。他にもアリスにサンチア、一度裏切っているマオも同じく護衛任務を受けているが三人共同じく水着姿。唯一水着を着ずに護衛をしているのは片時も離れようとしない白騎士のみである。

 

 「私達は本当に遊んでいて宜しいのでしょうか?」

 「うん?交代制で働いているんだから休憩時間ぐらい好きにすればいいだろう。場所も場所だしね」

 「しかし…」

 「今は難しく考えなくて良いからさ。それと水分補給はちゃんとするんだよ」

 

 オデュッセウスは二人に笑みを向けると来た道を戻って行く。白騎士が追従している為に嫌でも目に付いてしまうが『神聖ブリタニア帝国の第一皇子』が警護ひとりだけであんなラフな格好で居る訳ないとそれぞれが判断して見られるだけで終わっている。

 

 泳ぐ気はまったくないがここに来て良かったと思う。一番の理由は愛しい妹達の水着姿を拝めた事である。ここ大事なのでもう一度…愛しい妹達の水着姿を拝めた事が一番なのだ。断じてイヤラシイ意味合いではないのは断言しておこう。

 

 想像して欲しい。

 

 戦場では女性とは思えないような荒々しさと力強さを持つ武人で、普段は凛々しく、気高く、美しい女性のコーネリアがユフィが選んだビキニより多少布地の少ないマイクロビキニでトップから紐が前から腰へ、そして前側のボトムへと繋がっている水着を着て、挨拶をする為に堂々としようとしているが恥ずかしさのあまりに頬は赤らみ、眉は困ったようにハの字になり、恥ずかしさが表情から読み取れるのだ。

 

 いつもとのギャップに頬が弛みっぱなしだった。最高画質で録画してて良かった。

 

 コーネリアもそうだがユフィの水着姿も可愛らしかった。可愛らしかったのだがあの水着はなんというのだろう?ボトムは普通なのだがトップがチューブトップというよりも、きつく締め付ける感じではないがさらしを巻いているように見える。その水着の上におへその辺りを露出させているエプロンドレスのような物を着ているなど珍しいデザインをしていた。確か二人が着ていた水着はクロヴィスがデザインしたらしい。やはりクロヴィスの美術の才は凄いな…。

 

 当のクロヴィスは撃たれた傷もあって本調子ではなく、政庁で待機している。そもそも総督・副総督が同時に政庁を空けるだけでも何かあった際には問題があるというのに、次に力のある副総督補佐まで空けるとなるとさすがに不味いので居なければいけないのだが。

 

 副総督補佐なら私もだが私はこの前のシミュレーションでコーネリアに勝ったから必然的にクロヴィスが残る事になった。あのシミュレーションでオデュッセウスはコーネリアに三つの条件を飲ませた。ひとつはユフィが選んだ水着を着る事。ふたつ目は今回の完成式に自分も非公式に参加する事だ。完成式に参加したのは自分が楽しむ事よりも今まで戦い続きだったイレギュラーズの面々に休ませる口実を作りたかったからだ。ここのプール施設は完成直後に体験させてもらって、凄く良いものだと分かっているからこそ彼女達にも楽しんで欲しかった。

 

 ……流れるプールで力を抜いて水面に顔を付けて流れていたら大騒ぎになったのは反省したが…。

 

 三つ目はキュウシュウの仕込みだがそれは今は置いておこう。そういえば護衛で思い出したのだがコーネリアの護衛で来ていたダールトン将軍がとんでもない事をしようとしていたんだった。今回のコーネリア達が来る事は非公式で客も水着姿で武装のしようがない事から護衛についていたダールトン将軍と騎士のギルフォードも水着姿で居たのだ。

 

 相手が武器を持ってなくとも護衛の立場上武器を携帯したいのは解る。解るのだが……真紅のブリーフ型の海パン前部分に拳銃を仕込むのは駄目だと思うんだ。異様に膨らんだ場所が場所だけに問題過ぎる。公に出る前にギルフォードが注意してくれて本当に良かった…。

 

 白騎士を連れて今回出店した臨時の飲食店『日本風 出張海の家』に戻ってきた。プール施設の完成式と言う事で招待状を送って通常時より多いと予測され、飲食店は本日に限って臨時に増やされたのだ。それに紛れてオデュッセウスも店を出したと言う訳で、結果は客数ゼロというものに。内装もメニューも前世で行った海の家を完璧なほど再現したというのに何が問題なのだろう。店内には護衛兼店員でアリスにサンチア、マオと男性なら目を惹かれる可愛い美少女二人に綺麗なお姉さんが水着姿(上にエプロン装備)で居るというのに。ちなみに交代制でルクレティアとダルクは休憩中である。

 

 まぁ、店自体は道楽でやってみたかっただけなので客が来ないのは良いのだが、納得は出来ずにいる。

 

 「殿k…コホン。店長、お帰りなさい」

 「ああ、戻ったよ。おっとお客様が来ていたのかい?急いで用意をするとしよう」

 

 店の中に入るとフレア・ビキニ姿のアリスが出迎えてくれた。ちなみにサンチアは紐を前で交差させ、後ろで結んだクロス・ホルター・ビキニで、マオはトップはビキニだがボトムがショーツパンツのボーイレッグである。

 

 少し出ていた間にお客が入っていたらしく少し慌ててキッチンへと向かおうとすると見覚えのある面々と目が合った。皆が皆、目をぱちくりして見ている。多分私も同じ顔をしているだろう。

 

 「で、殿kむぐう!?」

 

 一番に叫ぼうとしたスザク君の口を押さえて続きの言葉を言わないようにジェスチャーで伝える。コクコクと頷いた事を確認して手をゆっくり離した。

 

 「どうして殿―――えーとなんとお呼びすれば」

 「とりあえずオデュと呼んでくれるかな。皆にもそう呼んでもらっているし」

 「で、オデュさんは何でここに?」

 「………あ、遊びに?」

 

 思わず適当な理由を言っちゃったけど皆の視線が痛いです。特にルルーシュとミレイちゃんの視線が物凄く痛い。ミレイちゃんは呆れというより諦めという感じかな。

 

 「ひとつ聞きたいんですけど店長って呼ばれたって事はこの店は貴方の店なんですよね?」

 「そうだよ。店の内装からメニューまで全部私が決めた店だよ」

 「なんで海の家なんですか?ブリタニアでメインの洋食でも日本で有名な和食でもなく、海の家を模した店を」

 「いや、だって日本で水辺の飲食店だったら海の家かなと…」

 「日本に詳しかったりするんですね」

 「私は昔から日本が好きだから」

 

 自然に出た言葉にニーナは驚いていたがライとカレンは嬉しそうな表情をしていた。二人とも日本人とブリタニア人のハーフだがライは日本解放戦線だから日本よりで、カレンにとって日本は取り戻すべき故郷。悪く言われたら怒るだろうが好きだと言われて嬉しかったのだろう。でも、私は日本を蹂躙し、奪ったブリタニア皇族の一人なんだよ…。

 

 二人の笑みにオデュッセウスは心の奥底に罪悪感を感じるが二人はそんな事は考えてなかった。カレンは前にブリタニア人に虐げられている日本人を助けたところを目撃しており、皇子だと分かって調べていくうちにいろいろと日本人の為にも手をまわしている事を知っている。ライは自分で調べたのではなくて仲の良い神楽耶と食事を一緒に誘われた際に話に上がった事があり、話すときの神楽耶の様子から悪い人間ではないと思っている。

 

 「そういえばまだここが日本と呼ばれていた頃に日本に行ってましたね」

 「いろいろ見てまわったなぁ。スザク君も覚えているだろう?」

 「はい。懐かしいです」

 「あの頃は髭のおっさんと呼んでくれていたのに最近は呼んでくれないね」

 「そ、それはっ…あの時はまだ幼かったですし…」

 「他国の皇子と首相のご子息だからって髭のおっさんは…」 

 「やるねぇ。普通は呼べないって」

 「家で話された日本の友達ってスザクの事だったんだ」

 「なにを話されたんですか!?」

 「……枕投げとかだったかな?」

 「その話は知らないです」

 

 昔話に華を咲かしていると思い出しているスザクにルルーシュにナナリーにミレイ。話を興味深く聞いているカレンにライ、ライラにシャーリーにリヴァルは良いとしてニーナがあまり良い顔していない事に今更気付いた。彼女にとって日本に良い思いは少ないだろう。河口湖のホテルジャックの件もあって嫌なことのほうが多いかもしれない。

 

 「……そう言えば、ニーナさん」

 「はっ、はひ!?」

 「今度政庁に来ないかい?」 

 「はい!………はい?」

 「すまないね突然で。ユフィが君と話したいと言っていたのを思い出してね」

 「ユフィさん?」

 「ユーフェミア皇女殿下の事だよ」

 「皇女殿下が私なんかに!?」

 「実は河口湖の時にユフィもあの現場に居てね。私が立たねば彼女が立っていただろう」

 「そんな…」

 「ユフィは優しすぎるところがあって今でも気にしているんだ。と言っても友達の家に遊びに行くような気軽さで来てくれればいいから」

 「本当に私なんかが行っても良いのでしょうか?」

 

 自分を卑下するような言葉に表情。不安の色も混ざって怖がっている様に見える。ぎゅっと水着の裾を握っている手を優しく両手で掴みながら視線を同じ高さに合わせる。肩がびくりと震えて不安げな視線が私の瞳を捉えた。

 

 「そんなに自分を卑下にするもんじゃないよ」

 「だって何の取り得もないし、両親だって普通で…綺麗じゃないし」

 「ん?綺麗だよ君は」

 「えぇっ!?わ、私がですか?」

 「うん。綺麗だし可愛らしいと私は思うよ。その黄緑色のキャミソールの水着も凄く似合っているよ。それにこの前会った時にも思ったんだけどとても姿勢が綺麗なんだよね。座っているときも猫背にならず背もしゃんと伸ばしているし。他にも――」

 「あの、それ以上は」

 「あ、あれ?」

 

 真っ赤に染まるどころか頭から湯気が出そうなほど照れたニーナに小首を傾げた。自分としては思った事を言ったつもりだったのにまさかそこまで照れるとは。

 

 関心に呆れ、面白がっている視線を店内の全員から浴びて居ても立っても居られずにキッチンに逃げ込む。アリスから注文票を受け取り最近政庁のコックに習った料理を作り始める。

 

 出来たてを運んで貰い美味しい美味しいと食べて貰ったり、ナナリーやライラからは表情で感想を求められたり、ミレイとライ、カレンからは日本での話を頼まれたりと中々楽しい一日となった。

 

 

 

 

 

 

 ……ただ、ライラから私が女の子を口説いていたと語弊のある発言を聞いたコーネリアが執務室に突入してきたのには心底驚いた。誤解を解くのに時間がかかりそうなんだが誰か助けてくれないだろうか…。


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