コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第37話 「大自然の中で」

 枢木 スザクは目が覚めると浜辺に打ち上げられていた。

 記憶にはランスロットが急に行動不能になり、黒の騎士団のナイトメアに囲まれ、話をしないかとゼロに誘われて向かい合って話し、途中でゼロを取り押さえランスロットに戻った。

 そこまでは覚えていたのだがその後の記憶が曖昧だ。

 靄がかかったようなと良く表現されたりするが、そうではなくて完全に無いのだ。映像を編集して最初と最後を繋げたような…。

 少し悩んだがとりあえずは現状をなんとかしなければならない。食料の確保は眼前に広がる森と後ろに広がる海から何とかなるが、飲み水の問題がある。まぁ、森の向こうに滝が見えるからそこでビバーク(緊急事態の野宿)すればいいだろう。

 行う事が決まれば安全を確保しながら滝へ草木を掻き分けて進んだ。あまり距離も離れてなくて移動するのは楽だったがそこで思いがけない者を目にした。

 

 赤い髪を首筋まで伸ばした女の子が全裸で水浴びしていたのだ。

 

 女の子の水浴び――しかも裸体を覗き見してしまったなんて意味ではなく、水浴びしている女の子の後姿がアッシュフォード学園生徒会のカレン・シュタットフェルトに似ていたのだ。

 もちろん他人の空似という可能性もあるだろうが、確認の為に声をかける。

 

 「あの!」

 「え?スザク―――ッ!?」

 

 振り向いた女の子は間違いでもなくカレン本人だった。とっさに身体を隠すように近くの岩場に置いていた服を手に取る。黒一色の見覚えのある服―――黒の騎士団の団員服!

 

 「その服は黒の騎士団の――本当に君なのか…」

 「うおおおおおお!」

 

 信じきれずに呆然としつつ疑問を口にするとカレンは服を持ったまま大声を上げて突っ込んで来た。近付いた瞬間、服からナイフが仕込んであったポーチを握り締めていた右腕が現れ、焦る事無く右手首を掴み、足を引っ掛けて一回転させる。何の抵抗も出来ずにグルンと一回転したカレンの両手首を押さえ、足首の上に足首を押し当てて身動きをとれなくした。

 

 「カレン!カレン・シュタットフェルト!君は――」

 「そんな名前で呼ぶな!私は紅月 カレンよ。日本人の!!」

 「じゃあ本当に…」

 「私は黒の騎士団。今更隠す気はない」

 

 学園で見た控えめで大人しい印象とは打って変わって、憎らしそうに睨みを利かせてくる彼女にスザクは職務を全うしようとした。

 

 「では、紅月 カレン。君を拘束する。容疑は―――え?」

 

 そう…。

 しようとしたのだ。がさがさと音を立てて茂みからオデュッセウスが出てこなければ…。

 現れたオデュッセウスはスザクと押さえつけられているカレンを見て動揺を隠せていなかった。スザクだって心の中では動揺している。まさか学園の友人が黒の騎士団だったのだから。カレンもオデュッセウスと会っている事から同じだと――思ってしまった。

 

 「ま、まさか……スザク君…裸の女の子を押し倒して何をしてるんだい」

 「へ?――!!違います殿下!これは―」

 「退け!!」

 「しまっ―」

 

 傍から見れば自分が押し倒しているように見えることをオデュッセウスの言葉で理解したスザクは先程より動揺して力を緩めてしまった。その隙をついてカレンがスザクを押し返し、一気にオデュッセウスへと駆け出す。

 

 「こうなったら!」

 「クッ!殿下!お逃げください!!」

 

 叫んだがカレンはすぐそこまで迫っており、追いつこうにも距離を離されすぎた。

 右手のナイフではなく、左手を襟首へと伸ばしたことから人質にしようというのだろう。人質にとられたらもはや打つ手は限りなくなくなる。

 

 焦りと後悔が押し寄せるスザクの前でオデュッセウスは難なくカレンの左手首を掴んだ。

 

 次に右手首を掴み、尻餅でも着くかのように腰を落とした。引っ張られるように前かがみになったカレンの腹部に右足を当てて、浮かすように蹴り上げた。前に倒れそうだったのもあってそのまま柔道の巴投げのように投げ飛ばした。

 

 「うわっ!?――痛っ!!」

 「おあ!す、すまない!だいじょう――ぶそうではないね…」

 

 投げ飛ばされたカレンはそのまま森の茂みの中へと消えていった。驚きつつも殿下を守ろうと駆けると謝りながら無防備に茂みに近付いていた。駆けつけたスザクはオデュッセウスを守るように前に出ると四つん這いで腰を押さえて悶えているカレンが…。

 近くには丈夫そうな木が生えており、どうやらそこで腰をぶつけたらしい。

 スザクは殿下が無事な事に安心しながらカレンを拘束するのであった。

 

 

 

 

 

 

 カレン・シュタットフェルト―――紅月 カレンは海辺の岩場で休んでいた。

 日差しは暑いが足元は海水につけているから熱すぎもしないから良いのだけれど腰の痛みだけはどうしようもない。だけど窮屈な拘束から手が開放されたことは良かった。

 海水で濡れた灰色の皇族のコートを折り畳んだものを腰のクッションにしている為か痛みが微妙に安らいでいる。本当は氷などで冷やしたほうが効くらしいがここでは手に入らない。氷以前に食料の問題も――。

 

 「おお!獲れたよ!」

 

 ――食料の問題はなくなったかな。

 ズボンを膝まで、袖を肘まで捲くったオデュッセウスが魚を両手掴みで掲げていた。嬉しそうに笑っているが高価そうなシャツもズボンもびしょびしょで、髪は乱れて皇族の威厳や気品なんてものは見当たらなかった。今までのイメージから威厳なんて皆無だったが…。

 

 投げ飛ばされた後、パイロットスーツに着替えると頭を地面に擦り付けるほどの土下座した神聖ブリタニア帝国第一皇子を目にした。こんな光景を目にしたのは多分、後にも先にも私だけだろう。

 

 開口一番は謝罪だった。

 主に女性に手を出した事と嫁入り前の女性の裸を見たことに対して謝っていた。

 襲い掛かったのはこっちだっていうのに。それとあそこまで照れて言われるとこっちが恥かしいのだけど…。

 

 「カニがいたよ」

 

 魚を置きに岩場まで戻ってきたオデュッセウスは足元にいたカニを獲ると、浜辺で拾ったボウル状に丸めた鉄板の中に入れた。陸地に上がるとこちらに気付いてゆっくりと近付いてくる。

 

 「そろそろ交換するね。腰を浮かしてくれるかな?」

 「ええ。ありがと」

 「いや…本当にすまない」

 

 腰に引いていたコートを取ると海水で濡らし、再び腰の下へと置いてくれた。同時に森の方からがさごそと草木を掻き分ける音が聞こえ振り向くと、手ごろなサイズに切り出した木とナイフを持ったスザクだった。

 本来なら皇族であるオデュッセウスは安全が確保された所で待機し、自分は拘束されたままで、軍人であるスザクが全てをこなすのが普通だと思うのだが『魚を獲ってくるから器に出来そうな木か果物を頼むよ』と言って自ら海に飛び込むかな。

 

 「お帰りスザク君。良いのあったかい?」

 「はい。しっかり渇いた薪用の枝に食器用の木も」

 「なら料理頑張らないとね。――と、食材が足りないかな?もう少し獲ってくるよ」

 「ああ、殿下!自分が…」

 「良いの。良いの。こういう事は普段出来ないから」

 

 微笑みながら海に向かって行くオデュッセウスに苦笑いを浮かべているとスザクは本当に困った顔をしていた。なんだか可笑しくなる。

 

 「大変ねぇ。世間知らずの皇女様のお世話に第一皇子様のお守りまで」

 「あー…うん。でも結構なれているからね」

 「皮肉だったのに普通に返すんだ」

 「君もやるかい?」

 

 そう言って渡されたのは器用と言っていた木の塊と没収されたナイフを仕込んだポーチを渡された。目を見開いて渡されたものを確認して、スザクの表情を確めるがすでに自分のナイフで木を掘り始めていた。

 

 「良いの?私に武器渡しても」

 「今の君には何も出来なさそうだから」

 「確かにそうだけど」

 「それに緊急時に敵対しても……ね」

 「今度は上手くいくかもよ?」

 「やれるかい?」

 「……無理ね」

 

 ナイフを持った相手に動揺しながらでも咄嗟にあれだけの対応をこなしたのだ。腰を痛めた状態で挑んでも返り討ちなのは目に見えている。それに注意していないようで警戒されている。皇子本人がではなく、スザクが。本人は…思いっきり無防備なのは如何なものか。

 大きくため息を吐いてナイフで削り始める。

 黙々と作業していると何となく二人とも気まずくなり、ばしゃばしゃと音を立てているオデュッセウスへ目を向けると、飛んで来た鳥に魚を奪われてわたわたと追い掛けて転んでいた。

 

 「昔と変わらないな」

 「昔からあんな感じだったの?」

 「まぁ…ね。いや、昔のほうが凄かったかな」

 「アレ以上にって周りの人はさぞ大変だったでしょうね」

 「ノネットさんも近しい感じだったから大変そうではなかったけど」

 「そう。――って、誰?」

 「ナイト・オブ・ナインのノネット・エニアグラム卿。エリア11が日本だった頃は殿下の騎士だったんだよ」

 「ラウンズが騎士だったの?」 

 「実力が知れ渡ってから皇帝陛下の騎士のひとりになったけれどね」

 「じゃあ、今の騎士は?」

 「う~ん、それが分からないんだよね。素性も性別も一切秘密にされているから」

 

 ふ~んと相槌を打ちながら話をしていると微かな音が聞こえた。何かが爆発した音と水しぶきが上がったような音の二つが。助けが来たのかと期待を抱きながらキョロキョロと辺りを見渡すが自分達以外誰も見えなかった。見渡している動作でスザクは何かあるのかと辺りを警戒するが気配一つせずに首を傾げる。

 

 「君のお迎えかい?」

 「かと思ったんだけど…さっきの聞こえなかった?」 

 「さっきの?」

 「爆発音みたいな」

 「いや、僕には聞こえなかった」

 「勘違いかな…」

 

 期待しただけに何でも無かったと知ると肩をおとしてしまうがどこかホッとしている。

 黒の騎士団の大半はブリタニア人に強い恨みを持っている。もしブリタニア人を捕虜として捕らえたらどんな目に遭わせるか分からない。相手がブリタニア至上主義者なら多少はそんな目に遭っていても何も言わないが、『エリア11』や『イレブン』じゃなくて『日本』・『日本人』と今でも呼び、差別なく接するオデュッセウスをそんな目に遭わせたくない。

 心の何処かで思っていた想いに多少驚きつつ、納得した。

 そのオデュッセウスに目を向けると海から何かを引き上げていた。

 何かをというのがオデュッセウスで姿の一部しか見えないのと距離が大分離れていた事が理由だ。しかし、隠れているとしてもかなりの大物だ。気付いたスザクが『おお!』と声を漏らしていた。

 

 「―――――!!」

 

 引き上げたものを両手で持ち上げながら遠くから大声で何かを叫んでいるが、距離と波の音で耳に届く頃には雑音に変わってしまっていた。スザクが立ち上がってなるべく海に近付く。

 

 「どうなされましたか?」

 「―――――!!」

 

 スザクが大声で叫ぶが向こうもこちらも伝わりきっていない。

 が、身体ごと振り返ったオデュッセウスを見て理解した。彼の腕の中には黒の騎士団の団服を着た白髪の少年が眠っていた。

 

 「「ライ!?」」

 

 見知っている顔を目撃した二人は叫び、スザクは大慌てで海に飛び込み、カレンは不安げな顔でライを見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 ぼんやりとぼやけた木々が溢れる森の中で奴に会った。

 多少癖のある髪に中性的な少年。見た目は少し年下で服装から一般人だろう。表情と場所を考慮しなければだが。

 今いる森は式根島の近くに位置する神根島。ここは観光名所でも一般人が自由に出入りできる場所ではない。移住している人間がいないどころかこの島へ向かう船はブリタニアによって数少ない自然保護の為と止められている。

 来る事が不可能ではないとしても一般人では来ることが難しいところに一般人――しかも少年がたったひとり立っているのだ。しかも何の感情も込められていない無機質な表情でこちらを見つめるだけで何の反応も見せない。

 

 『ヤバイ』

 

 自身の勘があの少年は危険だと警告してきた。慌てて腰に提げてあった拳銃に手を伸ばすと少年はニヤッと嗤った。背筋が凍りつくような感覚から拳銃から手榴弾へと変えて投げた。ナイフを取り出し一歩踏み出そうとした少年にはこの行動は予想外のものだったらしく苦い顔をしながら茂みの中へと飛び退いた。

 あの少年を退かせる事には成功したが自身の投げた手榴弾への対応が遅れてしまった。爆発には巻き込まれなかったが爆風によって吹き飛ばされ、僕――ライは海面に落ちる光景を見つつ意識を失った。

 

 

 

 ゆっくりと意識を取り戻したライは付近に人の気配がすることからすぐには起きずに辺りの様子を窺う。

 声から三人は居る事が分かりながら薄目を開けて顔を動かさない程度に辺りを窺う。空は暗く月が昇っていた事から夜まで気絶していた事を理解する。他には背中から感じる温かみとパチパチと何かが散る音からすぐ近くで焚き火を行なっている。

 辺りの様子は最低限だが理解し、今度は声に集中する。聞き覚えがあろうがなかろうが話などでどういった相手なのかは分かる。始めから内容から推測しようと思っていたのだが、声で誰がいるのかすぐに判明した。ひとりは自分と同じ黒の騎士団に所属しているカレンだ。ライはゼロとカレンを探す為にC.C.が居ると教えてくれた神根島に来ていたのだ。探し人の一人と会えて無事が確認できたことは喜ばしい。喜ばしいことなのだが残りの二人が問題だった。

 片方はアッシュフォード学園に通って、仲良くしてくれているスザク。そしてもうひとりは二度ほどだが直に会った事のあるオデュッセウス・ウ・ブリタニア。両者とも敵対するブリタニア軍関係者。しかも皇子がひとりでここに居る筈がないし他にも何人も居る事だろう。

 苦虫を噛み潰したような苦々しい表情をしながら、背のほうにいる三人へと耳を澄ます。

 

 「あんた達止めなさいよ!」

 「今更止めるわけにはいかないよ」

 

 優しく微笑みかけながら囁くように話すオデュッセウスがやけに力強く話している事も気になるが、本気で怒鳴っているカレンの声色から何か嫌な予感がする。心を落ち着かせながらもう少し耳を済ませてみようと思う。力を込めた手の感触から自分が縛られてない事を確認しながら。

 

 「この!こっちが動けないからって!」

 「ちょっと暴れないで!スザク君、腕を押さえて」

 「スザクまで!」

 「すまないカレン。殿下の命令だ」

 「待って。それじゃあ私が悪いみたいじゃないか」

 「女の子にこんな事をしているだけでそうでしょうが!!」

 「それとこれは別だよ。さぁて…始めようか」

 「クッ!こ、この…くっぅうん…止め……ん!」

 「声が出たね」

 「本当に止め…んあ!?」

 「ここが弱いんだね」

 「何をしている!!………すまない、本当に何をしている?」

 

 会話から駆り立てられた想像から勢い良く立ち上がりながら怒鳴るが目の前の光景を見て込めた力が一気に抜けた。

 

 灰色のコートの上にカレンがうつ伏せに転び、スザクが暴れるカレンの手を押さえ、地面に両膝をついたオデュッセウスがカレンの腰を親指に力を入れて押していた。

 

 「…マッサージだけど」

 「ま、マッサージ?なんだ…良かった。僕はてっきり―」

 「てっきりなんだい?」

 「な、何でもないです!」

 「え?でも顔が赤いようだk――」

 「恥ずかしいから止めろ!!」

 「はうっ!?」

 「殿下!!」

 

 フリーだった膝がオデュッセウスの下腹部に直撃してその場に倒れた。心配しながら駆け寄るスザクを余所にカレンはムッとした表情で身体を起こして薪に寄る。

 

 「えーと…無事で何より」

 「うん、助けに来てくれたんだ」

 「まぁ、そうなんだけどどういう状況?」

 「いろいろあったのよ。所で聞いた?」

 「なにを?」

 「その…マッサージ中に…挙げた私の声…」

 「・・・・・・聞いてない」

 「何よ今の間は!あー、だから恥ずかしいからやめてっていったのに!!」

 

 頬を膨らませながら大きなため息を吐き出したカレンを見てとりあえず安心した。今後の事については不安だらけだが…。

 痛みが引いたのか起き上がったオデュッセウスは苦笑いをしつつ焚き火で温めていたボウル状の鉄板より汁物を器に入れてまわし始めた。

 

 「彼も起きた事だし食事にしようか」

 「賛成。もうお腹ぺこぺこ」

 「もう夜の九時ですからね」

 「どおりで」

 

 スザクもカレンも器を受け取り、次に自分にも差し出された事に首を傾げる。

 

 「君の分だよ。あ、もしかしてかに苦手?それとも粗かな?」 

 「いいえ、そうじゃなくて……僕が黒の騎士団って分かってますよね?」

 「分かってたよ」 

 「分かってた?」

 「―ッ!!ごめん、間違えた。服装を見て分かったよ」

 「ならば何故拘束もしてないんですか?それにこんなに無用心に…」

 「え…あー…うん。なんでだろうね」

 

 困ったように笑う事から何も考えてなかったようだった。ライは黒の騎士団で同じ勢力ではないが、ブリタニアに仕えているスザクに同情の視線を向けると頭を抱えていた。カレンはすでに器に口をつけて汁を飲んでいた。

 

 「ま、まぁそれは置いておいて、冷めたらもったいないから食べちゃおう。

  あ、これはかにと魚の粗で作ったんだ。口に合うといいが」

 「それと焼き魚もあるよ」

 

 指で示された方向には香ばしい匂いを漂わせた枝で頭から尻尾まで貫かれた七匹の魚が焚き火で焼かれていた。蟹と粗の出汁を味わい、魚を手にとってかぶりつく。全員遭難状態にあるから調味料の類は持っていないのでそのまま焼いただけなのに程よい塩加減で凄く美味しかった。

 喋ることなく黙々と食べていると視線を感じて振り向くと、何か言いたげなスザクと目が合った。しかし、オデュッセウスがいるからなのか話し出すことはしなかった。こちらの視線から察したオデュッセウスは眉をハの字に曲げて口を開いた。

 

 「ライ君にカレンちゃん。少し話したい事があるんだけど良いかな?」

 

 呼ばれて顔を向ける。何の話か分からないが僕もカレンも頷いて続きを待つ。

 

 「二人とも私の所に来ないかい?」

 「なっ!?なにを――」

 「と、いうのは冗談で」

 「なんで冗談を入れたんですか…」

 「私は君たちの活動をとやかく言うつもりは無い。スザク君は力を行使するのではなく内部から変えるべきだと言うだろうけどどちらもメリットもデメリットも大きいからね。

  私が言いたいのは立場上こういう言葉は不味いのだろうがあまり無理をしないようにね。もし怪我でもしたら学園の皆が心配するだろうし、私だって心配する」

 「殿下。それは…」

 「分かっているよ。今、私は黒の騎士団の紅月 カレンとライ君似の黒の騎士団員ではなく、アッシュフォード学園で仲良くなったカレン・シュタットフェルトちゃんとライ君に言ったんだ。

  ああ!それとこのまま君らを捕まえてエリア11に戻ったとしても出来るだけの手段を講じさせてもらうよ。決して悪いようには―」

 「待ってください!もしやまたあの時のようなことは…」

 「大丈夫だよスザク君。シュナイゼルとギネヴィア、コーネリアにお願いして、父上に頼み込むだけだから」

 

 兄と弟・妹の関係だからって神聖ブリタニア帝国の宰相に皇帝代理、エリアの総督にお願いするだけで皇族に手を出したテロリスト集団の二人を何とか出来る立場ってどうなんだ?しかも父上って言ったら皇帝陛下だろう。通るのかそんな話。

 疑問が頭の中で渦巻いているが本気で青ざめているスザクの顔色からとんでもない事をするのを察した。たぶんだが以前にもそのようなことがあったのだろう。

 

 「それと捕まらなかったとしてもアッシュフォード学園まで押しかけることはしないから安心して学園に行くといいよ」

 「…見逃しても監視できるからですか?」

 「いやいや、スザク君は説得したそうだからさ。もし叶うならそのほうが良いと思うし――と、あまり長話していたら冷めちゃうね」

 

 そこで話は終わり、何の会話もなく食事は済んでいった。

 今後の事にはいろいろと不安を抱えることになったがとりあえず明日動けるように今日はゆっくりと身体を休めよう。

 なんかオデュッセウスが夜の見張り役をやりたがっていたのは僕とスザクで阻止した。なんかあの人といると不思議と不安感が薄れていく。それと寝る直前にすごく心が安らいだのはどういう事だろうか?もしかしてギアス――まさかなと疑いを放棄して眠りにつくのであった。


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