コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 今日は前回の投降した物の直しを投稿したのとこの話二話投稿となっております。


第47話 「ブラックリベリオンⅠ」

 トウキョウ租界政庁では嘗て無いほどの危機に襲われていた。

 

 数時間前までこのエリアではブリタニア初のナンバーズを一部地域ではあるが認める試みが行なわれていた。賛成派のイレブンは自分たちが元の日本人として生活できる事を喜び、反ブリタニア勢力にとっては限定地域とは言え日本を認める事態に無視は出来なかった。

 逆にブリタニアではナンバーズを認めるなどと批判が相次いだが、参加・不参加を問わずに反ブリタニア勢力のほとんどの力を削げると宰相であるシュナイゼル殿下の太鼓判もあって反対するものは居なかった。そもそもコーネリアは渋々とはいえエリア11に集まる皇族七名の承認を得て、皇帝陛下の反対もなかった事案をブリタニアの誰が反対できると言うのか。

 すでにダールトンとバトレー両将軍に反ブリタニア勢力と関わりを持っていたブリタニア貴族の排除。そして反ブリタニアの支援組織の首根っこを掴む事に成功。どちらにしろエリア11で最大の反ブリタニア組織である黒の騎士団は詰んだ。

 

 これにてエリア11の反ブリタニア勢力は沈黙し、衛星エリアへと昇格。コーネリア皇女殿下は自軍を率いて戦場に戻り、ユーフェミア皇女殿下が新総督として着任――――――する筈だった。

 

 「黒の騎士団は一般民衆を吸収しながらこちらに向けて進軍中!」

 「各地のテロリスト達やブリタニア軍の名誉ブリタニア兵の中からも合流している者が相次ぎ、一般民衆も加えた敵の兵力は数万を超えるかと…」

 「すでに租界までの防衛ラインが突破されつつあります!このままではここも…」

 「うろたえるな!!」

 

 迫る敵にうろたえる将校達にギルフォードが一喝して黙らせる。

 このような事態に陥ってギルフォードも内心焦っていたが、姫様の騎士として醜態を晒すわけにはいかないと自身を律していたが、内心は困惑していた。

 成功する筈の行政特区日本は大失敗した。理由は式典会場内での発砲事件がきっかけだった。ゼロとユーフェミア、オデュッセウスが式典会場からG1ベースに移って席を外していた時にひとりのブリタニア将校が壇上に上がり「皇族からの命である。イレブンを皆殺しにせよ!」と発すると同時に集まったイレブンを射殺したのだ。会場を警護していたナイトメア隊に警備に当たっていた歩兵部隊の大半が呼応して会場は多くの血で染まった…。

 会談を行なっていたゼロは近くに伏していた黒の騎士団で式典会場を短時間で制圧。報道機材と丸々残っていた映像データを使って式典事態がブリタニアが日本人をはめる為の罠だと全国に流したのだ。

 結果、エリア11各地で暴動が発生。反ブリタニア勢力は各地で暴動を扇動するか、黒の騎士団に合流をし始め、今やエリア11のブリタニア軍と真っ向から戦えるだけの数を誇っている。しかもこの事態に中華連邦が動き、艦隊を集結しているとの連絡を本国から受けた。外交ルートでシュナイゼル殿下、艦隊牽制でカリーヌ皇女殿下が動いていて、牽制艦隊のナイトメア部隊にはノネット・エニアグラム卿にアーニャ・アールストレイム卿、ジノ・ヴァインベルグ卿などオデュッセウス殿下と縁のあるナイト・オブ・ラウンズが合流しているらしい。

 中華連邦以外の諸外国の動向に他の植民地エリアの監視や牽制などで本国からの援軍は早くても二日は掛かるとの事。現状の戦力で二日も耐え切るのは五分五分と言ったところであるが、上手く行けばキュウシュウブロックから援軍が期待できる。キュウシュウブロックはキュウシュウ戦役で反ブリタニア勢力は少なく、暴動鎮圧はキュウシュウブロック守備隊にユリシーズ騎士団が行なっている為にすでに40%ほどの鎮圧に成功したと言う。ブロックの鎮圧が終了次第アヴァロン級二番艦のペーネロペーで租界に精鋭部隊を送り、最低限の防衛兵力以外の部隊でキュウシュウブロックから租界方面へと制圧作戦を開始すると打電もあった。キュウシュウブロックからの援軍と共に持ち堪えたならば、二日後にはマリーベル皇女殿下指揮の本国からの増援が到着する。マリーベル皇女殿下は騎士団を持ってないため、オデュッセウス殿下よりトロイ騎士団とテーレマコス騎士団を預かるそうだ。

 

 ただ現状で耐え切るにはコーネリア皇女殿下の存在が必要不可欠であるが……ギルフォード達が居る政庁作戦司令室に姿を見せていなかった。

 

 式典に出席していたオデュッセウス殿下はイタケー騎士団と白騎士によって間一髪で脱出し、アヴァロンにてトウキョウ租界に向けて移動中。ユーフェミア皇女殿下は護衛を伴って護送車でその場を離れたのだが、こちらに向かう道中で護送車はナイトメアに襲撃され、護衛に当たっていた兵士より死亡が確認された。遺体を持ち帰ろうともしたらしいのだが火の回りが激しく回収は不可能。せめてと破れ散った血の付いたドレスの一部を持って、トウキョウ租界へと撤退中のダールトン将軍と合流したのだ。

 ユーフェミア皇女殿下の死を耳にしたコーネリア皇女殿下は真相を確める間もなく、ユーフェミア皇女殿下の私室に篭っている。姫様の命令もなしに部隊を動かすことは出来ないとギルフォードもダールトンも現状待機のまま命令を出せず、ここに集まる皇族達も独自の兵力を持つが圧倒的に足りなさ過ぎて動きたくても動けない。

 

 「しかしこのままでは陥ちるだけです!一度エリアを捨てて――」

 「敵を目の前に自ら背を見せると言うのか?」

 「コーネリア様!」

 

 一喝してもまだ不安げな将校が口を開くと同時に扉が開け放たれ、凛とした表情のコーネリアが立っていた。

 着席していた一同が立ち上がり指示を待つ。クロヴィス殿下を始めとする皇族の方々も立ち上がり顔を向ける。中でもパラックス殿下の歪んだ笑みは異質を放ち、対照的にキャスタール殿下の不安げな表情はコーネリア皇女殿下の目に止まる。

 

 「脅えた顔をするな。パラックスのようにとは言わんが堂々としていろ」

 「は、はい、姉上…」

 「ダールトン。トウキョウ租界防衛の指揮を任せる。ギルフォードとパラックスは私と共に来てもらう」

 「「イエス・ユア・ハイネス」」

 「やった。いっぱい殺せるかなぁ」

 「キャスタールとクロヴィスは政庁の守りだ」

 「了解しました姉上」

 「ボクは出撃しなくて良いんだ。良かった…」

 

 それぞれの返答と反応を見て小さく頷いたコーネリア皇女殿下は出入り口へ向かって歩き出す。それに続いてパラックスとギルフォードが追従する。力強く、凛としたいつもの姫様に疑問を覚えながら…。

 

 

 

 

 

 

 トウキョウ租界 外延部

 租界を覆うように高い壁は黒の騎士団から見れば難攻不落の要塞のように見えるだろう。壁には防衛用の武装こそ施されてないものの、壁にはトウキョウ租界に留まっていた主戦力が今か今かと待ち構えていた。下から攻めなければならない黒の騎士団は高低差から攻めにくく、ブリタニア軍からの高所からの銃撃を浴びる事になる。空中戦力であるナイトメアフレームのガウェインがいるが、たった一機で攻めた所で集中砲火を浴びるだけで大した手は打てないだろう。

 停止した黒の騎士団の先頭に居るガウェインに対峙する様にコーネリアのグロースターと、パラックスのエクウスが構えていた。

 

 『まだ始まんないのコーネリア姉様?』

 「逸るな。まだ時間まで5分ほどある」

 『5分と言わずに今すぐ叩き潰したいよ。それはコーネリア姉様も一緒でしょ?』

 「あ、あぁ…そうだな」

 

 パラックスの言葉に少し考えながら答えてしまった為に曖昧な返答になってしまったが戦いたいという気持ちはある。ゼロにはいろいろやられてきたが、ナリタでのナイトメア戦の借りを返さなければ気が治まらない。

 周りが思っているようなユフィの仇という感情は存在しない。何故ならユフィが生きている事を知っているからだ。

 

 

 

 行政特区日本でブリタニア兵が虐殺行為を行い、黒の騎士団によって攻め落とされた報告を受けて撤退中のコーネリアは一本の連絡を受けたのだ。それは軍の連絡網ではなく、盗聴防止を施した自身の携帯にであった。この携帯の存在を知っているのはユフィを除けばオデュッセウスだけの一部の緊急用である。

 

 「兄上!?それともユフィか!?」

 『私だよコーネリア』

 「ご無事なのですか?お怪我は?」

 『大丈夫だよ。何処も怪我はしてないよ』

 「それは本当に良かった」

 

 画面に表示された名前を確認する事無く電話に出ると聞きなれた兄上の声に安堵した。兄上がご無事だという事はユフィも同様に無事だろうと安堵の息を漏らした。

 

 『ところで今は政庁の指令室かい?』

 「いえ、式典会場に向かうナイトメアに乗って移動している最中ですが…」

 『それなら好都合だね。無線もオフにしているね?』

 「えぇ…しておりますが何かあったのですか?」

 

 何時になく真面目な口調に途惑いながら通信機がオフになっているかを確認し、作動していた物はオフにしていった。一通り確認し終えたら再び携帯に耳を傾ける。

 

 『今から言う事を他言無用で聞いて欲しい。私はユフィと一緒にいる。勿論無事だよ―――だからユフィには死んでもらう』

 「ッ!?なにを言っておられるのか兄上!ユフィを殺すなんて―」

 『すまない。私もいろいろ切羽詰っていてね。言葉が足りなかった。表向きには死んでもらう』

 「表向きとはどういうことですか?」

 『ユフィが発案した特区日本で大虐殺が起こっただろう。日本人は騙し討ちをかけたブリタニアを――特に発案者であるユフィに憎しみが向かっている』

 「しかしそれはユフィが命じた事では―」

 『命じてなくても虐殺はユフィ提案の特区で起こった。現に黒の騎士団は特区が罠だと放送している。黒の騎士団を倒す事が出来ても恨みを持つ者から命を狙われ続けるだろう。しかも日本人だけでなくブリタニア至上主義を掲げる連中はナンバーズを認める思想を嫌ってそちらも警戒せねばならないとなると守り抜くのは難しい』

 「だから公式では死んだ事にすると言うのですね」

 

 確かに政庁から送られた映像には黒の騎士団の報道は特区は罠と繰り返していた。短期間で日本人を警戒するのであればコーネリアが兵を動かせば守りきれるだろう。しかし、ユフィの残り長い人生を日本人は勿論、ブリタニア内部からも守るというのは不可能。ならばいっその事、死んだことにすれば命が狙われることはない。その真実を徹底的に隠蔽しなければならないが。

 理屈は理解した。納得も得心もしよう。けれどそれはユフィとの接触が出来ないという事。一般人として潜んで暮していたとしてそこにコーネリアが頻繁に通っていたら嫌でもばれる。

 

 「……兄上…ユフィを…頼みます」

 

 二度と会えなくなるような選択を最後に後押ししたのは会えなくなる事より、ユフィが生きていてくれれば良いと心から思ったからだ。

 喉から出てくる言葉が詰りそうになりながらも言い終わるとオデュッセウスは短く息を漏らした。

 

 『では死んだように見せかける作業も後のことも任せておいてくれ。かならずユフィには生きてもらうから。それとユフィが死亡した連絡を受けたら一時間はユフィの私室から出てこないほうが良い。君がユフィを溺愛していたのは近くに居た人間は知っているだろうから、最愛の妹が死んで放心状態に陥っていると演技したほうが説得力もあると思うから』

 

 

 

 そう言われて30分ほどダールトンよりユフィが亡くなったと報告を受け、言われた通り私室に篭ってからこの租界外延部に立っている。

 

 「皆、聞こえるか。

  私はコーネリア・リ・ブリタニアである。

  これより我が軍は正面より黒の騎士団との戦闘を開始する。数はあちらが多いが臆するな!向こうの数のほとんどが取り込んだ一般民衆や素人同然のテロリストである。装備も物資も技量も勝り、陣地を押さえている我らが負ける筈がない!

  それにこれは弔い合戦である。万が一にも我々が負ける訳にはいかない!各員奮起しブリタニアの敵を排除せよ!!」

 

 一人一人の叫びが木霊し、周りを揺らすような声が響き渡る。ブリタニアに忠誠を捧げる者達の士気も上がり、コーネリアは負ける気がしなかった。後は黒の騎士団のリーダーであるゼロと一騎打ちをしてナリタでの借りを返したいのだが、この戦況では叶わないかもしれない。

 

 『コーネリア!聞こえるかいコーネリア!』

 「兄上!?」

 

 どうにかしてゼロとの一騎打ちが出来ないか思案していると無線を通してオデュッセウスの声が耳に入った。確か政庁に到着するまでアヴァロンで用意された個室に篭るとか言っていた筈だが…。

 声色からして焦っている様子が窺えて疑問を覚える。

 

 『早くその場から引くんだ!』

 「なにを仰っているのですか!?幾ら兄上の言葉でもそれだけは聞けません!ここから引くという事は敵にみすみす背を向けるという事。そんな事を――」

 『引くのは恥ではないし、そこに居ては君が危ない!』

 「―――どういう意味です?」

 『今、トウキョウ租界の正規軍は租界外延部に集まっている。その足元が崩れ去ればほぼ全滅に近い被害が出るんだ!』

 「兄上……このエリア11は地震が多発する為に――――ッ!!総員退避!!外延部から後退せよ!!」

 

 元々日本は地震が多発する国であり、エリア11となって租界では地震対策が取られた。人工地盤で租界の地盤を覆い、階層的な階層構造にして地震の揺れを受け流すように出来ている。 

 そこで気がついた。人工地盤を操作する部署が地下深くに多数あり、そこの端末を使えば今正規軍が構えている所だけをパージして総崩れにすることが出来る。しかしそんな事をすれば部署も潰れるようになっており、自身の命を捨てる覚悟がなければ出来ないはずだ。だが、相手はあのゼロだ。やりかねない手だし、先ほどオデュッセウス兄上も足元が崩れればと言った。間違いないと判断して跳び下りた。咄嗟に反応できた何機かが同じく跳び下りるが、大多数が反応できないまま崩れ去る足場に埋もれていった。

 自由落下を始めだすと同時に手近な建築物にスラッシュハーケンを撃ち込み、速度を殺しながら着地する。振り返ると至る所に潰れた機体や何処かしら破損している機体が目に映る。

 苦々しく舌打ちをしながらさっと頭を切り替える。

 

 「全軍政庁まで後退せよ!」

 

 動ける機体は指示を受けて政庁までの後退を開始した。自身も行こうとすると目の前で跪いて動かないサザーランドが目の映った。近付いて肩を掴み、無線を繋げる。

 

 「どうした?動けないならコクピットブロックだけでも」

 『どうか自分に構わずコーネリア様は政庁へ――』

 『コーネリアを確認した。囲め!』

 『くぅうう!!』

 

 外延部が崩壊した事で黒の騎士団が突入を開始し、コーネリアの背後には藤堂操る黒い月下が斬りかかって来た。完全に隙を突かれたコーネリアは振り返る事しか出来なかったが、膝をついていたサザーランドが押し退けて自ら前に出ることでコーネリアを庇ったのだ。

 

 『覚悟!!』

 「藤堂!この亡霊が!!」

 

 二撃目を後ろに飛び退く事で回避し、後方から味方のサザーランドが射撃を開始した。一時的にでも足を止めさせられた藤堂に一機のグロースターが突っ込んで行った。最大加速からの大型ランスの一撃を放つが、上に跳ねて避けられる。

 

 『姫様!ここは私にお任せを!!』

 「ギルフォード!?」

 『今のうちに政庁へ』

 「この私に部下を置いて逃げろというのか!!」

 『姫様は生きねばなりません!ユーフェミア様のためにも!!』

 

 藤堂の刀とランスで交えているギルフォードの言葉に反応した瞬間、コクピットが大きく揺れた。何事かと左右のモニターも確認するとグロースターを抱えているエクウスの姿が。

 

 「なにをするかパラックス!」

 『ここで無理に戦っても死ぬだけ。それじゃあ兄上が悲しむからね』

 「放せ!ここで引くなど貴様らしくないだろう!?」

 『出来れば戦いたいところだけどさっきの崩落の時に前足の片方に違和感があってね』

 『パラックス殿下。姫様を頼みます――私は姫様に選ばれた姫様を守る為の騎士!ならばここは私こそが!!』

 

 大型ランスを投げ捨てて、ランスロットが装備していたMVSを鞘より抜き放ち構える。藤堂と距離を空けて対峙する姿に短く息を吐き、力強い瞳を向けながら口を開いた。

 

 「解った…命令だ。必ず生きて帰って来い。我が騎士ギルフォード」

 『イエス・ユア・ハイネス』

 

 堂々とした返事を耳にしながら馬に跨るようにエクウスに乗り政庁へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 アヴァロンから政庁に移ったオデュッセウスは急ぎ司令室に向かった。扉を開け放つと中にはクロヴィスにキャスタール、ダールトンの姿があった。動いていた兵士達は一旦足を止めて敬礼をするが、政庁入り口から駆けてきた為に息が上がり、返事が出来なかったのはすまないと思う。

 

 「だ、大丈夫ですか兄上?」

 「あ、あぁ…わた…コホッ…私は…大丈夫」

 「全然大丈夫そうには見えませんが」

 「殿下。お水を」

 「あ、ありがとう…」

 

 渡された水を一気に飲み干すと少し落ち着きを取り戻し、深呼吸を繰り返して息を整える。すると後から追いかけてきていた白騎士も追いつき司令室に入ってきた。

 完全に息が整った事で大型モニターに映し出される戦況を見て不安が募る。アヴァロンで悲しみで部屋に篭っているように見せる為にただただ部屋に篭っていたのだけれども、原作の第一次東京決戦を思い出して急ぎコーネリアに連絡を入れたのだが、間に合ったのかどうかも分からず連絡も取れない。映し出される外延部の映像では原作通り崩壊していた。

 

 「戦況はどうなっている?コーネリアは?」

 「落ち着いてください殿下。姫様はパラックス殿下と共に政庁へと後退中であります。現在はグラストンナイツとギルフォード卿が殿を務めて、敵を抑えているところです」

 「パラックスも前線に出ていたのか…」

 「はい。しかし崩落の際に片足が損傷してしまったようで」

 「二人が無事なら良かったよ。クロヴィスとキャスは政庁の守りを任せられたのかい?」

 「ええ…そうなのですが」

 

 どこか不安げなクロヴィスに疑問を覚えながらある事に気がついた。 

 クロヴィスの実の妹であるライラが居ない。

 まぁ、ここは司令室である事から騎士団も持たない彼女がここに居ないことは普通なのかも知れない。政庁のどこかで待機している可能性が高い筈だが、こんな状況下でクロヴィスが近くに置かないことはないだろう。

 

 「クロヴィス…ライラは何処に居るんだい?」

 「それがまだアッシュフォード学園に」

 「ッ!!部隊は向けたのかい?」

 「現状戦線が崩壊し、再編成中で他に回せる兵員は居ません。それどころか足りないぐらいなのです」

 「クロヴィスの親衛隊は?」

 「私の親衛隊は兄上の部隊と違ってナイトメア戦を想定したものではなく、身辺警護を主体に考えて構成したもの。ナイトメアも二個小隊ほどしか」

 「これから戦場になる政庁の守りには一機でも多く居るところ。まさか黒の騎士団が学園エリアを襲うことはありますまい。あそこには軍事的メリットはありませんし」

 

 ダールトンの言葉にオデュッセウスは焦りを隠せない。何故なら黒の騎士団はゼロであるルルーシュがナナリーを守らせようと騎士団に占拠させるからだ。この事を知っているのは原作知識を持っているオデュッセウスのみ。

 

 「万が一という事もある。私が迎えに…」

 「それはなりません。万が一というならば殿下はここでお待ち下さい」

 「だけど」

 「では、殿下はどうやって学園地区まで行く気ですか?」

 「それは私のナイトメアで………あ!」

 

 そこまで言って思い出した。私のナイトメアはペーネロペーで改修中。機体を借りようにも足りない状況では借りるのも無理だろう。こんな事になるなら回収はロロの分だけで自分のは残しておけばよかったと後悔する。

 なにか…なにか使えるナイトメアがあれば…。

 

 「いや、あるじゃないかナイトメア」

 「なにを言ってるのですか。殿下のナイトメアはペーネロペーに…」

 「そうじゃなくて移送前の機体があるだろう」

 「――ッ!確かに殿下なら扱えるかも知れませんが機体があれば良いと言う訳ではありません!殿下が動くなら護衛部隊を用意しなければなりません。私は兎も角、特区日本で戦闘をしていたイタケー騎士団のほとんどの機体は点検・修理・補給が必要ですぐには動けませんよ」

 「なら時間が掛かる機体は政庁防衛に回して、代わりにクロヴィスの親衛隊のナイトメア一個小隊を借りれば良いだろう?」 

 「兄上…行って下さるのですか。どうかライラを頼みます」

 「ああ、勿論だとも。これで問題はないね白騎士」

 

 自信満々の顔で白騎士を見つめるオデュッセウスに、白騎士は大きくため息を吐いて頭痛のする頭を押さえる。 

 

 「仕方ありませんね。お供いたします殿下」

 「では、行こうか!」


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