コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第05話 「仕事を任せてみようと思う」

 幸せだ。

 

 私は幸福を噛み締めていた。産休と言う名の監視付き休暇から復帰したマリアンヌ様の訓練と、父上様から送られる書類の山に以前の私であれば不平不満を抱きつつ精神疲労していただろうが、今はどんな厄介事を押し付けられても苦もなくこなしてみせる自信がある。

 

 ルルーシュが産まれてから二年が経った。四つん這いでハイハイする所や初めて歩いた瞬間など、毎日様子を見に行っては成長の一シーンを目撃して感動し癒されて自室で眠る生活。

 

 最高だ。最高に幸せだ。この二年でルルーシュ以外にも新たな弟妹が産まれた。もちろん妹の中にはナナリーも居る。毎日毎日様子を見に行っては、ずるいと遊ぶ事をせがんで来るコーネリアやクロヴィスの相手を仕事の合間を縫ってする。充実感を感じる日々。ただ私に任されている仕事は、妹や弟が産まれる前段階を行なう為に、押し付けられているのではないかと少し思っている。本人に聞いた事はないが…。

 

 仕事をこなしている結果、まだ十六歳の小僧の私だが日に日にブリタニア内での影響力が強まっているのを感じる。最初は父上様の息子だからと言うのが大きかったが、今ではそれだけではないようだ。そこで私は自らいろんな事柄に手を出してみようと思う。今日はその為に三人を呼んだのだ。

 

 「今日はよく来てくれたね。ギネヴィア。シュナイゼル。コーネリア」

 

 ここは私が使っている執務室。壁際は仕事の関係資料や最近目を通している発表された論文などが、収められている本棚でいっぱいだ。中には気分転換に読んでいる小説なども混じっている。いつも使っている書類が山積みになっている執務用のL字型机、防弾ガラスを使用している窓枠、天井に飾られている小さなシャンデリアとそれぞれに高価な装飾が施されて中々豪華な内装となっている。決して自分で選んだわけでなく、もとよりこうだったのだ。

 

 今日ここに呼んだ三人は部屋の脇の長机を囲むように置かれたソファに腰掛けていた。長机にはクッキーとティーセットが用意されており、各々好きに口をつけていた。私としては苺大福と熱いお茶で休憩を取りたいところだがね。と、思いつつも頼みもしないから出てくる事もなく、コーヒーカップに口をつける。夜遅くまで仕事をする為に眠気覚ましでコーヒーを口にすることから紅茶よりもコーヒーと接する機会が増えてしまった。少し気をつけないと中毒になりそうだ。私の真似をしてかブラックのまま口を付けたコーネリアが渋い顔をしてクッキーを口に放り込んでいる。

 

 「兄上に呼ばれればいつでも駆けつけますよ。それも頼みごとと聞けば尚更」

 

 涼しげな笑みを浮かべるシュナイゼルを見ると、もう仮面を被ってないよなと疑ってしまう。いけないな。弟を疑うなんて…。そんなシュナイゼルと対照的にギネヴィアは無表情を貫き、目も合わせてくれない。あの待合室以降からずっとだ。やはり頬を触るなど少し馴れ馴れしかったのだろうか。今だって視線を向けたら目を逸らし……多少顔が赤い気がするのは気のせいだろうか?

 

 「して、頼み事とは何事ですか?」

 

 普段頼む事はあっても頼まれるという事がなかったコーネリアの嬉しげな表情に見とれながら、発言を聞いて本題に入ろうと持っていたコーヒーカップを机に置く。

 

 「今、私がある仕事に取り組んでいるのを知っているかい?」

 「はい、確か罪人を処罰するだけでなく更生させるものと聞いております」

 

 『臣民更生プログラム』

 裏稼業の人間をただ処罰するのではなく、ボランティアや社会復帰のための労働などを条件に恩赦を与える更生プログラムで、原作のオデュッセウス・ウ・ブリタニアが作り上げたものだ。これはオデュッセウスになった私の使命であると手をつけたのだ。しかし、思いの他難しく、まだまだ完成まで時間が掛かってしまう。こういう体験をすると本当に彼が有能であったことを思い知る。おかげで他に進めようとしていたプロジェクトにまったく手が付けられなくなってしまった。

 

 臣民更生プログラム以外には、空への備えとして対空防衛網の構築と防衛手段の確立を見据えた対空防衛プロジェクト。そしてアッシュフォード家と私専属の技術班の共同で工業・農業用ナイトメアを作るプロジェクトは自分で行なっている。アッシュフォードは正直放っておいた方が原作通りで良い筈なのだが、マニュアル製作で何度も関わっていたら情が移ってしまうのは当然だろう。少しでも彼らの足しになれば良いなという程度だが。もしこれで原作と変わってルルーシュ達の後ろ盾にならないなんて事があるならば、決して誰にもばれることなく私が何とかする気ではいる。

 

 「その通りだよ。それに結構手を焼いていてね」 

 「では私達はそのお手伝いを?」

 「いや、君達には違うプロジェクトを担当して欲しいんだ」

 

 まずはギネヴィアに手元に置いていた資料の一部を渡す。中には貴族の血縁者のリストやまだ実験段階で表に情報の出ていないガニメデのデータ、そして製作したマニュアルが揃っていた。

 

 「ギネヴィアには若手貴族による機動騎士団の設立をお願いしたい」

 「機動騎士?」

 「ガニメデは知っているね。ナイトメアフレームの」

 「ええ、知っております」

 「いずれナイトメアフレームが戦場の主役、ブリタニアの矛となると考えている」

 

 これは原作知識を用いている事だから分かる。現段階でのナイトメアは実験機であり戦闘用の量産機の段階まで行っていない。そもそも第一世代と呼ばれる戦車などに搭乗員を脱出させるコクピットシステムを開発。第二世代で、「マニピュレーター」「ランドスピナー」「ファクトスフィア」などが搭載された。そして動力源にサクラダイトを使用した第三世代であるガニメデでようやく兵器らしくなったが、全長はグラスゴーの1.5倍の大柄で手足も長すぎる。第一世代のコクピットシステムに第二世代で開発された機器類、ガニメデで実装されたサクラダイトにアッシュフォードが開発したフレーム。それら全てを合わせたグラスゴーになってから兵器として量産化されるだろう。

 

 正直に言うとグラスゴーが開発されてからでも良いのだが時期が分からない。もし開戦から間もない頃であれば圧倒的錬度不足で送り出す事になるだろう。そうなれば戦争そのものが長引いてしまう。戦争なんてものはしないのはもちろんだがやるなら短期間で済まさないと敵も味方にもいろいろと問題が発生する。それに自慢の弟のひとりであるクロヴィスが行くのだ。なにかしてやりたいじゃないか。

 

 「あの実験機がですか?」

 「ああ、あと十年もしたら量産化できると踏んでいる。その為に初のナイトメアフレームに熟練した騎士部隊を作りたい。すでに父上とアッシュフォードには話をつけて五機ほど生産してもらっている。その内の三機を預けるよ」

 「…兄上のお願いとあれば聞かない訳にはいきませんね」

 「ありがとうギネヴィア」

 

 お礼を言うと鼻を鳴らしながらまたそっぽを向かれた。やはり顔が赤く見える。風邪でもひいてしまったのだろうか?

 

 首を傾げているとシュナイゼルが手で口元を隠してなにやら考え込んでいるらしい。口元は見えないがニヤリと笑ったのは理解した。手を口元から退けるといつも通り涼しげな笑みを浮かべていた。

 

 「私は何をすれば宜しいのでしょうか兄上」

 「シュナイゼルにはこれをお願いしたい」

 

 シュナイゼルに渡したものはギネヴィアにも渡したガニメデ関連の資料と軍部で作られた対テロ用のマニュアルだった。これからナイトメアフレームは戦場の主役になると同時に、テロリストやレジスタンスが使用する可能性が高まる。ゆえにナイトメアフレームを使いこなし、対ナイトメア対策を行なえる対テロ部隊が必要と考えた訳だ。

 

 ざっと一通り資料に目を通したシュナイゼルは大きく頷いて顔を向けた。

 

 「分かりました。対ナイトメアフレーム戦術を備えたナイトメアフレームを運用出来る対テロ部隊の設立ですね。全部任せてくれるので?」

 「あ、ああ。お願いするよ。それとガニメデを一機渡そう。上手く使ってくれ」

 

 さすがシュナイゼル。必要になるであろう資料のみで私の考えていた事を熟知したのだ。恐ろしくもあり、本当に頼もしい弟だ。

 

 最後になったがコーネリアにも頼む事がある。と、言ってもプロジェクトといったものではない。中学生であるギネヴィアとシュナイゼルに頼んでる時点でアレだが、二人は現時点で部隊を運用出来るほど歳不相応に頭脳が機能している。対してコーネリアはまだその年齢に相応しくまだ幼い。

 

 「コーネリアにはナイトメアフレームに慣れてもらう」

 「慣れる?学ぶと言う事ですね」

 「学習と経験。回数は私より少なくなるけどガニメデを使用した模擬戦に参加してもらいたい」

 

 上二人にプロジェクトを任せていたのを見ていたコーネリアは自分も任されると思っていたのかガッカリしていた。と言っても気付かれないように装おうとしていたが。ゆっくりと立ち上がってコーネリアの側に腰掛ける。

 

 「コーネリア。君は前線に出て指揮を行える勇将になれる才能がある」

 「勇将…」

 「そうだよ。知将と猛将の両方を兼ね揃えた勇将に」

 「そんなものになんて…「訓練には私が付き合うから」…やる!」

 「うん?」

 

 嫌そうだったから説得出来ないかなと言葉を続けようとしたら、力強い返事で被せられた。私と一緒だからやるって言ってくれたのかな。そうだったら嬉しいんだが…。微笑みながら思っていると手をぎゅっと握り締められた。

 

 「学習も兄上と一緒ですか!?」

 「う、うん。分からないところがあれば…」

 「やった♪」

 

 ………なにこの可愛い生物。

 

 天真爛漫と言う言葉が似合う満開の笑みを浮かべる少女はだれぞ?どう見たって可愛い妹のコーネリアなのだが、大人びた原作とは似つかないのだが。そしてギネヴィアがさっきと違って凄く睨んできているのですが何故に!?

 

 「コーネリア。いつまで兄上の手を握っているの?邪魔になるでしょう。早く放しなさい」

 「嫌」

 「聞き分けのない子ね」

 「姉上様は恥ずかしがって甘えることが出来ないですもんね」

 「なぁ!?ななな、なにを言ってるのかしら」

 「ははは、兄上はモテモテですね」

 「兄冥利に尽きるよ…」

 

 そんなに私に懐いてくれることは凄く嬉しいのですが二人とも凄く怖いです。笑みを浮かべているコーネリアだけど雰囲気がピリピリしているし、ギネヴィアは視線だけで人を殺せそうな眼をしている。涼しい顔してクッキーや紅茶を味わってないで助けてシュナイゼル!!

 

 今日行なう筈だった仕事に手をつける事は出来ずに四人仲良くお茶をして過ごすのであった。仲良く…。


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