コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第06話 「出会いは唐突に…仕事は行き詰まる」

 妹達や弟に仕事を頼んで数年が経ち、十九歳を迎えた。ギネヴィアの機動騎士団もシュナイゼルの対テロ組織…いや、対テロ騎士団も順調に育っている。勇将目指して励んでいるコーネリアは私やマリアンヌ様に鍛えられ、戦略・戦術は私以外にアンドレアス・ダールトン将軍に習っている。原作ではコーネリアと共に各地を渡って戦っていた事は知っているが、実際に見てみて彼と妹が上手くやっていけるか不安な所はあった。ダールトンは実力主義者の所があり、コーネリアは区別する者はきっちり区別する。いつの日にか衝突する事があるんじゃないかなと思っていた。けれど実際はそんなダールトンはコーネリアを認め、コーネリアはダールトンの姿勢を理解してお互いがお互いを理解して認め合っていた。良い関係を持っているのだが年の差からまるで親子に見えるんだよな。しかも実の父親よりも父親らしいってどうなの?

 

 何にせよ何事も上手く進んでいる事は嬉しい。自分が担当しているものを除いてだが。

 

 『臣民更生プログラム』は何とか形には出来て法案を通したが、後々になって詰めの甘さが露呈して、後処理とプログラム内容を追加すると言う事がすでに4件ほど起きてしまった。『対空防衛プロジェクト』は空戦用ナイトメアフレーム所かナイトメアの量産化の話も出てないので、現在の兵器で対応してみたが自分でも不十分なのが見て取れる。唯一成功しているプロジェクトはアッシュフォードと共同で作った工業・農業用の機体だけである。

 

 『プチメデ』

 アッシュフォードで開発されたガニメデを小型版にした姿の一般用フレーム。最初は一般用ナイトメアと名付けられていったのだがナイトメアは騎士の馬と言う意味なので合わないとの事でフレームになったのだ。後、表記は違うが悪夢とも被るのもあった。それでアッシュフォードが行っていた民生機の計画から改めて「フレーム」の名称を取ったのだ。ソナーなどのセンサー系を取り外し、流体サクラダイトではなく電気式に変更、軍用ではないために速度は最大40キロ、パワーも一トンから十トンまで職種によって分けたりと様々な変更を行なった。今では大型重機として幅広く使われている。

 

 今日、私は気分転換も兼ねてプチメデ生産工場にアポ無し訪問していた。

 

 別に生産状況を見ようとか、抜き打ちの視察と言う訳ではない。前々より工場見学させて欲しいと各分野から問い合わせがあり、今年より工場見学が許可されたのだ。最近になってミレイちゃんにそんな要望の声が上がっていた事を知らされた為に許可を出すのが遅れたのだ。あ、ミレイちゃんとはアッシュフォード家と関わりを持っていく中で友達になったのだ。原作時と違ってめちゃくちゃ恐縮されているのは少し寂しい。ガッツの魔法かけて欲しかった…。

 

 記念すべき第一回工場見学にはブリタニアの学生もおり、ブリタニアの未来を担う若者同士で話が出来たらなぁと、想いを抱いていたのだが見学用コースである通路には私にSP四人と工場長しか居なかった。どうも時間を間違えてしまった為に学生達はここを通り過ぎた後だったのだ。それを聞いてがっかりしたがこのまま工場見学するのも良いかと気持ちを切り替え見て周る事に。

 

 「ったく、うろちょろして!少しは私の立場を考えろ。お前のせいで監督生の私が呼び出されるのだぞ!!」

 「あは、それは申しわけなぁい」

 

 聞き覚えのある声に自然と顔が向く。視線の先には深緑色の髪にキリッとした面構えの生真面目そうな学生に、まだ十七歳で白髪で何処か抜けた感じのラフな学生が並んで歩いていた。会話からラフな学生が勝手な行動をして、生真面目そうな生徒が連れ戻しに来たのだろう。

 

 私の中ではそんな事はどうでも良かった。彼らをひと目見た瞬間私は身体に電気を流されたような感覚に陥った。

 

 「それが怒られている者の態度か!!」

 「あれぇ?あれって第一皇子様だったりしない?」

 「話を逸らすな!嘘をつくならもっとまともな……」

 

 目が合った。誰一人口を開かず静かな時間が過ぎる。観察するように爪先から頭まで見られてから、私を認識して顔を青ざめ始めた。

 

 「こ、これはオデュッセウス殿下!た、大変失礼しました!!」

 

 深々と頭を下げて申し訳なさそうにする。隣でにへらにへらしている学生の頭を掴んで同じ姿勢を無理やり取らせる。警戒するSP達を下がらせて、二人に歩み寄る。

 

 「そこまで畏まらなくていいよ。もっと楽にしてくれればいいから」

 「しかし殿下」

 「あはっ。分かりました」

 「アスプルンド!!」

 

 言われたまま頭を下げられた体勢からすっと元の体勢に戻る。こちらとしては畏まられるよりも気楽に接してくれた方が話しやすくて良い。大抵は神聖ブリタニア帝国第一皇子の地位で相手が萎縮してしまうのだが。

 

 「僕はロイド・アスプルンドと申します」

 「じ、自分はジェレミア・ゴットバルトと申します!」

 

 やはりと言うかなんと言うか…。こちらの世界で十九年過ごしていれば原作の知識も徐々に薄れてきた感があった。今になって思い出したが二人は私と二歳から三歳差で年齢的に高等部。学校名は忘れたが二人は高等部から寮も一緒だったな。

 

 「自己紹介ありがとう。私はオデュッセウス・ウ・ブリタニア。よろしく」

 

 二人はそれぞれの反応を見せる。また頭を下げてキチンと挨拶を返すジェレミアと、周りから見たら不敬と言われる態度で返すロイドと正反対である。

 

 ロイドはガラス越しに見える組み立て中のガニメデに視線を移す。

 

 「オデュッセウス殿下はガニメデの事にお詳しいと聞きましたが…」

 「殿下に無礼であろうが!!」

 「構わないよ。そのまま続けて」

 「もしよければ詳しいお話を聞かせて頂けれないでしょうか?どうも興味がそそられましてね」

 

 ジェレミアやSP達の睨みを物ともせずに言える事は素直に羨ましく思う。私はそういうの気にしちゃうから。それにしてもこれは良いチャンスかも。ここで彼らと親しい仲になっていれば後々何かあるかも知れない。まぁ、ただ単に原作キャラと仲良くしたいと言うのが一番だがね。

 

 「確かに私はガニメデに関してはアッシュフォード家に次いで詳しいよ。ここで語っても良いけど今は時間が無いんじゃないかな?」

 

 うろちょろしていたロイドを連れ戻しに来たという事は彼らは他の生徒たちをここより先の場所で待たせているという事になる。気付いたジェレミアは気まずそうな表情を見せた。

 

 「また今度宮殿に招待しよう。その時にゆっくりと話そう」

 「やった♪」

 「ジェレミア君も来るかい?」

 「よ、宜しいので?」

 「もちろんだよ」

 

 嬉しそうにする二人を早く他の生徒達と合流するように言って、私は工場見学を続けた。話を聞きながら彼らをどう持て成そうか思案する。帰ったらアッシュフォード家に連絡を入れて空いてる日を聞いて、彼らの学校を調べて何時にするか決めて連絡するかな。後はこの事をマリアンヌ様に知られないようにしないと。ジェレミアはマリアンヌ様の事を敬愛しているが、彼が出会ったらしき描写を知らない。あの性格を知ったらどう思うか…気にしないか幻滅するか。それ以前にマリアンヌ様が来たらいろいろと問題が起きそうな気がする。

 

 楽しみな事を思い描き、行き詰まっている仕事から目を背けたまま私は工場見学を終えて、宮殿へと帰ってきた。帰ってきたのは良いのだが…誰ですか貴方?

 

 「はぁ~」

 

 宮殿のテラスに一人の女性が手すりにもたれているのが視界に入った。抹茶色とでも言えばいいのか分からないが、髪は肩に掛かる事無く切られておりすっきりとしている。背丈からコーネリアと同年代ぐらいだと推測する。着ている服もコーネリアが通っている学校指定の物だ。多少色違いな所から後輩もしくは先輩だろう。

 

 にしても夕日に照らされる彼女は失礼かも知れないが格好良かった。佇まいは美しく、凛々しい横顔は見ていて時間を忘れるほどだった。数分間何もせずに見つめていると彼女は視線に気付いたのか振り返る。

 

 本日二度目の衝撃が私を襲うのであった。

 

 

 

 大きなため息を吐きながら、コーネリア・リ・ブリタニアは重く感じる足を引き摺るようにしてでも目的の場所へと向かう。

 

 今日はこの宮殿に友人…先輩を招いていたのだ。名をノネット・エニアグラムと言う。身体能力は私よりも高く、接近戦を挑んで勝った試しが無いほどの力の差がある。相手を経歴で捉えずに人格・実力で評価する人物。ただ豪放な性格は問題だがそれを補い得るだけの人で、私が信用できると感じた数少ない人物の一人だ。

 

 彼女を招いたのはその身体能力の高さからナイトメアを上手く扱えるのではないかと思った事がきっかけだ。さすがに実物に乗せる訳にはいかないので、シミュレーターで対戦を行なった。もちろん今日の事は他言無用でと約束してもらってだ。結果は三勝零敗で私の圧勝…と言いたいが圧勝とまではいかなかった。一回目と二回目は余裕があったが三回目は慣れたのか動きが鋭くなった。もう少しで片腕を切り落される所だった。初めて扱った初心者で長年鍛えてきた私の片腕を取りそうになったのだ。妬みや悔しさなどよりも彼女ならより上手くナイトメアを使いこなせるのではないかと期待のほうが大きかった。

 

 その後、彼女と話をしていたのだが、「もうちょっと鍛えれば殿下の好きなオデュッセウス殿下にも勝てますかな?」と冗談めいて言った彼女に私は怒鳴ってしまった。たまに合わない時があって彼女とは少し険悪になる事がある。大抵は彼女の方が私の怒りを受け止める側に回るので一方的に私が険悪になるだけなのだが、今回ばかりは違った。あのオデュッセウス兄上に勝つ?その発言を聞いた瞬間、胸の中でモヤモヤとした気持ちに包まれ怒鳴り散らしていた。

 

 落ち着いた今なら分かる。彼女のいつもと変わらない冗談。なのに私は冷静さを欠くどころか怒鳴り散らすなんて…。

 

 再び大きいため息をついて足を止めそうになる。気は重たいが足を止めるわけには行かない。こちらが悪いのだから謝るのが筋だ。もう少しでテラスが見えると言う所で足を止めてしまった。テラスから声が聞こえてくる。一人は彼女だがもうひとりは…。

 

 「コーネリアとそんな事があったのか」

 

 兄上だ!声の主を理解すると同時に顔が強張る。まさかあんな失態を兄上に知られたと考えると何とも言い表せない不安感が襲ってくる。テラスに出る事が出来ずに柱の影に隠れる。

 

 「はい、冗談にしても軽率でした。申し訳ありません」

 「ははは、君ならすぐに私を追い抜くと思うよ」

 「ご冗談を」

 

 声色から怒っている感じはなくホッと安心するが、何故だが兄上が楽しそうに喋っているのを聞いていると、先ほどとは違ったモヤモヤが心を覆ってくる。首を傾げながら聞き耳を立て続ける。

 

 「コーネリアは学校ではどんな様子なんだい?」

 「私が知る所では生徒の模範となるべき行動をとって、生徒・教師の両方から多大な信頼を得ていると感じております」

 「上手くやれているのか。それは良かった」

 「噂ではオデュッセウス殿下の話題になるととても饒舌に語られるとか」

 

 な、なんて事を兄上に言うのだ!?ただ私は表面上の兄上ではなく、身近な者として兄上の良さを知って貰いたく説明していただけで語るなど…。

 

 柱の影で赤面しながら言い訳を心の中で呟いているコーネリアだったが、オデュッセウスは語られた内容がどのようなものかが気になっていた。

 

 「コーネリアは真面目で強情なところが多々有るだろう」

 「いえ、そんな事は……ありますね」

 「本来彼女は兄弟姉妹想いの優しい子なんだ。今頃は君に怒鳴ってしまった事を悔やんでいるだろう。どうか許してやってくれないか?」

 「勿論です。殿下ほどではありませんが私も彼女の良さを知ってますので」

 

 兄上と先輩の言葉に気恥ずかしさより嬉しさで満たされる。二人に安らぎを感じて心を落ち着けたコーネリアはゆっくりと一歩を踏み出そうとした。

 

 「でも知らない事も多いだろう?まだ幼かった頃に大きくなったらお兄様のおよm―」

 「兄上!!何を仰られているのですか!!」

 

 熟れたトマトよりも顔を真っ赤にしてオデュッセウスに飛び付く。口を塞いで続きを言わせなかったが何を言おうとしたか理解した彼女はニッコリと笑っていた。謝ろうと言う事よりどうやって今のことを黙ってもらえるように説得しようかと悩むコーネリアであった。


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