コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第78話 「オデュッセウス中華連邦に向かう」

 悲鳴が上がる。

 建造物が崩れ、人が吹き飛ばされ、ナイトメアフレームが戦場となりつつある市街地を走破する。

 

 中華連邦の正式量産化ナイトメアフレーム【鋼髏(ガン・ルゥ)】。

 全長のほとんどをコクピットを兼ねた胴体が取り、その大きな胴体に固定式マシンガンを取り付けた腕部と機動力を得る為の車輪付きの脚部を取り付けた機体。

 脱出システムも近接白兵戦能力も立体機動戦を行うスラッシュハーケンも持ち得ないこの機体は量産性と射程の長さのみ他の汎用量産機に対しての優位を持っていた。勿論射程の長さは砲撃戦仕様や狙撃仕様の機体には及ばない。

 アフリカ大陸で主流のバミデスほどでは無いが平地や相手との長距離射撃戦を行う事で優位性を生む射程の長さを市街地で殺してしまっているのは言うまでもない。

 

 「敵二個小隊がベイエリアに接近中」

 「付近に展開する第二中隊の第三、第四小隊に迎撃命令を」

 「狙撃地点に移動中のユキヤ中尉が敵に発見されたもよう。攻撃を受けていると通信が入っています。第三中隊を向かわせますか?」

 「いえ、第三中隊はそのままで、アヤノ中尉の隊に対応を。システムに問題はありませんかランドル博士」

 「正常に作動中よ。寧ろまだ余力があるわ」

 

 戦況を見据えながらレイラ・マルカル大佐は後ろで座るオデュッセウスに視線を向ける。

 現在オデュッセウス・ウ・ブリタニアは中華連邦との外交を行うシュナイゼル・エル・ブリタニアと共にアヴァロン級浮遊航空艦ペーネロペーで赴いていた。護衛としてマリーベル・メル・ブリタニアのグリンダ騎士団所属カールレオン級グランベリーが同行している。護衛と言っても皇族が指揮し、護衛対象を含めると皇族が三人にもなるので一応護衛としてラウンズのオリヴィア・ジヴォンも同行している。ラウンズをそう易々と出す訳にも行かないので今は待機している。

 

 中華連邦とは外交できたのだ。

 戦争も外交の一部と言うが今の戦闘は違う。

 なんでも紅巾党なるテロリストが仕掛けたもので中華連邦…大宦官とは一切関わり合い無いものだとか。

 

 正直呆れてため息が漏れた。

 国同士の戦争に発展してはと大慌てで平謝りとセットで連絡してきた大宦官により情報がもたらされたのだが、その様子は我が身大事で命乞いするものであった。

 シュナイゼル殿下もオデュッセウス殿下も気にすることない様に対応していたが内心はどうだったのか。考えるのは容易であった。

 

 「なんとかなりそうかい?」

 「はい。現状民間人の安全を優先すればこれ以上の被害は押さえられます」

 「そうか。それは良かった。ならそのまま頼む。あぁ、ドローンの被害は考えなくていいから。戦いに巻き込まれた民間人を助け、アキト達が無事に帰って来てくれれば作戦は成功だから」

 「畏まりました」

 

 やはりこういう方だ。

 他国であろうとも人の死をなるべく減らす。

 そもそも戦いが始まった時に君の好きにやると良いと言われた時から予想はしていたが本当にやり易い。ユーロピアでの命令などでは支援もままならない中でアキト達に危険を強いて来た。理不尽な命令を言わざる得なかった事もある。だけど資金も物資も十分な上に好きなようにやって良いというのだから指揮官としては最高の職場だ。何より戦場における主な思惑が同じなので自分が忌み嫌う命令を下されることは無い。

 

 「アキト少佐はどうなっていますか?」

 「アキト少佐、リョウ中尉により中央は持ち堪えていますが…」

 「やはり砲を黙らせないと被害は増える一方ですね」

 

 紅巾党所属の鋼髏(ガン・ルゥ)に対してブリタニア軍第一皇子親衛隊は優勢だった。

 ペーネロペーは一個大隊(六十機)ものナイトメアフレームを積み込めるように増設・改造されており、ブレイズルミナスを展開できるために全機を投入している。

 対して敵の紅巾党は済南軍区ナイトメアフレーム砲兵旅団所属の部隊。旅団と言えば大隊の二倍から五倍以上の戦力を持つが砲兵旅団のすべてが紅巾党所属の者ではなく数は少ない。

 市街地戦という事で長所を生かせない鋼髏(ガン・ルゥ)は、市街地戦で有利に事を運べる新型の無人機アレクサンダ・ヴァリアント・ドローンの性能差と優秀なAIシステムにより圧倒された。さらには有人機で腕の立つワイバーン隊――第一皇子親衛大隊第一中隊の各小隊長機はより性能が高く、ナイトメアの技量も圧倒的に格上であってもはや鋼髏(ガン・ルゥ)数機では相手にならない。

 日向 アキト少佐のアレクサンダ・リベルテ。この機体は元々アキトが使っていたType-01を強化した機体であったが、アキト用に改良したアレクサンダ・レッドオーガと同じ新型アレクサンダを元に強化されヴァイスボルフ城で使われたアレクサンダ・リベルテよりも数倍の性能を誇っている。佐山 リョウ中尉、成瀬 ユキヤ中尉、香坂 アヤノ中尉の機体もアレクサンダ・ヴァリアントも新型アレクサンダで専用機に仕上げられた、アレクサンダ・ヴァリアントⅡも新型アレクサンダ・リベルテほどではないが性能はヴィンセントを超える。

 

 機体性能と数、技量で圧倒する親衛大隊が未だ紅巾党を抑えきれないのは奴らが持つ虎の子の兵器。超長距離からの要塞砲による支援砲撃があるからである。

 ナイトメア同士の戦いに勝っても民間人も軍人もナイトメアも市街地も無視した攻撃の前では損害は大きくなり、被害は拡大していく。

 

 長距離からの攻撃でも対処法は存在する。

 市街地に着弾した威力からペーネロペーやグランベリーのブレイズルミナスで充分防ぎきれる。直撃を許容して砲台の方向と距離を算出、アレクサンダ・ヴァリアント・ドローンを散会させつつ索敵に回して、発見次第アキト達主戦力を用いて撃破するなど。

 だけど中華連邦の一般人の救出に戦力を割いている親衛大隊からすれば出来ない手で、行えば守りを失った多くの市民が死んでしまう。それはレイラもオデュッセウスも望むところではない。シュナイゼルは中華連邦の民草をブリタニアが救った事実は政治でも利用出来ると判断しているので別の意味で望んでいない。

 手がないのでは致し方なしに命令してくるかも知れないが、親衛大隊に出来ないのであってグリンダ騎士団は可能なのでそんな命令は下されずに周辺の敵機の排除と民間人の避難誘導や救出作戦に集中出来る。

 

 飛行能力を有するレオンハルト・シュタイナーのブラッドフォードとマリーカ・ソレイシィのヴィンセント・エインセルが索敵、ソキア・シェルバのサザーランド・アイが情報処理を行って位置を算出して一気に叩く。

 

 「グリンダ騎士団より通信。射程に位置する部隊の退避を願う――以上です」

 

 送られた射線データを地図と配置図に重ねて見渡す。

 民間人を避難誘導した地点には被ってはいなかった。ホッと息を漏らしながら重なっている者はいないかを見渡す。

 

 「該当区域に重なっているドローンの退避。アキト達にも射線データを転送してください」

 「ドローンの該当区域離脱命令を出しました。離脱までおよそ40秒」

 「離脱後グリンダ騎士団に連絡を」

 

 退避が終了してグリンダ騎士団に連絡するとグランベリー上部より通常のハドロン砲を超える高出力のハドロン砲が市街地の頭上を走り、目標地点を貫いた。

 直撃した箇所を超望遠でモニターに映し出すと超長距離からの要塞砲【中華連邦ヘビーレールウェイアーティレリ望天吼】が高威力のハドロン砲によって爆散したところであった。

 

 ティンク・ロックハートのゼットランドとオルドリン・ジヴォンのランスロット・グレイルを連結させた、ランスロット・グレイル・チャリオットによるメガハドロンランチャー・フルブラスト。

 高出力の二機のユグドラシルドライブを直接繋ぐことでより高いエネルギーを確保し、それをゼットランドのメガハドロンランチャーの威力を格段に上げる。

 神聖ブリタニア帝国軍のA級機密に当たるものでグリンダ騎士団のヨハン・シュバルツァー将軍は批判的だったが、作戦を提案したのはオデュッセウス殿下でシュナイゼル殿下はブリタニアの軍事力を見せつける事で交渉が上手くいくと微笑んでおられたので、この作戦は了承されたのだがレイラは危惧する。ナイトメア二機でこれほどの高威力を得たのだ。こんなものが大量生産され、或いはそれ以上の兵器が生み出されることがあれば戦場となった地域は悲惨な事になるのは必至。特に市街地でテロリストが使えば街そのものが灰になりかねない。

 そんな思いを口に出さぬままレイラはアキト達に帰投命令を出し、損傷していないアレクサンダ・ヴァリアント・ドローンには民間人の救助と破損したドローンの回収を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 中華連邦の朱禁城はいつもよりも騒がしく、賑わいを見せていた。

 本日は神聖ブリタニア帝国との外交の場が持たれることになっていたのだが、紅巾党の件で多大な迷惑をかけたという事で予定していた晩餐会も豪華なものとなり、色々と持て成しのグレードアップに励んでいた。

 迷惑をかけたというよりは戦争になることを恐れていた。国力や人口では引けを取らない大国ではあるが戦争になると勝つことは困難なのを理解している。ナイトメアの差、経験の差、士気などで負けている上に紅巾党での戦闘で見せつけられたメガハドロンランチャー・フルブラストの威力も見て余計に実感しただろう。だからこそ大宦官はブリタニアへのご機嫌取りの準備に大忙しなのだ。

 

 シュナイゼルと共に中華連邦に赴いたオデュッセウスは晩餐会まで時間があり、その時間に久しぶりに天子に会おうと場を求めたのだ。ご機嫌取りに必死な大宦官は急な申請だというのに受け入れた。と、いうか国の象徴を自分達のご機嫌取りの為に繰り出すなんてどうなんだ?

 なんだっていいさ。久しぶりにお話しできるんだから。 

 どんなお話をお土産としてしようかな?

 

 

 

 …などと浮かれていた自分が懐かしい。

 

 

 

 数十分前まで浮かれ気分で天子様のもとへ向かおうとしていたというのに今は一歩一歩が重く、今にも足が止まり踵を返しそうだ。

 

 天子様に会いに行くとシュナイゼルに伝えると呼び止められ小声で「天子との婚約の話を進めております」とびっくり仰天の報告をしてきたのだ。

 頭の中が真っ白になりましたよ。

 私に婚約相手が出来るとかは今はどうでも良い。何それ私聞いてない!?

 もしかしたら聞き逃していたのかとも思ったが、婚姻の話を忘れるほど無頓着ではない。

 詳しく聞いたら内密にシュナイゼルが大宦官と話し合っているのだとか。

 

 それは聞いてないな。うん。

 いえ、違くて。えー…私どうすれば?

 

 ギネヴィアが婚姻などの話を聞けばどういう反応をするかはお判りでしょう?とか、中華連邦との和平には一番の方法ですよなど色々な理由を言われたが納得は出来ない。

 なにせ天子は黎 星刻(リー・シンクー)の事を好いている。

 原作知識を有している私はその事を知っている。知っているからこそどうすればなんだけど…。

 

 朱禁城内部とは言え護衛もつけずに出歩くことはレイラが許さなかったので警備のオスカー・ハメル中佐とクラウス・ウォリック大佐に務めて貰っている。

 晩餐会にはレイラ達も参加するので親衛隊の女性陣は化粧直し、男性陣はその付き添いという形で居残らせた。ハメル少佐は警備隊であることから制服のまま参加、クラウス大佐はお偉方が集まるパーティに参加せずペーネロペーで待機するとの事で今だけ引っ張って来た。

 護衛できていたオリヴィアにはシュナイゼルの護衛を頼んどいた。

 記憶違いでなければ晩餐会の途中でオルフェウス君がシュナイゼルを狙ったと思うんだ。その後、ごたごたした気はするがやはり時間が経てば記憶が薄れてくる。

 

 「付いてきてなんですが俺みたいのが付いてきて良かったんですかねぇ?」

 

 不安そうには聞こえないクラウス大佐の言葉に顔を見られないように答える。

 多分だが今の私はひどい顔をしている事だろう…。

 

 「問題ないと思うよ。さすがにドン引きするようなことをしなければ」

 「さすがに分別はありますがね。国の象徴なんでしょ天子様っていうのは」

 「まぁ…ね。兎も角大丈夫さ。ハメル中佐を見てごらんよ。堂々としているだろう」

 「いえ、これは堂々としているというよりは緊張しているというのが正しいかと」

 「なんでウォリック大佐はそうもいつも通りなんですか…」

 

 後ろの二人の違う反応に笑みを浮かべながら庭園が見渡せる東屋(ガゼボ)へと足を運ぶ。

 椅子に腰かけている不安そうな天子様とその後ろに立って待っている大宦官が二名。

 軽く頬を叩いて気分を入れ替えていつもの微笑みを無理やりにでも作る。

 いきなりの行動に背後の二人が驚いていたようだが気にせずに、ガゼボに足を踏み入れてお辞儀をする。

 

 「久しぶりですね天子様」

 「お、お久しぶりです」

 「もう一年近く経つんですよねぇ。おっと、座ってもよろしいかな?」

 「あ、は、はい。どうぞ…」

 

 腰かけながらやはり戸惑っているなと分かり心がズキっと痛む。

 さて、どうしたものか…。

 どう切り出したものか悩んでいると先に口を開いたのは大宦官であった。

 

 「本日は誠ご迷惑をおかけしました」

 「今後このような事が起きないように手を回しますので」

 「え、あ、あぁ…そうだね。民の被害も相当なものだろう」

 「いやはやオデュッセウス殿下はお優しい。民草にまで気を回されるとは」

 

 この人たちは本当に…軽んじている民草のおかげで生活できているというのに…。

 あえて指摘はしない。後一年もしない内に痛い竹箆返しを喰らうのだからね。それも命を奪われるほどの。

 

 「天子様もお気に病んだことでしょう」

 「は、はい。でもブリタニアの方々のおかげで被害も少なく済みました」

 「しかしかなりの負傷者が出たのも事実。要請あれば私も出来うる限りの支援をしよう」

 「ほ、本当ですか」

 「いえ、神聖ブリタニア帝国の皇子殿下のお手を煩わせるようなことではありません」

 「その通りです。殿下はお気になさらず――それよりもこれからの事を話しませんか?」

 「これからの事と言うと」

 「今は内々に話を進めている――殿下、護衛の方々は…」

 「構わない。彼らは私の親衛隊の警備隊長と副司令官。聞かれても問題ない」

 

 おそらく発表されるのは原作通り。彼らには箝口令をしけば問題……あー、クラウス中佐は大丈夫かな?酒をよく飲む人だから酒の席で口を…無いな。あの人いつも一人酒だし。そもそもユーロピアに居た頃ユーロ・ブリタニアのスパイをやってたし問題ないか。

 一抹の不安はあれど大丈夫だと判断して話を続ける。

 

 「まだ内々ですが天子様との婚約。我々は大いに祝福致します」

 「これで中華連邦と神聖ブリタニア帝国が共に歩めばすばらしい繁栄を得るでしょう」

 「私はつい先ほど弟よりサプライズで聞いたのだがね。天子様はそれで良いのかい?」

 「わ、私は…その…」

 「それは勿論――」

 「私は天子様に聞いています」

 

 大宦官の言葉を遮って天子を見つめる。

 正直この婚姻を私は破棄したい。天子の事を想えばそれが一番なのだろう。

 だが、しかし。果たしてそれをしても良いのかと考えれば答えはNOだ。

 

 なにせブリタニアの貴族の地位と引き換えに不平等条約を結び、国と天子を神聖ブリタニア帝国に売り払うという民を象徴を蔑ろにした悪逆非道を行ったからこそ黒の騎士団と黎 星刻(リー・シンクー)を始めとする志ある中華連邦の武官が手を取り合えたのだ。

 秤に掛けるというのは好みの考え方ではないがルルーシュを優先してしまう。だからと言って天子を見捨てる訳ではないけどね。最大限出来うることはするさ。勿論、原作通りゼロと星刻(シンクー)が手を取り合える未来へ向かわせる為に。

 

 その為ならば私が汚名を被る事なんてどうでも良い。

 

 「これが中華連邦の為にも…民の為にもなるから…」

 「ふむ。でも納得は出来ない…のだろうね。無理はないよ。いきなり婚約の話を出されてもねぇ。天子様も好きな殿方が居たりするでしょうし」

 「す、好きなだなんて…」

 「その反応…さぁて、どなたでしょうかね」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべてニマニマと見つめると頬を赤らめて俯いた。

 原作知識で分かっているのだが、天子様のこういう純な反応は実に可愛らしくつい弄りたくなってしまう。

 当然ながらこの状況を笑えるのはオデュッセウスだけであって、天子がほかに好いている奴が居ると知った大宦官の顔色は青ざめ、突然公にされていない大国同士の婚約話を聞いたクラウスとハメルは驚き目を見開いている。

 

 「いやはや申し訳ない。あまりに可愛らしい反応だったもので、つい」

 「あ、いえ…」

 「しかし、まだ先とは言えいきなりの婚約話。不安は大きいでしょう。どなたか心のおける人物は居られないのですか?」

 「一人居ます」

 「何方です?」

 「星刻(シンクー)という軍官に所属している人です」

 「その彼は何処に?」

 「星刻(シンクー)?あぁ、黎 星刻(リー・シンクー)でしたら現在エリア11の大使館勤務ですが」

 「では、大使館から戻ったら黎 星刻(リー・シンクー)を天子様の騎士……専属の武官にしてあげられますか?」

 「それは出来ますが宜しいので?婚約前とは言え男性を近くに控えさせるというのは」

 「私は問題ない。それに天子様に今必要なのは不安を和らげる存在です」

 「殿下が仰られるならそのように計らいましょう」

 「勝手に話を進めてしまいましたが宜しかったでしょうか天子様」

 「はい!勿論です」

 「喜んでいただけて何よりだ。今夜辺り電話でもしてみると良いでしょう」

 

 その言葉に今までの暗い顔が嘘のように晴れた。

 やはり笑っていてくれた方が良い。大宦官は妙な顔をしているが気にしない、気にしない。

 

 「さてと…晩餐会まで時間があります。以前の約束通り外のお話をしましょうか?」

 「はい。あ、でもその前に聞いてほしい話があるのです」

 「ほお!天子様からとは。どのような話でしょうか?楽しみです」

 「私、新しくお友達が出来たのです」

 

 その後、天子から聞かされる神楽耶やライの話や私が体験した外での話で大いに盛り上がり、不安は消え去り久々に楽しい時間だけが過ぎていった。

 黒の騎士団に協力していた皇 神楽耶と黒の騎士団に所属していたライを中華連邦で匿っている事を、ブリタニアの皇子に実質公言してしまっている事に気付かない天子の話に終始大宦官は青を通り越して真っ白な顔色を浮かべていたがそれも含めて楽しい話である。無論、大宦官には別れる際に内密にしておくと言って安心はさせておいた。

 

 

 

 

 

 

 日も落ちて暗闇が広がる夜となった時刻。

 晩餐会の会場へ向かうオデュッセウス一行は笑みに包まれていた。

 

 「いやはや一国の象徴と言ってもやはり年相応のお嬢ちゃんでしたね」

 「ウォリック大佐。ここは中華連邦の朱禁城。聞かれたら事ですよ」

 「おや、失敬。ですが一つ謎が解けました」

 「謎?何の話です?」

 「ほら、神聖ブリタニア帝国の第一皇子とあろう御方が今まで三十路になっても結婚されていないと思ったらそういうご趣味だったのですね」

 「ちょっと待とうかクラウス大佐。私はシスコン&ブラコンは認めているがそっちは違う」

 「えー…本当ですかぁ?」

 「大佐。人の趣味は千差万別。深く追求することは…」

 「君達――後で覚えていろよ」

 

 後ろで「やべ、減給かな」とクラウス大佐が呟いているが、まぁそれは置いといて真面目な話をしよう。

 ため息ひとつ吐き出すと真面目な顔をして振り返る。それに合わせて二人も聞く姿勢を見せる。

 

 「先ほどの話だが他言無用で」

 「どちらでしょうか?中華連邦が黒の騎士団残党を匿っている件でしょうか。それとも婚約の件」

 「両方だ。親衛隊内部だとしても話すことは許さない。君たちの胸の内にだけ留めておくか忘れて欲しい」

 「了解しました」

 「なら私は忘れるとしましょう」

 「まぁ、頼むよ。さてと頃合いか。会場に向かうとするかな」

 「でしたら私はペーネロペーに戻ってますね」

 

 一人オデュッセウスから離れて軍港へ向かおうとするクラウスにオデュッセウスは思い出したかのように声を掛ける。

 

 「あ、予定通り私のアレクサンダ・ブケファラスの用意をお願いしますね」

 「アレ本気だったんで?」

 「使わないで済めば良いんだけどね」

 

 そうは言うが絶対使う羽目になるんだよね。

 オルフェウス君が攻めてきたらオルドリンが戦う事になるだろうし、とりあえずヒュウガ兄弟同様あの双子にも喧嘩両成敗を喰らわせれば良いか。後のことはその時の自分に任せれば良いよね。

 オデュッセウスは会場へと向かう。

 自分が関わった結果、原作以上の出来事が待ち受けているとも知らずに…。


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