コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 投稿遅れ申し訳ありません。
 次回は遅れないように気を付けます。


第92話 「衣装と資金」

 

 日本人にとっては決して忘れることの出来ない惨劇。

 ユーフェミア・リ・ブリタニアの元で行われた一部地域限定でイレブンが日本人に戻れる場所。

 イレブンと呼ばれた日本人の多くがこの特区日本に参加表明を行った。

 

 結果はブリタニアによるイレブンの大虐殺。

 会場のイレブンのほとんどが亡くなり、ブラックリベリオンと呼ばれるエリア11最大の反ブリタニア勢力【黒の騎士団】とエリア11駐留ブリタニア軍の全面衝突の発端となった。

 戦死者は一般人も含めると膨大な数となり、ブリタニアの被害も相当なものだった。

 

 エリア11新総督として着任したナナリー・ヴィ・ブリタニアは着任早々特区日本の再開を宣言。

 多くのイレブンが以前の惨劇を思い出して参加する気配はなかった。

 黒の騎士団のゼロが声掛けを行うまでは…。

 

 ゼロが特区日本に参加表明するとイレブン100万人を参加させたのだ。

 ブリタニア軍はゼロの策略も考えて、ダールトン将軍が警備のナイトメア隊の指揮を執り、警備には警察だけでなく軍もかなりの数を動員。総督の周辺はイタケー騎士団が固め、ラウンズ三人も警備に周っていた。

 策略と言う予想は見事に的中し、ゼロはまんまとブリタニア軍を出し抜いた。

 

 特区日本開催前にブリタニアと取引を行って自身だけは国外追放で許すように言ってきたのだ。そこをローマイヤが機転を利かせてナナリーの権限内で納める形で執行用意を整えた。

 

 ―――【ゼロは国外追放】。

 

 素性も明かされない。

 仮面をかぶって素顔も知らない。

 誰がゼロなのかも分かっていないこの状況でそれは大きい力を持っていた。

 

 ゼロの仮面に衣装を着けて自分がゼロだと名乗り上げればその者はゼロとなり国外追放の処分を下される。

 

 100万人のゼロが会場を埋め尽くして、見事無傷で黒の騎士団は中華連邦へと向かったのだ。

 中華連邦とは話を付けており、中華連邦の海氷船により脱出。

 

 こうして黒の騎士団は中華連邦へと足を踏み込むことになる。

 これによりインド軍区より新型ナイトメアと新造の浮遊航空艦を手中に収めて兵器の性能は今までよりも飛躍的に向上する。

 

 それにしてもようやく……ようやくここまで来たんだ。

 

 オデュッセウスは大きく息を吐く。

 夢にまで見たのんびりライフがもうすぐそこまで近づいてきている。

 後は中華連邦で大宦官を討ち、シンクーと手を組み、父上様をあの空間に閉じ込め、饗団を潰して、二度目のブラックリベリオンで引き分けに持って行き、父上様とマリアンヌ様を止めれば終わりだ。

 

 ………あれ?これ全部ルルーシュ任せじゃない?

 いやいや、私も手伝っているよ。

 

 例えば中華連邦の民衆やシンクーが反感を持ち易い様に不平等条約はそのまま…いや、ブリタニア至上主義の強い貴族にやってもらったから余計に酷くなってるんじゃないかな。

 それと第二次ブラックリベリオン後の仲裁やその後の流れを食い止めるために動く予定だし。

 

 うん、私働いている。

 

 ただ……これだと伯父上様と父上様、マリアンヌ様を見捨てる事になる…。

 どうすれば良いという具体例はないのだけど、どうも胸の辺りがモヤモヤするんですよね。

 

 はぁ~、どうしたらいいのか…。

 

 「あ!オデュッセウス殿下。目線をもう少し上に」

 「…ん。こうかい?」

 「そうですそうです」

 

 言われるがまま目線を上げる私をメルディが激写する。

 まずはこの状況をどうしたら良いのかな?

 確か今日は天子ちゃんとの式で着る衣装合わせを行う筈が、カリーヌたちが待ち伏せていてコスプレ会場みたいに…。

 

 どうしてこうなったし…。

 

 「お兄様、次はこれを――」

 「待ちなさいカリーヌ。兄上は仕事で来ているのです。これ以上のお邪魔はなりませんよ」

 「えー…。でもお姉さまもお兄さまの執事姿見たくない。お嬢様とか言ってもらってさぁ」

 「・・・・・・・・・兄上、もう少しカリーヌに付き合ってあげて下さい」

 「ギネヴィアにはもう少し止めに入って欲しかったよ私は。まぁ、喜んでくれているようだし着るけど」

 

 渋々ながらも妹たちが喜んでくれているなら満更じゃない。

 試着室に入り、カウボーイの衣装から執事服に着替える。

 

 すでに二十着ほど着替えているんだけどそろそろ式の衣装を決めたいのだがね。

 

 着替えて試着室のカーテンを開けるとギネヴィアの目が見開かれた。

 そして期待の眼差しを抜けて来る。

 少し悩み、覚悟を決めてギネヴィアの前に立つ。

 

 胸元に手を当て、微笑みを浮かべ、軽く頭を下げる。

 

 「どうかしましたかお嬢様」

 「――――ッ!?」

 「お兄様ストップ。お姉さまってば対応出来てない。顔真っ赤」

 「うううううう、うるひゃい!」

 「「ひゃい?」」

 「――――ッ!!そういう事は言わなくて良いのです!」

 

 可愛い妹の一面を見れてなんか衣装が決まらないのなんてどうでも良くなってきた。

 あ!メルディ。今激写したギネヴィアの写真。言い値で買おう。

 

 「にしてもシュナイゼルお兄様ったら天子との結婚を決めて来るんだもん。びっくりしたよ。ねぇ、お姉さま?」

 「………お兄様が結婚……お兄様が婿入りして……あぁ………」

 「落ち着きなさい。私が行くのではなく向こうが来るんだからね」

 「…ハッ!そうでした。申し訳ありません。少々取り乱してしまったようで」

 「え!今の少々なんですか!?この世の終わりのような顔してましたけど…」

 

 コホンと咳払いするギネヴィアはカリーヌと視線を合わせる。

 意図をくみ取ったのかカリーヌは困ったような表情を浮かべて大きく頷いた。

 

 「メルディ。お兄様ももうお疲れでしょうからここまでにしましょう」

 「ですがまだ衣装の方を撮らせて頂いてないのですが…」

 「だったら現地で撮れば良いんじゃない。式の参加状出すように言っておくからさ」

 「本当ですかカリーヌ皇女殿下!!」

 

 中華連邦とブリタニアの披露宴に入れることに喜んだメルディは深々と頭を下げて部屋を出て行った。

 そして外で警備に当たっているレイラ達にギネヴィアが誰も中に入れるなと固く言いつけた事に疑問符を浮かべる。

 この現状で何か原作イベントあったっけ?

 

 悩んでも思い浮かんでこない。

 何か忘れてしまったかなぁと困り果てているといつになく真顔でギネヴィアが口を開いた。

 

 「兄上。率直にお伺いします。内々に小さからぬ規模の軍事予算を運用しましたか?」

 「小さからぬ規模ってどれぐらいの?」

 「一個師団以上の規模の…」

 

 確かに三個師団を保有しているけれど内々にという事は無い。

 ちゃんと通すべきところには通していた筈だ。

 となると疑わしいのは…。

 

 「まさかロイドが私に黙って何か作ったか!?また請求書が私のデスクにあるのだろうか…」

 「……白ね」

 「白ですね」

 

 唐突な白判定。

 何がどういう事なのか説明してほしい。

 でなければ後でレイラと共にデスクを隈なく調べ尽くさなきゃいけないのだから。

  

 「私もマリーベルを見習って近衛騎士団を持とうと思って予算の捻出を財務長官に相談しましたの」

 「おお!カリーヌが騎士団かい。さぞ見事な騎士団が出来上がるんだろうね。そうだ。騎士団祝いに何か――」

 「話は最後までお聞きください」

 「あ、はい…」

 「それで回せる予算を構造上ストレスなく計上できるように整理していったところ不明金が出て来たの」

 「不明金?出所はどこの予算から」

 「ロイヤルバジェットです」

 

 嘘だろ!?と表情で反応してしまった。

 ロイヤルバジェットとは皇位継承権上位の皇族しか扱えない資金でそれを資格の無いものが扱う事は不可能である。

 しかも不明金というのがまたあり得ない。

 継承権上位の皇族だからって黙って持ち出せるわけがないのだ。

 

 ・・・・・・あれ?なにか覚えが・・・。

 

 「ロイヤルバジェットの4%が使途不明のままいくつかのバンクを経由して軍需複合体へ流れていたことが判明したのです」

 「そんなにかい。あれの4%というと一個師団でも最新鋭機で揃えられるんじゃないか?」

 「はい。それがここ数年ではなく遥か昔からなのです。一体いくらに上るのか」

 「もう凍結のほうは進めたけど。大本まで辿り着けなかったよ」

 「いやいや良く見つけたよカリーヌ」

 「ふふふ、ありがとう」

 「あ、兄上!私もです!!」

 「ギネヴィアも良い子良い子」

 

 カリーヌを褒めながら頭を撫でるとギネヴィアが私もと頭を差し出してくる。

 可愛い可愛い妹の頭を撫でながら頭の片隅に何かが引っ掛かった感覚に不快感を示す。

 

 「さぁて、衣装を決めようか」 

 「そうですわね」

 

 ようやく衣装を決めて、仕事を済ませ、オデュッセウスは中華連邦に出発する明日に備えて早く寝る事に。

 ベッドに寝転がってふと、引っ掛かっていた記憶が脳裏を横切る。

 

 あ!伯父上だ!!

 

 思い出した…。

 伯父上様が饗団運用資金にしていた奴だ。

 

 これで饗団は資金難に陥って自由に動けなくなる。

 ふむ、だから私が何かすることもないだろう。

 

 深い眠りに付こうと瞼を閉じる。

 

 数分後に伯父上様より資金援助の話を聞くとは思いもしなかったよ…。


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