コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第98話 「ギアス嚮団の最期 前編」

 中華連邦領内にあるギアス饗団。

 ナイトメアなどの戦力は保有していないと元饗主であったC.C.がそう言っていた。

 なにせギアス饗団はギアスを研究する秘密機関であって、ブリタニア正規軍の研究機関ではないのだ。

 表立って補給物資を受け取る訳にも、護衛や警備を配置すれば機密性が薄れる。

 

 場所の特定もされぬように警戒してきたからこそ今の今まで誰にもバレる事がなかったのだろう。

 

 ルルーシュはゼロの装束を身にまとい用意した仮設の建物へと足を進める。

 利用価値あれど攻め入るまでもないと考えていたが、現饗主であるV.V.が母さんを殺した張本人であれば話は別だ。

 カレンが居ない零番隊とギアス饗団と関りのあるロロにジェレミア、そしてギアス関係者でマオを黒の騎士団より連れて来た。

 現地ではオルフェウスというピースマークより支援を受けている反ブリタニアの部隊と合流。

 規模は小さいもののラクシャータの知っている部隊らしく、機体はラクシャータが手掛けた機体やインド軍区から送られており性能はかなり高い。さらにラクシャータが試作品を任せる辺り、部隊の腕前の高さを物語っている。

 

 そんな部隊との共闘となると心強いが敵はギアス饗団。

 ナイトメアが無かろうがギアスユーザーが多くいるという事から油断はできない。

 建物の外装は手抜きだが中はアッシュフォード学園の自室が再現されており、ジェレミアが持っている定時連絡のコードを使用してV.V.に連絡し、相手に俺がアッシュフォード学園より連絡しているように誤認させる。そうして油断している間にV.V.の居場所を特定して一気に畳みかける。

 これでようやく母さんの仇が……。

 

 入口より中へと足を踏み入れたゼロは一人の人物を見て固まった。

 茶色のトレンチコートにサングラスに髪を隠すつばの広い帽子、口元は大きなマスクで覆った不審者がベッドに腰かけて茶を啜っていた。

 ドラマに出て来るような「私、諜報員です」って主張しているような服装―――否、不審者と視線が合う。

 

 「………何をやっているのですか兄上…」

 「お!さすがルルーシュ。一発で私だと分かるとは」

 

 解らないと思っていたのか?

 普通にマスクから髭が覗いてるんだが…。

 ちょっとした頭痛に襲われながらゼロのマスクを外してテーブル前の椅子に腰かける。

 

 「なにか疲れてないかい?」 

 「……いささかいろんなことが現在進行形で続いてますので」

 「あー、そういえばアーニャから学園でまた祭りがあったとメールを貰ったね。モテモテだったらしいじゃないか」

 「おかげで心労が絶えませんよ。兄上は結婚はなさらないんですか?」

 「んー、今のところ予定はないかな」

 「小さい子限定ですか?」

 「違うからね!?君までそう思っていたの!!」

 

 大慌てで否定するさまにふと笑みが零れる。

 揶揄われた事に困った笑みを浮かべてお互いに笑い合う。

 

 「本当に兄上はお変わりないようで」

 「それはルルーシュもだろう」

 「して、今日はどうしてここに?神聖ブリタニア帝国第一皇子殿?」

 

 ゼロの面を被り直し黒の騎士団のゼロとして対面する。

 少し悲しそうな表情をしたのちにスッと真剣な瞳を向けられる。

 

 「私はギアス饗団――V.V.達が行おうとしている事を良しとしない。ゆえに阻止しようと想っている。ゼロもオルフェウス君もV.V.と敵対する身。ならば非公式であるが協力しようと思った…それだけさ」

 「協力?ブリタニアの皇子が堂々と手が出せないから我らを利用するの間違いでは?」

 「…きつい事を言うね。簡潔に言うとそうだ」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた事に言い過ぎたかと後悔する。

 弟妹想いの兄上が俺を利用してでも事を成そうとしている。

 それだけの物があるという事か…。

 

 「V.V.は任せるよ。私は中の子供たちに用があるからね」

 「―――ギアスユーザーだからですか…」

 「違うよ。ギアスユーザーであろうとなかろうと知っているのに放置が出来ないだけだよ。昔から関りはあったからね」

 「そうですか。なら施設内の子供は任せます。こちらはV.V.さえ仕留められれば良い」

 「ではよろしく頼むよゼロ」

 

 差し出して来た手をしっかりと握り返して握手をする。

 まったくこの人はあいも変わらず…。

 オルフェウスの部隊と顔合わせをした際も驚かされたものだ。

 遠目であったがまさか部隊の中にコーネリアとギルフォードが混じっているとは…。

 彼らがここに居る理由も兄上からの情報提供あっての事。ならば兄上はコーネリアがこの部隊に居る事を知っていたか、この部隊に居る事を薦めたかのどちらかだ。

 ならばずっと以前からこういう流れを想定していたのか?いや、それは考え過ぎか…。

 

 

 

 それからギアス饗団にはジークフリートがある事を伝えられ、作戦を始める前に退出しようとしたオデュッセウスは最後に「学園で誰に帽子を取られたんだい?」と聞いてきたので「シャーリーのを(・・)」と答えたらキラキラとした目をして質問の嵐。

 ……あの兄上、作戦を始めたいのですが…。

 

 

 

 

 

 

 V.V.は大きくため息を吐き出す。

 まんまと罠に引っ掛かってしまった。

 ジェレミアを刺客として送り出したのが不味かったのか、それともロロをエリア11に向かわせたのが駄目だったのか。今となってはもうどうでも良いが現状だけは打破しなければならない。

 ルルーシュはジェレミアが使っていた定時連絡時のコードを使用してこちらに連絡を付けてきた。

 場所は背景からエリア11のアッシュフォード学園と決めつけ、到着するとしても数時間後と決めつけて指示を誤ってしまった。

 ルルーシュの部隊はすでに地上面にある秘匿していた入り口を突破。内部へとなだれ込んでいる。

 出した指示はすべて後手に回って役に立たない。

 仕方がないと考えを変えるとしよう。

 

 「はぁ…リジェクトダートに研究データを運び入れて」

 「職員や子供たちは如何なさいます?」

 「実験体(モルモット)はまた新たに集めれば良いさ。研究者もまた同様に…ね。それとジークフリートの準備とアレの出撃準備を」

 「饗主自ら!?」

 「それとアレを出すのですか?」

 「持ち出せないからね今からでは。それに躾が必要なんだよ―――マリアンヌの子にはね」

 

 そうだあの女が居なければ良かったんだ。

 いなければシャルルが迷う事は無かった。

 ボクは嘘のない世界をシャルルと作る。そのために人生で一度っきりの嘘をついた。つかねばならなくなった…あの女のせいで…。

 

 マリアンヌの事を思い出しながらジークフリート改が収められている格納庫へ進んで行く。

 格納庫ではジークフリート改の発進準備と並行してアフラマズダ拠点制圧重武装プロトアラクネの準備も行われていた。

 アフラマズダのコクピットへ肉体のほとんどが代用品で賄われているアルベルト・ボッシが入り込んで義手と義足は外す。義手と義足を外すと中より棒状のプラグが現れ、本来なら操縦桿があるべき場所に空いている穴に差し込む。

 接続のチェックが行われ、シートに深々と背を預ける。

 シートには神経電位接続用の出っ張りがあり、背中に取り付けられたプラグと接続される。

 

 V.V.も背中をシートに預けて神経電位接続を行い大きく息を吐き出す。

 キーボードを操作してモニターをアラクネのコクピットとつなげる。

 映し出されたアルベルト・ボッシの瞳は虚ろでパッと見ただけでは生きているのか死んでいるのかさえ判断できない様子だ。

 

 「聞こえるかい」

 『――キコエマス』

 

 虚ろな瞳をこちらに向け力なく頷く。

 彼はオルフェウスに対する恨みから暴走する危険性が高かったために実験体の一人に発動した暗示のギアスにてこちらの言う事に素直に聞くように誘導させたのだ。と言っても暴走しやすいのは変わらず多少は目を瞑らなければならないが。

 

 「今ボク達の頭上には君が憎んでいる奴ら(・・)が居るよ」

 『ニクシミ…ソウダ…フクシュウヲシナケレバ』

 「そうだよ。君は黒の騎士団(・・・・・)に復讐しなければ気が収まらないだろう」

 『クロノ…キシダン?』

 「君を陥れた奴らの名を忘れたのかい?」

 『ソウダッタ。ソウデシタ。オレハクロノキシダンヲユルシハシナイ』

 

 上手く誘導出来たが今にも暴走しそうなポッシに苦笑いを浮かべるがどうせ使い捨ての駒だ。時間が稼げればどうだって良いのだから派手に暴れて貰おう。

 

 『饗主V.V.。出撃準備整いました』

 「うん、分かった。アラクネは地上への運搬エレベータを使って上げさせて。ここではリジェクトダートを巻き込みかねない」

 『了解いたしました。では御武運を』

 「さて、お仕置きの時間だよルルーシュ」

 

 ニヤリと笑ったV.V.は起動と同時に速度を出して格納庫天井を突き破り外へと飛び出す。

 眼前にはゼロが操る蜃気楼の姿が映し出された。

 大型スラッシュハーケンを放つが蜃気楼は直前でブレイズルミナスを展開して攻撃を防ぐ。

 そのままジークフリート改を前進させ距離を詰める。

 蜃気楼は大型スラッシュハーケンを防ぎながら施設から施設上空へと押し出され、すぐさま体制を整える。

 

 『意外だなV.V.。観察者が当事者になるとは』

 「少しは好きだったんだけどねルルーシュ。君はシャルルに似ているから」

 

 大型スラッシュハーケンを引き戻し辺りを見渡す。

 脱出されない様に待機していた暁タイプが数機。金色のヴィンセントにオレンジ色のサザーランド。それに白炎改め烈火白炎の姿まであった。

 

 『見つけたぞV.V.!エウリアの仇――討たせてもらう!!』

 「また君かいオルフェウス。まったく二人そろって躾が必要なようだね」

 『そこまでだV.V.!』

 『もう降伏してください』

 「なにを言っているんだい裏切者たちが。数だけ揃えたって――」

 『V.V.…お前をそこから引き摺り出してやる―――全機一斉掃射!!』

 

 全方位から銃弾やハドロンショットを放たれるものの、ジークフリート改の電磁装甲と機体を回転させることで全弾を逸らすことに成功。遠心力の勢いをそのままに動き蜃気楼へ向けて体当たりを敢行するが、寸前のところで回避され反撃を受ける。

 ハドロンショット程度なら難なく弾けるから問題ないが、あれほど簡単に回避されるとなるところを見るとルルーシュの腕の高さは自分よりも上だと理解するしかない。

 

 「余り時間はかけられそうにないね」

 『それは我が忠義の為にあるべき機体だ!!』

 「ジェレミア。君はゼロを恨んでいたよね?」

 『然り。これで皇族への忠義も果たせなくなったと考えたからな。されど仕えるべき主がゼロであったなら――それにマリアンヌ様の仇…ここで討たせて頂く!!』

 「お前まで―――その名を口にするか!ポッシ!!」

 

 地上から繋がっていた搬入口を突き破って現れたアラクネは腹部の十六連装小型ミサイルポッドを掃射した。迎撃できるのはほんの少数で残りの暁タイプは直撃を受けて爆散する。

 近場に居てロックオンから外れていた暁タイプは各足関節部に取り付けられた機銃により、後方に居た者は最後尾より噴出された複数のスラッシュハーケンによって撃破された。

 

 『クロノキシダンハ――メッスル!!』

 

 以前のプロトアラクネを修理し更に改修を重ねたアラクネを止める術はないだろう。

 あの時はラウンズ級が四名で倒せたが相手にはそれほどの者はいないと見た。

 笑みが止まらない。

 ルルーシュとオルフェウスが指示を出したのか生き残っている何機かがアラクネの方へと向かっていく。

 

 現在ジークフリート改を囲むはゼロの蜃気楼にオルフェウスの烈火白炎、そしてジェレミアのサザーランドの三機のみ。

 

 「たったの三機でボクを相手にするのかい?ならポッシにはそのまま他のやつらの始末を任せるさ」

 『問題はない。ここでお前は朽ち果てるのだから』

 「―――ッ!?マリアンヌの子供が調子に乗って!!」

 

 再び機体を回転させつつ体当たりを敢行するもゼロとジェレミアは回避を優先しつつ弾幕を張るのみ。問題はオルフェウスだ。烈火白炎の武装である七式統合兵装右腕部には六式衝撃砲というものがあり、弾丸はサボット式30mm高初速タングステン徹甲弾や49mm榴弾等がある。どちらにせよアレはジークフリート改に有効打に成る武装。常に回転しつつ動き続けねばならない。

 

 考え通りにオルフェウスは常に六式衝撃砲にしており、ルルーシュとジェレミアは誘導しようとしている。

 そんな浅知恵に乗るものかと距離を離して勢いをつけてオルフェウスへと突っ込む。

 

 「そんなにエウリアが恋しいならエウリアの元へ送ってあげるよオルフェウス!」

 『V.V.!!』

 

 砲撃を開始するが回転しながら電磁装甲の出力を上げて砲弾を無理やりにでも弾く。

 あの機体さえ落とせば後は何とでもなる。

 

 そう―――思い込んでしまった…。

 

 一瞬だが機体に影が差し込んだ。

 頭上を見上げるとフロートユニットを取り付けたグロースターがアサルトライフルを構え急降下してくるではないか。

 側面は回転させている為に弾き易いが、頭部が回転しようとも位置は変わらず。それに頭部のカメラ部分は機体内で装甲の薄い部分の一つ。オルフェウスの射線から外れるように急降下しつつ回転を取りやめ、グロースターに向けて大型スラッシュハーケンを出来るだけ放つ。グロースターは大型スラッシュハーケンに怯むことなく突っ込みながらもトリガーを引き続ける。

 が、頭部を破損させれるようなダメージを与える事は出来ずに右腕と右足を破損し、バランスを崩して頭上からコースを外れて落下していく。

 

 冷や冷やしたが頭上の脅威を排除出来たのでオルフェウスの排除に専念しよう。

 

 『役目は果たしました姫様…』

 「――――ッ!?目が!!」

 

 この奇襲が囮だったと気付けなかった時点でV.V.の運命は決まってしまった。

 帝国の先槍と謳われたギルフォードのグロースターによる頭上からの奇襲はただ自身へと注目を集める為だけの囮。

 その本当の役割は本命と太陽の光を遮る事。

 急にグロースターが頭上から離れた事で太陽の光をもろに見てしまったV.V.は目が眩んで状況把握が不可能となった。

 そこへ本命であるコーネリアのグロースターが急降下してくる。

 手に持つは新型の大型ランス。

 先端はブレイズルミナスを展開し、ドリルのように回転することで貫通力を増している。

 

 オデュッセウスよりジークフリートの存在を聞いていたルルーシュがもしもの時の為に立てていた策が生きた瞬間だ。

 

 頭部は外れたが先端が突き刺さって初めてジークフリート改にダメージが入る。

 されどその程度では撃破どころか装甲が少しやられただけで回転されれば当てるのは困難。

 

 『ギアスの源――饗主V.V.。ユフィの夢を砕き、ユフィの名を汚した罰を受けよ!!』

 「そんなかすり傷程度で――」

 『あぁ、まだ終わりではない!!』

 

 先端の仕掛けは新型と呼ぶに相応しい武装であるが、このランスには問題があってそれらの仕掛けを組み込んだせいで大型にせざるを得なかった。大型ランスを取り扱いながらの銃武器との入れ替えは多少なりとも手間を取る。そこで考えられたのが銃武器とランスを一体化させること。さらに大きくなるがその分武器の威力が上がり、武器の取り換えがいらなくなったことを考えれば些細なものだ。

 中腹に空いている四つの銃口より弾丸が放たれ、ランスを差し込まれた辺りに着弾する。

 穴先が銃弾により広がりアラートが鳴り響く。

 これは堪らんとジークフリート改を大きく揺さぶって振り落とす。

 振り落として安堵するのも束の間で砲撃を受けて機体がよろめく。

 

 コーネリアに気をとられ過ぎたせいでオルフェウスに対する警戒が疎かになっていた。

 停止した状態では六式衝撃砲の砲撃を弾けずに装甲に重大な損傷を受けてしまい、アラーム音と警告メッセージがさらに増して行く。

 

 「クッ…このジークフリートはもう…」

 『この機を逃すな!!』

 

 現状を打破しようと思考を巡らす隙も与えない様にルルーシュの指示が飛んだ。

 蜃気楼は胸部を開いて拡散構造相転移砲を、オルフェウスは六式衝撃砲から七式超電磁砲に代え、ギルフォードは態勢を維持しアサルトライフル、コーネリアは大型ランスに取り付けられている銃口を、ジェレミアはアサルトライフルと片腕にくっ付けられたバズーカをジークフリート改へと向けていた。

 

 「こ、このッ―――呪われた皇子が!!」

 『失せろV.V.!!』

 

 周囲を囲まれた一斉掃射は電磁装甲の出力を上げようとも、すでに装甲を大きく破損した状態では防ぐ事も出来ず、機体はさらに被弾・破壊され、フロートユニットまでもが停止した。

 火を噴くジークフリート改は地上に出て来たところより施設内へと落下していく。

 V.V.は憎しみを込めた目で睨みつけるが死に対する恐怖は微塵もない。

 なにせコード所有者は不老不死となる。

 自分は死なない。

 あとは遺跡を使ってここを脱出すれば何の問題も無いのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんか予想以上に上が五月蠅いねぇ」

 

 上でルルーシュ達がジークフリート以外にアラクネとも戦っていると知らないオデュッセウスは呑気にそんな事を呟く。

 ちなみにオデュッセウスは直した暁に搭乗して子供が隠れていないか捜索中である。護衛として同じく修復した暁に搭乗しているアキトとコーネリアが以前搭乗していたサザーランドに搭乗したクララが同行している。

 黒の騎士団は捜索や集められた子供達や研究者達を囲んで逃げ出さない様に狙っている。C.C.に関しては単騎で脱出用のリジェクトダートを破壊すべく別行動と相成った。

 

 『むぅ~早くこんな任務終わらせてオルフェウスお兄ちゃんの下に戻りたいんだけど』

 「そうむくれないでおくれよ。あとでオルフェウス君が喜びそうな紅茶をあげるからさ。プレゼントしてあげたら喜ぶよ」

 『んー…ならもう少し頑張る』

 『殿下。熱探知に反応あり――おそらく…』

 「分かった。二人共下がっておくれ」

 

 二人が後退したのを確認して前に出ると、ギアス饗団で研究の被験者に着せられる検査衣を着た少年・少女らが前に出て来た。

 先頭の男の子が片目を光らしてギアスを発動させてこちらを指差してくる。

 その様子にアニメのワンシーンを思い出した。

 確かあの子の能力は相手を直接見ないでも相手の意志を無視して操るものだったと記憶している。アニメではそのギアスで同士討ちをさせたんだっけななどと思い出していると実際に手が意志と関係なく動き出した。

 思い出している場合ではないと焦りつつもギアスを発動。

 自身の肉体をギアスに掛かる前の状態へと戻すことで相手のギアスより抜け出す。

 まったくギアスが通じてない事に驚きを隠せない少年は皆にもギアスを使用するように言う。

 オデュッセウスはコクピットを開いて姿を見せる。勿論変装道具を外してだ。

 

 「皆、元気だったかい?」

 

 姿を現すと同時に声を掛けると子供らがキョトンとする。

 覚えてないのも無理はないか。ここへ来ていたのはルルーシュがゼロとなる以前で、ここ数年はまともに来ていなかったのだから仕方がない。

 そう想い苦笑いを浮かべていると…。

 

 「あー!お髭のお兄ちゃんだ!!」

 

 一人の少年がそう叫ぶと他の子らも思い出したのか次々に叫んでくる。

 覚えてくれていた事と神楽耶も呼んでくれない愛称で呼ばれた事に感激して涙があふれる。

 

 『――殿下?』

 「すまない…感極まった」

 

 そのまま子供達に駆け寄り事情を説明しながらオデュッセウスは子供たちと多少戯れるのであった。

 上で何が起こっているかまったく気づかないまま…。


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