biohazard cordname”NT” 作:ナッツガン
そしてついにバロクをアフリカのトライセル研究所に追い詰めていた
バロク追跡戦
バロクの追跡戦が今も続いていて、俺はついにバロクをアフリカの地で追い詰めていた。
大きな研究所らしき場所まで追い詰めると、パーカーの部隊を先頭に突入させている。
俺は先程到着して現場の指揮権を受け取っていた。
先ほどクリスがウェスカーを発見したと報告を受けていた。
ジルも発見したという報告はまだだが、俺はクリスを信じて今の戦いを進めよう。
パーカーの報告によると、バロクは研究施設に“Tウイルス”を撒いたようだ。
外ではアルファーチームやデルターチームがと突入の準備を整えていた。
俺はというと、俺のパートナーの到着を待っていた。
「エル・ロージン!たった今到着しました!」
俺が振り返った先には、1人の女性が立っていた。
背丈はそんなに高くはないが、引き締まった体が彼女を美しく見せていた。
俺は彼女を見つめると、指示を出した。
「早速だが、俺と共にバロクの追跡戦に参加してもらうぞ」
「はっ!」
俺はそう言うと研究所に向かって歩き始めた。
エルはハンドガンを片手に、周囲を警戒しながら歩いていた。
「今はそんなに警戒する必要ない。研究所に入るまでは安全だ」
「は、はい!」
そうは言っても彼女は緊張が解けないようで、表情が何処か堅い。
俺はリラックスするように促すと、彼女は深呼吸をして少し落ち着いた。
俺達は仮設テントからさっさと出ると、兵士の中をかき分けるように研究所を目指した。
エルは怪我をした兵士を見るたびに、少し吐き気を覚えていた。
俺からすれば慣れた光景だが、彼女からすれば初めての光景だろう。
「確か、この任務が初めてだったな?」
「は、はい…。こんなにひどいんですか?」
「こんなもんだ。これはまだいい方だ、もっとひどいケースを見たことがある」
「…ひどい」
怪我をした兵士の中には、足を噛み千切られる人や出血が止まらない人までいた。
あらかじめワクチンが打たれている為、ゾンビ化した兵士はいない。
それでもこの惨状が、この先の研究所の悲惨さを訴えるには十分だった。
「初めてなら言うことがある」
「なんですか?」
「生きて帰る事を優先しろ」
「生きて帰るですか?」
「ああ、死ぬことは容易い。しかし、生きて帰って同志を集める事が俺達の仕事だ」
「了解です!」
そう彼女が敬礼すると、俺は研究所の入り口の前に立っていた。
俺が中に入ると、1人の兵士が兵を引きずりながら奥から出てきた。
引きずられている兵は、体中から血を流していた。
俺達の隣を通り過ぎると、人ごみの中に入って行く。
すると研究所の中から1人の兵が出てきた。
「ご苦労様です!代表!」
「現状報告!」
「パーカー隊長の部隊が一階の奥で戦闘中です!その他の部隊も戦闘を継続中ですが、ゾンビの数が予想よりも多く、けが人が続出しております!」
「今本部とアフリカ支部から応援を寄越している!それまで耐えろと伝えろ!ヤバくなった部隊から救援を出してやれ!」
すると奥から1人の兵が血まみれの兵を抱えて現れた。
エルは少し吐き気を覚えてらしいが、なんとか恐れを耐えている。
「何が在った!?」
「アルファーチームに多くのプラーガ種を相手にしております!とてもではありませんが、手に負えません!」
「近くの部隊を救援に寄越せ!」
俺の後ろから一つの部隊が現れた。
「デルターチーム!再編成が終わりました!」
「デルターチームは今すぐアルファーチームの救援に急げ!」
「了解です!」
俺の隣を走るようにデルターチームは去って行った。
俺達は改めて研究所の中に入ると、奥の方で銃撃音が聞こえてくる。
エルにとっては初めての戦闘だろう。
「行くぞ。準備は良いか?」
「大丈夫です!」
俺達は白い廊下を歩いて行くと、奥からゾンビが出てきた。
エルの持っている銃の手が少し震えていた。
「頭を狙え。少し落ち着いてな。ゾンビは走らない」
「りょ、了解です!」
しかし、そう言われてできるわけではない。
こういう事は慣れが必要だろう、少なくとも初めての任務ではそんなものだ。
最初っから慣れて戦闘できる方がおかしいのだ。
たとえば俺やジルなんかがそれなのだが。
何発か撃つとようやくゾンビの頭めがけて弾が叩き込まれた。
エルは少し安心して見せると、ハンドガンを持っている腕を下に垂らした。
「今の所はこの周辺にはいないようだな」
俺のガスマスクには“Tウイルス”を検知する装置が備えつけられている。
これはクエントに俺が直接頼んだものだ。
要するにジェネシスの改良型だ。
クエントは嬉々としながらその作業を行っていた。
俺に渡してきたときのあの表情は少しうざかった。
「エルはどうしてBSAAに参加したんだ?」
エルは俺に向かって顔を向けると、少し考えて答えた。
「家族がですね…ラクーンシティに居たんです。代表も知っていますよね?」
「当事者だからな」
「そうなんですか?」
「ああ、脱出した人間の一人だ。あそこは地獄だよ」
「…母と父はラクーンシティで死んだんです。私はそれを知って私のような人を出さないようにと入隊したんです」
ラクーンシティの事件の事は、今や知らない人間はいないだろう。
テラグリシアパニックで今やBOWとウイルスが原因で起きた事件は公表されている。
彼女のようにあの町で親しい人を失った者は少なくない。
「代表はラクーンシティでの出来事を経験したからBSAAを作ったんですか?」
「別にそうじゃないさ。俺には夢があるんだ。その夢の為に戦っているだけだ」
「夢ですか?私には今の所無いから…」
「簡単だよ…夢なんてな」
「私にも見つかるでしょうか…夢」
「見つかるさ…。俺にだって見つかったんだ」
「…代表の夢ってなんですか?」
「俺の夢は…みんなと一緒にバイオテロの無い世界を作る事だ」
俺がそう言うと、エルはそんな俺をただ見つめていた。
俺はエルの肩に手を置くと、真直ぐ通路を進んで行く。
エルもその後を付いて行く。
通路では窓ガラスからその部屋が確認できる。
部屋の中には、研究装置などが置かれていることが確認できた。
「こんな研究施設って報告に在りましたっけ?」
「無いな。少なくとも俺達BSAAには報告されてないはずだ。それも仕方ないさ、ここはトライセル社研究施設なんだから」
「ここってトライセル社の研究施設なんですか?」
トライセル社…俺達BSAAを発足させるのに必要な資金提供をしたのが、製薬企業連盟だった。
トライセル社は製薬企業連盟に入っているし、その製薬企業連盟の理事を務めている。
なので基本的に製薬企業連盟は俺達BSAAに対して強い権限を持っている。
その反面、批判逃れとして作られた組織として出来たので、そこまで強い権力を持っているわけではない。
しかし、トライセル社がウイルス研究をしているという事実を製薬企業連盟に報告したところ、あっという間に俺達に権限が移って行った。
今では俺達は国連の公的機関であるため、強くは言えなくなっていた。
今資金提供をしているのは国連だ。
ちなみに大きな資金の元では実はアメリカだったりする。
レオンを通じてアメリカの大統領と直接会談をした時、俺はラクーンシティの事を引き合いに出すと、あっという間に俺達に資金提供をする話になった。
レオンは知っている事だが、実はラクーンシティの事件を引き起こしたのはアメリカ政府がその原因だったりする。
俺もその件は知っているし、証拠も持っている。
かつてFBCがアメリカ政府によって出来た組織のように、俺達もアメリカ政府の協力が必要だった。
少なくとも俺は、かつて大統領の娘を救出する際に協力をしている為、アメリカ政府も断ることが出来なかった。
アメリカ政府もFBC解散に伴い、大きな組織が失った為、俺達に協力する気になったのだ。
BSAAを創設したのはオブライエンだが、ここまで組織を大きくしたのは俺だ。
BSAAでは俺とオブライエンの名前は結構有名で、二本柱と言われている。
オブライエンは優秀な指揮官なのだが、俺がその時どう呼ばれていたのかというと、「影の指導者」と呼ばれていた。
俺自身そんな気は無いのだが、当時俺はBSAAの発足の為に色々動いていた。
その色々な行動が俺を「影の指導者」と呼ばれる原因だったりする。
今でもオブライエンはBSAAに大きくかかわっているが、本人曰く「あんまり自分が関わり過ぎるのは良くない」とのこと。
俺自身もそれには賛成で、なるべくならオブライエンを頼らないようにしている。
オブライエンがヨーロッパで暮らしているのも、本部がヨーロッパにある事と関係している。
本部がヨーロッパにあるからと言って俺が本部勤務というわけではない。
理由は簡単で、俺自身がアメリカ国籍しか持っていないためだ。
別に作ってもいいのだが、色々書類とかが面倒だという理由で作らなかった。
何より国連本部はアメリカにある為、何かあった時に国連本部に行きやすい。
俺が長い通路を歩いて行くと、通路の奥からさらにゾンビが数体現れた。
俺はハンドガンを構えると、ゾンビの頭に照準を付けた。
「落ち着いて狙えば当たるものさ。ゾンビの額に照準をつけろ」
そう言いながらゾンビの頭にハンドガンの弾が撃ち抜かれていく。
奥から現れたゾンビを含めても、合計で6体は居たはずだ。
そのすべてにゾンビの頭にハンドガンの弾を撃ち抜いた。
「こんなもんだ」
「すごい…同じ場所に弾を撃っていくなんて」
エルはその光景を見ながら小さな声で呟いた。
俺自身慣れた光景なので、別に今更驚きはしない。
「…代表ってなんか…デスクワークだけをしている印象ですけど」
「俺は嫌いなんだよ、デスクワーク。こうして体を動かしている方が楽だしな」
オブライエンは基本本部から出ては来ないが、俺は北米支部から出てくる方がかなり多い。
元がエージェントなので、外で戦っていた方が楽だったりする。
しかし、エージェントになったばかりの彼女がこんな重要任務を任される事は異常だ。
エージェントの任務は大抵がテロ組織やブラックマーケット及びその売人の調査などの情報収集活動がほとんどで、最初にこんな重要任務が任される事はそんなにない。
重要人物の拘束は慣れたエージェントでなければ任される任務ではない。
今回の人選はHQに任せている為、俺は関与していない。
「まずは上階を調査するか」
「はい!」
エルは大きな声で返事をすると、俺はエレベーターを目指して歩き始めた。
先ほど調べた情報でここのエレベーターが動いている事は分かっている。
バロクが何を企んでいるのかは分からないが、少なくともエレベーターは上にしか移動が出来ない。
バロクはおそらく地下に隠れているのだろう。
だからと言って上にいないという理由にはならない。
バロクが妙な事を起こす前に、何とかしなければならない。
エルと共にエレベーターにたどり着くと、エレベーターに乗り込んで上階を目指した。
俺達が上階を目指している間に、俺は上の階から何かの気配を感じていた。
報告にはここから先はまだ殲滅作業を行っていない。
その理由は先に来た部隊がここで連絡を断ったからだ。
この先に何かが待っているのは間違いない。