biohazard cordname”NT” 作:ナッツガン
終わりもまたある
半年に及ぶ地獄の…終わり
俺達は達芝の通りを走りながら、クアッドタワーを目指していた。
クアッドタワーで避難している人達を救出する為に急いでいる。
他のBSAAの隊員が撤退させている為、俺達が直接目指すしかなかった。
通りを走り去ると、非常階段を急いで登って行く。
何階まで上ったのか分からないが、ある程度上がると俺達はドアを行きよい良く開けた。
ドアを閉めて鍵を掛けると、部屋の中をゆっくり歩いて行く。
窓際で一人の隊員が倒れている。
俺達が傍に近づくと、隊員が死んでいる事に気付いた。
俺達は無言でその場から離れると、近くのドアを開けて外に出る。
外ではいまだに逃げ惑う人達と、ジュアヴォとゾンビが行きかっている。
ここは一種の地獄だ。
階段をゆっくり降りて行くと、再びゆっくり通りを移動していく。
「クアッドタワーに居る人達もBSAA隊員も生きていればいいが…」
「望みは薄いけどね。私達が間に合えばいいけど」
ゾンビの追撃を何とか回避しながら、俺達はここまでたどり着いた。
クリス達は海底油田を目指しているらしい。
なんでもそこに囚われている人間を救出するらしい。
と言ってもまだ海底油田にたどり着いていないらしい。
「海底油田に捕まっている人間って、あのアルバート・ウェスカーの息子らしい」
「そうみたいね。あの男に息子が居たなんてね」
俺達にできる事は無い、俺達がするべき事は別にある。
大きな通りに出ると、目の前にクアッドタワーが見えてくる。
ここにBSAAの隊員達や避難している人間がここにいる。
「行こう。もう少しでたどりつけるはずだ」
通りを走って行くと、ゾンビが大量に道の真ん中に邪魔をしている。
ハンドガンでゾンビを何度も倒して行くと、後ろからも現れる。
「目の前のゾンビに集中しよう!」
「ええ」
目の前にゾンビを倒しながら、クアッドタワーを目指していく。
ようやくクアッドタワーの駐車場の入り口が見えてくる。
駐車場の入り口にはシャッターが下りているが、俺達が近づくとシャッターが壊れた。
シャッターの奥から数えきれない数のゾンビが現れる。
「こっちだ!」
俺はジルを連れて道を曲がってクアッドタワーの別の入り口を探す。
すると、上の方で何かが落ちてくるのが見えた。
連絡橋がクアッドタワーの外に突き刺さる形が落ちた。
「危ないな!なんで連絡橋が」
上の方を見るが、高すぎる為か何があるか分からない。
俺達はゾンビの大群から逃げるように移動すると、クアッドタワーの入り口が見えてくる。
俺達は入り口に走って行くと、奥にそのまま移動していく。
中はやけに静かで、ゾンビや生存者などいないようにすら思える。
避難場所を真直ぐ目指すが、ゾンビは後ろから追っていることに気づいた。
「生きていてくれよ」
ホールにたどり着くと、そこに居たのは、ゾンビと死人の山だった。
「間に合わなかった」
「…ベル。行きましょう」
「ああ、分かってる」
ホールから出ると、今度は別の場所を目指していく。
今回の事件の主犯格の情報が欲しい。
俺は端末を使って、とある人物を呼び出した。
「…エイダか?俺だ。お前に仕事があるんだ。今回の事件の主犯格の情報を入手してくれ。…ああ、仕事だ」
そう言うと、エイダとの連絡を切った。
俺達は真直ぐ進んで行くと、中央に大きなタワー状のモニュメントが付いている。
すると上から人が降ってきた。
人はモニュメントに突き刺さると、血が地面に一つの紋章を作らせた。
それは、俺達にとって畏怖すべき紋章だった。
「…アンブレラ」
落ちてきたのはシモンズだと気づいた。
「馬鹿な男だ。自分を中心に世界が回っていると思っているのだから。でも、世界はお前を中心には回っていない。アメリカを作ったのはお前かもしれないが、今のアメリカを動かしているのは、市民だ」
シモンズ家が何かを裏で何かをしているのは事実だ。
それを何とか明かさなければならない。
シモンズは自分が絶対だと信じていた。
この一連の戦いの犠牲者はこんな結末を望んでいたのだろうか?
フィン達はこんな戦いを望んでいたのだろうか?
こんな、すべての人が犠牲になった戦いを…望んでいるのか?
それを確かめる術など俺には無い。
それでも、死んだ者達が安らかに眠れる事を望もう。
すると、シモンズから端末が一つ落ちてくる。
俺はそれを拾って、中身を確認してみる。
『あなたは良い道化でしたよ。byバロク』
そこに書かれている人間の名前を見た途端、俺はすべてを理解した。
どうしてバロクがあれだけの逃亡劇をすることが出来たのか。
答えは簡単で、シモンズが裏で取引をしていたからだ。
シモンズすら利用して見せたバロク。
「道化…。シモンズすらも自分の計画の土台でしかないのか?あの男は何がしたいんだ?」
「…分からないけど。哀れな男ね。シモンズ」
奥から声が聞こえてくると、エイダがいつの間にか傍に来ていた。
エイダは俺に向かって何かを投げてくる。
「?これは?」
「偽エイダ…。カーラ・ラダメスの情報よ。お金はいつもの所によろしく」
「分かってるよ。そう言う所はちゃっかりしてるな」
「仕事だしね」
俺は端末に差し込むと、カーラ・ラダメスの情報を見ていた。
そこには、1人の女性のシモンズに対する愛情が憎しみに変わって行く瞬間が移されていた。
「カーラ・ラダメスも、ウイルスに運命を翻弄された人間と言った所か…」
「悲惨な最期だったわよ」
「…せめて安らかに眠れる事を祈りましょう」
「そうだな…。それでもこの戦いは犠牲者が多すぎる。多くの人が傷つき、倒れて…死んで逝った」
「それでも、私達は生きているわ」
「そうよ、私達が出来る精一杯の事をしましょう」
この戦いを生き延びた人間として、俺達はこの世界からウイルスを消さなければならない。
イドニア共和国から始まり、中国に至るまでに多くの人々が犠牲になったこの戦い。
忘れないでおこう、戦っていくために。
クアッドタワーの入り口から出て行くと、俺達は大きな通りに出てきた。
エイダと共に歩いて行くと、上からヘリが降りてくる。
「代表!大変です!」
「どうしたんだ?エル」
「彼からの情報で、海底油田に超大型のBOWを発見しました!これが解き放たれたら、あっという間に世界中にウイルスを感染させる事が可能だそうです!」
エルからの報告を聞くと、俺は少し唖然としていた。
未だにそんな切り札が在ったのか?
海底油田と言えば…
「海底油田って、確かクリスが向かった…」
「ああ、少し心配だな」
そう考えていると、俺は何か策を考える事にした。
超大型のBOWをどうにかする事は容易い。
問題はクリス達を救出できるかどうかだ。
「あいつはどこに居る?」
「さあ?今は分かりません。もしかしたら、既に帰宅しているかも」
「…役に立たん男だ」
こういう時にあいつが居るのに!
こうなると、俺達が直接救出に行かなければならない。
「…エル!確か、例のウイルスが在ったはずだな?」
「はい。たしかに持ってきていますが?」
「用意してくれ!後、潜水艦を一隻用意してくれ」
「分かりました!すぐに用意させます!」
そう言うと俺はエイダの方に向かった。
「すまんがエイダ、付き合ってくれるか?」
「お金をよろしくね」
「…分かりましたよ」
潜水艦に乗って海底に移動していくと、海底に今にも沈みそうな海底油田が見えてくる。
俺達は今からあそこに乗り込もうとしているのだ。
「あそこに乗り込むって事は、ある意味自殺行為よね?」
「言うなよ。想像したくない」
海底油田に止めると、中に乗り込んだ。
潜水艦を止めたところは、まだ浸水をしていないらしく、エイダは近くの端末で、周囲の隔壁をうまく閉じた。
「これである程度の時間は稼げるはずよ」
「じゃあ、行くか?」
「ええ」
クリス隊長を送った、ハオスも倒した。
これで良い、これで守られた。
代表が危惧していたことが、今になって理解できた。
あの人は、こうなる事を心のどこかで理解していたのかもしれない。
体の変異が止まらない。
なんか、どうでも良くなってくる。
それでも、あの人にすべてを任せる事にした。
みんな…ゴメン。
俺はここまで見たいだ。
そう…もう、寝てもいいよな?
俺は死んだのか?俺は今…どこに?
揺れている?暖かい何かの上に居る事が分かる。
ゆっくり目を開けると、そこに居たのは…
「代表?」
「?目を開けたか?」
「大丈夫?ピアーズ」
「…どうしてここに?」
「助けに来たに決まっているだろ」
代表達だった、代表にジルさん、それに…あのエイダ・ウォンがそこにはいた。
「頑張ったな!ピアーズ」
「代表…俺は」
「大丈夫だ…大丈夫だから」
そうか…もう、大丈夫なのか。
それが分かると俺はどこか安心してしまった。
何か悪夢を見ていたような気がする。
すべてが夢にさえ思えてくる。
「悪夢は終わったんだ」
俺の失われているはずの右腕は、すっかり元の姿に戻っている。
それどころか、変異がまるでなかった事になっているかのようだ。
それを確認すると、俺は安心して眠ってしまった。
代表室では、今まさにクリスが呼ばれていた。
「アルファーチームの全滅および単独行動、命令違反などなど…。まあ色々とやらかしてくれたな」
目の前の書類を見ると、ため息が出てくる。
「本来ならお前は除隊処分になってもおかしくないのだが…。まあ、ハオスを倒した構成もあるし、全世界規模のバイオテロを防いだ功績もある。よってお前は引き続きアルファーチームの隊長を務めろ。止めるなんて言い出すなよ。本来ならピアーズがその場に付くはずだったんだからな?」
「分かっている」
そう言うとクリスは部屋から出て行く。
俺も部屋から出ると、病棟に急いだ。
病室に入ると、そこにはジルが既に居た。
「容体は?」
「今の所は何ともないそうよ。でも、いつ目を覚ますか、分からないって」
そう、ピアーズは結果からすれば生きている。
変異した体も元に戻っている。
「うまくなじめるかどうかは、ピアーズに掛かっているしな」
どうしてピアーズがどうして無事かと言うと、俺がピアーズに“改良型NTウイルス”を打ったからだ。
しかし、これからピアーズが生きていけるかは、今の所は五分五分だ。
「…すまない、ピアーズ。俺がちゃんと止めてさえいれば」
後悔だけが、この場を見たいしてる。
窓を見ると、ようやく日が昇っていた。