ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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どんどん書きます。


黒の剣巫編Ⅲ

ブルーエリジアムは絃神島から18キロほど離れた海洋上に建設された増設人工島サブフロートだ。

そこに行くには船で20分かかる。

古城たちはその道のりを経てようやくブルーエリジアムに到着した。

「やっと着いたな……にしても暑いな」

そう言って霊斗が汗をぬぐう。

そのとなりではアスタルテもぐったりとしている。

そして、更にそのとなりでは船酔いでダウンしている古城が雪菜に支えられている。

「先輩、本当に大丈夫ですか?」

「ああ……もうちょい休めば大丈夫だと思う」

そう言って近くのベンチに座り込む古城。

しかし次の瞬間、古城はおかしな声を上げながら飛び上がった。

「浅葱!?なにすんだよ!」

「なによ、ただ冷えペタ貼っただけでしょ」

そう言ってニヤニヤと笑う浅葱。

しかし、堪えきれなくなったのかとうとう吹き出した。

「それにしてもなによ今の声……フフッ……」

「うっせーな……びっくりしたんだよ……」

そう弱々しく反論する古城。

そんな古城の額にもう一枚冷えペタを貼りながら浅葱が言う。

「まったく、船酔いで冷えペタなんて世界最強の吸血鬼とは思えない醜態よねぇ……」

「んなこと言われてもな……」

周りが勝手に言ってるだけだろ、と呟いて古城は持っていたスポーツドリンクを飲み干す。

その時、古城の携帯に矢瀬からのメールがとどいた。

「お、宿の手続きが終わったみたいだ。霊斗に空間転移でつれてきてもらえってさ」

古城がそう伝えると霊斗が気だるげな表情をしながらゲートを開く。

そして、そのゲートを潜ると目の前に広がったのは地中海風のコテージだった。

「おいおい……本当にタダでこんなとこ泊まっていいいのかよ……」

古城がそう呟くと、背後から矢瀬が古城の肩に手を回して言う。

「ああ、ただし条件があるけどな?」

そう言って意地の悪い笑みを浮かべる矢瀬。

「条件?」

嫌な予感をひしひしと感じながら浅葱が聞く。

その時、ブルエリの設備であろう電動カートが一台、コテージの庭に乗り込んできた。

そこから降りてきたのは施設の従業員であろう女性だった。

「チーフ、お疲れ様です」

矢瀬がそう声をかけると、チーフと呼ばれた女性は古城、浅葱、霊斗、アスタルテを順番に見て、首肯く。

「うん、いいじゃない!この子達なら大丈夫そうね」

「ちょ、ちょっと待ってください。どういうことですか?なにが大丈夫なんです?」

そう霊斗が聞くと、チーフは不思議そうな表情をしたあと、矢瀬の方を向いて聞く。

「あれ、まだ説明してない?」

「ええ、これからっすね」

矢瀬がそう答えると、チーフは首肯いて言った。

「じゃあ、まずは高校生たちは水着に着替えてきてね。早速働いてもらうから!」

一瞬全員が固まったあと、言葉の意味を数秒かけて理解する。

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁぁぁ!見て雪菜ちゃん!魔獣がいっぱいだよ!」

そう言って喜ぶ凪沙の後ろを歩きながら雪菜が答える。

「うん、すごいね……こんなにたくさんの魔獣なんて滅多に見られないもんね」

そう言いながら雪菜は凪沙の横顔を見つめる。

すると、その視線に気づいた凪沙が首を傾げる。

「どうしたの、雪菜ちゃん?」

「えっと、魔獣とかは大丈夫なのかなって思って」

そう、凪沙は魔族恐怖症なのだ。

その類縁である魔獣は平気なのかと問う雪菜。

「そっか、心配かけちゃった?」

「ううん、大丈夫ならいいんだけど……」

心配そうな雪菜にを安心させるように凪沙が言う。

「確かにまだ魔族は怖いって思うけど、ウチには霊斗君もアスタルテちゃんもいるから。最近は少しずつだけど慣れてきたんだ」

「そっか……」

「それにね、男性恐怖症の人でも動物のオスは平気でしょ?それとおんなじだよ」

そう言って笑う凪沙。

しかし次の瞬間、その表情が変わる。

凪沙と雪菜は地面が揺れるような錯覚を覚え、咄嗟に手すりを掴む。

「なに……今の……」

呆然とする凪沙。

一方雪菜は感じた魔力の波動について考えていた。

(今の巨大な魔力は一体……少なくとも先輩や霊斗さんの眷獣では……)

しかし、直後の凪沙の悲鳴で雪菜は我にかえる。

「雪菜ちゃん!魔獣が……!」

見ると、怯えた魔獣が水槽のなかで暴れている。

しかし、雪菜一人ではどうすることも出来ない。

己の無力さに雪菜が絶望しかけた時だった。

「静まれ、獣ども」

冷たく凍てつくような言葉と共に放たれたのは、先程の魔力よりももっと濃密な冷気だ。

すると、魔獣たちは一斉に動きを止める。

その瞳に映るのは絶望の色だ。

恐怖を上回る絶望で魔獣の動きを止めたのだ。

そして、その冷気を発しているのは凪沙だった。

しかしその様子は普段の凪沙の様子とは全く違う。

「これは……憑依……?あなたは一体……」

雪菜がそう呟いた瞬間、凪沙の身体から力が抜ける。

転倒しそうになった凪沙を雪菜が支えると、凪沙は意識を取り戻した。

「ん……あれ、魔獣は?」

「それは……」

雪菜がどう答えるか迷っていると、声をかけてくる者がいた。

「怖かったわね、今の」

「え、あ、はい……」

声の方を雪菜が振り向くと、そこには三脚ケースを肩に掛け、カメラを持った少女がいた。

その少女は不思議な笑みを浮かべながら雪菜に聞く。

「写真、撮らせてもらえて?」

「いえ、今はちょっと……プライベートなので……」

「そう、残念」

雪菜の返事にクスリと笑うと、少女は去っていった。

結局なにがしたかったのか分からず戸惑う雪菜に凪沙が声を掛ける。

「今の人、知り合い?」

「ううん……会ったことは……ないと思うけど」

雪菜の返事を聞いた凪沙は少女の去っていった方を見ながら、でも、と続ける。

「雪菜ちゃんとか霊斗君と雰囲気が似てたよね」

凪沙の台詞は、雪菜も僅かに感じていたことだった。




こんな所ですかね。
また何か気になる点等ありましたらご指摘お願いします。
ではまた次回。

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