ストライク・ザ・ブラッド~幻の第五真祖~   作:緋月霊斗

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超久々の投稿です。
待ってた人とかは居ないと思いますが……。


黒の剣巫編Ⅶ

振り抜かれる煌華鱗をギリギリで回避し、古城が声を上げる。

「煌坂!?お前っ!危ねぇだろ!」

しかし、古城の声が届いていないのか、紗矢華は煌華鱗を弓に変形させ、矢を放つ。

「姫柊!どうなってんだこれ!?」

「わかりません!ただ、今の紗矢華さんは……」

雪菜がそう言って、古城に向けて飛来する呪術砲撃を撃ち落とす。

「行きましょう、莉琉。彼女が時間を稼いでいる間にね」

霧葉は結瞳に向けて手を伸ばす。

結瞳はそれに向けて頷くと、魔力の翼を羽ばたかせる。

だが次の瞬間、その翼が砕ける。

「待てよ……きっちり説明してもらうぞ、霧葉」

「霊斗……邪魔しないでもらえるかしら?あなたは私たちの協力者のはずでしょう?」

「今後協力するかどうかは、そっちの計画によって決める」

無差別に放たれる紗矢華の呪術砲撃を結界で防ぎながら、霊斗が霧葉を睨みつける。

古城が紗矢華の正気を取り戻すまで時間を稼げればいい。

しかし、そんな霊斗に向けて、霧葉が武器を構える。

鈍い銀色に光る双叉槍(スピアフォーク)が展開し、音叉の様に共鳴する。

「太史局の六刃神官と獅子王機関の剣凰……どちらが強いか試してみる?」

「時間がかかれば不利になるのはそっちだと思うけどな。じきに古城が紗矢華の精神支配を解く」

「……そうね、この場は退かせてもらうわ」

「まぁ、そんな簡単に逃がさないがな」

霊斗がそう言って、霧葉に接近する。

空間操作で氷牙狼を取り出し、双叉槍を弾こうとする。

「……残念だけど、この槍の能力を貴方に教えなくて正解だったようね」

その台詞と共に、霧葉の身体が不自然に後ろに下がる。

「なっ……!外した!?」

「擬似空間切断の応用だけど、案外上手くいくものね」

霊斗の攻撃を回避した霧葉は、一瞬の隙を突いて結瞳を抱え上げる。

「これ以上私に攻撃すると、この娘の安全は保証出来ないわ」

「てめぇ……」

「キリハ怖ーい!ねぇねぇ、早く行こうよ!」

結瞳の言葉に頷くと、霧葉は霊斗に向けて言う。

「もうすぐ奴が動き始めるわ。貴方が本当に協力すべきなのは誰か、よく考えることね」

霧葉が再び槍を振ると、二人の姿が一瞬で消える。

「あっ……!くそっ、逃がした!」

霊斗は氷牙狼をしまうと、古城の方を見る。

そこには、腹に煌華鱗を受けながら紗矢華の血を吸っている古城の姿があった。

「ったく、無茶しやがって……」

霧葉を追って行ったのか、雪菜の姿はない。

「あぁ……霊斗、どうにか止めたぜ……」

「いや、止めたって……古城お前、4番目使ったな?」

「あー、まぁ、な……」

修復出来なかったら一体どうするつもりだったのか、考え無しの古城にため息を吐き、紗矢華の肩を叩く。

「おーい、紗矢華ー、起きろー」

「ん……んぅ……あれ、霊斗……?なんでここに……」

ぼんやりとした表情で周囲を見渡す紗矢華。その瞳が、自らと抱き合ったまま腹から血を流す古城を捉える。

「あ、暁古城!?なんであんたと抱き合って!?っていうかその怪我何!?」

「覚えてないのかお前、結瞳に操られてたんだぞ?」

「結瞳……江口結瞳!あの子は!?」

ようやく自分に起きていたことを思い出し始めたのか、青ざめる紗矢華。

「そ、その……暁古城、ごめんなさい……私、どうかしてて……」

「いや、気にするなよ。俺が勝手にやった事だしな。操られてたんだから、煌坂は悪くないさ」

「そ、そう……ありがとう……」

紗矢華がそう言って頬を染めている所に、雪菜と浅葱が駆け寄ってくる。

「何よこの穴!?どうすんのよこれ!」

「先輩!紗矢華さん!無事ですか!」

「古城以外は無事だ。それより雪菜、結瞳は?」

「それが……」

浮かない表情で雪菜が事の顛末を話す。

最後まで聞いた所で、霊斗がため息を吐く。

「やっぱり霧葉に操られてたのか……しかも太史局の双叉槍なんて面倒な装備も使って」

面倒臭そうに言う霊斗に、紗矢華が聞く。

「霊斗はあの六刃の女と知り合いなの?」

「まぁ、詳しい事は言えないが、とある魔獣に関しての防衛作戦で一時的に協力関係にある、ってところだな」

霊斗の魔獣という言葉に反応した雪菜が言う。

「海底の方からの強い魔力を感じた直後に、結瞳ちゃんは夢魔の力を自分から解放して飛び去ってしまったんですが……何か関係が?」

「まさか……霊斗、あなたアレの相手をする気なの?」

紗矢華が信じられない物を見るような目で霊斗を見る。

「なんだ、紗矢華も知ってたのか……まぁ、島にあんなモノ近づける訳にはいかないからな」

霊斗はそう言って海の方を眺める。

そんな2人に向かって古城が言う。

「なぁ、2人だけで納得してないでいい加減教えてくれ。アレってなんだ?結瞳は何をしようとしてるんだ?」

古城の質問に対して、霊斗が答える。

「神々の時代に生み出された超弩級生態兵器……"レヴィアタン"。それを世界最強の夢魔、リリスの能力で操り、絃神島への接近を回避する。それが、今回俺が協力している計画だ」

「世界最強の……夢魔……」

古城が唖然とする。

「ただし、俺が知らされていた計画とはかなり違う内容で進行している。恐らく太史局以外に別の組織が関わっている……だよな、紗矢華」

「ええ。太史局が協力しているのは、このブルーエリジアムの魔獣庭園を運営している企業、クスキエリゼ」

「そいつらがレヴィアタンを掌握しようとしてるって事か」

古城が納得したように言う。

その隣で霊斗が紗矢華に聞く。

「恐らく、クスキエリゼの研究所に、結瞳の能力を補助するための機器があるはずなんだが、わかるか?」

「人工知能ね。見たわよ。多分、外部からハッキングができれば支配権を奪えるはずよ」

「わかった。後はレヴィアタン本体か……クスキエリゼの潜水艇があるだろうから、それを使えばいけるか……」

霊斗はそう言って、古城たちの方に向き直る。

「俺の仕事に巻き込む形になって悪いが、協力してくれ。結瞳を連れ戻す為に」

「ああ、元からそのつもりだ」

「私が任務失敗しちゃったのも原因だから……」

「先輩が行くんでしたら、私も」

「ハッキングなら私が必要でしょ、今更水臭い言い方しないの」

皆が口々に答え、霊斗は頭を下げる。

「すまない、助かる」

そんな霊斗の袖を引っ張る者がいた。

「ん……?あ、アスタルテ、どこに居たんだ…?」

「先程までコテージの周囲で、薔薇の指先による結界を張っていました」

「それは……ご苦労さま……」

「ありがとうございます。それにしても、私抜きで随分と大事な話をしていたようですが」

「えっと……それは……」

「私は戦力として数えていないと、そういうことですか」

「いや、そういう訳では……」

夥しい量の冷や汗をかきながら、霊斗が目を逸らす。

「もういいです。霊斗さんのバカ」

「うぐっ……」

冷ややかに告げるアスタルテと、膝から崩れ落ちる霊斗。

それを見ながら古城が呟く。

「大掛かりな作戦の前にしては、締まらねぇなぁ……」


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