今回は別視点です。
では、宜しくお願いします!
ーーー今、私達の目の前には2人の男が居る。
1人はゼロ。黒の騎士団を率いる仮面の男。
彼の素顔は誰も知らない。そんな彼が黒の騎士団のリーダーになっている理由は簡単だ。
今まで幾つもの不可能を可能にしてきたからだ。彼は行動によって示すと宣言し、見事に私達を奇跡へと導いた。
そんな彼をリーダーと認めつつある雰囲気だけど、それでも人前でその仮面を被り続けて居る彼への不信感を拭えない。
寧ろ、幾つかの山場を共に超えてきたにも拘らず、その私達の前ですら素顔を見せない事は特に最初から共に行動してきたメンバーにとって一種の苛立ちにも似た感情へと変わってきている。
でも、私は思う。
無理にゼロの仮面を剥ぐ事になれば、彼はどこかへ消えてしまう気がする。
この瞬間にゼロが消えた黒の騎士団を想像してみる。
・・・ダメだ、まったく思い浮かばない。もう駄目なのだ、彼がいないと。
『想像すら出来ない』という事は私はもう自分で考えることを捨てている。
もし、自分達で事を起こしてもきっと彼のように上手く行かない。
だから私は、ゼロが誰であろうと構わない。いや、誰であろうとついて行く”しかない”のだ。
少し落ち着こう。
こんな事幾ら考えても今後の作戦には関係無い。
今重要なのは、ゼロの隣に居るもう一人の方だ。
見た感じ、年は私とそう変わらないように見えるそいつは、肌が浅黒くその対比のように髪は真白。
さらにとても目に付く外套の赤はまるで流された血の色の様で、ある種の威圧感すら与えている。
それも相まって、身に纏う雰囲気は冬の川の冷気の様な、身の引き締まる思いをさせる。
服装は違うけど、昼間に偶々見た男がそこにいた。
「紹介しよう。彼の名はアーチャー、我々黒の騎士団の同士だ」
ーーーーー
ゼロの紹介は要点を掻い摘んだ簡潔なものだった。
ー今日の作戦を支援していた。
ー今後はゼロが直接指示を出す。
ゼロが個人へ直接指示を出す。それは後から来たのにも関わらずそいつがどれだけ特別扱いされているか良く分かる言葉だ。
皆はあまり納得していなみたいで口々に不満を零している。
でも、私は何となく納得した。
今回の作戦は今までよりも敵味方問わずに死傷者が極端に少なかった。
昼に見た集団リンチといい、今回の作戦といい、彼が携わった戦いはどちらも殆ど”戦わずに”勝っている。
ただ勝つよりも何倍も難しい事をこの短時間に2回も見せられたら流石にそこは認めないわ訳にはいかない。
多分、あの倉庫内で爆弾を設置したのは彼だ。
今までとは根本的にやり方が違った作戦に彼が初参加だったのはきっと偶然ではない。
そう考えると、もしかすると1つ目の大きな爆発も彼の用意したものなのかもしれない。
なら後方支援メインなのかと思えば、どうやったか分からないけど私と対峙していたナイトメアを個人で破壊してしまった。
方法が分からないのは確かに不安だけど、それは今までのゼロだって同じだ。
ならきっとこの人は私達のプラスになる。
思考がひと段落し落ち着いた私とは裏腹に、段々と大きくなる周りの声は彼の入団を認めるか認めないか見たいな事になっている。
まあ私も少し気に入らないけど、そんなの仕方ないじゃん。
それに、お母さんも・・・
「私は賛成」
「おい!どういうことだよカレン!」
少しは自分の頭使いなさいよ。
「その人は自分の力を行動で示したの。今更方法なんて関係ないでしょ?ゼロがそうなんだから」
「そうだ玉城。彼は力を示した。それをゼロも認めたんだ、俺も賛成だ」
扇さんがそう言うと後に続くように皆も納得していく。
リーダーはゼロだけどやっぱり私達の中では扇さんが居てこその黒の騎士団だ。
「ふむ、決まったようだな。改めて名乗ろう。アーチャーだ。よろしく頼む」
ーーーーー
あの後アーチャーへ様々な質問が飛び交った。
年や出身地から今まで何をしていたか、もちろん爆弾の用意ルートなども。
彼と話すことで分かった事は、身に纏う雰囲気の割りに意外と話しやすい事。
1人称が私だったりと同年代にしては珍しい物言いは貴族の出とも思わせたけど、まず本人が言うには日本人らしいし『明らかに見た目が日本人じゃない』と私が指摘すると『君の方こそ髪の色は赤の様だが?』って皮肉で返してきたりと第一印象と違い、案外気安く話せるみたいだ。
でも、爆弾の設置した時の事やナイトメアを破壊した時の事を具体的に聞き出せはしなかった。
答えてはくれたけど、何か違う気がする。
まあそこは、感の部分もあるけどね。
今私はゼロの自室へと向かっている。
あいつは切りのいい所でゼロと共にその場を後にした。
でも、私には直接言っておきたい事があった。
個人的な事だから、皆がいる前じゃ無くて出来れば2人のときに。
だから解散まで待って、多分居るであろうゼロの自室へと向かっていた。
「ゼロ。私です。アーチャーと話がしたいのですが」
扉の前から問いかける。
もし今いなくても、連絡手段は持っているはずだ。
出来れば顔を合わせて言いたいけど、遅くなるよりは電話ででも先に言っておいて、後で会ったらもう1度言えばいい。
「カレンか。少し待て」
程なくして「入れ」の声に答え自動で開いた扉をくぐる。
そこにはやっぱりアーチャーもいた。
「私に話があるようだが、一体どんな用件だ?」
言葉だけ見れば高圧的なのに、彼が言うと別にそんな感じはしない。
むしろ、何となく似合っているのがイラつくけど。同い年の癖に。
でも、今はそんな事よりも。
「うん、それなんだけどね・・・あの時女の人助けたでしょ?」
「ああ。君が庇っていた女性の事か」
「そう、それで、その。・・・ありがとう、守ってくれて」
「ん?君にお礼を言われる筋合いは・・・いや、受け取っておこう」
多分、私を見ておおよそ察してくれたんだと思う。
いや、私だってちゃんとお礼しようと思ってたんだよ?
でもいざ目の前にすると、同年代に母親の話をするのはなんか恥ずかしかったというか・・・。
何かしたり顔になってるのも今回は許そう、うん。
これでおあいこって事にしておこう。
「それで。君はどうして黒の騎士団に?見たところ学生のようだが」
いや、前の話と全然関係ないじゃん。何が『それで』よ。
「・・・別にあんたに関係ないじゃん」
同じ年の奴に学生云々言われて少し気が立ってしまった。
「まあ、確かに私と君は初対面だし無理にとは言わないが。・・・その割に私の方は根掘り葉掘り聞かれたがな」
良い顔してる。それはそれはとても『イイ顔』だ。
・・・でも、何となく分かったかも。
こいつは皮肉を『こういう使い方』する人間なんだ。
そこらの奴らがする、ただ相手を馬鹿にして自分の気分を良くする為じゃなくて。
やっぱり昼見た時と同じだ。
あの時は店主から矛先を自分に向けるために。
なら今回は。
「あんたって・・・不器用?」
「むっ」
ほらやっぱり。
「あんた中々難しい性格してるね」
「そういう君は分かりやすい気性だな」
ああ、でも。少し心地いいかも。
なんていうか、打てば響くって感じ?
多分、今私の顔は目の前の顔と同じ表情をしているんだと思う。
「まあいいや。改めてこれから宜しく」
「ああ。こちらこそ宜しく頼む」
自然と手が差し出される。
2つの手が重なり、握手が交わされる。
その手のひらは硬く、私には想像もつかないほどに使い込まれている事がわかる。
大きい。
それは手の大きさじゃなくて、彼自身が。
暖かい。
それは体温じゃなくて、彼自身が。
自然と手が離れる。
多分、私達は彼の事を『全く』知らないんだと思う。
でも、これからは仲間だ。きっと知る機会もある。
その時になれば私も少しくらいは。
長い回想から戻ってくる。
少ないやり取りだったけど、別に今はこれで問題ない。
問題は山積みだけど、私は必ず成し遂げる。
待ってて、お母さん。
必ず私が・・・
星空に見守られる病院からの帰り道。
彼女が知る由も無いだろうが、丁度彼は今頭上で光る流れ星の様な存在だ。
本来は交わることの無かった点と点だが、人の願いによって繋がれた線となった。
それは、
彼ら彼女らの行く末を暗示しているかの様な、そんな満点の星空の下で。
「あ、流れ星」
一つ流れる星を、彼女は見つけたのだった。
たまには別視点もいいですね。
最後のはどうしても書くと決めた時にどこかで入れたかったやつです。
気付いてもらえたら嬉しいです!
では、ありがとうございました!