そよそよと静かな風が、青年の髪と周りの木々の葉を揺らす。その度に聞こえる葉が擦れる音を聞きながら、青年は山を歩いていた。
その青年は普通の服装で、所々擦り切れた箇所があり、
長い間その服だけを着ていたことがわかる。
その中で異様な雰囲気を放つ物が、青年の腰に差さっている。
丸い円状に隔てられた、短い部分と長い部分。長い部分は鞘に入ってわからない。
短い部分の先端には装飾と思える紐がついている。
今の時代、めったに見かけず、見かけたとしても博物館でしか見ない代物、「日本刀」だ。
彼の職業は一応のところ、狩人、ということになっている。
しかし、一般のような猟銃を使って行われる物ではなく、その腰に差した日本刀を使って行われる、珍しい、というよりもおかしな狩りである。
剣は血がつくと切れ味が悪くなり、猛獣に近づかなければ行けないため、猟銃を使って行われる狩りよりも危険かつ非効率である。
そんな狩りを彼がするのは理由があるためであるが、その理由は後ほど。ここで言える事は、その剣は普通ではないためである。
青年・・・その名を立沢流人(たつざわりゅうと)という彼は、狩人とは言っているが、決まった住居を持たず、国内を放浪しづつけている。
その道中ですれ違った動物を必要なくらい狩り、どうにか毎日を過ごしている生活である。
狩った動物の毛皮は人里まで持っていき、そこで売り払う。
他には木の実、きのこなどの山菜など売り、金を稼ぐが、大体は自給できているので、金を使うところといえば穀物を仕入れる時や野菜が足りていない時、火が必要な時くらいである。
水は川で調達できるし、肉や野菜は自給出来るため、金を使う必要が無い。
他に使うところは洗濯くらいであるが、これも頻度はとても低く、数ヶ月に1回やるかどうかと言ったところだ。
体の洗浄も、これまた川の水も使って行われる。
冷たいが、慣れてしまえばどうってことは無い。
砥石は昔から愛用のものがあり、未だ無くなっていない。
そもそも研ぐ頻度か少なく、砥石は既にお守りのようなものとなっている。
と、いうような感じで流人は生活している。
そしていま、紅く染まる葉の下を通り、山を歩いている。
こんな姿が警察に見つかってしまえば、銃刀法違反で即刻刑務所行きなため、森や山、田舎町くらいしか通れない。
大きな都市でなくても、それなりに人口が集まっていれば、東北程度の都市であってもすぐに見つかってしまう。
そのため、流人は山での野宿や曰く付きの廃墟などでの泊まりなど、既に慣れっこである。
勝手にドアが動いたり、木々が揺れたり、足音がするなどのことは「またか」程度で済ませてしまう程であり、ちょっとやそっとでは恐怖を覚えないはずである。
しかし、流人はいま、並々ならぬ不安と恐怖を感じている。
振り向くと、先ほどまで斜面を登ってきたはずなのに延々と続く平地となっている。
「どういうことだ?俺はさっきまで山を登ってきたはず...。それがこんな平面になっているとは...。それにさっきから......」
・・・聞こえる...。いつも聞いているような獣の声ではない何かの声が。
本能に訴えかける恐怖があるとするならば、この声が一番近いかもしれない。
しかし、後戻りはしない。遠くから見た時、この山は小さいと感じていた。
超えるのにそう時間はかからないはずだからさっさと進もうという考えだ。
しかし、行けども行けども同じ風景が広がるばかりで一行に降りていく感じがない。
言葉では言い表せない声を聞きつつ、進んでいく流人の胸中は不安と恐怖で埋め尽くされていくばかりである。
(怖いと思うのはいつ以来だろうな。人に会いたいと思うのも久しぶりだな。昔は暗い夜道が怖いとか言ってたなあ。)
怖いという感情にすら懐かしさを覚え、昔のことを思いふけっていると、前に動いているものを見つけた。
流人はとっさに木陰に姿を隠し、相手が何者なのかを確かめる。
(あれは...なんだ?黒くて空中に浮いている...。鳥?いや、鳥はあんな円を書くようにゆらゆらと動かないはずだ。ならこうもり?いや、こうもりにしてはでかすぎる。それなら一体......)
ここでは遠すぎると、足音を立てないように近くの木陰に移ろうとする。
しかし、緊張で足が重く、足元の根に気付かず、盛大に転んでしまった。
その瞬間、遠くにいた黒いものから光が飛んできた。
その光は先程まで流人が身を隠していた木の幹に穴を開ける。
それを見て流人は死を覚悟した。
(さっきの光は相当速かった。あんなのに当たれば即死だろう。しかも遠距離攻撃、相手は空中に浮かんでいると来たか。こちらの剣も届くかどうか。これは、勝ち目あるのか?その前に奴は、何者なんだ?)
前にいた黒いのはこちらがしばらく動かないのを見ると、こちらに向かって来た。
徐々に、敵の姿が明らかになる。
(あれは、......ふっ、俺は夢でも見ているのか...。)
敵は、如何にも魔法使いな服を着て、箒に載っている形通りの魔女だった。
立ち上がり、両手を挙げて降参のポーズをとる。
それを見ると、彼女は箒から降り、こちらに近づいてきた。
顔立ちはかなり幼い。10代前半と言ったところか。
彼女は流人の前までやって来て、口を開いた。
「私の名前は霧雨魔理沙だ。魔法使いをやっている人間だ。お前は誰だ?ここで何があったか分かるか?」
「俺は立沢流人だ。刀を使って狩りをしている。ここで何があったかはここをさ迷ってばっかでよく分からん。というか、そういう聞き方をするならそっちが分かってんじゃねーのか?」
「私はここで今朝ここら周辺の土地を揺るがすほどの衝撃があったことしかわかんないぜ。ところで流人、お前妖怪退治の専門家とかじゃないんだろ?だったら人里まで案内するぜ」
そう言って、魔理沙は流人に背を向けて歩こうとする。
突然のことで頭が混乱した流人はとりあえず魔理沙を呼び止める。
「お、おい!ちょっと待ってくれ!妖怪退治ってなんだ!?あとお前はこの辺の人間なのか?!」
「あー?妖怪退治って何だって、そりゃ妖怪を退治することだろ。って言っても外の世界の住人には通じないか」
「外の世界?妖怪?」
流人はもう頭が混乱してもうどうしようもない様子だ。
「まあ、順番に話して行くか。まずここは幻想郷。お前たちが住む世界とは違う場所だ。ここでは昔は存在したが、文明の進歩で消えていった妖怪達が住んでいる。当然人間も住んでるけどな。ちなみに私は人里からちょっと離れた魔法の森ってとこに住んでる。」
「それから人里の近くには香霖堂っていう変な店がある。まあそれは後から分かるだろ。それから博麗神社ってとこがあってな、そこがお前達の世界と幻想郷を隔てる結界を管理している。私も良く行くから帰れなくなったりしたら寄ってみるといいぜ。」
「後、紅魔館ってとこがあるが、そこは近づかない方がいい。そこには吸血鬼が住んでいるからな。人間のメイドが仕えているがあいつも少々気が触れているからな。普通の人間は近づかない方がいいぜ。妖怪の山っていう場所もあるが、そこは天狗が支配しているから近づくな。」
「っと、まあこんなとこか。分かんないとこがあったら素直に聞けよ。」
「お、おう...。頼りにしてるぜ」
いきなり色んなことを言われ、ずっと頭が落ち着かない流人はどうにかその言葉だけは頭に入れ、魔理沙のあとを付いていく。
その瞬間魔理沙は立ち止まり、流人は魔理沙にぶつかりそうになる所をギリギリで持ちこたえた。
「魔理沙、どうした?」
「声が...近いな」
「声か?確かにさっきよりだいぶ近いな。」
気づけばすぐそこまで声はやって来ていた。
人に会えたことに安心感を覚え、注意力が散漫になっていたことに反省はしたが、後悔はしていない。
なぜなら......
「流人!!うしろ!!!」
「分かってるぜ!!」
後ろの木の枝にいた妖怪が、流人の一歩手前に着地するような軌道で、飛びかかってきた。
しかし、正体が分かった今、恐怖は無く、魔理沙が声に気づいたおかげで位置も大体掴めていた。
妖怪が木の枝を飛ぶ時の音でいつ攻撃してくるかを把握し、そのタイミングで切ろうとしていたのである。
その結果、虚をついたように見えた妖怪の攻撃は失敗し、逆にカウンターとして放たれた流人の剣が妖怪の腕を切り裂いた。
腕を切り落とされた妖怪はそのままの勢いで流人の足元に倒れた。
「ほー、お前の剣鋭いな。ちょっと見せてくれないか?」
「ああ、いいぜ。だが、その前にここら辺にいる妖怪を片付けたらな!」
先程まで聞こえていた声は既に2人を囲んでおり、あらゆる方向から声が聞こえていた。
「後は私がまとめて片付ける。その一体はお前の手柄だな。切り落とした腕、1本くらい持って帰ったらどうだ?」
「いらねーよ。ここに置いていくさ。それよりここにいる全ての相手、お前ひとりで大丈夫か?」
「大丈夫さ。言っただろう?私は妖怪退治の専門家だってな!」
そう言い切った直後、魔理沙は周囲を回る光るたまを4つ出し、スカートの中から何かを取り出し、前方に突き出して叫ぶ。
「頭下げてろ!!スペルカード!恋符「ノンディレクショナルレーザー」!!」
4つの玉から発せられたレーザーが、周りを明るく照らし、妖怪が隠れているであろう茂みをなぎ払っていく。
中から妖怪が吹き飛ばされ、紅葉が敷き詰められた地面の上を抉って行く。
レーザーが終わると、その様子を見ていた最初に倒した妖怪が恨めしそうにうめく。
「くそぉ!なめやがって!」
腕を切り落とされたあと、流人の足元で地面に倒れていたため、魔理沙のレーザーを喰らわなかったそれは、最後の力を振り絞って流人に突進してきた。
流人はその無謀とも思えるその行動に対し、機械的に刀を抜刀し、妖怪に向けて斜めに切り落とした。
刀は見事に妖怪の体を切り裂き、妖怪は体から大量の血を吹き出して倒れた。
「なあ、これってこのままでいいのか?」
「ああ、大丈夫だ。妖怪はとてつもなく生命力とかが高いから、この程度の怪我なら何ともないだろ。」
「そうなのか?それならいいんだが.....」
「とにかくここを出よう。そろそろさっき言った博麗神社に着くぜ。」
魔理沙は箒を持って道無き道を進む。
流人もそれを見失わないように刀を納刀してあとを追う。
妖怪の声もしなくなり静かな森を2人の足音だけが響く。
そうしているうちに、森が開け、きちんと整備された道が見えてきた。
「ふー、ようやく抜けたか。いつもなら箒だから分かんなかったが、歩くと結構かかるもんだな。」
「ところで、博麗神社ってのはどこにあるんだ?」
「えーと、ほら、すぐそこに階段があるだろ?そこを登った先だ。」
「階段ってこの石造りの階段か」
階段の先を見ると、とても果てしなく続いている。
「うわ、これを登るのか。結構かかりそうだな」
「ははっ。まあ頑張れ。私は見守ってやるから」
「はっ?お前箒に乗んのかよ!お前も登れよ!」
「ほら、文句言ってる暇があるなら足動かせよ。早く帰りたいだろ?」
魔理沙は笑いながら言う。久しぶりの人との触れ合いのため、ここにいてもいいかも、と思いながら
「そうだな、帰る時期は早めの方がいいな。ところでだが、あの辺では何が起こったんだ?」
「んー、まあここで話すんだったらここにいる奴と話そうぜ。」
「ここにいるヤツ?」
「そうだ。ここで巫女をしている奴だ」
「へー、巫女ねー」
階段を上りきり、赤い大きな鳥居が見えてくる。
先程までいたような森に囲まれた鳥居をくぐり、参道を歩き神社を見る。
「あら、魔理沙。そっちは何か見つけた?」
そこには赤い巫女装束に身を包み、長い黒髪をリボンで結び、箒を横に置いて茶を啜る少女がいた。
というわけで、東方幽魔録です。
これは立沢流人君がバッサバッサと敵を斬っていく物語ですね笑
もちろん異変解決も入れようと思っているのですが、どうも面白そうなものが思いつかないんですよね。まあ時間はありますし、ゆっくり考えますか。
ちなみに不定期更新なので続きは作者の気分次第となります。趣味の範囲ですし(そもそも読んでくれる人いるのかね笑笑)。
アドバイスはいっぱい下さいませ。小説全然わかんないので笑
感想もたくさんお願いします。
それでは