NEXUS of the Heroes ~英雄達との絆~ 作:0.1tトラック
「あんた・・・誰?邪魔をしないでくれる?」
目の前にいる黒い服装の女性がイラつきながらこっちに話しかけてくる。
周りには槍や弓矢を持った人達(一部すごい露出してるのがいる)が其々構える。
後ろには大きな盾を持った少女と青年、身の丈より長い刀を持つポニーテールの男性。
そして極め付きが、黒の女性と瓜二つの白い服の女性がいた。
ココに乱入したのは良いが・・・つい勢いで突っ込んだのは不味かった。
いざという時に冷静さを欠くことはいけないと、さっき自分で説得していたのに、この様だ。
「ねぇ・・・ちょっと!?無視しないでくれる?」
黒い女性が声を荒げる。その目は虫を見るかの如くだった。それも威圧感が半端じゃない。
状況も合わせると、普通の人なら逃げ出すか何かのリアクションをするだろう。
だが、俺の場合は、不思議と怖さは無くなり、胸が熱くなるのを感じていた。
足は震えず、頭の中もある程度冷静だ。後は、この一言に、相手がどう返事するかだった。
「なぁ・・・向こうに村があったんだが、あれをやったの・・・君か?」
黒い女性に問いかけると、彼女はニタリと煽るようなドヤ顔で言い放った。
「ええ、あれは私達ですよ?それが何か」
ーー私達、か・・・。
全身の血が沸騰するような感覚。胸の熱さは一気に燃え上がった。
「そうか・・・。なら、決まりだな」
「何がです?私達を倒すというの?貴方一人でですか?」
「ああ、そうだな・・・」
脚にグッと力を込める。
「あんたら全員、一発ぶん殴るって事だ!!!!」
飛び出しながら頭の片隅で、この状況になる数分前の事が頭をよぎる。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふむ・・・サーヴァント、ねぇ・・・」
「そう、わたし達サーヴァントは何らかの理由で召喚されて、主となるマスターに従ったりするの」
歩きながら粗方の説明をマリーさんから教わった。
英霊・・・サーヴァントの事、魔力、魔術師、そしてマスター・・・。
ーーーどこからどう見ても、俺の世界じゃねぇよなぁ・・・。
魔術師だけでも俺の世界では大昔とかの時代にいる者だとてっきり思っていたが、どうやらこちら側の世界は現代でもいるようなのだ・・・。
信じられない事を聞くばかりで、もう考えるのをやめたくなるが、現に目の前にあのマリー王妃がいるのだ。
最早、否定などできんだろう。なにせ、答えが目の前にいるのだから・・・。
「それで、シンイチ。多分もうすぐ街に着くのだと思うんだけど」
「・・・ん?え、ええ・・・なんですか?」
マリーさんがスッと空に指を差す。
「あの輪みたいなの、あれは少なくともフランスには無いものだわ」
確かに。あんな大きな輪があったら、少しは歴史や現象として何か記されているはずだ。
だが、俺の知識の中では、あれは全く分からないものだ。
「すみません、マリーさん。あれは俺にも分からないです・・・」
「そう・・・。少なくとも、あれは良くないもの・・・と感じるのだけど」
ハァとため息をつくマリーさん。一つ一つの仕草が花びらが舞うように見えるのは気のせいだろうか・・・。
そんな時、身体に悪寒が走った。ある方向で、何か起きてる・・・と。
ーーー何か、嫌な感じがする。
マリーさんも気付いたようで、どうするか此方を見てくる。
多分、答えは彼女も同じなんだろう。
「・・・行きましょう」
「ええ、分かったわ!急ぎましょう・・・って速い!?」
全速力で走る。
なぜここまで速く走れるのか分からないが、そんなことはどうでもいい。
考えるよりも先に身体を動かす事に集中する。
なぜなら、向かっている方向こそ、マリーさんが言っていた街の方角なのだから。
「シンイチ・・・なぜ貴方は英霊のワタシより速く走れるの・・・?貴方ももしかして・・・」
マリーさんより速く着き過ぎたのか、マリーさんの姿が見えない。
とにかく、目的地の街に着いた。だが、此処は街と呼べるにはかなり酷い状態だった。
しかし、中で行われている戦闘の音が聞こえてきた。
ーーーー生存者か!?
物凄い音とギャアギャアと煩い鳴き声がするため、身を隠しながら進んでいく。
俺の目に飛び込んできたのは、大盾を持つ少女と刀を持つ男性、白い旗を持つまるで神官みたいな女性がが黒髪の青年を守るように戦闘をしていた。
相手は・・・竜、そして後方には白い女性と瓜二つの女性、そして護衛するかのように数人がいた。
ーーーーってちょっと待て!竜!??なんで存在しているんだ!?空想上の生物じゃなかったのか!??
ゲームに出てくるかのような竜が、目の前にいる。しかも1匹2匹の単位ではない。空には多くの竜がいたのだ。
信じられない光景に、呼吸するのを忘れそうになる。
大盾の少女が竜の攻撃を防ぎながら、刀で首を斬り落としていく男性。
そしてそのサポートをするように立ち回る白い女性。
指示はあの青年が出しているようだった。まだ身体に力が入りすぎているのか、足が少し震えていた。
対して、黒い女性の方はというと。
まるで余裕を見せるように嘲笑っていたのだ。
「さあ、もう終わりにしましょう・・・。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン」
男性と女性が動き出す。多分あの二人が呼ばれたのだろう。
ランサーとアサシン。それは槍と暗殺と英語力の低い俺の知識でなんとか分かった。
しかし、このままだと不味い状況になるだろう。
まだ竜に手こずっている青年達に、あの二人が戦闘に加わるとなると、圧倒的劣勢になってしまう。
だが、俺も易々と動けない。
何しろ、どちらが味方で、どちらが敵になるのか、俺には分からない。
双方の目的も知らない。ギリギリまでどちらに加担するか見極めたかった。
ーーー本当に、分からないのか?
疑問が湧く。なぜ、そこに理由が必要なのかと。
ーーーああ、なぜ動けないんだよ。
身体が動かない。動こうとしない。恐怖に負けそうになっている。
あの二人からは尋常ではない殺意が感じられる。もし、対峙したとすれば・・・。
自分の首と身体が離れるのを想像してしまい、震えてしまう。
どうすればいい・・・。どうすればいいんだ・・・。
頭の中を恐怖で埋め尽くされようとした時、ある光景が見えた。
刀の男性が逃してしまったのか、竜が青年に攻撃をする。
白い女性のサポートも届かない。竜の顎が青年に喰らいつこうとする。
「先輩!!!」
大盾の少女の叫びが聞こえた。その手を必死に伸ばし、青年もまた、手を伸ばしていた。
ーーーーああ、もう・・・なにグズグズしてんだ俺はぁ!!!!
その場面を見たとき、既に俺の身体は動いていた。恐怖は既に忘れていた様に、震えていなかった。
助走をつけて、大きく跳躍する。
脚が熱く感じた。
全身が、魂が燃えるように力が漲った。
目標は、あの竜。
「うおおおおおおおおおおりゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」
竜の頭に目掛けて、あのヒーローと同じキックをした。
バキバキと嫌な音がする。
しかし、それは俺の脚が折れた音ではない。竜の頭が砕けたのだ。
そのまま竜の身体は大きく吹き飛び、二つの陣営の中心・・・にらみ合いの位置に着地した。
驚きの顔をする青年達。俺の背後で警戒する黒い女性達。
ゆっくりと着地姿勢から立ち直る。
背後からイラついた様な声が掛けられた。
「あんた・・・誰?邪魔をしないでくれる?」