NEXUS of the Heroes ~英雄達との絆~ 作:0.1tトラック
「ふっ・・・存外、甘く見られた物だな」
一気に黒い女性との距離を詰めようとしたが、突然目の前に黒い霧が広がる。
「っ!?」
咄嗟の判断で急停止をし、頭を下げた。
霧の中から一本の槍が突き出された。あのまま頭を上げていたら深く突き刺さっていただろう。
「ほう・・・避けるか・・・ならば」
足元の方に違和感を感じて、すぐにその場から下がると何本もの槍が突然突き出てくる。
ーーー色々おかしすぎるんだがっ!??
目の前で起きてる漫画の様な攻撃に驚きながらも、身体を勘に頼って動かす。
続々と槍が、霧が俺を確実に殺そうと攻撃してくるが、それを紙一重で避けることが出来た。
「ふむ・・・面白いな」
霧が一つに集中すると、人が形成されていく。
先ほどの髪が長いランサーと呼ばれた男性だった。
「・・・おいおい、マジで頭おかしいんじゃないのかサーヴァントって」
未だに魔術とか英霊とか良く分からないのに、目の前で起こり続けている現実を、俺は無理矢理納得するしかない。
でないと、その隙に心臓を貫かされそうだった。
「余の槍を避けるとは中々骨のある奴だ・・・」
「ちょっと・・・いつまで遊んでいらっしゃるの、串刺し公」
「何・・・少し遊んでいただけだ・・・これからは、血を啜るとしよう」
全身に悪寒が走る。あの串刺し公とかいう人から、殺意が膨れ上がったのが分かった。
今ので遊びでこれから本気ってことは聞きたくない言葉であった。
「なら、私は聖処女の血を浴びるとしますので・・・失礼」
仮面を付けた女性が消えたかと思うほどのスピードで白い女性達に近づく。
「はぁっ!!!」
「・・・っ!」
目にも止まらぬ速さで斬撃が仮面の女性に襲い掛かるが、杖で防御をした。
「すまぬが、あの御綺麗な少女を守るというマスターからの命でな・・・付き合ってもらうぞ、ご婦人」
「ふん・・・男って・・・目障りよ、じっとしてなさい。殺してあげるから」
仮面の女性と侍が攻防戦を繰り広げる。
一方、俺の方はというと・・・。
「あっはははは!!燃えなさい、獄炎に身を焼かれて!」
黒い女性がワイバーンと自らの力で俺の周りを炎で取り囲むようにしていた。
その炎の円の中には俺と串刺しさんがいる・・・。つまり、決闘場みたいな感じだ。
ーーーくそ熱い・・・。早く後ろの人達を守らなければ・・・っ!?
串刺しさんが突然動き、槍を振るってきた。
耳元を風が切るような音がしてくる。皮膚が切られ、少し痛い。
「ぬぅん!」
「ごはっ!!??」
相手の蹴りがお腹にメリメリとめり込むような感じがした。
そのまま俺は逆らいきれず吹き飛ばされた。
ーーー痛い・・・。どっか折れたか?
身体中が痛すぎて、どこが骨折したのか分からずにいた。
「・・・ごっほ・・・」
口の中が鉄のような味しかしなかった。咳き込むと血が滴り落ちた。
「ふむ・・・もう少し愉しめるかと思ったが、まあ良い、仕上げだ」
目の前にいる串刺し野郎が嘲笑って、未だにうつ伏せでいる俺にトドメを刺そうとしてるのが分かった。
ーーー結局、夢でしかなかったのか・・・。
殺される。
そう分かった瞬間、諦めようとした。この状況、この敵、どんなに頑張っても覆しきれない。
相手は霧になったり、地面から槍を出したり等、出鱈目すぎる。
勝てるはずが無い・・・。
もうすぐ死ぬのだと・・・。
分かっているのに。
ーーーなんで、立とうとしてるのかな、俺は・・・。
全身が悲鳴を上げる。知った事じゃない。無理矢理動かす。
ーーーああ、そういえば、あの人達も、頑張って立ち上がってたなぁ・・・。
昔、そして今でも見る番組で、敵に絶望を叩きつけられても、何度も立ち上がってくる。
死が待っているのに、それを物ともせず立ち向かう。
それを見ていた俺は、子供の頃からずっと憧れていた。目指していた。成ろうとしていた。
いじめをしている、してくる奴らに立ち向かって、何度も立ち上がって。
絶対に諦めない。
それが習慣付いてしまったのか、こんな時でも立ち上がろうとする。
昔の英雄達に憧れて。
近くで誰かの声がした途端、身体の痛みが引いた。
何かの衝撃音が鳴り、顔を上げる。
そこには、距離を取った串刺し野郎と、目の前にはあの、白い女性が居た。
「大丈夫ですか?立てますか?」
「あ、ああ・・・なんとか・・・」
女性に驚きながらも返事をしながら立ち上がる。傷や痛みが無くなっていて内心驚いていた。
「逃げてください、今なら私が食い止めます」
「はっ!?君は・・・まさか!?」
あのワケ分からん生命体に立ち向かうのか。一人で。
その目は、しっかりとした決意を感じた。必ずやり遂げる・・・死んででも。
そんな風に見えた。自分を犠牲にしてまで、俺を逃がす・・・。
「はい・・・だから、貴方は早く・・・」
「逃げん・・・」
「えっ・・・?」
女性が驚いたように目を見開く。
ーーーまあ、言い出した自分も驚いているがな。
かっこつけたかったのかもしれない。
誰かに守られるのがイヤだと思ったかもしれない。
だが何よりも。
「女の子を、守らない男は男じゃないって思ってるからな!」
だから守る。守ってみせる。
あの人のように。
全力で、死にそうになっても、守ってみせた、あの人みたいに。
「な、何で・・・!?」
「俺は・・・誰かが死んで、誰かが泣いたり、哀しい顔をするのが大嫌いだ」
身体が熱い。
「俺は、守りたいものを守る・・・。だから、アイツとは、俺が戦う」
胸が熱い。
何かがこみ上げてくる感じがする。
「貴方は・・・一体・・・」
「俺は・・・ん?」
腰に違和感を感じて、視線を落とす。
そこに・・・俺の腰に巻かれていたのは、あの何度も好く見たベルトだった。
ーーーいや、待って、え、これって・・・
石の様な鈍い色。見た事もある普通でない文字。
赤、青、緑、紫。そして真ん中に何かが嵌め込まれていた。
いつの間に付けたのだろうか。そう何回も考えたが、付けた行為はしていなかった・・・。
ーーー待って。これアレやったら・・・マジで出来る?
色々とこの世界は常識が壊れていると思っていたが、いつの間にかコレが付けていたとしたら、もうあの可能性が有るとしか考え切れなかった。
「雑談に興じている場合か・・・?」
興奮しすぎたせいか、串刺しさんの存在を忘れていた。
「ならば、大人しく・・・血を捧げよ!」
串刺しが此方に突撃してきた。
女性が俺の前に出て守ろうとするが、それを手で制する。
なぜと言わんばかりの表情だが、ここはイチかバチか、試したくなった。
ーーーあの人と同じように、変身したい。
「なあ・・・見ていてくれるか・・・俺の・・・変身を」
「変・・・身・・・?」
あの人と同じようにポーズを取る。
時間がゆっくりと進む感覚。
『ああ・・・。君が進一君かぁ』
とても優しい声がする。
『君はすごく真っ直ぐで、諦めない根性が良いね!だから、きっと、その力は使えるよ』
とても聞き覚えのある声だ。
『だから、頑張れ!応援してるからね!』
ーーーはい、頑張ります。五代さん!
「変身!!!!」
身体に何かが起きてくる。だがもう目の前で串刺しをしようとする敵に向かって殴った。
「おりゃぁ!!」
右手が赤になる。
「うおりゃぁ!」
左手が赤になり、身体も赤に染まっていく。
「グフッ・・・!貴様・・・!?」
「うおぉりゃああ!!!!」
渾身の右ストレートを食らわせると、串刺しの身体が吹っ飛び、倒壊した家の壁にめり込んだ。
両手を見る。身体を見る。顔を触ってみる。
自分の姿が、まさに、あの姿に変わっていた。
「あ、貴方・・・一体・・・」
震えるような声で掛けてくる女性。
俺は、あの仕草・・・サムズアップをしながら、語りかける。
「俺は真木進一。今は・・・クウガ。仮面ライダークウガ!」