遅れてすみませんでした!!
前回の更新から早一か月以上経ちました。その間、一回も最新話を上げることが出来ずに申し訳なく思っています。
ちょっとリアルの方が忙しく、なかなかスマホやパソコンに触れない日々が続いたのです。初めてリアルでイェーガーになりました。
「駆逐してやる……残業を、このデスクから、一つ残らず……!」
はっきり言って地獄でした。
今月も休みが来週の月曜のみ、つまり一日しかないので、更新が遅れると思いますがご容赦を。
待っていただいて、本当にありがとうございます!
状況は一変して、優勢は尊達へと傾いた。
位階持ちの永遠神剣契約者が三人に、ミニオンが二十体程。数の差は有れ、個としての差は歴然としている。
しかも、戦い慣れているのなら尚更。
この救援は、この事態を早く終わらせたいと思っている尊にとって実に有難いものだった。
そして、決着は予想よりも早く着いた。
「早ぇ、もう終わったよ」
「うん……凄いよ、彼女」
カティマの剣技は、簡単に表すと“苛烈”。剣を振るう速度こそ望や、それこそ尊には及びはしないものの、それを感じさせない程の素早い体捌きを駆使して次々とミニオン達に襲い掛かる姿は、望の中に畏怖を生み出したようだ。
尊をして、その動きは素晴らしいと感じずにはいられない。
先も言ったように、カティマの剣は速くない。ミニオン達も何体かは、その剣をギリギリのところで回避出来たり、防いでいるのもいた。
だが、彼女の前ではそれらは全て無駄の様だ。等しく、全部が吹き飛ばされていく。
最早この戦場はカティマの独壇場となった。
此方が手を出すまでもなく終わってしまうだろう。
「これで、最後!」
裂帛の声を上げて振り下ろされた神剣にはさしものミニオンも防げない。成す術なく切り裂かれて倒れた。
同時に、周囲に張っていた気も途切れる。どうやら、あのミニオンで最後だったようだ。それでも残心を忘れず周囲を警戒しているのは流石だ、と尊は思う。
「……、大丈夫でしたか?」
「――え、あ。は、はい!」
「俺達は大丈夫だ。助かったよ、ありがとう」
なにやら顔を赤めてしどろもどろになっている望に変わって大丈夫な事を伝える。どうやら望は助けに来てくれたカティマに見惚れていたらしい。確かに彼女は綺麗だが、望の傍にはそれに劣らない美少女が既に二人もいるというのに。これでは普段から必死にアピールしている希美と沙月が可哀そうになってくる。まぁ、あの二人は性格や長い事一緒に居るせいで耐性が出来てしまっているんだろうから、身も蓋もない言い方をすれば本人の自業自得と言えばそれまでなのかもしれない。主に沙月や沙月や沙月が。
「……? あの、お連れの方は大丈夫なのでしょうか」
「あー、大丈夫だよ。多分。ほらアレ、思春期だから」
「はぁ……?」
先ほどまで凛々しかった姿と打って変わって、きょとんという音が聞こえそうな顔をして可愛らしく首を傾げている。しっかりとしていそうだが、何処か気が抜けていそうな雰囲気を持っていそうだ。おまけに天然の気もありそう。
カティマはというと、望が何でこうなったのかよく分からなかったようで、一瞬考えるそぶりを見せたものの、直ぐにその表情を柔らかいものにした。
「では、貴方たちはここで待っていてください。もうすぐクロムウェイ達…助けが来ますから。『カティマに助けてもらった』と言えば、彼らが保護してくれます」
「え、君は?」
「私は……この先を急がなければいけませんから」
彼女はそう言いながら険しい目つきをして、尊達の向こうを見つめていた。望も彼女に倣ってその方向へと目を向ける。奇しくも、尊達が目指している村の方向である。という事は、カティマの目的も望と同じなのだろう。間違っても人殺しを是とはしない人物である事は容易に知れた。襲われていた尊達を、急いでいると言ったのに助けたのがその証拠だ。だが、ここら辺が限界らしい。
「では、失礼します。ここで待っていればクロムウェイ達に保護してもらえますから、安心してください」
「――なっ、ちょっと待ってくれ。君も向こうの村人を助けに行くんだろ? 頼む、俺達も一緒に連れて行ってくれ!」
行こうとしたカティマの手を掴んで望は頼み込んだ。足手まといになるのは先ほどの戦闘で嫌というほど思い知らされた。
尊は一応望に習い事や喧嘩で慣れた、と伝えているためそう思っているのだが、本当の姿はこの中で誰よりも長く戦ってきたエターナルであり、第一位永遠神剣の契約者だ。カティマは、幼い頃から騎士に教えられた剣術を嗜んでいる。
「え? しかし、貴方たちは……」
「……ああ、そうだ。俺達は、いや俺はこういう事は弩が付くほど素人だ」
この中で一番戦い慣れていないのは望だ。それは当然だ。例え前世が神であろうと、現代日本でこんな戦いが起こる等今回の様な特殊な事情以外に有り得ないだろう。詰まる所、圧倒的に経験が足りていない。
一先ずは神剣の力で底上げされた身体のみでも如何にかなるだろう。
だが、この次は? もし先のミニオンよりも強い存在が襲い掛かってきたら? そんな最悪を想像して、容易に殺される自分が真っ先に思い浮かんでは顔を青くする。そんな奴に襲われたら学校の皆を守る前にあっさりとやられる自信がある。
「でも……あの人たちは危ないんだろ? 苦しんでるんだろ? それが分かっていて戦わないなんて出来ない」
でも、彼は誓った。あの体育館で、沙月の演説を聞いて。元の世界に帰るまで、元の日常を取り戻すまで皆を守る、と。百人以上いる生徒の中であのミニオンと戦えるのは望、沙月、希美、尊、この四人。対して戦えないのがこの四人以外全員。
望は思う、今のままでは全員を守ることなど出来ない。沸々と沸いて来ていた疑問は、先ほどの戦いで確信へと変わった。
「守りたいんだ、俺は!」
今のままではいけない。強くならなければ、守れない。守れるだけの力が欲しい。経験が欲しい。守れるという証明が欲しい。望はここに来て焦りを見せる。ただ、幸いなのは目の前に
「――分かりました。共に戦い、守りましょう」
「――はいっ!」
手を取り合い誓い合う様に握手をする二人の姿を見て、尊の口から苦笑が漏れる。凄く青臭い。だが、それが良い。思わず若いっていいよなー、と中年オヤジの様な思考になって、それに気付いて更に苦笑。確かに精神年齢は老人なのだが、こうも昔を懐かしむとそれがハッキリと分かってくる。
「さて、お二人さん。話も決まったしそろそろ……熱烈に見つめ合うのは後にしてくれ」
『え……あっ!?』
先ほどまで良い笑顔で握り合ってた手が、尊の言葉で素早く解けた。空気がアレだったから当人たちは至って平気そうに握手を交わしていたが、傍から見れば恋人同士が幸せそうに手を繋いでいるように見えなくもない。
望とカティマも冷静になったのか、顔を赤くして俯いている。二人とも純情すぎるのは予想が着いていた。
「(これで沙月達の前じゃあ気を付けるようになるだろ……あーくそ。何で俺がこういう役回りになるんだ……)」
こちとらお前たちみたいに甘い青春送ってねぇんだよ、と心の中でそっと悪態を吐いた。
「ぐぁ……!」
「フン……もう終わりか。思った以上にあっけない」
大きく吹き飛んだ男を一瞥して嘆息する。男を吹き飛ばしたのは黒い外套を鎧の上から纏った壮年の男だ。
ダラバ・ウーザ。それが、この壮年の男の名前である。
「ダラバ、覚悟ぉ!」
「ウオオオッ!!」
左右真横からダラバに向かって剣と槍が襲い掛かる。速い。刃の切っ先がブレて見えなくなる。その一撃は、正に神速。ミニオンの群れを潜り抜けて襲い掛かってきたその実力は伊達ではない。
しかし、
「痴れ物が……跪けぃ!」
ダラバの剣が撓る。同時に、剣と槍は砕けた。ダラバから放たれた一撃は神速をも上回り、逆に襲い掛かったのだ。それに彼らの様な技術はない。腕を払う、という普通の人間で可能な動きをしただけでダラバは彼らの全力を容易く踏み抜いた。
「グアアァアぁああぁあ!!」
反撃された二人のうち一人は痛みに叫んで倒れ、一人は無音のまま倒れる。己が手を下した二人を見下げ、心底しまった、という顔をした。
「おっと、“跪け”と言った手前……膝と首は残しておくべきだったか」
確かに、倒れた一人は右腕両足を、もう一人は頭部を吹き飛ばされていた。これでは跪くことなど出来はしないだろう。言った事、思った事を実行し、実行させることを信条としているダラバにとってこれは不手際である。
「誰が、貴様なんぞに跪くか!」
右腕と両足を斬り飛ばされても尚、男はダラバに憎悪が籠った視線を送る。切断部から焼かれている様な痛みが全身を蝕んでいく。だが、ダラバを前にして男はその痛みすら忘れる程の憎しみと怒りを滾らせている。
男がダラバと会うのはこれが初めてではない。それどころか、同じ職場の同僚であった。城勤めの騎士という名誉ある職に就き、ダラバと共に訓練に励んだこともある。性格の違い故に余り付き合いは無かったが、同じ騎士としてダラバの抜きん出た実力を尊敬していたし、王と国を護る志は共にあると思っていた。
「――大恩ある王家に逆らった、不忠者がッ!」
それが間違いだったと気が付いた時には既に王はダラバによって手を掛けられ、王族と繋がりのあった者全てが、あの
それからは生き残った唯一の王族であるカティマを中心にレジスタンスを纏め上げ、沸いて出て来る鉾達相手に戦っては負け。それを繰り返す内にとうとうゲリラ戦を余儀なくされた。鉾は一体でも脅威だ。人の形をした化け物である。そして、そんな化け物を力で纏め上げるダラバ。
勝てる訳がない。そんなもの初めから分かっている。
だからといって希望が無い訳でもない。男はその時、ある人物が脳裏に浮かび上がる。
カティマ・アイギアス。そうだ、彼女こそ彼らレジスタンスの最後の希望。彼女が持つ永遠神剣と彼女自身の力があれば、必ず倒せるはずだ。
「――ほう。その目、希望を捨ててない様だな」
「……当然だ、正義は我らにある。武器すら持たない市民にすら手を掛ける貴様は、必ず我々が倒す!」
「ククッ、良い殺気ではないか――なんだ?」
いつの間にか、ダラバの傍に黒い髪の鉾が現れる。ダラバと男の距離はたった数歩程度の筈なのに、男は鉾がいきなり現れたかのような錯覚に陥る。気配の消し方も、人知を遥かに超えている。いくら男が己の武を磨いても永劫届かない位置にいるのだろう。
「逃げていた村人達を確認、捕縛しました。どうやら洞窟へと逃げていたようです」
「なっ!?」
その鉾が、男にとって衝撃の言葉を叩きつける。男たちが必死の覚悟で逃がした村人や怪我人が見つかってしまった。
結果として、男たちはここで徒に命を散らしただけだった。
「そうか。丁度良い余興を思いついた、全員生かしたままここに連れてこい」
「はっ」
鉾はダラバの命令に従順に頷くと、現れた時と同じようにいつの間にかいなくなっていた。
それよりも、男は気になった事がある。何故捕まえた村人達をここに連れて来るというのか。
「ダラバ、一体、何を考えている」
「何、お主が中々死なんからな、その意思に免じて褒美を取らせようと思ってな」
この言葉に、ダラバが何を考えているのかが余計に分からなくなる。一瞬彼らの命を保障してくれるのか、とも考えたが相手はあのダラバ、何をしようとするのか想像もつかない。
「貴様、一体何を考えている……?」
「……」
問いに答えない。知ってはいたが、ダラバは余計な事を中々口にしない。そのせいか、ダラバが何を考えているのかを分かる者は一人としていなかった。だが、ダラバの中で結論は決まっているように見える。今すぐその胸倉を掴んで押し倒し、一体何を考えているのかを吐かせたいのに。男は立つことも、今までの様に剣を握る事も出来ない。ただただ、無力。倒すべき相手が目の前にいるというのに。
そう思っている内に、男の耳にザワザワと大勢の人の声が聞こえ始める。捕まった人たちが連れてこられたのだ。
咽喉が、つばを飲み込んで音を鳴らせる。最早この村の命はダラバの手の上にある。生かすも殺すも、彼の自由。次にダラバが口を開くとき、何が飛び出してくるのか。せめて村人の命だけはと、彼の身体を撫でる風に乗って届くようにと祈る。
「ヒッ!? キャアアア!!」
女性の悲鳴が聞こえる。村にある死体を見てしまったのだろう。その悲鳴を聞いて、ダラバはニヤリと口元を歪ませる。何という奴だ。人の心をへし折って、悦に浸る。ダラバがここまで歪んでいたとは……、男はその笑みに怒りと恐怖で身体を震わせる。ダラバがダラバで無いような、そんな感覚を覚える。
「では、褒美を言い渡す」
村人達が村の広場に集められてから、ようやくダラバが口を開いた。
「最後まで抵抗した褒美として、ここにいる村人全員の死に様を一人ひとり見届けよ」
「――ッ!?」
「殺し方は鉾共に一任する。一人ずつ、この男の前で殺していけ」
「待て、ダラバ! 貴様正気か!?」
「死体の処理は、そうだな。屋内に纏めた後焼き払え。放置するのも良いが、臭くなるのは敵わんのでな」
「ダラバ! ダラバァァッ!!」
「さて、私は一足先にグルン・ドラスへ帰る。処理が終われば戻ってこい」
「御意」
「待てと言っている! ダラバァァァァアァぁぁぁ!!」
男の呼びかけに、ダラバは一瞥すらせずに背中を見せた。最早ダラバに、男の言葉は届かない。それでも尚止めようと残った左腕で這いずろうと手を伸ばすが、
「動くな、人間」
ミシリ、という音に踏まれた左手。手の甲が砕け、文字通り踏み潰された。
這いずる事も、許されない。
「さて、名誉ある最初の犠牲者は……コイツだ!」
黒い髪の鉾が先ほどとは打って変わり、嬉々として双眸を愉悦に輝かせている。こいつは、殺す事に快楽を見出している様だった。この鉾にとって先ほどの命令は、子供が玩具を与えられたのと同じ意味を持つらしい。他の鉾はいつも同じ無表情。この黒髪の鉾だけが異常なのか。
そんな鉾が選んだのは、年端もいかない少女。男はこの少女を知っている。つい昨日、十歳になった祝いをしたばかりなのだから。
「ッ、や、止めろ! その子に何の罪があるというんだ!」
「お、おじちゃん、痛い痛い、嫌、助けてぇ!」
「罪? つみ? ……罪ぃ? ハハッ知る訳無いじゃんそんなもん。強いて言うならぁ、泣きわめくから? いや、違うねぇ……ああ分かった! 私に殺されるのを嫌がってるから。……うん、これこれ! これが既に罪じゃん? という訳で殺しまぁーすっ」
到底理解が及ばないその言葉、その理由、その決定。ようは、ただ殺したいだけではないか。
「止めろ、化け物ぉっ!」
「アハハ! では一名様、ごあんなぁーい! だいじょーぶ、綺麗に首を飛ばしてあげるからね!」
「おじちゃん、おじちゃん!」
まだ助けてもらえると信じた目で少女は男を見ていた。信じているのだ。助けてくれると。
「く、そおおおぉおぉぉおぉぉ!!」
なりふり構わず、叫んだ。足と右腕は切り落とされ、左手は潰された。剣を握る事は出来ない。そこにある砂すら、掴めない。
だがしかし、男は諦めない。出来る事があるからだ。叫んで、叫んで、叫ぶ。この声が誰かに届けば、救ってくれるかもしれないという思いを込めて。物語の様に都合よく正義の味方が現れる事はない、と知っていても。叫ばずにはいられなかった。何も出来ず、何も守れずに死ぬ事死なせる事など、騎士として、アイギア王国の人として、どうして出来ようか。無念、怒り、何も出来ないという絶望。そして、助けてくれ、と。様々な思いを乗せて、叫んだ。
そして、刃が振り下ろされた。
「あ――――」
顔に掛かる、生温かいものが目の前で起きた出来事を報せて、叫んでいた声も、思考も、時間も停止する。目の前の現実を現実とは思えず、顔の筋肉が引きつって固まる。
「あ――――ああ!」
なんということだろう。男は体中の筋肉が一気に強張り、すぐに弛緩する。ごろりと、首が転がる。何が起こったのか分からなかったのだろう。目や口等、切り落とされる前と何ら変わらず、男を見つめる。
「あああっ!!」
鉾の首であった。
「間に合ったようですね」
鉾の身体が崩れ落ちる。その傍らに立っていたのは、背の高い一人の青年。その両手には、二振りの剣が握られている。凄まじい存在感だ。何故気付かなかったのか分からないのが不思議なくらい、青年と二振りの剣はその存在を示していた。周りには五十を越える鉾がいるにも拘わらず、彼のみがこの場を染め上げている。
まるで、海の様だ。
「あ、あんたは、一体?」
「私は
青年は柔らかい笑みを浮かべ、そう答えた。
今回のネタ。
『なぐこはいねが~』
あらゆる点で間違っているが怨念となった南天神ウル、ゴルトゥン、ロコのこと。途中までは黒幕臭いが、そこまでいっても結局噛ませ。南天神で、かつては神剣を所持していたと思われるが、ジルオルに浄戒の一撃を食らわされて聖なる神名を失い、怨念となって漂い続ける。なので見せ場が遺体に取り付くというものだけで、別にそう重要な役割、というのは無かったような気がする。
作者もこいつらの役割を忘れているので、何が重要だったのか再プレイで確認中である。