転生者は駆け抜ける   作:ポピュラー

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十一話っぽい何か

 踏み抜く。

 舞う。

 振り下ろす。

 

 戦いとは即ち、こうした単純な動きを繰り返すだけだ。余計な動きは要らない。最短距離で相手に攻撃を叩き込めればそれでいい。

 しかし、それだけではつまらない。

 故に人は型を創り、そこに美しさを求めた。

 殺し合う相手すら魅了して、凄惨な殺戮を高尚な戦いへと昇華させる。それを見る観客も然り。“害を成す美しさ”とは妲己の様な傾国の美貌だけではない。

 目の前の光景が、それを証明して、魅せる。

 

「わぁ……」

 

 小さな子供ですら、その光景から目を離さない。無垢な瞳に、親は手を添えて隠そうともしない。この場にいる全ての存在が、たった一人の青年――メダリオに目を捕らわれていた。

 

「クス……」

「――――ッ!」

 

 瞬間、(ミニオン)が斬り飛ばされる。人間の戦士達が死力を尽くして行うそれを、メダリオは微笑む余裕を残して、あっさりと屠っていく。先ほどまで絶対強者として立ちはだかっていた鉾が、(さなが)ら蹂躙されるが如く次々と斬り伏せられる。

 騎士であった男はその光景を望んでいながらも、いざ目の前にすると信じられなかった。

 それは男が鉾の強さを知っているからだ。だからこう評した、“化け物”と。

 

 ならば、メダリオは? 人間にとって“化け物”と呼ばせる存在を容易く吹き飛ばす存在とは一体、何なのだろうか。

 人の姿をして、言葉を話す。これだけなら“人間”と答える。それに“化け物を軽々と殺せる”という言葉が足されれば、鉾だと答える。“その鉾を纏めて殺せる”という言葉が足されれば……それは一体、何だろうか。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

 声を掛けられ、意識が思考の中から引きずり出される。

 気付けば、メダリオは全てのミニオンを倒していた。

 大の大人達が命を削っても倒せなかった奴等を、傷一つなく、易々と倒した彼に、男は畏怖した。

 差し出された手を見上げて、唾を飲み込んだ。何も不思議な事はない。理解出来ないものを拒絶するのは、生物として何ら間違っていない行動だ。

 僅かに上げた手を、下ろそうと体が勝手に動いてしまう。

 だが、男はそんな体に喝を入れて、下ろそうとした手を止めた。

 拒絶するのは、簡単だ。人の姿をし、言葉を操っていても分かる。

 メダリオは、人間じゃない。

 化け物すら歯牙に掛けない《ナニか》という、未知の存在だ。

 もしも、その力が男に……弱い村人達に向けられでもしたら。そう思うと、体の芯が一気に冷えていく。

 それが、この手を振り払う事で起きてしまったら?

 男達を下等な存在と見下していて、この好意を拒絶する事で、彼の琴線に触れてしまえば?

 男にとって、メダリオから差し出された手は、一種の賭けであった。

 ミニオンという脅威から助けられたとはいえ、あの力は人間にとって良いものでは無いだろう。それでも、男を心配し、こうして手を差し出してくれた彼の善意を信じたくもある。

 

 拒絶か、受け入れるか。

 男は覚悟を決めたように、勢いを着けて手を振って、

 

「--ありがとう!」

 

 メダリオの手を、しっかりと掴んだ。

 

 その時のメダリオが浮かべた顔は、花が咲いた様な、暖かそうな笑顔だったという。

 

 

 

 

 

 先ず、驚いた。

 村に着いたときには既にミニオンが全滅していて、被害は大きくても村人達は生き残っていて、怪我をした奴の手当てや、死んだ奴を埋葬するために運び込んだりしていた事()だが。

 何よりも今、俺の目の前で向かい合っている同類(エターナル)が、村人達を救ったという事に、だ。

 

 流転のメダリオ。ロウ・エターナルのテムオリンの配下で、永遠神剣第三位『流転』と契約した古参のエターナル。

 第三位であるから、第一位の俺には及ぶことは有り得ないが、永いエターナル同士の戦いを今日まで生き抜いた実力と、経験によって裏打ちされた勘は、俺にとっても脅威だ。

 事実、テムオリン達に襲われた際に一番倒しにくかったのがコイツだったりする。

 ……というか、何でこんな所に居るんだ?

 

「先ずは、私達の仲間を救って頂いた感謝を。有難うございます」

「いえ、例には及びません。偶々通り掛かっただけですよ」

 

 俺から見てムカつく微笑を浮かべながら、何でもないという風に受け答えていた。まあ、ミニオン相手じゃ万が一にもコイツが怪我をするなんて事は無いだろう。

 しかし、チクショウ。絵に成るな。俺がお前だったら苦笑されるのに。あれか、顔か? やっぱ顔なのかな?

 

「……そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はカティマ・アイギアス、この子は永遠神剣『心神』と言います」

「世刻望、です。頭に乗ってるコイツはレーメ。俺の神獣です」

「……氷堂尊。この神剣は『烏金』、第十位だ」

「よろしく。私はメダリオと言います。永遠神剣『流転』と契約した、エターナルです」

「え、エターナルじゃとー!」

 

 エターナルという言葉に激しく反応したのは、望の頭に乗っていたレーメだった。やっぱり神剣には位階に係わらずそういう知識を持ってるものなんだろうな。

 レーメが興奮しながら望達に説明しているのを適当に聞き流しながら、メダリオの方を盗み見た。

 

「…………」

 

 ジー、と。俺の方を見ている。最後に会ったのが確か千年以上前の事だから、もう忘れてるかな、と期待してたんだけど。

 もしかして、神剣隠す術式ってエターナルには効果薄い?

 え、バレた……?

 

 

 

 

 

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