転生者は駆け抜ける   作:ポピュラー

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お待たせして申し訳ありません。十二話です。

尊とメダリオがくんずほぐれつして「アーーー!!」する話です(嘘)

スキャナーあれば絵を載せるんだけど……いつか尊やヘレンの絵を載せたいね。


十二話っぽい何か

 俺達がメダリオと出会って数日が過ぎた。

 その日を境に俺達は、鉾を相手に勝利し続けて、目覚ましいまでの快進撃を見せていた。

 原因はやはり、メダリオだ。

 エターナルという超越的存在が、カティマ率いる反乱軍に力を貸したのだから、当然の結果だと思う。

 数の差、戦場の範囲。そのどれもが、エターナルの前には意味を成さない。

 相手がミニオン以上――ハイミニオンやE(エターナル)ミニオン、それと同等の存在――であれば話は違ってくるだろうが。

 とにかく、俺が感じるのはただ一つ。

 

「あー、楽だ~……」

 

 これだけは、メダリオに感謝してやってもいい。

 劣勢だった反乱軍を一気に立て直した、その手腕は見事という他ない。他のエターナルはコミュ障が多いのに。珍しいものである。有象無象とは違って、メダリオは彼らの目を気にしてない、というよりは慣れて(・・・)いる感じがした。もしかしたらエターナルに成る前は、群衆の前に立つ仕事でもしていたのかもしれない。

 まぁ、俺にとってはどうでもいい事だが。そういうスキルが有ると知れたのは良かった。他のエターナルなら「黙って従え」か「うぜぇ近寄ンな」か一方的に喋り掛けるだけだろうから。

 

 手に持っていた果実酒の瓶を口に傾けて、飲み干す。

 その間に聞こえる騒がしい声は、老若男女様々だが、その全てが喜びに満ちた歓声だ。

 言いそびれていたが、今俺達が居るのはミストルテという街だ。

 ここも今日、鉾達を倒して取り戻した街の一つ。

 ダラバの恐怖政治から解放された反動で、周りは既にお祭り状態になっていた。

 中には物部学園の生徒や反乱軍……いや、アイギア国の騎士達も混ざってどんちゃん騒ぎの様相を呈している。勝てると分かればすぐコレだ。まだこの戦争が終わった訳でもないのに、もう勝った様な気分ではしゃいで、勝手に祝っている。

 せめて、戦争がキッチリ終わってから祝杯を上げれば良いものを。戦時中にも関わらず、勝った気分で攻め入って滅ぼされた国や軍は昔からあるだろうに。

 ま、そういう俺も配られていた果実酒の瓶を片手に、樽を椅子代わり座ってのんびりとさせてもらっているので、強くは言えないな。

 

 ところで、さっき俺が言った事に変な言葉が混じってなかっただろうか。

 物部学園の生徒。

 そう、目の前でバカ騒ぎして笑っている、愛すべき馬鹿野郎共。

 戦況が逆転したとは言え、未だミニオンに襲われる危険もあるっていうのに、メダリオの戦う姿に感化されたのか、変な正義感を沸かせて着いてきたのだ。

 幾ら望達が危ないと言っても、メダリオが居るせいか望達も「大丈夫なんじゃないか?」という思いも浮かんだのだろう。最後は皆に押し切られる形で、着いてくる事を認めた。それでも戦闘が始まれば、後ろに控えているものべーから一切動かない、という事を約束させてからだが。

 ハッキリ言って、今の俺の最大の悩みは襲い掛かって来る敵では無く、こいつらだったりする。

 戦えない人間が戦場に居る程、面倒な事この上ない。それが自分達が守るべき対象であるなら、尚更。

 後ろで控えていれば大丈夫、という考え方も気に食わない。ここが人外の戦場でなく、元居た世界の戦場だとしても、安心出来ているという時点でそれは死亡フラグだ。出来る敵というのは、その瞬間を狙って息を潜めているのだから。

 グイッと瓶を傾けて、一気に飲み干す。

 

「ふぅー。ヘレン、今なら話しても大丈夫かな?」

「……はい、問題はないと思います。主のご友人達は丁度ここから離れていますし、周囲の人間は騒がしくて、私達の会話にも気付かないでしょう」

「ヘレンの声を聴くのも久しぶりだな。やっぱ俺は念話より声を出して会話する方が良いわ」

「はい。私もです、主」

 

 ヘレンはそう言うと、俺の太腿に腰を掛けて、ニコッと花が咲いたような笑顔を俺に向けた。

 …………アカンな、アルコールのせいかヘレンがいつもより数段可愛く見えてしょうがない。ヘレンの大きさも相まって一層……なんというか、庇護欲を掻き立ててくる。

 クッ、流石マイエンジェル。なんという可愛さだ。しかも、こういう笑顔は本当に時々しか見せてくれないので、その破壊力も抜群である。惚れてまうやろー。

 ……あ、ロリコン? とんでもない。俺はフェミニストなんだよ。多分。

 あれ? そういえばフェミニストってどういう意味だったっけ……。確か、純愛主義とかだった様な気がする。多分そうだろう。いや、そうに違いない。

 

「窮屈な生活をさせてスマンな」

「いいえ、主の望みの為ならこの程度……で、でも……」

「でも……?」

「帰ったら、その、ご……、ご褒美が、欲しいです!」

「ご褒美?」

 

 ご褒美か。こうして強請られるのは九天を隠して直ぐの時だったから、久しぶりだ。あの時は確か一緒に遊園地に遊びに行ったな。中学生になるまで待ってもらって一緒に行ったは良いが、ヘレンは他の人には見えなかったから、俺が遊園地で楽しそうにしてるのを周囲が哀れんだ目で見てくるのだ。特に彼氏彼女持ちのカップルが。べ、別に羨ましくなんかないからね!? う、羨ましく……、なんか……。

 

「? 主、どうして涙目になっているのです?」

「――いやぁ、ヘレンが居てくれて良かったなあって」

「え……えぇえ!?」

「感謝してるんだ、心から。ありがとな」

 

 じゃなきゃ、俺の周りには女っ気なんて終ぞ無かっただろう。感謝の意も込めて、自分なりに優しい手つきで頭を撫でる。その際顔を赤くして微動だにしないヘレンを見てトリップしかけたのは俺だけの秘密だ。全く、他の女子ももう少しヘレンの様な御淑やかさと初心を見習ってほしい。特にエターナルの連中は、切実に。肉体言語系女子ならエターナルにも居るけど。エターナルに成った女性は大抵女子力だけが低下している、というのは俺の持論だ。女子力ならヘレンとかの神獣にすら負けるんじゃないか、アイツら。幾ら食べなくても寝なくても平気だからといって男を捕まえるなら基本的な家事位は出来とけよ、という俺のアドバイスはどれだけ聞き入れられているのだろうか……。

 おっと、あんな奴らの事より、今はヘレンのご褒美を考えなくては。

 

「ヘレンは、何が良い?」

「――ふぇっ!? な、何ガデスカ!」

「ご褒美。今度は何処か遠出でもしようか?」

「そそそそうですネ!! えーと、えーと、うーんと……」

 

 普段の冷静なヘレンからは考えられない程表情を崩して、必死に考え込んでいる。ハハハ、愛い奴。

 後、勘違いされそうなので言っとく。俺はロリコンじゃないよ? いや、本当に。

 

 その後、どれだけ悩んでも良いのが思いつかなかったのか、結局その時は決まる事が無かった。ヘレンは直ぐに決めれなかった事を迷惑と思ったのか、申し訳無さそうな顔をして謝ってきた。いやぁ、必死にねだるご褒美を考えてるヘレンの表情を見れただけで僕ぁ大満足ですよ。

 因みにご褒美の内容は、元の世界に帰るまでに考えておく、という風になった。その際、ご褒美を“二つ”考えておくように、と付け足して。元の世界に帰って皆無事だったねハイ終了……という訳にもいかないからだ。少なくとも俺は。

 何故かと言うと、原因は俺にあるからだった。その原因というのが俺――即ちエターナルの特性とも言うべき弊害のせいだ。

 エターナルは世界から切り離された存在であり、結果としてこの次元から存在しなくなった者達の事を指す。だからこそ、時間を遡ったり過去に干渉する、という出鱈目な事が出来る。しかしそれは歴史に残らない存在であるという事を示す証明であり、絶対の法則。それ故に、彼らは一度でもその世界を離れてしまうと、その世界において存在していた痕跡を、全てを失ってしまうのだ。血筋も、絆も、友情も。そのエターナルだけを取り残して。

 今回、望達物部学園組が俺を忘れなかったのは、二つの要因があったと俺は思う。一つは、俺と一緒に世界を移動したから。もう一つは、エターナルの世界間移動能力では無く、神獣であるものべーの世界間移動能力によって移動したから。この二つだ。

 一つ目は、俺と一緒だったから本来切れる筈だった縁が繋がったままになったのだろう。二つ目は、俺も小難しい事は分からないので、あくまで予測だが、エターナルの移動能力と神獣の移動能力には違いがあるのではないか、という予想に基づいて考えれば筋は通る。同じように見えて、実際は中身が違うのかもしれないし。そもそも、神獣とエターナルを同等で考える事自体が間違いなのだが。

 ……あー、クソ。久々に難しく考え込んだが、やっぱり無理だ。知恵熱が出て来る。いっその事、エターナルや神獣のご都合主義として纏めた方が良いんじゃないか、コレは。

 

「んっ」

 

 脇を吹き抜けた風に身体が僅かに震えた。

 なんてことは無い、ただトイレが近いというだけだ。ここら辺トイレ無いんだけどね。聞いた時はビックリしたよホント。偉い人の家や城とかにしか無いらしい。やはり文化レベルは見た目通り中世ヨーロッパ辺りだろう。フランスの貴婦人達も、昔はヴェルサイユ宮殿の芝生の上や薔薇園で用を足していたというし。その姿勢が花を摘む姿に見えた事から、婦女子が用を足すときの“お花を摘みに”という隠語が生まれた……んだったか? とにかく、今はそれによく似た時代なのだろう。

 という訳で、俺も森の方へ向かうしかない。ものべーの方に帰っても良いんだが、いざという時に直ぐ動けないし、それに今は日も沈んで、森の方は真っ暗闇だ。そうそう見える事は無いだろう。

 そんなことで、ちょっと茂みの方へ向かおうと歩を進めて、何となしに後ろを振り向いた。

 見えたのは、丁度俺から数歩離れた、建物の影に立って此方を見つめるメダリオの姿だった。

 ……そんな所で、何してるんだろう?

 

「やはり、バレましたか」

 

 メダリオはクスッと笑うと、肩をすくめながら俺の方に近付いてきた。

 というか、一体何がバレたの? と、今更ながら周囲を探ってみるが、目の前にある森と、後ろにいる騒々しい連中以外には何も見当たらない。一瞬飄々とした態度のメダリオを訝しんだが、次の瞬間に俺はある事に気が付き、納得した。

 

「なんだ、(トイレが)したいのか?」

 

 つまり、メダリオは先客だったのだ。そこで大か小かは知らないが、用を足そうとした時に誰かが近付いてくる気配を察知して、急いで見つかりにくい場所に隠れたのだろう。その誰かというのが俺の訳だ。で、振り返ってしまった俺が偶然メダリオを見つけてしまい、あの台詞へとなったのか。

 なるほど、それは悪い事をしてしまった。確かにこの場所は街の広場からも少し離れていて、めったに人は来ないだろう、絶好のポイントだ。している所を見られたくない奴には、さぞ良い空間なのだろう。俺はそういうのをあまり気にしないので、その心が分からんけど。

 

「場所は良いな。ここなら見つかりにくい。ちょっとやそっとじゃ気付かれねぇだろうしな」

 

 ともかく、心なしかメダリオの顔が切迫した雰囲気を放っている。出る直前に止めたのだとしたら、かなり苦行だろう。

 

「お前がここでしたいんなら、しても良いんだぜ」

 

 俺は別の場所でするから、別に良いしね。

 しかし、メダリオからの反応は無かった。……これはどう取るべきなんだろうか。やはり、近くに人がいる所で用は足したくないという事なのか。うーん、返事をくれれば分かりやすいんだけど。メダリオは一言も喋らないし。いや、無言の圧力で「とっとと離れろ」とでも言ってきてるのかもしれない。

 こういう時何か反応を返してくれれば読みやすいんだけどな。コイツいっつも微笑んでるもんだから分かりにくいったらありゃしない。

 取り敢えずここから離れよう、と動いたらメダリオの声に止められた。

 

「――――貴方は、」

「ん?」

「貴方は、気付きましたか?」

 

 いや、何に? とは突っ込めなかった。メダリオの妙に真剣な気迫に俺が押されたからだった。いや、切羽詰まった、か?

 表情はいつもと同じ優男なのに、何かを押し留めている様な、そんな気配を感じ取れたのだ。いやまぁ、トイレを我慢してれば自然とそうなるか。

 気付いたか、というのは恐らく、先ほど俺が考えてた通りの事だろう。世の中にはトイレ一つをするのにシチュエーションを大事にする猛者がいるというし。聞いた話だと、全面ガラス張りで外から丸見えの状態のトイレでするのが快感だという男がいるらしい。

 俺には全く理解できない感性ではあるが、要は洋式トイレに座って足すか立って足すか、の違いと一緒だろう。それなら俺にも理解できる。

 

「当然。別に心配いらねぇよ」

 

 そう言ってやって、俺はそそくさとその場を立ち去った。

 なんだかんだ言って、俺も結構我慢してたから辛いんだよ。

 

 

 

 

 

 メダリオが影に隠れたのは、一種の遊びだった。

 

 村を助けたあの日に出会った三人の神剣使い。その内一人の神剣使いの正体を、瞬時に見破った。

 永遠神剣第一位『九天』、その担い手である氷堂尊だ、と。何故か彼は、その正体を必要以上に隠していたが。

 それでも、メダリオの目を欺くには至らなかった。

 いや、メダリオだからこそ欺けなかった、というべきか。

 メダリオと尊には、遠い昔に面識があった。

 遥か遠い昔――メダリオが初めて神剣を手にした日に、一度だけ会った事がある。

 目を閉じて思いをはせば蘇る、あの光景。復讐に駆られて手にした神剣――流転は暴走して、復讐の対象どころか世界の全てを破壊しつくして、それでも止まらなかった自分を止めてくれた、恩人であり目標。

 最も、その次に会った時には、彼はその事をすっかり忘れている様であったが。メダリオには生涯忘れられない記憶になっていた。

 カオス・エターナルとの戦いで行方不明になったと聞いた時には、メダリオだけでなく当時のロウの殆どがローガス許すまじと怒りに震えていたが、必ず彼は生きていると皆が信じていた。

 その彼が、目の前にいる。生きていた。ああ、これ程嬉しい事があるだろうか。

 今すぐにでも駆け寄り手を取って、ご無事でしたか、と声を掛けたい。

 今、皆がどうしていて、何をしているのかを報せたい。

 それは直ぐには叶わなかったが。何せ周囲の人間は、彼がエターナルだと知らない様子で、それはつまり、彼が意図して隠しているに違いない。あれだけ強力な術だ、初見で尊と見抜ける者はそうそういないだろう。

 尊が何故そうまでして力を隠しているのかは分からないが、自分には考えもつかないような事だろうから、とメダリオはそこで考える事を止めた。

 

 数日後、さっさと取り返した大きな街で、遂にその瞬間がやってきた。

 周囲は祭りの活気に満ち満ちていて、取り戻したという喜びからか、メダリオからも離れて街の人間と再会した喜びに涙を流し、抱き合ってその実感を噛み締めている。その光景を前にして、メダリオの頬は誰にも気付かれない程小さくはあるが、緩んでいた。尊とメダリオ達“旧”ロウ・エターナルがかつて望んでいた光景。大いなる平和を象徴する生命の意思を導き、護れた実感をメダリオもまた感じていた。

 ゆっくりと周囲を見渡して、その時尊が周囲から離れた場所で一人でいるのを見つけた。

 尊の友人――世刻望や斑鳩沙月、永峰希美にカティマ・アイギアスは、少し離れた屋敷の中で、権力者達に対して鼓舞しているはず。着いていかなかったのは、興味が無いからなのだろう。彼の親友から聞いた話では、興味が無い事にはとことん無頓着であるらしい。

 尊は片手に持った瓶を傾けながら、周囲を見渡して、柔らかな笑みを浮かべていた。時々口を動かしているのは、彼の神獣であるヘレンと話しているからだろう。

 ああ、やはり彼もこの光景を見て、嬉しいと感じているのだろう。

 その時、メダリオの奥から想いが込み上げた。

 私は尊に一歩でも近づけたのだろうか、と。

 一度目は、一撃で終わった。二度目も、手も足も出ずやられた。なら、三度目は? 一撃でも彼に届かせる事が出来るだろうか。

 そう思うと、止まらなかった。誘う様に殺気を送る。すると尊は、それに応える様に立ち上がると此方へ向かって来た。

 

 そうして、冒頭へと戻る。

 気配を限界まで殺して、更に見えにくい場所へと隠れて、尊の反応を窺った。

 結果、易々と見つかってしまった。だが、それはさして問題では無かった。

 

 「(――――ハハッ、まさか、ここまでとは……!?)」

 

 動けない。振り返る尊の眼がメダリオを捉えた瞬間、あらゆる神経が反応する事を止めた。呼吸も、目蓋の瞬きも。指先を動かすなどもっての外だ。

 ここに改めて、メダリオは尊との差を思い知らされた。自身もあらゆる経験を乗り越えて強くなっているはずと自負していたが、目標の頂は未だ見える事は無かった。

 時間にして僅かだが、メダリオからすれば一分以上に感じられた身体の硬直が抜けた時、思わず苦笑が漏れてしまった。これが永遠神剣第一位の担い手か、と。

 第三位と第一位。比べる事自体が間違いだと、仲間達からもそう言われる。

 それでも、近付きたいのだ。並びたいのだ。認められたいのだ。

 今は、その時ではない。しかし、いつかは。

 

「やはり、バレましたか」

 

 そう言って、前へと出る。

 その足を、止めた時だった。

 

 ――――なんだ、したいのか?

 

 えっ? と思わず呟いてしまいそうになる問いに顔を上げ、メダリオはまたしても息が詰まった。

 尊の眼が、メダリオを射抜く。その視線には、ハッキリと確認の意思が含まれていた。

 

「(もしかして、私の考えが読まれた……?)」

 

 表情には、出していないはず。エターナルとして長く生きていく内に培ったポーカーフェイスは、長い付き合いがあるテムオリンやタキオスですら簡単に見破れないものであるはずなのだが。

 

「場所は良いな。ここなら見つかりにくい。ちょっとやそっとじゃ気付かれねぇだろうしな」

 

 しかし、次の尊の言葉でメダリオの予想はほぼ確信となった。まるで、全て分かっているぞとでも言う風に、彼の口から言葉が紡がれていく。

 

「お前がここでしたいんなら」

 

 ――――しても良いんだぜ。

 

 メダリオはいよいよ絶句した。

 手玉に取られているとは、正にこういうのを言うのだろう。

 自分の力を試してみたいという、内に秘めた考えは、たった数日で曝け出されていたのだ。他ならぬ、その相手に。

 ポーカーフェイスが崩れなかったのが、せめてもの救いか。それすらも見抜かれていそうだが、こうなれば意地である。

 しかし、内心は未だ混乱から収まっていなかった。寧ろ、より納まりが着かなくなったと言っていい。心内に秘めた思いを見抜かれた困惑よりも、自分の考えを理解し、それに付き合ってくれるという喜びが勝った。

 それはつまり、メダリオという一存在を“認めている”という事なのだから。

 その事に驚き、喜びで呆然としていると、尊が歩き出した。

 どうやら、今メダリオが戦う意思が無い事も感じ取ったようだ。

 しかし、彼をそのまま行かせる訳にはいかなかった。メダリオには、尊に確認したい事があった。彼が行方不明になっている間に起きた、様々な問題。世界は変わったのだ。悪い方向へ。

 そして、メダリオ達はそれに抗っていた。今は、一人でも多くの味方が欲しい。

 この世界で、尊に会えたのは最大級の幸運であった。彼なら味方になってくれる。メダリオは確信していた。

 あの少女の心を救った、彼ならば。

 

「貴方は、気付きましたか?」

 

 今の神剣世界を取り巻く歪さに。

 弱者も強者も関係なく、ただ“奴ら”の意志で彼らの意思が不当に捻じ曲げられ一つになっていく、救いの無い世界。

 だからこそ、メダリオは戦っている。それを否定する為に。自由な意思を守るために。

 彼は立ち止ると、くっと口の端を吊り上げて笑った。

 

「当然。別に心配いらねぇよ」

 

 力強く、肯定した。その眼は確かにメダリオへの理解を示していた。

 その言葉に、メダリオはえも言えぬ安心感と力強さを感じたのだった。

 

 気付いた時には、尊は既に目の前から先へと進んでいた。その背を見ながら、メダリオは目標のあまりの大きさに、ただただ苦く笑った。




『エ・ト・カリファ』

『聖なるかな』キャラクター人気投票で19位になった、本編では出ていない謎のキャラクター(エト・カ・リファならいる)。
ちょっとかわいそうだ、という意見が多かったようだ。
明らかにエト・カ・リファの間違いであるが、かわいそうだ、と思われている人達からも名前を間違えられている彼女は、本当にかわいそうに思えてきた作者であった。
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