八年ぶりに訪れた『鯉が泳ぐ街』は見ていてとても癒される場所でした。いい気分転換になったと思います。
だから仕事に酷く疲れを感じてしまうのだろうか……。
GW中に全くパソコンに触ってなかったので少し変な文章になっています。
暇を見て直していきたいなぁ。
むしろ全部直したい。
所変わって校舎の屋上。昔は昼休みに屋上で弁当などを食べたりと出来ていたらしいのだが、今では封鎖されてしまっていた場所らしい。
だが、今の状況でそれを咎められる事は無い。
故に、ゆったりと眺めれる屋上から見える風景は文字通り“雄大”だった。
「やっちまったなぁ……」
ポツリと呟いて出た尊の言葉に、ヘレンが頷いた。
「もう、平穏な日々を送ることは不可能かもしれませんね」
淡々と紡がれていく言葉に益々気落ちしていく。
手元にあるコップに入った冷たい水を一気に飲み干すと、足元に落としていた目線を上にあげた。
キンと冷えた水が頭の熱を冷まして、この状況を受け入れやすくしてくれる。
だからといって早々気分が変わる訳もなく、依然として気分は最底辺だった。
「なぁ、ヘレン。これが全部夢落ちでしたー、っては……」
「なりませんね。いい加減そろそろ現実を受け止めたらどうですか?」
「ああっ、俺のヘレンが冷たい……」
盛大にガックリと項垂れるのもそこそこにして、新しく手に入れた神剣を手に取る。
その名も永遠神剣第十位『
武骨な外見にあまり鋭くなさそうな刀身が鈍く光る。
外見は普通の剣と何ら変わらないが、こうして手に取ってみれば内包されている力の量が普通の剣と比べるべくもなく感じ取れた。最も、手に取るまで分からない程ちっぽけな力程度しかないのだが。
神剣を手元から消すと、小さく苦笑した。
「まさかこんな事になるなんてなぁ」
「まったくです……。我が主にはそういった厄が憑いて回ってるのでは?」
「やめてもらえませんかヘレンさんっ!?」
普通なら鼻で笑って流す様な台詞だが、事ここに至ってしまうとどうも真実味を帯びてしまう。
口調も心なしか、少しばかり怯えている様な感じになっていた。
だからといっていつまでも怯えてる訳にはいかない。
全校生徒、とまではいかなくてもあの日はかなりの人数が泊まり込みで学校に居たのだ。学園祭という、普通の人なら青春の楽しい思い出として残していくであろう日に向けて。
それがまさか、いきなり人外同士が血で血を争う殺し合いの日々に身を投じてしまうとは露程にも思っていなかっただろう。皆大いに混乱しているはずだ。
前世?の時から尊は既に普通などという日々からかけ離れた生を生きていた。今更、いきなり別次元へ飛ばされましたーで驚くほど精神的に若くも青くもないし、『九天』を抜けば生き残れる自信もある。
だが今生は普通の生活を送っていきたいから物部学園には普通の生徒として入学したのだ。ここでもし『九天』を抜いて自分がエターナルだという事を証明すれば、それは確かに普通の生徒達からすればとても頼もしく感じるだろう。
だが、そうなると例え元の世界に戻ったとしても普通に生活することは二度と出来ないだろう。ただでさえ『九天』はその
そして、ソレを許さない存在もまたこの学園に居る。
「斑鳩沙月、ねぇ……」
「我が主は、彼女と会った事が?」
「いんや、これっぽっちも。でもどっかで会った気はするんだよなー」
「何処かで、とは?」
「それが分からんのだよワトソン君」
「はぁ……?」
尊の何処か投げやりな言葉にヘレンが顔を上げる。
「ま、それは追々思い出していくとしてだ。ヘレン」
「はい」
「―――斑鳩の説明、お前はどう思った?」
――――――数時間前。
神剣に覚醒した希美が神獣を使い物部学園を持ち上げ、その直後に絶が窓から逃走した後。尊は起き上がった沙月から希美と共に先ほどの襲撃と、今の自分達の現状の説明を受けていた。
ミニオンの事。
神剣の事。
前世の事。
そして、時間樹の事。
分かりやすいように要点だけを砕いて話してくれたので説明にそう時間は掛からなかったが、希美は理解するのに少しばかり時間を要した。
しかし反論がまったく思い浮かばないのは、今まで当たり前だと思っていた常識が悉く破壊されたからだろうか。
突拍子もない沙月の言葉が妙にスルリと頭に入っていった。
「っと……まぁ、簡単な説明はこんなところね。それじゃ二人とも、何か質問とかある?」
「は、はい」
「はい、希美ちゃん」
「えっと、神剣の凄さとかは分かったんですけど……どうして学校が浮いてるんですか?」
「……ああ、そういえば神獣の説明がまだだったわね」
「神獣?」
「ええ、そうよ。簡単に説明すると神剣に宿った意志が具現化したものかしら。神剣と対になって使い手に従ってくれるわ」
「それが、学校が浮いている事と何の関係があるんです?」
「だから、今この学園は希美ちゃんの神獣の上に乗っかってる状態なワケよ」
「へぇ~……って、ええええええ!!」
いきなり語られた事実に希美は思わず叫んでしまう。
物部学園は校舎自体もそうだが、体育館や運動場等の施設など併せるとそこそこ大きな部類に入る。
それが自身の神獣の上に乗っかっているという事実に、驚き過ぎて少し慣れてしまった希美ですら口を開けて呆けてしまった。
そんな希美を見て、沙月も苦笑する。彼女自身、気が付いて外を見たときは口をあんぐりと開いて驚いていたのだ。無理もないのかもしれない。
「まあそうなるわね。私も初めて見たときはビックリしたんだから。――――――さて、尊くんは何か質問とかある?」
「そうっすね……強いて言えば
「あら? 意外と冷静ね。もう少し混乱してて何もかも分からないって状態かと思ったんだけど……」
「ハハッ、色んなことが起こりすぎて疲れただけっすよ……」
ハァ~……、という大きなため息が尊の口から洩れる。
それを聞いて沙月は申し訳ない気持ちで閉口してしまう。
いくら偶然とはいえ神剣を取り、神剣に認められてしまったのだ。それが示す事実は、もはや普通の人間とは呼べない、超存在とも言うべきモノになるという事。
そしてそれは、あの戦いに巻き込まなければ尊は普通の学生のままでいられた、という事だ。
尊があの場に来た時、森と阿川達の会話を沙月は聞いていたのだ。尊が比較的安全な体育館から助けに来た、と。
もし、絶との戦いでもう少し上手く立ち回れたら。
そう思うと、沙月はあの時の自分の不甲斐なさを恨んだ。
だが、それを悔しむのは後だ。
今は、みんなと一緒に生きて帰れるように頑張ろう。
謝るのは、その時だ。
「そうね……
……でも御免なさいね。私もそこまで詳しく知ってる訳じゃないの」
どこか要領を得ない説明になってしまったが、尊はなるほどと頷いた。
彼の中ではヘレンが幾らか仮説が浮かび上がっていた。最も、前世?の知識何かで無理矢理解釈しただけなのだが、無いよりかはマシだろうと思っておく。
でなければ
「今出来る説明としてはこんな所ね。後は望くんの目が覚めるまで待ちましょ」
その一言で一応解散。希美は保健室で寝ている望の看病に、沙月は生徒会室に残り、尊は気分転換にと屋上へ向かった。
「―――という事でしたね」
「……そうだ」
ヘレンが沙月の説明を再び読み上げていく。
あの説明の後、尊は自分の身体をヘレンを通じて調べ上げていったのだが、
「
「ああ。それだと、俺がこの分枝世界に存在している理由が無い」
望達が神剣を扱えるのは、前世が神様だった事に他ならない。
その事自体は別にいい。元々強い存在が神剣を手にするのは珍しい事ではない。
しかし、それだけでは分からない事もある。それが
ヘレンはそのどちらも前世?では聞いた事もなかった。
特に
そもそも、『名前』というのはどの様な世界においても重要な役割を示している。物事を他の物事と区別して指すもので、一般的には普通名詞として使われているが、概念的な事としても広く使われる。
その最たるものが『運命』と呼ばれるモノだ。
ヒトの進むべき道はその人の名前によって決まるとも言われている。子供の名前を占いで決めるなんて事は元の世界でも有ったし、ペンネームやニックネーム等もその人の印象をイメージする上でとても重要な儀式のような物と化す。
人というのは常にそれに縛られている。
では、もしもその『名前』を自由に決めれる存在が居たとすれば?
もし、時間樹に存在している全てのヒトを命名によって管理する存在が居るとすれば?
可能性があるないで言えばあるだろう。そういう出鱈目な事が出来る存在を尊と共に幾らか見た事があるヘレンにとってソレは、簡単に流すことが出来ない予想だった。
そして、最大の謎が“尊”自身という事。
まずは整理していこう。
尊は永遠神剣第一位『九天』に認められた“エターナル”である。エターナルとなった人間は不老不死、殺されない限り死ぬことが無い。
つまり、寿命というものが無いのだ。
更に、ただ殺されても死ぬ訳ではなく、神剣の本体を別次元の世界に置いておけば、例え消し飛ばされたとしても即復活する事が出来るのだ。
よって、事実上
つまり、神でも無かった尊が再び赤ん坊になって新たな人生を歩むという事自体が既におかしいのだ。
一体誰が?
何の目的で?
何を成そうとしているのか?
考えれば考えるほど謎が深まる。まるで底なしの“沼”だとヘレンは感じた。
どれだけ考えを巡らし抜け出そうと?いても抜け出せず、疲れて油断してしまえば容赦なく引きずり込んでくる“沼”だ。
現に今も、答えどころか道筋すら見えず、浮かんでは消えて、を繰り返していく。
「――――――ハッ、面白ぇ」
不意にヘレンに聞こえたのは主である尊の嘲笑。
考えを止める。ヘレンは思い出したのだ。
自分がエターナルという名の『超越者』である事を。
この時、ヘレンは尊の顔は笑みを浮かべている事に気が付いた。絶対の自信がある人が浮かべる事を許された果敢な笑みは、未知に挑戦する冒険者を連想させた。
自身の考えが及ばないモノへ立ち向かう勇気と、その先にある世界へ向かうことが出来る高揚感。
これからどんな事が起きようとも、自身の力で切り拓いていくという不退転の決意が、そこにある。
そこから先は言葉はない。
しかし、尊から感じる気配が確かに変わったのをヘレンは感じたのだった。
オワタ! シリアス編完ッ!!
…………ごめんなさい。シリアスに疲れただけです。
絶がホイホイ逃げた後、目を覚ました沙月先輩から説明を受けた。
隣にはゴスロリチックな服を着た希美ちゃん。時々チラチラと望くんが寝ている保健室の方を向いている。すごく心配してるのが分かる。というかいつ着替えた。
のぞみんかわいいよのぞみん。
マジ良妻。
ちくせう。望爆発しろ。
モテない男のヒガミを発動しているといつの間にか沙月先輩に質問タイム。
なんで学園浮いてるんですかー?
神獣の上に乗っかってるからよ!
え、マジで!?
いきなり解った衝撃事実にお口があんぐり。
つまり物部学園はのぞみんの力で浮き上がったんだよッ!
な、なんだってー!?
ただでさえ世紀末な脳内がさらに最高にハイってやつだーーーッ!になっていた尊であった。
「さて、尊くんは何か質問とかある?」
質問ですかー、そうですね。
………………。
ヤベェ、話聞いてなかったから何を聞いたらいいのか分かんねぇ。
せんせー話を聞いてなかったので質問したいことがわかりませーん。
でもそんな失礼な事を言える訳がないので、途中聞こえてきた中二っぽい単語の事を聞いた。
それを丁寧に説明してくれる先輩の顔が凛々しい。
先輩マジかっけーんすよ。
でもちょくちょく目を疲れたように伏せる顔にドキがムネムネする。
ハッ、これが噂のギャップ萌えか!
そう思った瞬間ヘレンの雰囲気が絶対零度に。
WHY?なんで? と思ってたら顔を膨らまして拗ねてしまった。
思わず抱きしめたくなってしまった衝動は全力で抑えが、すぐにでも鼻から愛が零れ落ちてきそうである。
色々と残念な主人公であった。
そうこうしている内に一先ず解散、詳しいことは望くんが起きてからとなった。
ふいー、と誰もいない屋上に到着。
目の前の景色は大自然一色。映画の様な風景である。
しかしこれからこの世界で降りかかる死亡フラグの数々はマジで映画並みかそれ以上である。それらを全て回避していかなければいけない。
少しでも天元突破すれば怪しまれる事は決定的に明らか。
いくら強くても一般ピーポーになりたい俺からすれば一切気付かれずに立ち回れというのは超
―――まさか、超面倒な
今更後悔しても後の祭りである。
こうなれば現実逃避だァー!
いい加減現実見たらどうですか?
あべしっ!
もしかして厄が憑いて回ってるのでは?
ヘレンの言葉が尊の心にダイレクトアタック!!
9999ポイントのダメージ!
もうやめて! 尊のライフはゼロよ!
意外と心に余裕がある主人公なのであった。
しかしそろそろ生命的なフラグが立ちそうな今日明日明後日。なるたけ回避しておきたい。
尊は決意を新たに固めたのだった。
―――ハッ面白ぇ。
ちょっと余裕をブチかましてみる。
後悔はしていない。
気が付けばヘレンの視線が突き刺さる。
ああ、そんなキラキラしたお目々で俺を見ないで。
やっぱりちょっと後悔した尊なのだった。
シリアスは書いていてホント疲れるんですよね。
慣れてないからかな…?
永遠神剣第十位『烏金』
元々はミニオン(青)の神剣だったが、現在は尊が(脅迫して)持ち主になっている。
位階にすら表せられない程弱い神剣だったが、エターナルである尊が持ち主になった為か第十位に上がる。
守護神獣:不明