せとき →せ
いかるが →い
ながみね →な
るぷとな →る
かてぃま →か
なーや →な
ああ、だからユーフィはヒロインじゃないのね。
あれから数時間後、目が覚めた望と共に沙月先輩からまた説明を受けた。それでも尊は真剣に話を聞いた。
理由はもちろん、前回思いっきり聞いてなかったからからである。
それを聞いたヘレンが言うには時間樹内に入ったエターナルは弱体化しているのではないかとのこと。
もしそうなら看過できない事態である。
ただでさえPCゲー並みのフラグが乱立しそうなこの世界でもしものとき本気が出せないとなれば一気にバットエンドまっしぐらである。
でも目をつけられたくないから『九天』は抜けない訳で。
もう八方塞がりじゃないですかやだー。
内心冷や汗ダラダラである。顔は仏頂面だけど。
転生?してからモテたい為にちょいワルを演じて髪の毛を金髪に染めたりシルバーアクセサリーを付けたりと頑張っているのだ。
しかしそれが逆効果であることに気付かない尊くんなのであった。ニヤリ。
うん? ノゾム、この不機嫌面の男は一体誰だ。
ふいに聞こえた女の子の声。よく見ると望の肩に小さな女の子が座っていた。
……ふっ、そうか望。とうとうお前も紳士になったか。
ずいぶんと失礼な勘違いである。
小さな少女は望の神獣でレーメというらしい。
吾を崇めるがいいー、とちっさい体で胸を張る姿がとても印象に残る。かわいいくせにとっても偉そう。
まぁどうせ望の嫁になるんでしょー?
あながち間違いでもないから困るのだが。
説明が終了すると沙月先輩の案内で体育館へ向かう。クラスの代表者達を集合させていたらしい。
その途中早苗先生とエンカウント。思ったよりも落ち着いている様子に大人の風格を感じた尊(数千歳)だった。
……というか、俺の方が年上じゃね?
気にしたら負けである。
そんな尊を尻目に早苗先生がありがたい言葉を送ってくれる。
望、起きたばかりなんだから無理はしないように。
のぞみん、もう少し寝るようにしないとお肌に悪いわよ。
沙月ちゃん、時には息抜きもするようにね。
送られる言葉に三人とも程度は違えど表情が柔らかくなった。ベテラン教師の面目躍如といったところだ。
この中では誰よりも長く人生を歩んでいたからこそ言葉にして出せるのだろう。
いや、だから俺の方が(ry
尊が何かを言っているが気にしたら負けである。二回言ったが大切なことではない。
じゃあみんな、先に行っておいて。
了解!
―――あれ、俺にはないの?
私は生徒を集めてくるからー、と早苗先生はあれよあれよとどっかに行ってしまった。
ねぇチョット、早苗先生? 聞いてますか?っていうか聞いてください早苗先生ぇぇ!!
しょっぱい水が目からこぼれた主人公だった。
目的地の体育館に到着。
周りを見渡すと森と阿川を発見した望達。二人から今の状況を聞き出していった。
暴動が起こらなかったのは早苗先生が頑張ってくれたからとかなんとか。
あらあら、世の中物騒ねー、と井戸端会議が進んでいく。
のぞみんが驚いてないのに私が驚くわけにはいかないっしょー。
えー、なにそれー。
ううむ、意外と皆順応性が高いのね。阿川とか冗談言えるぐらい落ち着いてるし。
女子はもうキャッキャウフフな状態に。そこに自然に溶け込んでる望少年。
ちくしょう、俺が近付くと皆喋らなくなるんだぞー。
なにげに超不憫である。
そんな涙目の尊の肩に置かれる手。
大丈夫、俺も同じだ。
お前と一緒にすんな、信助。
そしてとうとう沙月先輩の説明が始まった。
静まったクラスメイト達が一斉に沙月先輩の方を向く。
そんな大衆の目に晒されながらも凛々しい表情の沙月先輩もといさっちん。
やったねさっちん、溢れ出るヒロイン力がすさまじいよっ!
でもなんでだろう、言った瞬間すごい死亡フラグ臭が漂ってきた。
どんな死亡フラグかっていうのを具体的に説明すると、好きな男の子と帰り道が一緒になってすごく喜ぶんだけど、その日の夜に吸血鬼に襲われて死ぬっていうフラグ。
どう聞いても悲劇のヒロインです本当にありがとうございました。
そんな沙月先輩の説明が終わると生徒から質問が投げかけられた。
僕たち、帰れるんすかァー?
みんなでがんばって探しまーす!
実際はこんな軽いノリではないんだが。
代表生徒が帰って静かになった体育館。残っているのは神剣組と早苗先生と森アンド阿川。
というか森と阿川、なんで残ってる。
だって面白そーじゃん。
ハッハー、お前ら暢気だねぇ。
尊には絶対言われたくない一言である。
食糧のことで色々話してると出てきたレーメに阿川達がたじたじになった。
……世刻の趣味?
ああ、そっち方面にね。
なんでだよ! と望は顔を真っ赤にして抗議している。
でも大丈夫、俺は分かっているから……。
だから違うってヴぁ!
その日はみんなから変な目で見られる望なのであった。
そこから展開はあれよあれよと進んでいく。
ついに望と希美と阿川たちが食糧調達に出発進行。尊と沙月先輩は居残り組になった。
でも気になる事が一つ。
ここ動物居るの?
尊持ち前の気配察知で周囲を探ると案の定居なかった。
考えてみてほしい。学園を持ってくるようなデカいクジラが急に空から降ってきました―――と。
落下型ヒロインならぬ落下型クジラである。
うん、どう考えても逃げない方がおかしいだろ。
今更ながら気付く尊。
でも食糧が無いとただでさえ雰囲気が悪いのに、獲れなかったとなったらどうなるか。
少なくともメンドくさいフラグが建つのは目に見えた。
よろしい、ならば手助けだ。
沙月先輩に気付かれぬよう気配を殺してエターナルの身体能力でばびゅーんとひとっ跳び。あっという間に森の中である。
さーて俺の飯はどこにいるかなー?
あ、いました主。
おお、でかしたぞヘレン。
ヘレンが指差す方を見る。
見えたのは大きな牙。左右で長さが違うソレと、白いタテガミのような毛が顔の周りを覆っている―――
って、あらやだド○ファンゴじゃないですかー。
向こうも気付いたのかクルリとしたお目々がギュピーン!!と光る。
ハッ、狙われてる!?
トゥヘアッ!と緊急回避する尊。
そこへちょうど突進してきたド○ファンゴ、もとい大猪。間一髪である。
―――チッ、外したか
天から舌打ちが聞こえてきた気がした。
反転してくる大猪。また突進してくるようである。
どうしよっかなー、と考えてると、重要な事に気が付いた。
そういや俺狩れないじゃん!
もともと尊は居残り組。こんな大きい獲物なんて狩って帰れるわけがない。
あれ、じゃあ今俺がやってる事って無意味じゃん!?
それに気付いてあたふたする尊。
だがしかし。しかしである。
そう簡単に落ち込む尊ではなかった。
様々な死亡フラグを回避していくうちに彼は打たれ強くなっていた。こう来たら、こうすればいい―――頭の回転をフルに活用し自分にとって最適な方法を導き出した。
―――このまま望達のところにつっこませれば良くね?
爽やかないい笑顔。ただし外道の笑みであった。
鬼さんこっちらの手の鳴る方へ♪ ただし半径5m以内に近付くんじゃねえぞコラ。
こうして大猪との追いかけっこが始まったのであった。
その頃、望達はというと食糧調達から学園の帰路に着いていた。
始めは皆(阿川は除くが)未開の地に足を踏み入れる事に大なり小なり怯えていたが、それ以上に目の前の自然に圧倒されて、少なくとも来た時よりかは足取りが軽くなっていた。
元の世界では二度と見ることが出来ない……いや、ジャングルなんかに行けば見れるかもしれないが、それでも身近にはない風景に皆が心を躍らせている。
とはいえそう長い事居れる訳もなく、学園が見えたときなんか皆が一斉に安堵の表情を浮かべていた。
「おお、やっと見えた。我らが母校、物部学園」
「ぜぇ、はぁ、この重さは、かなり、辛いわね。今度からは、もっと近場で、探すことに、しましょ」
「あー……そうだね」
ぜぇはぁ、と息を切らしながら信助達が言う。その手にはパンパンに膨れた大きなバックが下がっていた。中身は今さっきこの森で収穫した野菜や果物。他の生徒も見ると全員が手に鞄やバック等大きな袋が握られていた。当然望や希美も持っている、だがその量はほかの生徒よりも二つ三つ大きい。しかし、不思議と疲れは感じなかった。レーメによれば、これも神剣の力のおかげらしい。
どうだ、凄かろう? と胸を張って語るレーメに、望はというとそこまで実感がなかったので『凄いんだな』という程度だった。
それでも普通の人からすればそれは凄い訳で、何人かの生徒達からはうらやましそうな目線を受けていた。
「いやぁ、にしても望。それ、本当に、重くないのか?」
「うん、全然。手さえあればまだ持てるよ」
「うへー、うらやま、しいねぇ。ぜぇ、ぜぇ、これからは、家庭に、神剣一本は、欲しいぜ」
「なんだそれ」
「あ、でも出来るんじゃないかな」
そんな他愛のない話を信助としていると、それを聞いていた希美が入ってくる。
彼女も望と同じくらい大きなバックをいくつも持っているが、神剣のおかげか疲れた様子はない。
しかし、先ほどの希美の発言が気になったのか、疲れているはずの信助まで疲れが吹き飛んだかの様に目を輝かせていた。
「ほ、ホントか永峰!?」
「うん、だって氷堂くんは持っただけで神剣使いになったんだよ。もしかしたら、みんなも持てば使えるんじゃないかな」
それを聞いて望は確かにそうかもと頷いた。
あの時、氷堂がした事といえば倒れていたミニオンの剣を握った事ぐらい。もし希美の言ったことが出来るならこれ以上ないくらい安心出来るだろう。
話の中心となった氷堂の例があるからと聞いていた生徒は興味を浮かべていたが、望の肩に座っていたレーメが首を横に振ってそれを否定した。
「ムリだ、ノゾム。あれは最早奇跡のような事だったのだ。学校中の生徒に握らしたところで神剣使いは生れないぞ」
「え、でも氷堂は持てたじゃないか」
「だから言っておるだろう、『奇跡』だと。本来ならばありえんのだ」
レーメはそう言うとふわりと浮きあがって神剣について説明し始めた。
「そもそも、神剣というのは例えどんなに位階が低かろうと現代兵器では全く敵わない程強力なのだ。そして基本的に所有者が神剣を選ぶことは出来ない、つまり神剣が所有者を選ぶのだ。その時選ぶ基準となるのが“転生体”というわけだ」
「じゃあ、“転生体”じゃない人は神剣を持つことは出来ないの?」
「うむ、だからあの男が神剣を持てたのが『奇跡』なのだ」
「……でもレーメ、氷堂も“転生体”なのかもしれないじゃないか」
しかし望の反論にもレーメは「ありえんな」と首を振った。
「先も言ったであろう、『神剣が所有者を選ぶ』と。ミニオンのとはいえ、アレも歴とした神剣。アヤツはソレを
有り得ないものを見た、という顔をするレーメに最近神剣に関わったばかりの望達はそれがどれだけ凄い事なのかということに理解が追い付かない。
それでもレーメが驚いている事で、何となくだがそれが凄い事であるというのがわかった信助はあからさまに肩を落とした。
「はぁ~、重い物持つ時とかに便利だと思ったんだけど、現実は甘くないってか」
「ていうか、アンタそれ以外に興味無いでしょ」
「あ、バレた?」
「アンタが解り易すぎるのよ」
美里が加わり、いつもの漫才みたいな掛け合いが始まる。
そこからはのんびりとした行進が続く。恐れていた襲撃もなく、森は至る所に生えている木々が視界を遮るが、それを補うほど静かで―――
「…………?」
そこまで考えた時、望は違和感を覚えた。
辺りを見回すが、別に変わった所はないはずだ。そう、
「虫の鳴き声がしない……?」
変わったのは、雰囲気。ものべーから降りてきた時に聞こえていた虫や鳥の鳴き声が、今は自分達が草を踏みしめる音しか聞こえない。
嫌な汗が頬を伝う。何故かは望にも分からないが、何かが起こる。自分の中の何かがそう予感し、
「むっ。ノゾム!! 気をつけよっ」
そしてそれは、レーメの切迫した声で確実となった。
ちょうどその頃、尊は走っていた。それはもう速く。周りの木々が霞み、まるで木が生い茂る森の中を走っているとは思えない。しかし、彼はそんなものなどまるで無いかのように走り抜ける。事実、木々は彼が通るたびに彼にぶつからない様に木自らが曲がっている―――のではなく、
「オラオラオラオラオラァ!」
走りながら、その拳で木々をへし折っていたからである。木々は拳に当たると同時、根こそぎ吹き飛ぶものや幹から折れてやはり吹き飛んでいく。木々は細くない。どちらかといえば人間の腰回りより細い木の方が少ない。
しかし尊にそんなものは関係ない。ただでさえその身は殺されない限り死ぬ事は無いエターナルであり、永遠神剣第一位『九天』と第十位『烏金』の二つの神剣の持ち主である。更に言うと、彼は前世?で嫌というほど他のエターナルや神剣使い、またはそれに準ずる存在から追われ続けていて、それらから逃げ切るだけの実力を有している。
従って、ただの木々など尊の障害にはなり得ず、何の問題もない。
いや、問題はあると言えば、ある。
「フハハッ、脆弱、脆弱ゥ!!」
それは尊本人がノリノリであるという事である。今まで溜まっていたストレスを木々にぶつけているのだ。
いや、ストレスの発散は大切だ。それは問題ではない。問題なのはそのやり方と光景である。
この光景、どう見ても自然破壊をしている風にしか見えない。それも、ノリノリで。意味不明な事を叫びながら。
彼を知っている人が見ても引くであろうその光景は、知らない人が見れば当然奇人変人にしか見えないだろう。いや絶対そう見える、と尊の神獣たるヘレンですらそう思った。
実際尊を追いかけてきているはずの大猪ですら、若干引いているように感じられた。それでも追ってきているのは、背を向けて逃げる獲物を追うという獣としての本能なのか。
その時、ヘレンは前方から複数の気配を察知した。あの傲岸不遜な神獣レーメとその神剣の気配も感じられた為、目的はほぼ達成出来た。あとは大猪をそのまま集団の中に突っ込ませればいいのだが、そこでヘレンに疑問が浮かぶ。
どうやって突っ込ませるのだろうか、と。
かなりの速度で走っているので、このままだと数十秒もしない内に向こうに突っ込んでしまうだろう。かといって望達に気付かれない所で身を躱したとして、大猪がそのまま突っ込んでいってくれるのかというと、それも怪しい。望達にも気付かれず、大猪にも変な動きをさせずに学園へ逃げ切るには絶妙なタイミングとそれを察知できる直感、そしてそれを
それをどうするのか、そして出来るなら主の為に力を使ってもらいたいヘレンは主人である尊に問いかけた。
「主、もう少しで連中とぶつかります。どうしますか?」
彼女は返答を待つ。主の声に従うために。
そして彼は、その声を聴いて口を微かに歪めて微笑んだ。
まるで、問題ないとでも言う様に。
事実、問題なんて無かった。
「(そういや、どうしよーーー!?)」
そんな事、ヘレンに言われるまで考えてすらいなかった。尊は他の事に集中していたからだ。何に集中していたかというと、おもにストレス発散に。
思わず苦笑いしてしまう。今更どうしようなんて聞けない。聞ける雰囲気ではない。
しかし刻々と迫っていくこの状態。今のうちに何か手を打たなければ今まで積み上げてきたのがパァになる。それだけは何としても回避したかった。
しかし、手段は限られていた。
後十秒
―――もはや考えている暇はない。
後八秒
そこで彼は賭けに出る。
「ヘレン、俺に掴まれ。離すなよっ(転生?してからやった事ねぇが、やるしかねぇ!)」
「はいっ!」
後五秒
僅かに、エターナルの力を解放する。身体能力が格段に上がり、それに伴って足も速くなる。
だが、彼が求めたのは“圧倒的な速さ”などではない。
後二秒
彼は息を小さく吐く。かつて、ある世界へ渡った時にエターナルたる身である己が命がけで習得した、神ですら及ばぬ事の出来ない“業”。
故に、それは『超越者』たる身ですら括目する事は永遠に叶わない――――――
後一秒
その時、彼は全てを放棄し、
望達も、大猪も、空気も、音も、越える事が出来ない
ゼロ秒
大猪が望達に突っ込んでいく。
望達は尊がいた事に気が付く事は無く、尊の前を走っていた大猪も尊がいなくなったと、最後まで気が付くことはなかった。
「……ふぅ、成功成功。久々だったから少し心配だったけど問題なかったな」
小声で、成功した事に安心する。
大猪が望達に突っ込んでいったのと同時、尊は既に校舎の中にいた。正確には、教室前の廊下である。
人通りはたくさんいる。だが、誰も尊に気が付かない。いや、尊が突然現れたことに気が付いた者はいなかった。
「さぁて、見回りを再開しますかっと」
こうして彼は、誰にも気付かせることなく“手助け”を終わらせたのだった。
その後は、食糧調達の成果が思いの外良かった事に安堵した沙月や早苗先生が皆をいい方向へ纏め上げ、無事何事もなく、望が修羅場に出くわしてしまい、それに(何故か)尊が巻き込まれるなどの光景を見て、皆が苦笑したのはまた別の話である。
感想にてnotシリアスが読みにくいとの声を頂きました。
すみません、深夜のノリで書いてるので文章がめちゃくちゃになるんです。ホントごめんなさい。
粗方物語が進んだ時に一回全話手直ししていく予定なので、これからも読みにくい所や、直した方が良い所があれば教えて下さると嬉しいです。