作者の森の虎です。
私は今まで読み専だったのですが、ちょっと書いてみたくなって投稿してみました。
色々お見苦しい所もあると思いますが、どうかよろしくお願いします。
1話:大神探偵事務所
「この手紙を読んでいる頃には、俺は既にこの世界には居ないだろう。
龍真
じゃあな。
玄永」
何度読み返したか分からない手紙を投げ出し、俺はすっかり冷めきってしまった茶をすすった。
目の前のパソコンの画面は、無情にも会社の経営がギリギリであることを俺に告げている。
「全く・・・・・・何がお前達だけでもやっていけるだ!」
ペントハウスに俺の声が虚しく響く。
「そもそもだ!何だってこんな時代に合わない商売を押し付けといてやって行けるとか簡単に言って・・・・・・」
「そりゃあ、兄さんが俺らを信用してくれてるからだろ。」
ドアが開き、入ってきた人物が俺のぼやきに言葉を返した。
「お帰り、龍真・・・・・・」
パソコンを見ていた時と同じ顔のまま返事を返す。
すると、龍真が苦笑した。どうやら、自分は今相当醜悪な顔をしているらしい。
それとも彼の兄の大悪口を言っていたのを聞いてしまったからか。
「トラ、お前がパソコンを苦々しく睨んだところで経営が良くなる訳じゃないだろう。」
「それはそうだけどさ・・・・・・」
何となく目を合わせられなくなった。
龍真から外した行き場のない視線を、ドアに貼られている俺達の会社のビラに向ける。
大神探偵事務所。
表向きこそ私立の探偵事務所と名乗っているものの、実際は化け物や悪霊が絡む事件の解決を専門とする会社である。
神隠しや原因不明の変死事件等、普通の人間達には理解できない事件を請け負う会社。
悪霊、妖怪。現代の人間達はそれらを決して認めようとはしない。事実として人が消えたり、死んでいるにも関わらず行方不明だトリックとして片付ける。
そんな決定に納得のいかない人達や、俺達のように存在しない筈のモノを見る事ができる人達が俺達の会社に依頼をしてくる。
はずなのだが・・・・・・。
玄永が居た頃は、彼のツテや悪霊達が活発だったりで、本業だけでもやっていけていた。しかし、彼が置き手紙を残して居なくなってしまってからは、すっかり仕事が来なくなった。
仕事の依頼を得る手段は既に三人の脳が絞りカスに成るかと言うくらい考えたし、街のあちこちに宣伝用のビラも貼ってある。会社でもギリギリまで切り詰められる所は切り詰めてあるので、正直もうこれ以上どうしたらいいのか思いつかない。
「俺はさっさと抜け出したいんだよ、この状況から。ここの家賃だって馬鹿にならないし。」
現時点では、三人のバイトで何とかやりくりしている状況だ。
値切り倒してはいるものの、家賃はそこそこ払わなくてはいけないし生活費だってある。
頭を抱える俺に突然。
「確かにな。だがなトラ、良いニュースを持ってきてやったぞ。」
龍真が、薄い笑みを浮かべてそんな事を言ってきた。
「何だよ龍真。まさか、仕事の依頼が取れたとか言うんじゃ無いだろうな。」
当分仕事が入って来なかったせいか、純粋に喜ばしいと思うよりもこの会社に何の用かと疑ってしまう。
「そのまさかさ。」
だが、龍真は笑みを崩さない。
疑問は一気に吹き飛んだ。俺は思わずどんな仕事か聞き出そうと、龍真にまくしたてる。
「本当か!どんな依頼だ!何をすればいい!」
「まあまあ焦るなって。朱里も来てから話そう。・・・・・・所で朱里はどこだ?」
急かす俺を龍真は抑え、もう一人のメンバー、朱里の居場所を聞いて来た。
「ああ、あいつは今屋上だよ。バイトで花火作ってるって言ってたな。」
「バイトで花火作りって・・・・・・。まあ朱里なら大丈夫か。」
「それどころか、去年の傑作を越える物を作り上げるって張り切ってたぜ。」
「しだれ桜か・・・・・・。今年も見られれば良いが・・・・・・。」
「ん?」
龍真が途中までは笑っていたが、最後の瞬間に少し険しい表情をしたような気がした。新作が失敗するとでも思っているのだろうか。
そんな事を考えかけたところで、屋上への階段から人が降りてくる音がした。噂をすればなんとやら、朱里の登場だ。
「さ~て今日は何食おっかな~。っと、お帰り~龍真。」
「おう朱里。花火作り順調か?」
「ああ、もう完成してるよ。」
降りてきた朱里がキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。
当然中身はお察しである。
「何だよ!!また冷蔵庫めんつゆしか入ってねーじゃん!そうめんはもう、生まれ変わっても食いたくねーんだよ!」
酷い言われようだ。男三人、しかも全員見事に食べ盛り。それでも食い繋いでいけてるのは俺の実家から送られてくるそうめんのおかげだってのに。
「仕方ないだろ朱里、皆給料日前何だから。」
「そうめん!そうめん!そーーめん!!そうめんばっかじゃねーか!俺らその内髪の毛じゃなくてそうめん生えてくんじゃねーの!」
なおも喚く朱里に決定的な一言を放つ。
「じゃあ朱里、お前もう食わなくても・・・・・・」
「わーーーっっ!!ごめんなさい虎之介様それだけはご勘弁を!」
これが持つ者と持たざる者の違いだ。もっとも、龍真も朱里も両親を知らないから余りこういう所で優位に立つなんてことはしたくない・・・・・・。
そこで俺は朱里に龍真が吉報を持ってきた事を伝える。
「でもな朱里、そろそろそうめんの日々も終わりがくるぜ。」
「実家の会社が潰れちゃったか・・・・・・。覚悟はしてたが、俺らこれからどうやって生きていこうか・・・・・・。」
数刻前の俺の思慮など一瞬で消え失せた。もうこいつどうなってもいいやと考えたとき、龍真が苦笑しながら朱里に真実を伝える。
「違う違う、仕事が取れたんだよ。お前が来てから話そうと思ったんだ。」
「本当か?依頼主は誰だ?」
キッチンからお湯が沸く音が聞こえる。ちなみにここはオール電化だ。理由は単純、そっちの方が安く済むからだ。
「依頼主は、八雲 紫って人・・・・・・じゃあないな。」
は!?
勿体ぶっといて依頼主の名前間違えるって何だよ。
キッチンからもなんじゃそりゃ、とツッコミが入った。
「おいおい、久しぶりだからっていっても真面目にやれよ。依頼主って俺達の仕事だったら一番大事な所だろ。」
「そうだぜ、こんなところに頼む奴なんて何かあるに決まってんだから。」
俺と朱里からの文句に龍真は頭を掻きながら言葉を返す。
「ああ、そういう意味じゃなくてだな・・・・・・。なんて言うかその・・・・・・霊力が、な・・・・・・。」
成る程・・・・・・朱里の花火の話の時の険しい顔はそのせいか。
「つまり普通の人間じゃないと。そういう意味か。」
納得、とキッチンの方からも聞こえてくる。
今回の仕事、どうも面倒なことに成りそうだな・・・・・・。
何とか、一話書けました。
あえて神様転生とか、紫さんがスキマに、とかの王道はやらないようにしているのですが・・・・・・結局紫さん関係しちゃってますね。
これも王道展開になるのでしょうかね?
あ、感想は批判でも何でも、お待ちしております。