それに、あれです。不定期更新です。ISの方がスランプに陥っているので、完全に趣味で息抜きしようかと思った結果です。
では、楽しんでもらえればと思います。
そこには黒がいる。
海の上でメインブースターを軽く噴きながら水面に浮かんでいる。
その付近には何も反応はないのか、その機体の搭乗者はコックピッドの中で静かに、これからの事に集中するかのように目を閉じていた。
SYSTEM CHECK START
HEAD:HD-HOLOFERNES・・・・・・・・・OK
CORE:CR-LAHIRE・・・・・・・・・OK
ARMS:XAM-SOBRERO・・・・・・・・・OK
LEGS:XLG-SOBRERO・・・・・・・・・OK
FCS:INBLUE・・・・・・・・・OK
GENERATOR:GN-SOBRERO・・・・・・・・・OK
MAIN BOOSTER:CB-JUDITH・・・・・・・・・OK
SIDE BOOSTER:SB128-SCHEDAR・・・・・・・・・OK
BACK BOOSTER:BB11-LATONA・・・・・・・・・OK
R ARM UNIT:XMG-A030・・・・・・・・・OK
L ARM UNIT:07-MOONLIGHT・・・・・・・・・OK
R BACK UNIT:KAMAL・・・・・・・・・OK
L BACK UNIT:KAMAL・・・・・・・・・OK
SHOULDER UNIT:P-MARROW・・・・・・・・・OK
SYSTEM CHECK ALL CLEAR
すると遠方から、なにやら甲高い音を出しながら高速で近付いてくる1機をレーダーが捉える。搭乗者である青年が振り向くと、後方数百m地点で着水して水面を滑る様子が映し出される。
近付いてきた機体は、青年の隣で止まるようにブーストを弱めるとちょうどの位置で横に並ぶ。
「よう、首輪付き」
「ああ」
「お前のところにも来たのか?」
「ああ。インテリオルからな」
「俺はテルミドールからだったなあ。まあ、間違いなく
「寧ろそれ以外に考えられるはずがないだろうな。なんせ
オールドキングと呼ばれた男が口を三日月のように弧を描く。それに青年が続いて言う。
インテリオル・ユニオン、罠
オーメル、GAと並ぶ三大企業。それは、つい数ヶ月か前まで自身のオペレーターを務めていたが、既に袂を分かった人物の古巣である。
今でも覚えているのは、第八艦隊を相手取る時に
所謂、『騙して悪いが・・・・・・』を一手に引き受ける腹黒企業、と言ったところだろうか。
そのため、インテリオル・ユニオンからカーパルス占拠のミッションの依頼が来た伝その時から、これが罠であることが解っていた。
『───人々の安全と世界の安定を望んでおり、その要となるのがこのミッションです。』
この言葉だ。
要は『インテリオル、いや、企業もとい全世界の敵として捉え、人類の脅威である貴方たちを今ここで殺しておきます。』
ということだ。
事の発端は数ヶ月前に、隣にいるオールドキングとともに出たクレイドル03を全て落としたことからだ。
1機に
それを止めるために青年はオールドキングともにクレイドルを5機落としたのだ。約1億ほどの人間が地上へ堕ちていく。その光景は壮大であり、過去に類を見ない大量殺戮であった。
しかし、それを赦さなかったのは自身たちが所属していたORCA旅団の団長、マクシミリアン・テルミドールであった。かつてカラードランク1、オッツダルヴァとして、天才的な機動で相手を翻弄し容赦のない攻撃で多くのリンクス屠り、数千mにも及ぶ巨大兵器を鉄屑へと変えてきた彼は、数回ほど青年とともに戦場へと赴き、勝利してきた。
しかし、企業がラインアークに対して直接手を下す時に、ホワイト・グリントと共に企業のネクストを迎撃した。初めに沈んだのは意外にもホワイト・グリントであった。リンクス戦争の英雄と呼ばれながらも、早々と墜ちたホワイト・グリントに大きな違和感を覚えながらも、2機を相手にすることになる。
次いで落ちたのはまたも意外にもランク1であるオッツダルヴァであった。オッツダルヴァの機動に対応できるようになった青年は、企業側のもう1機のネクスト、フラジールを狙うフリをして、後ろからオーバードブーストで接近するオッツダルヴァに向き直りアサルトアーマーを直撃させたのだ。そこからはスピード重視の機体同士で牽制のしあいで青年が粘り勝った。
そこから1、2年したころ企業ではなく、ORCA旅団からの依頼が舞い込んで来た。
『───これは先導だが、同時に事実だ。』
確かにそうだ。扇動以外の何者でもないが、それは確かな事実として、実際に問題が存在している。
『それをよしとしないのであれば、私の誘いを受けてはみないか?』
酔っている。ORCA旅団という勢力を率いるマクシミリアン・テルミドールという男は自分に酔っている、それが青年の第一印象であった。しかし、それは地上を見限り、
だがそれは、直ぐに終わった。
『ORCAの連中、温すぎる』
『ああ』
『確かに志は大変素晴らしい。だが、あいつらは気づいていない。革命など、殺すしかない。アイツらのやっていることはただの延命措置だ。地上に引き摺り下ろし、衛星軌道掃射砲でアサルト・セルを払い除ける。それはいいだろう。だが、結局その先にあるのは生き残った上流階級が下の者を蔑み、差別からなる果てのない戦争だ』
『・・・・・・老害のせいで、
『ああ。戦いを、人類の種としての死をなくすのならサクッと
『・・・・・・何時決行だ?』
『ふっ、俺は何時でもいいぜえ?』
この瞬間に、数十億もの人類が殺される未来が決定した。彼らの言う未来の為の
「そろそろ、か・・・・・・セレンもいるんだろうな」
「ああ。相棒の元オペレーターか・・・・・・いいのか?」
「俺が引くとでも思っているのか?」
「ふっ、ちょっとしたジョークだ」
「笑えないジョークだな。行くぞ」
2人は合わせたわけでもなく、同時にメインブースターを噴かせる。オールドキングの機体であるリザは青年の駆る機体、チェルカトーレより重量が大きく。後ろに控えるように着いてくる。
差が開き、施設内に入ると新たな声がコックピッド内に響いてきた。
「・・・・・・偽りの依頼、失礼しました。貴方がたには、ここで、果てていただきます。理由は、おわかり、ですね・・・・・・?」
ところどころ詰まっているところを見ると涙を流しているらしい。しかし、今ここで流すのは弱みを見せているだけだ。
それもそうなのかもしれない。懇意にしていただけに、青年の裏切りとも言えるその行動に一番驚き、悲しんでいるのは彼女なのかもしれない。
しかし、それを鼻で笑う青年と、隣の機体からイラついた雰囲気を漂わせるオールドキング。
彼らはここに来た時から既に相手を殺すつもりでいる。過去に仲間だったからだとか、そういった感情がない訳では無い。特に青年はこの5人と関係が深かったのだ。
「どうせ、確信犯なんだろう?話しても仕方ない」
「所詮は獣か・・・・・・お前たちを引き合わせた私の責任だが・・・・・・言葉も解散だろう。だが、ORCAの意思を踏み躙った貴様らはここで果てるがいい」
「お前とこうなるとはな・・・・・・残念だが、私の蒔いた種だ。刈らせてもらうぞ」
「戦争屋風情が・・・・・・偉そうに。選んで殺すのが、そんなに上等かね」
オールドキングがそう返す。怒気が先とは違い数段上に膨れ上がった。
「殺しすぎる。お前らは」
「互いが互いを裏切り、タイムオーバーするのが解らんのか?もっと賢いと思っていたが、存外無能だな・・・・・・」
「いいだろう・・・・・・貴様を真っ先に堕としやろう」
それらの言葉を皮切りに5人はオーバードブーストを展開。
青年は両背部に装備した
オーバードブーストを切り、降下してきた5人を待っていたのは、オールドキングの
「フンッ、こんな物でしか来れんのか・・・・・・大口を叩く割にッ!?」
牽制として放ったPOPLAR01を撃ち落としているオッツダルヴァにいつの間にか至近距離に移動していた青年が07-MOONLIGHT《レーザーブレード》を振るう。
しかし、さすがは元ランク1。気づいたオッツダルヴァは直ぐに回避する。
が、横薙ぎで振られたそれをクイックブーストで後ろに避けたことから、片背部のKAMALを放たれ、プライマルアーマーを剥がされる。
それを見ていたオールドキングはダメ押しとして
「ッグ!」
オッツダルヴァがただでやられるわけもなく、
「下がれ、オッツダルヴァ!」
その声と共にウィン・D・ファンションが
その瞬間、青年の機体は数秒緑色の輝きを纏ったかと思えば直ぐにそれが放たれる。アサルトアーマーは瞬時にステイシスとレイテルパラッシュを呑み込んだ。
「オールドキング」
「ああ」
素早い動きで外に逃げたオッツダルヴァをオールドキングに追わせて、青年は片背部のKAMALをレイテルパラッシュへ放つ。
「完全に削られた!」
「任せろ」
今度はローディーが目の前に現れる。その横にセレンが
瞬時にそれを確認したと同時に、狙い振り切るために行動を起こす。
ドドドドドヒャウ!
そんな大きな音を立てていつの間にか、レイテルパラッシュの後ろへと回り込んでいた。
「・・・・・・は?」
「ウィンD、後ろだぁ!」
どちらの口から出たかわからない、呆然とした声が聞こえる。
離れたところにいたこともあってか、セレンはすぐに反応することが出来た。しかし、この場で一番驚いているのは彼女であった。
青年が使ったのは、俗に言う二弾クイックブーストと言われるものであった。
それは、リンクス戦争時代に特殊なクイックブーストの技法が噂をされた。それをよく使っていたのが、『天才』と評されていたジョシュア・O・ブライエンである。
最近まで確認されていたのはリンクス戦争時にそれを破り、『アナトリアの傭兵』と言われていた、ラインアークに所属していた男だった。
使える人物が限られるそのブースト方法を今まで使ったところを見たことがない相手が使用するのは驚くのも無理はないだろう。しかもそれだけでは無く、半端な軽量機体や中量機体ではなく完全な軽量機体のそれだ。目にも留まらぬ速さを体現したそれは、最早目で追う事は愚か、レーダーも本能できなかったようだ。
「っぐあ!」
ただでさえプライマルアーマーを削るための凶悪な武器で放たれたKAMALのそれは32発というとんでもない数を以て、ウィンDの機体に直撃する。伝わる衝撃が大きくないわけがない。片背部だけでそれだけの威力だったのだから両背部でなくて良かった、なんてことは無い。いつの間にか背部へ回り込まれていたウィンDは、青年の左腕で機体を切り裂かれる。残っているAPはほぼ底をついているはずだ。
それを見てオールドキングに任せるために、瞬間的に戦いを見る。
「ぐっ・・・・・・ORCAを、汚した貴様ら、に・・・・・・」
ちょうどのところでオッツダルヴァをPOPLAR01で撃ち落としところなようだ。
「オールドキング、ウィンDをやってくれ」
「分かったが、こっちも引っ付かれてる」
「ッチ、今から行く」
その言葉を残してその場を離脱しようとすると、後ろの方から殺気を感じる。脊髄反射のの要領で無意識に避けると、横をローディーの
原因はなにかと考えると、すぐに分かった。それはセレンの持つRG01-PITONEの衝撃によるものだった。
APを確認すると、4000程減っている。残りのAPは19000台だ。小さく舌打ちするとともに、二弾クイックブーストによりあとの攻撃を躱すと、離れていた場所で戦闘していたオールドキングと合流した。
「来たか」
オールドキングはそう呟くと向き直り、レイテルパラッシュへと
オールドキングはレイテルパラッシュへと向かっていく。青年はそれを邪魔させないようにと3人に両背部のKAMALを当てていく。
「クソッ・・・・・・お前らに・・・・・・カハッ」
2人目がやられた事により、完全に3人の攻撃対象が変わった。青年からオールドキングにだ。
だが、オールドキングもやられない。機体の速度がそこまで出ることは無いが、フェイクを上手く使い避けていく。さらには、POPLAR01や、SAMPAGUITAによる牽制で三人が避けている間に遠くに離れたりしている。
「首輪付き、早く殺してくれよ」
「なら、もっとマシな武器使えよ」
そう軽口を叩き合いながら、プライマルアーマーを根こそぎ剥ぎ取ったローディーの後につく。
こちらを牽制しているセレンはRG01-PITONEと
一方で、リリウムは2つに対しての遊撃であった。ローディーの駆るフィードバックがリザを狙って、セレンのシリエジオが青年を狙う中でどちらも対処できるようにだ。
今は青年がローディーの背中にいる状態なので青年に向けて
フィードバックとの距離が次第に潰され、セレンが撃ったRG01-PITONEを避けた瞬間、青年の機体の左腕が紫色の光が
「っぐぁぁ・・・・・・」
プライマルアーマーが全て削られていたためか、ブレードを当てられたところが音を立てて溶けていく。コックピッドであったであろう部分は跡形もなく溶けて消えている。
「貴様ぁぁぁぁ、何故裏切ったぁ!」
「・・・・・・裏切る?何を今更」
「何故あなたが・・・・・・あんなに人類の未来のために戦っていたあなたが何故!?」
「・・・・・・チッ」
「首輪付き、退いてろ」
「了解した」
青年はただただその行為にイライラするだけだった。ここは既に戦場である。既に3人は屠ったのだ。なのに、今もまだ説得が出来ると考えている。それがどうしようもなく、青年をイラつかせる。
オールドキングと短く言葉を交わすと、いた場所から離れる。
オールドキングはそれを確認すると同時に、機体の周りに翠の光を纏う。それを見た瞬間、2人はできるだけ離脱を図ろうとする。
カアオッ!
半径約200m強を包み込む翠の光は破滅を以てその場を喰らい尽くす。リリウムは若干範囲に入っていたのかカメラ系統に乱れを起こし、必要以上に離れていた。
離脱に成功していたセレンはリザにRG01-PITONEと向けLR02-ALTAIRを斉射。全て当たったのか、火花激しく散っている。
「チッ、当たりやがって」
青年はリリウムの動きを見ていると、あと数発で動かなくなるオールドキングに向かおうとクイックブーストを噴かせようとした瞬間、先ほどと同じく動きが止まる。
「・・・・・・チィッ!」
「今だ!殺せ!」
セレンが叫ぶと同時にリリウムは両腕のライフルを連射する。それらは先ほどのセレンと同じですべて命中。支援機としての仕事を十二分に発揮したのだった。
「すまねぇな、相棒・・・・・・どうやら、俺は、ここまでの器らしい・・・・・・殺してるんだ、殺されもするさ・・・・・・良かったぜ、お前とは・・・・・・」
「・・・・・・ああ」
オールドキングは死に際にそう残す。だが、青年はそれに対して背筋が凍るような雰囲気を以て短く頷くだけだった。
オールドキングの言うように相棒と言うのは同じ思考の下、利害が一致しただけの間柄だ。何もそんなに声を出しな悲しむどころか、何の感情も湧いてこない。
「あとはお前だけだな」
「・・・・・・貴方を、排除させていただきます」
「・・・・・・お前らにできればな」
3人は同時にブーストを噴かせる。
青年に向かっていく弾は悉く避けられる。タイミングをずらしても、今まで目にしたことのない機動で一瞬のうちに回り込まれて手痛い一撃を喰らう。
「・・・・・・切れたか」
そうつぶやきを漏らすと、今まで主に使っていた両背部のKAMALをパージする。腕部武器のみとなったが、左腕には弾数など関係ない07-MOONLIGHT、右腕には弾数1152発の
バララララララララ!
と連射する音とクイックブーストを噴くが施設内に響く。
それはセレンたちにとって悪夢と言っても過言ではなかった。なぜなら、横でXMG-A030の音が響いたと思いそちら側を向くと既に後ろに回り込まれているのだからだ。
「クソっ!なぜお前がその機動ができる!」
「・・・・・・今聞く言葉ではないな」
そう言うと同時に、アサルトアーマーをセレンに直撃させる。カメラ系統がやられたセレンを置き去りに、リリウムへと青年は向かう。
未だAPは15000弱。既に2人のAPは10000を切っている。それに、一撃が怖いような武器は持っていない。
そう判断した青年はリリウムの後ろへ回り込み07-MOONLIGHTを振るうために、膨大な量のエネルギーをブースターへ回す。二弾クイックブーストによって、前方へと推力が増した勢いのまま、反応する前に期待に直撃させた。足を切り落としてAPが切れたのだろう。
その勢いで上半身部分だけ残った機体は、水上ではなかったためか、地面に転がるだけだったがコックピッドの中で転がった時にぶつかった箇所にはリリウムの血がへばりついているであろう。
それでも───
「最期まで、─────様を・・・・・・お慕い、して、おります・・・・・・どうか、来世では・・・・・・いっ、しょ、に・・・・・・」
「っ!チィッ!」
反応が消えた。
何故か、今になって、名前を呼ばれて初めて胸が痛む。
だが、青年は意識を切り替える。成し遂げなければならない。何故なら、自分が決めた、全人類に怖れられようと、疎まれようと、恨まれようともやり遂げねばならないことがあるからだ。
そして、数分後には青年が動けば終幕となる状況へとなった。セレンは機体の全ての弾が切れたのだ。アサルトアーマーを発しようにも、光がともった瞬間撃たれて終わるのだから。
「当然か・・・・・・私が、見込んだのだからな。お前に、やられるのも悪くない・・・・・・」
「・・・・・・」
「なあ、教えてくれ。何故、あんな事をした?」
「・・・・・・俺がORCAに入った理由は、この
「それが、何故・・・・・・?」
「温いんだよ。終わらせたとしても、結局は
「・・・・・・他に方法、があった、んじゃないか?」
「・・・・・・本当にそう思うのか?それなら企業間での経済戦争は起きないし、汚染を広げながらも生きようと話ないだろう。結局は企業もORCAもやろうとしていた事は人類種の延命措置に過ぎない。今を生きるか、未来に生きるか・・・・・・それでも戦争は続くだろう。人々はコジマによる汚染を知らない。なら、その元凶を断たねばならない」
「なら、私たちも、お前も・・・・・・」
「・・・・・・俺が自害をするわけないだろう。でなければ、今まで殺してきたやつに対する最大の侮辱だ。俺は恨まれる道を選んだけだ」
「そうか・・・・・・無理は、するなよ・・・・・・ではな、─────」
小さくだが、確かに聞こえた自分の名前。それは青年に深く刻まれた。
(・・・・・・あんたまでも、まだその名で俺を呼ぶのか・・・・・・)
「ああ・・・・・・ではな」
その言葉と共に腕部のXMG-A030をコックピッドに向けて数発撃ち込む。
コックピッド周辺は蜂の巣の如く穴が空いていた。
それを確認した青年は、今まで殺してきた相手に感謝の念を送る。今となってはおかしなことではあるが、その過去があり今の自分の答えを出してそれを行動に移すだけだからだ。
既に、青年の持つ武器は左腕のブレードだけである。彼は、首に掛かっているロケットを握り締めながら2つ機体を悲しげな目で見つめたあと小さく呟いた。
「───ありがとう」
その言葉をカーパルスに残して消えていった。
それを最後に、カーパルス施設内は静寂が空間を支配していた。
───────────────────
「これが最後の目標、だな・・・・・・っ!」
そう呟きを漏らす青年は、AMSの連続接続により脳の端まで広がり続ける痛みに歯を食いしばる。
目標のクレイドルを全て落として地上へと急下降していく。10000m以上の高さからフリーフォールを行う青年は、カメラから見えるその景色を見る。
海や湖は水面が上昇したものの昔と相も変わらず、陽の光を尚も受けて自らを蒼に輝かせる。山や木は砂漠化は未だ広がり続け数も少なくなって入るが、依然として必死に生きようとしている。上を見ると、無限に広がる空は先にある筈の大きな宇宙を望むかの様にまだ青く光り輝いている。しかし、生物は見当たらない。それでも───
あぁ、やはり汚染されていようとこの景色は綺麗なままだ。
そんな想いが青年の心を占める。1000mを切ったところでメインブースターを垂直方向へ噴く。
すると、降り立ったところで新たな反応が幾つか感知された。それは、青年の中で1、2番を争うほど仲の良かったマイブリスを駆るランク7のロイ・ザーランドと、セレブリティ・アッシュを駆るランク28のダン・モロであった。
「おいおい・・・・・・こいつぁ勘弁してくれよ。マジできやがったか・・・・・・」
「兄弟!最近見ねぇと思ってたらお前・・・・・・!何でこんなことしたんだよ!?」
「ダン、やめろ。もう言葉だけでは解らねぇよ。既にトップ4と歴戦のリンクスを殺ってんだ」
「・・・・・・」
青年は07-MOONLIGHT以外のものは積んでいない。機体のダメージは整備が最低限しか出来ていないためか、APはカーパルスの時より、5000ほど減って既に10000を切っている。
青年はブースターを噴く。重量機体のマイブリスとセレブリティ・アッシュは一拍遅れて動き出す。
「クソッタレめ・・・・・・ダン、頼む!」
「ちっくしょぉぉ!」
ロイの声に大きく吠えて
しかし、1人で殆どの多くのネクスト、
青年はミサイルは全て避け、連続するガトリングの弾を被るダメージを最小限に抑えるために二段クイックブーストを使い回り込む。
「のろいな・・・・・・」
そう呟くと同時にマイブリスの後方上空から二段クイックブーストにより前方への推力を上げたうえに、紫色の光を発現させて踏み込むための加速も加わった。まるで姿を置いてきたかのような速度でマイブリスの目の前に現れた青年の機体に反応できるはずも無くブレードの直撃を受けてしまう。
「マジかよ・・・・・・こりゃきついぜ」
衝撃により瞬間的に動けなくなったマイブリスを置き去りに2人の攻撃範囲から逃れた青年は一瞬の隙も見逃さないように飛んでいる。
「クッソォォォ!やらせるかよ!」
ダンはセレブリティ・アッシュの左腕の
ダンは連続してその2つを放ち続ける。一発の大きいロイに任せるために。
ロイもそれを理解し機体を動かす。左背部の
先程から2人の猛烈なミサイルとライフル、ガトリングによる攻撃により攻めあぐねていた青年は、それを捨て速度により振り切ることを決めた。ミサイルが正面から来るがDEARBORN03だけには当たらないように斜め下を潜るようにブーストを噴く。
それを待っていたかのようにロイのガトリングを真正面から数発喰らうが意に介せず、突っ込む。狙いはロイではなくダンに絞ったようだ。
突っ込まれたダンは懐に入られたら最後ではあるが、決死の覚悟を決めてロイに向けて叫ぶ。
それは、その一瞬だけは、彼の憧れた存在である機体の名前を表すようヒーローのように輝いていた。
「あんたァ!俺に構わず撃ってくれ!」
「チィ!済まねぇなぁ!」
ダンの視界から青年の機体が消えた。しかし、それを合図としてダンは前にブーストを噴かせたのと同時に右腕の
ダンは慢心しそうになる気を抑えロイへ叫ぶ。その瞬間だけは、彼の機体の名前である、とあるヒーローのように輝いて見えた。
ロイも解っていたのか躱したと同時に青年に向けて右腕の双発である
「チィ!」
ブレードが避けられたため空振り、体勢を整えるのとブーストを噴かせるための間の時間により、青年の機体が一瞬硬直する。その間に双発のハイレーザーの片方が直撃した。
青年の機体の初めてダメージらしいダメージを受けた瞬間だった。
しかし、動き出した青年の機体は先程とは違い、一切無駄のない起動を行い、攻撃を二弾クイックブーストにより避け切る。数分後にはロイは機体のマイブリスとともに青年により蒸発させられた。
「クッソォォォ!お前は、お前は何でそうなっちまったんだ!少なくとも俺はお前に憧れてたんだ!俺より経験が少ないのに活躍していくのを見るのは俺の支えだったんだよ!お前とこなしたミッションは俺も堂々と動けたんだ!お前は俺のヒーローだったんだよ!なのに・・・・・・こりゃあ、あんまりじゃねえか!」
「・・・・・・押し付けるなよ。俺はヒーローじゃなかった、 ただそれだけだ。俺は俺の答えのために動いただけだ」
最後の力を振り絞って047ANNRを連射するが、いつの間にか側方に回り込まれたダンは機体と共にを横一文字に切り裂かれた。
───────────────────
「・・・・・・これで終わり、だな。最初に、オールドキングと決めていた墜す対象のクレイドルは全部やった。最後のリンクスたちを殺した。あとは・・・・・・この衛星軌道掃射砲が発射するまで、か・・・・・・」
場所は"衛星破壊砲エーレンベルク"である。
青年は、数ヶ月前までの行動を思い出していた。カーパルスから戻った青年は07-MOONLIGHTだけで対象のクレイドルを全て落とした。落としたあとはそのままロイとダンと戦闘に入ったが、持てる力を以て2人を下した。
その際、機体も直す者がいるわけが無いので依然ボロボロのままである。
今、青年の目の前には衛星軌道掃射砲が自身の存在を示すかのようにエネルギーの充填が行われている。
青年は、残った一部の人類へ自身の答えを提示した。衛星軌道掃射砲により、アサルト・セルを払い除け、宇宙への道を切り開くように。
「もう既に3機は止まらない、な。膨大なエネルギーに耐えられるわけがないだろう・・・・・・」
まるで、他人事のようなつぶやきを漏らし着々とエネルギーが溜まるそれを見る。
数分後、発射準備が整ったそれは発射するためのエネルギーが本体から漏れ出している。
「やっとか・・・・・・これでORCAの連中とオールドキングも救われるな」
すると、視界の端のレーダーに新しい反応が生まれた。見るからに、反応の大きさはネクストである。しかし、企業のミッションで青年を殺しにきたネクストは全員の屠ってきたのだ。
初め、新しいリンクスかとも思っては見たが、この状況下ではありえない。すると、直ぐに青年は1つの可能性が頭に浮かぶ。それは、
「・・・・・・ハハハハハハハハ!やはり生きていたか、ホワイト・グリントォ!」
『言わなくてもわかりますね?』
青年の狂った歓喜の声にホワイト・グリントのオペレーターであるフィオナ・イェルネフェルトの冷たさを感じる声が響く。
次いで、ホワイト・グリントは青年の機体の真正面に来るように滑るようにして止まる。
『・・・・・・幾つか、聞きたいことがあります』
「・・・・・・」
『何故、ORCAの理念に背くようなことをしたのですか?』
「・・・・・・今更何を言っても過去がかるわけでもあるまい。わざわざそんな話をしようとしに来たのか?無駄なことだな」
『答えてください。お願いではありません。これは、命令です』
「聞くとでも?」
『そうですか・・・・・・貴方の今の状況は誰がどう見ても不利ですが?』
「あ?いらん心配なんざするだけ無駄だ・・・・・・俺たちが今からするのは生きる死ぬかの殺し合いだ」
『
その言葉を掛けると、時間をかけて答えにならない答えが返ってきた。少年が友だちに自慢するかのような雰囲気を伴い、青年は聞かれたことを純粋に嬉しく思いながら話す。
「・・・・・・俺の、最高の相棒なんだよ。だから誰がどう言おうとこれは俺の機体だ。ガタが来ちまったが俺はこいつと果てれば、それでいい」
青年がそう言うと、彼の機体は各所から出ていた火花が一際大きく弾けたと思ったら直ぐにそれは治まった。
それはまるで、青年の機体が意志を持ち彼自身のことをお互いにパートナーと理解しているような、彼ら
『そうですか・・・・・・では、さようなら』
フィオナは短く別れを告げる。それと同時にブーストを噴かせて急加速を行う。
既に青年のAPは6000を切っている。その上、整備が行き届いていない動力系統の周りは既にボロボロとなり、今でも動いているのが不思議な程であった。
それでも青年は、圧倒的な速度にものを言わせて加速を行う。
「・・・・・・ッ!」
「・・・・・・っアァ!」
それは芸術であった。見ている者がいれば誰もが一様に口を揃えてそう言うだろう。
白が両腕の
AMS深度120%───使用停止を推奨
コックピット内に無機質な声が鳴り響く。
ああ。この声がどれだけセレンの声なら良かったか。リリウムの支えがあればどれだけ良かったか。ロイとダンがいればどれだけ楽しかったか。
そんな思いが幾度となく頭に過ぎるが、青年は総てを振り払い動き続ける。
『止まりなさい、このままでは貴方は死んでしまいますよ!』
「・・・・・・そんなこト、この場にいる、時点で・・・・・・いや、生まれてから、ズッと死を覚悟して、生きてキタんだ。今更、ナんだヨぉ・・・・・・」
そろそろ限界が来ているのだろう。この数分間の命のやり取りで、もう既にジェネレーターのKP機関が働かなくなってしまっているためオーバーブーストは使用できず、プライマルアーマーが既に働いていない状態だ。
「ッぐ・・・・・・いテェなア。死ヌ、ほどいテェし・・・・・・今スぐヤめテェよ。ケド、俺はどこマで行っテもやっパりリンクスなんだ。それ以上デモそれ以下でモねぇ・・・・・・」
脳にも限界が近づいているのか、既に言語にも粗が出てき始めた。
しかし、ホワイト・グリントの搭乗者とオペレーターであるフィオナはその言葉を一字一句聞き逃さないようにする。
「ORCAノ連中は、温すギ、たんだ・・・・・・アの、ママデハ、結局救わレナイ者が多すぎル。一度、人類ハ弱くならナクテはならナイ。ある者ガ、完全ナ敵となリ人々が手ヲ組ム。そレが故ニ、戦イコソが人類ノ可能性なのかモしれン」
フィオナたちは青年が言わんとしていることが理解出来た。あのままでは結局、報われない者が多かった。
それでも、彼女は納得出来なかった。いや、したくなかった。力を持ちすぎた故の解決方法であり、事実だけを見るとすれば大量殺戮というものしか残らないのだ。
『それでも、不必要にクレイドルを落としすぎです!人類のためというのならば、その不必要なまでの人類は救うべきでしょう!』
「不必要だと?それはナイ。逆に聞くガ、ORCAのしヨウとしていタことはクレイドルを墜すコトだ。そして、ソレに賛同シタ貴様らモ、俺と同ジ穴の狢だ」
フィオナは彼の言いたいことがすべて理解出来た。結局、あの場で沈黙した以上その人類を殺したのは自分たちの責任でもある上、それから逃れようとしていることに過ぎないということを。
そして、彼は人類の最低の負の遺産を誰かがやらねばならなかった多くの犠牲を強制的に払わせ、自分たちを共通の敵と認識させることによって、多くを助けようとしているのだ。
「俺ガ、この道を選ンだ以上、既に言葉ハ意味を成サナい・・・・・・アト2分で全てが終わル。サア、最後だホワイト・グリント!俺が生きタ証ヲ・・・・・・リンクスとしテ生キた証を・・・・・・最後に残サセてくれ・・・・・・!」
悲痛とも歓喜とも憤怒とも狂気とも取れる言葉をを合図にして2人は自身を奮い立たせる。相手の全てをここで踏み潰すために。
───そして、自身の答えを成就するために。
まるで芸術のようだ、この場に人がいれば必ずそう言うであろう光景が目の前にはあった。白の右腕の
「・・・・・・チィ!」
ホワイト・グリントの搭乗者が焦っているのか珍しく舌打ちをする。基本的に喋ることがない彼は任務中であろうと殆ど声を発さないどころか、舌打ちすらしない。
「っアアアアアアアァァァァァァァアァァアアアアアア!!!」
黒は咆える。自分を潰さんとする白に向かって。
白はそれに気圧されたのか、動きが若干ズレた。勝利に飢えた青年は、殆ど条件反射の要領で腕の紫の光を纏う。それは少ない生命であると解っていながらも自らを煌めかせる箒星のようで。
それはホワイト・グリントの搭乗者とそのオペレーターのフィオナでさえも一瞬見間違えるほどの眩さを以て、左腕の07-MOONLIGHTを直撃させた。
ホワイト・グリントの
既に残り時間は30秒を切っている。
白は既に虫の息寸前の黒を潰せないでいる。
「ソウだぁ!ホワイト・グリントォ!俺たチハもウ必要なインだヨォ!あトハ、残された人類ニ未来ヲ託すだけダ!」
黒は嗤う。世界に響くように、彼という存在が残るように。
そして、多くを助けるために多くを殺した自分を歴史に、この世界に刻むために。
『もう戻って!貴方だけでも戻って来て!』
フィオナが叫ぶ。
だが、ホワイト・グリントを駆る搭乗者はそれに答えない。
彼の中の答えは青年と同じだった。彼の独白を聞いた。そこには、自分たちができなかったことをした青年への賞賛と同時に嫉妬もあった。だからお互いがお互いを認める。
それ以前に、宇宙への道を妨げるような自分たちは、人類にとって既に用済みなのだ。それを理解し、お互いがお互いをリンクスとして称え合い、殺し合う。
既に、彼らは何も聞こえていない。全ては目の前の敵を潰すために。
「・・・・・・ッ!」
「アアアアアア!」
白は周囲に緑を纏い、黒は左腕に紫を纏う。両者がぶつかり会う前に青年は口を開いた。
「・・・・・・アリ、がとウ・・・・・・
そう小さく呟いた青年は誇らしげに笑っていた。自分の出した答えを実行することが出来たのだから。青年は想う。今を生きる人類と、未来に生きる人類、そして、人類の種としての存続を願った彼は想う。
世に・・・・・・人類に・・・・・・平穏の、あらんことを・・・・・・
それと同時に、衛星軌道掃射砲は莫大な量のエネルギーを射出し、漏れでたエネルギーは衛星軌道掃射砲をかき消すほどの熱を発した。
当然、青年の乗っている機体とホワイト・グリントが乗っている機体が耐えられるはずもなく、目の前は全て白に染まったのだった。
こうして、人類は数十億にも及ぶ大きな犠牲とともに宇宙へと発展を遂げていったのだった。
どうでしたか?楽しめていただけたらと思います。
さて、ストライクウィッチーズ要素は何処から出てくるのか・・・・・・