猫は空を翔ける   作:主任大好き

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世の中は総てエゴの塊だ

総ての者が個人のエゴによって形成される

本来の意味の『自己、自我』なんていうのは言うまでもなく







だから祈り続けるのだ。幸福を

だから願い続けるのだ。平和を

それなら世界を救って見せよう

そのためならば自身を切り捨てよう

そのためならば絶対悪にすらなって見せよう

そうした先に答えがあるのなら


















────だからこそ、そのエゴが統一された時・・・・・・

────だからこそ、戦いこそが(・・・・・)人類の可能性(・・・・・・)』なのかもしれない


こうして山猫は魔法使いへ

目が醒める。

 

「ッグ・・・・・・ガッ、カハッ・・・・・・ッ!」

 

動こうとしたことによって急に襲い掛かってきた身体の節々に広がる激痛。それによって、霞んでいた意識がはっきりと冴えわたる様に澄んで行くのが感じられる。

青年のいる空間、そこは何処からかほんの少しだけ光が漏れてきているのか、自身の周りの色がほんの少しぼんやりと見える状態だ。

しかし、目を開かなくてもわかるのは身体の至る部分が何か粘着質のある物質に塗れていることだ。そんな彼の視界はほぼ紅に黒が混ざったようなどす暗い色しか無い。所々に色の斑があるのがとても気にはなるのだが。

 

(大分、昔に・・・・・・セレンから、聞いたことが、あるな・・・・・・昔の、宗教にあった、地獄という、概念がある、とかなんとか・・・・・・まあ、それもそうか・・・・・・)

 

そんなことを思いながらも、彼は現状を把握しようと努める。

───視界はギリギリ見えるレベルで周りが見える。

───身体は動かそうとすると激痛が走り立つことはおろか腕すら動かせない。

現在の自分自身とその周囲の情報をある程度把握したところで、今度は自身の身体の情報を正確に把握することにする。

リンクスになる際に搭載された後付けの機能であるそれを起動させる。

 

    CONDITION CHECK START

 

  神経組織、筋組織ともに重大な欠損の確認・・・・・・修復率29%

  内蔵組織に複数箇所に致命傷を確認。生命維持の為、内蔵組織の修復を実行・・・・・・修復率21%

  ・・・・・・総修復率31% 最低、各修復率が65%を超すまで行動を非推奨。

 

    CONDITION CHECK CLEAR

 

淡々と頭の中に流れてくる情報の羅列を読み上げていく。

そうして漸く自身の置かれている現状を理解する。粘着質のある物質は自身の体から流れ出た血液なのであり、周囲のどす黒い紅に斑があるのも自身の血液が大量に付着したものなのだ。

一般的な人間であるのならば即死しているはずの大量の出血や、致命傷のような傷は彼と同じ存在である【|山猫(リンクス)】にとっては中途半端な傷であるらしく、ただ只管に苦痛が長く続くだけなのだ。それもそうだろう、医療用ナノマシンや、強化外骨格、臓器や他の人体を構成する上でネクストの機動に耐えられるように改造した身体は、戦闘中に致命傷を負うこと前提としているのだから。

しかし、ここまで自分の現状とこの場における現状を把握してしまうと殆どやることがなくなってしまった。周囲には未確認熱源反応は存在しないし、急に反応する気配もない。

 

「ククク・・・・・・さてッ・・・・・・どうした、もんか・・・・・・ねぇ」

 

既にクレイドルは総て地上に降りた上に、ホワイト・グリントとの戦闘の最後に起こった衛星軌道掃射砲エーレンベルクにより、アサルト・セルは払い除けたのだ。

どういうことか、多くのエネルギー漏洩による熱エネルギーの奔流に晒されながらもなんとか生き残ってしまった。

ならば、『現在(いま)を生きる人類のため』という大義を背負ったウィン・D・ファンションと、『未来を生きる人類のため』という正義を掲げたマクシミリアン・テルミドールとORCA旅団員の総意を打ち砕き、『人類の種としての存続』を答えに出した自分が、彼らの代わりにここから人類の行く先を見届けなければならない。

 

「人間が・・・・・・人類の・・・・・・天、敵か・・・・・・クククッ・・・・・・皮肉が、利いてるな」

 

そう。それが、【人類の天敵】とまで言われた彼の罪の業であり、使命でもある。

 

「成し遂げた、か・・・・・・セレン、すまねぇな・・・・・・俺は・・・・・・まだ、逝けねぇ、な」

 

カーパルス占拠という、リンクスとして受けた最後のミッション。そして、最後の最後に殺した恩人であり、師であり、親でもある人物を想う。

 

「リリウム・・・・・・悪ぃな・・・・・・お前、との・・・・・・時間は・・・・・・幸福だった。・・・・・・来世が、あれば・・・・・・なぁ」

 

自らの手で、いっときとはいえども恋仲にあった人物を殺めた。元々、リンクス同士で懇意にすること事態推奨されなかった。

いつ死んでしまうのか、いつ裏切られ淘汰されるのか、老害の策略によるものなのか、はたまたただの偶然か・・・・・・そんな世界で生きているのだ。そんな中、虚像だらけの世界の中で唯一自分で見つけた本物(他人への愛)の感情。

今ではこの大地も、大海も、大空も汚染されてしまったが、それでも未だに美しさを忘れさせないこの星が愛おしいし、セレンやリリウム、その他の友人だった者たちと別れなければならなかったこの星が憎い。

 

「俺の、役目は・・・・・・この星で・・・・・・朽ちる、まで・・・・・・」

 

ふっ、と目を閉じる。

いくら大量虐殺をしたところで所詮仮初の悪に染めただけ。当然、罪悪感はあって当然のことである。しかし、それ以上に自身の答えを貫いて見せた事への誇りがある。正反対とも言えるその感情は複雑に絡み合いながら彼の心を占め、義務感を(かたど)り続けている。

 

「チッ・・・・・・血が、ちっと・・・・・・足り、ねぇ・・・・・・か?」

 

自嘲気味に笑う。流れ出る血はある程度収まりつつあるが、如何せんコックピット内の見た目通り出血が常人の比ではない。

人などいないだろう、そう予測しつつ念のために周囲への警戒をさらに強める。すると、遠くの方に幾つか生体反応が湧いたように出たのだ。

 

───何故、こんな所に?

 

その疑問は彼にとって当然だった。何故なら、動物は急激に汚染されていった地球に対応することが出来ずほぼ全ての動物が死に絶えた。さらに言えば既にアサルト・セルは衛星軌道掃射砲(エーレンベルク)により払い除け、発射と同時に各地に全人類を宇宙へと運ぶ宇宙船を待機させていたのだ。

あれほどの膨大な熱エネルギーによる爆発。周囲はきっと消滅し、熱によりあの湖は水蒸気爆発の嵐となっていてもおかしくはない。故に、『アサルト・セルを払い除けた』という事実は全人類へと伝わったはずだ。よって、彼らは人ではないという事になるのだ。

つまり、仮定の話だがネクスト(チェルカトーレ)の扉をこじ開けられでもされたなら自身の命は未知の生き物の判断に左右されるのだ。

 

「クソッ・・・・・・まだ、見届けて・・・・・・ないんだが・・・・・・なぁ」

 

そう言いながらも自嘲気味に口を歪ませてその時を待つ。どうせ、ネクストが動かないどころか大怪我を負いながらも生きているだけの今、自分には出来ることなど何一つもしてない。ならば、反応がゆっくりではあるが近づいてきているモノの判断に委ねるしかない。

 

「・・・・・・戦闘時より、緊張・・・・・・するとは、なぁ・・・・・・まぁ仕方ない、か・・・・・・」

 

そう小さく呟くと、笑みを消して目を瞑りその時を待ち侘びるだけにした。自身には医療用ナノマシンが働いている。この程度は致命傷たりえないのだから、死んだフリさえしておけば放られるだろう。

これからの展開に多くの不安と小さな期待を込めて情報収集と演技に意識を集中させた。

 

 

 

  第1話 こうして山猫(リンクス)魔法使い(ウィザード)

 

 

 

「緊急だ!急げ、急いで整備を行うんだ!」

「こっちは完了した!終了してない場所に各員手を貸しに行け!」

 

あちらこちらで怒号が飛び交い、先程の休憩中にあった和気藹々とした空気は何処かへと吹き飛び一気に忙しくなっていた。

 

「各機準備が整いました!」

「離れろぉ!魔女(ウィッチ)飛ぶぞぉ!」

 

3人のずつの分隊が3組それぞれのタイミングで飛び立った。

これでもかと言うほどの蒼い空へと綺麗に並行しながら。

 

「しかし、いきなりでしたがどうしたんですかね?」

「さぁな。だが、急に指令が降りてきたんだ。只事ではないはずだ。正直に言えばこの人数で足りるかどうかの問題だ」

「状況の報告しだいでは近隣諸国に応援を要請するとらしいです」

 

彼女らが緊急要請に応じ現状に身を置いている原因は、現在より数分ほど前へと遡らなければならない。

彼女らの本部の捉えた情報はそこの人間たちの度肝を抜かすようなものであった。なぜならば、何も無いはずの空間から大きな反応が感知されたのだ。

それまで彼女たち魔女が主力として戦っていた【ネウロイ】という存在は、巣と呼ばれるモノから発生すると言われているからだ。

それが何故か何も無いところから発生するとなれば驚くのも無理はないだろう。

 

「・・・・・・周りに被害がなければいいんだがな」

 

その部隊隊長が何処か焦ったように口を開く。

彼女は、他の部隊員より詳しく聞いているからだ。新型である可能性である。偵察部隊が先に詳しく報告したのだが、新型のネウロイであると判断されたそれは約十数メートルであり、細く機動に特化しているだろう予測が立てられたのだ。

左腕部に細長く、意味の無い盾のようなモノが取り付けられているとのことだ。しかし、それが何なのかわからない以上慎重に事を運ばなければならないのは当たり前である。

 

「ん、これで視界が広がったな。各員、不審なモノ発見次第すぐに声を上げろ!」

 

『了解!』

 

森を抜けると、そこは高原が大きく広がっていた。数分も飛び続けていると、流石に景色が変わり始め、センターピボットがいくつか点在する箇所へ着いた。

しかし、そこには遠くの方で大きな塊がそこに存在し、その周りにその土地の所有者であろう人間たちが複数取り囲んでいた。

 

「チッ!速度を限界まで上げてくれ。何かあれば危険だ!」

 

各々から返事が上がる。3個隊がそれぞれ速度を上げて集まっている人たちの下へと急いだ。

 

「おぉ、魔女が来たぞ!」

 

その声を聞き、周りの人々が一斉に声を魔女に掛け始める。

 

「済まない!それは一応ネウロイとして判断されたモノ、で・・・・・・」

「これはネウロイじゃないんだ!おい、アンタたち!この人を助けてやってくれ!」

 

部隊長である魔女はその光景を見た時に唖然としたのだった。何故ならそれは、人が負って生きていけるような傷ではなかったのだから。さらにもう一つ、驚くことがあった。青年と思しき人物が居たであろうその場所は真紅の血で染まり、上下前後左右ほぼ全てを塗りつぶそうとしていのだから。

普通であれば生きていけるはずのない出血量である。なのに、この青年を助け出した人たちはこの青年を助けてくれと言った。その言葉が意味する事は、出された青年が生きているという事。

 

(普通なら有り得ないぞ・・・・・・どうする。このまま放置していても、目の前に人がいる時点で印象が悪くなってしまう。私の場合は、せっかく上り詰めた地位を失ってしまう・・・・・・)

 

一瞬のうちに下した判断は、その青年を手当して事情を聞くことにした。

 

「誰か、治癒魔法を使えるものはいないか!?」

「いや、いい・・・・・・」

 

不自然に途切れ、今にも消え入りそうな声がその場に響いた。虚ろながら、未だに強く意志が宿り続ける目は上を向いたままであった。

しかし、急に何かを思い出したかのように跳ね上がろうとするが、傷みによってそれは叶わなかった。

 

「お、おい!そんな傷で・・・・・・」

 

ガッ、と腕をを掴まれた魔女は驚愕を顕にした。怪我人の力ではなかったのだ。逃がさない、まるでそう言っているかのような力だった。

 

「・・・・・・済まない。俺、を・・・・・・立たせてくれ」

「いや、しかし・・・・・・」

「頼む」

 

その魔女は部隊長の魔女と顔を見合わせると頷き、2人でその青年を立たせるためにかたを組んで持ち上げようとしたが、有り得ないほど重かったのだ。

一苦労して持ち上げた男性は、痛みこらえるかのような声を上げるがすぐにそれはなくなった。

しかし、その後は何も発さずにただただ沈黙が流れる。重さに耐えるように下を向いていた部隊長である魔女は、青年の足元にポツリと堕ちた紅の混じった水滴が落ちたのを見落とさなかった。

何事か、そう思い青年の方へ顔を向ける。そこには何故か涙を流す青年の姿があった。頭からも出血しているためか、銀の髪が紅に染まり、髪を伝って顔を染めていた紅を涙で洗い流すかのように。

 

「綺麗だ・・・・・・」

 

まるでなにかに取り憑かれたかのように涙を流し続け、まるで初めて見たかのように目を輝かせていた。

その姿に周りの魔女と地主たちも静かに見届けている中、部隊長である魔女は青年の呆然とした顔の中で綯交ぜになった感情を感じた。

それは悲しみだった。苦しみでもあり、憂いでもあり、悔いでもあった。

 

「あぁ・・・・・・宇宙(ソラ)も空気も景色もきっと水だって・・・・・・何故、俺だけ・・・・・・」

 

彼女たちはその言葉の真意が解らない。しかし、青年が悔いて自責の念に駆られる程のことがあったのだと理解したのだった。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「ん・・・・・・ここは・・・・・・」

 

青年はいつの間にか眠っていたらしく、目を開くと白い天井が最初に飛び込んできた。

ちょうどその時である。最近、見たことのある顔の人物が彼の下を訪れてきた。

 

「ん?目が覚めたようだね・・・・・・それにしてもキミは人間かい?」

 

その言葉を聞いて確信を得た青年は、それでも念には念を、と思いいつ襲われてもいいように反撃できるように警戒する。

しかし、入ってきた魔女は知ってか知らずか飄々としながら話して来た。

 

「緊張しなくても構わないよ。まぁ、質問の応答次第で結果が変わるんだけどね」

 

ふっ、と鼻で笑うと先程の質問の答えを目だけで聞いてきた。それを瞬時に理解する青年だが、答えるかと問われるとそうではない。

 

「相手のことをよく知らない状況でか?・・・・・・本当に話すとでも思っているのか?」

 

まるで、自身の命をなんとも思っていないかのような言動に小さくない驚愕を覚えながらも辛抱強く続けようとする。

 

「まぁ、そう言うだろうと思っていたんだが・・・・・・こちらも上からの命令に逆らえなくてね。君がこれならいいという答えだけを聞かせてくれればいいよ」

 

そう軽く、話す。少しでも話しやすいように冗談を交えながら。

 

「おっと、自己紹介がまだだったね。私はアドルフィーネ・ガランドだ」

「はて、アドルフィーネとはフルネームの略称か?」

 

青年のボソッとした声を聞き取れず、アドルフィーネは聞き返す。しかし、青年はそれに答えず自身の名前を述べた。

 

「カーム・ヘイズ」

 

青年は、自身の手に掛けた恩人から貰った名前を名乗った。

青年は話を促すために、アドルフィーネへ顔を向ける。

 

「それで?聞きたい事はなんだ?どうせ、俺のような存在を知らない時点で企業とは無関係。それに今置かれている状況に確信を持ったんだ。信じたくはないがな・・・・・・」

 

しかし、先ほどとは一転した答えを見せる青年に振り回されてしまったアドルフィーネは溜め息をこぼした。

引き摺っていても仕方ないと判断した彼女は話を聞くことにした。

 

「先程の質問の答えだ。人間ではあるぞ?『一応』とか『元』という言葉が付いてしまうがな」

「・・・・・・」

 

しかし、その吐き出した言葉ともに青年の一瞬の暗い表情を見た彼女はそれが感情的な面で自己判断したものだと悟った。

恐らくではあるが、地主やあの場にいた者たちから聞いた事なのだろう。

自身もこの目で見たものを信じられなかったのだ。何故なら、首の後ろ側───神経の集中する頚椎(けいつい)という場所───に特殊な形をした差し込み口のようなモノがあったのだ。

 

「元、と言うのはやはり・・・・・・」

「見たのか・・・・・・まぁ、今更仕方のないこと、か。それに、その言い方だとある程度予測してたように感じるが?」

 

沈黙が続く。それが支配する空間は、時計の秒針が響き渡り数秒である筈の時間は数分にも数時間にも思えた。

 

「・・・・・・これは、あの機体を動かすために必要な特殊なコードの接続部位と言ったところか」

「・・・・・・」

 

その言葉は予想していた。しかし、本当であれば否定して欲しかったのだ。それ程、接続部位は彼女に恐怖、嫌悪を与えたモノだった。

 

「アレゴリー・マニュピレート・システム。通称AMS。脳の特殊な能力を使い、脳への過負荷を前提とし極めて高度な期待操縦技術を得るモノだ。これには適正というモノがあって後天的措置は望めない。所謂天然モノってことだ」

 

その事実を淡々と語る青年の心境を捉える事はその彼女にできなかった。

しかし、その後に呆然としてしまう事実を叩きつけられた。

 

「無理にAMS適性が無い者が使おうものなら、脳へのダメージが限界を超えて焼ききれて死ぬ。死を免れ、良くて廃人と言ったところか」

「・・・・・・君は大丈夫、なのか?」

「・・・・・・俺もそれだけが疑問なんだ。俺は最後の戦闘で脳への負担が限界を超えて言語に障害出て上手く話せなくなったんだがな」

 

その言葉を聞いた途端に青年に対する恐怖が増幅した。

 

───そんな危険なモノを何故、何も無いように使うのか。

 

有り得なかった。アドルフィーネは様々な分野で多くの実績を残し、上層部の考え方を良くするために行動した。しかし、そんな彼女だからこそ声に出して糾弾したかった。

だが、彼に言ったところで根本が変わる訳では無い。

 

「まぁ、あれくらいの傷じゃ俺たちは死なない。いや、圧倒的な力を操るがために強化されたのが俺たち(・・)なんだよ」

 

所謂、強化人間というものだ。彼女は、そう言った者たちは空想上のものかと思っていたが、本当に目にするとはお思っていなかった。

 

「それより、俺から1つ聞きたいことがある。あの機体を勝手に弄るなよ?特にジェネレーター周辺は絶対にだ」

「いや、触れてはいない。アレには厳重なセキュリティロックが掛かっていてな。君を外に出した者たちも相当苦労して物理的に扉を破壊していたからな」

 

その言葉に青年の顔は歪んた。

 

「どうした?」

「いや、別に・・・・・・あの機体はな、俺の相棒なんだよ。アイツ(チェルカトーレ)と俺は共に戦ってきたんだ。大きな敵も同類も、総べてを同じ様に屠ってきたんだ」

 

懐かしむように窓へ目を向ける。

しかし、1つ気になることがあった。そんな思い出を話すだけの為にそんな話を降った訳では無いはず。そう当たりをつけて聞いてみることにした。

 

「そんなこと言いたいが為に聞いた訳では無いのだろう?何が言いたいんだい?」

 

その質問に対する答えは、想像を絶するものだった。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「さて、君が例のアーマード・コア、《ネクスト》に乗っていたカーム・ヘイズかね」

 

あの問答から数日経った今日、軍上層部による新型ネウロイと判断された物体に登場していた青年、カームを巡っての問答が行われる。

議長である老人は、見た目通り渋い声を発してカームに問いかける。

 

「あぁ」

 

普通であれば萎縮してしまうであろう状況にも関わらず、何処吹く風とばかりに目を閉じたまま立って返事を返す。

 

「さて、あれは一体何だね?」

「・・・・・・アドルフィーネからの報告は聞いていないのか?」

「ふむ、私は聞いているぞ」

 

自分の口から説明するか?言外にそう聞かれたカームは鼻で一笑すると、目を閉じたまま沈黙した。

その姿を見て面白くないのは、議長と冷静な者以外の上層部。同席しているアドルフィーネが見渡すと、少なくとも半分以上の人物が額に青筋を浮かべている。

 

「何でも、未知のエネルギー物質というではないか?」

「そうなのか!?」

 

その言葉に反応した上層部の1人は、自身の座っている前にある机を叩き、大きな音を立てて立ち上がった。

その隣ではさらに青筋の立った者たちもいるが、議長の言葉によりざわめきが大きくなった。

 

「これで、物資などにも余裕が持てるぞ」

「さて、何にその物質を使えますかね」

 

あーだこーだと議論を始めた上層部の人間たちを、議長は咳払いで鎮めると今度はカームに問いかけるように話す。

 

「しかし、その未知のエネルギー物質は確か・・・・・・コジマ粒子、と言ったかね?」

 

その言葉に目を閉じたまま沈黙を返す。議長である老人はそれが肯定であると正確に理解するが、若くして上層部入りした男は面白くなかったらしく遂に立ち上がって声を上げた。

 

「貴様!今自分がどういった立場か理解しているのか!?聞かれたら言葉で返せ!人の言葉も理解出来ないのか!」

 

その言葉に反応したのかカームが目を開いてゆっくりとその男を見る。すると、騒いでいた男は膝や腰、それだけではなく、体全体にとても大きい重力のようなモノを感じる。息も苦しくなる上に、視界がぶれ始め終いには汗が一気に出始めた。

命の危機を感じるものの、カームが目を閉じて元の恰好へと戻るとそれらは幻であったかのように綺麗になくなっていた。

 

「・・・・・・続きを行う。それには一体どれほどの利用価値がある?」

「・・・・・・俺は見つけたとしても使う事は奨めない。もし、使うというのであれば俺が今この話しを聞いている者たち全てを殺しても止める」

 

その場に居る者たちは否が応でも理解させられた。それが唯の蛮勇などではなく、確固たる何かがそう足らしめているのだと。

しかし、強気を見せようとそんなカームに吠えるように叫ぶ声も上がる。

 

「お、おおい!こいつは危険だ!こんな状況で殺すなどと口にするとは異常だ!被害が出る前にこいつを連れ出せ!」

 

その声を聞いて、そうだと声をあげる者も出始めたが議長がその場を鎮めるために声を出した。

 

「静まれ、バカ者ども」

 

その言葉に、シンとなる。その空気を作り上げた本人は、何事も無かったかのようにカームへと問い掛ける。

 

「はて、何故使おうとするだけでこの場にいる者たちを「世界を滅ぼす力だからだ」・・・・・・ふむ。世界を滅ぼす、とな。それは報告で聞いていないな」

「言ってないからだ。あれは核分裂で起こるエネルギーよりも大きい。だが、その核よりも環境汚染が大きい」

「なっ・・・・・・!」

 

驚愕がその場を包む。先程、どう利用するかなどを話し合っていた人物たちは唖然とした表情でカームを見ていた。

しかし、核分裂で起こるエネルギーよりも大きいと聞いて信用しなくなる者もいた。

 

「おい、こいつは虚言を言っているのではないか?核分裂など、最近明らかになって使用を制限されたばかりだ。それを知っているなど怪しいにも程があるぞ」

「さて、数日前に技術者一同に無理を言って作ってもらったものがある」

 

カームはそう言葉にしてアドルフィーネをチラと見る。アドルフィーネは苦笑と溜め息を同時に零すと、その作られたものを見せた。

 

「む?それは・・・・・・テレビ、か?」

「いえ、これはカーム・ヘイズがこの場で見せる必要があると言ったもののために必要なモノです」

「そうか・・・・・・では、カーム・ヘイズ。君は我々に何を見せるつもりなのだ?」

「・・・・・・口だけで言っても信じるものでもあるまいと思ってな。その前に俺はこの世界すら揺るがしかねない存在だということを話さなくてはならない」

「・・・・・・ほう?例えば」

「俺のいた世界はこの世界では無い。また、俺のいた世界とは別であると同時に過去の世界へ付いてしまった」

 

その言葉を聞いて一瞬、沈黙が空間を支配するが先程とは違い大きな笑い声が響き渡った。

 

「ハハハハハハハハハ!本当は緊張していたのか!」

「滑稽、実に滑稽だ!強がりもここまで来ると不愉快を通り越して一種の芸だ!」

 

しかし、次のカームの言葉で歯を食いしばることとなる。

 

「並び貴様らは、俺が指示しないと俺の愛機どころかあのテレビモドキすら作れなかった無能どもという事になるが、自ら認めに行くのか?」

 

確かにそうなのだ。口をだそうにも、自分たちは技術屋ではなく門外漢なのだから。

しかし、カームの口はまだ続く。

 

「ふっ、やはり口ばかりか。田舎モノ共が」

 

鼻で笑うと同時に、彼らを侮辱する辛辣な言葉を吐くカーム。青筋が浮かぶ男たちを見ても憐れなモノを見る目で見つめ返す。

 

「まぁ、こういう奴らがいると思ってな。俺の機体の戦闘ログを貴様ら全員に見せる。それで信じるか信じないかは貴様ら次第だがな」

 

そう言って、ポケットから取り出したこれまた特殊な記憶機器と彼の頚椎辺りにある同じ接続部位を持つコードを繋げた。

最初に流れたのは《ラインアーク襲撃》だった。オペレーターの声が聞こえる。それをカームが懐かしむように見ていた。

 

「これが初めてのあの機体で行ったミッションだ。あの世界は数十年前にコジマ粒子が発見され、国家という枠組み取り壊し企業が支配する国家解体戦争が起こった。その原動力となったのが俺たちの乗っていた《ネクスト》だ。それから数年立つと、完全に企業支配体制へと入った。だが・・・・・・」

 

そこで区切ると、次々と表示されていくミッションが出てくる。

 

「その前に、貴様らに聞こう。貴様らは、圧倒的な力を持った個体依存性についてどう思う」

「ほう・・・・・・もちろん、敵を倒すのには持ってこい、か」

「それだけか?」

 

カームの質問に対して上層部が答えるという、当初予定していたのと逆になってしまったが答えた1人がそれだけだと答えるとカームは口を開いた。

 

「最初はそうだろうな。だが、それが自分たちに牙を向かれる、そう考えると危険だ。そう考えた企業がとった行動は何だと思う」

「それは・・・・・・代替可能で、多くの者に使える・・・・・・」

 

1人、真実にたどり着いたものがいたようだ。

 

AF(アームズ・フォート)。大型兵器で圧倒的物量により、力を持った個体を打ち負かす凡人による打倒天才計画。それがこれだ」

 

次に画面に映ったのは農業プラントを大型兵器2機とオマケにより占拠された場面。ランドクラブと呼ばれるそれは、主砲とミサイルを定期的に放つそれ。

その光景は上層部に圧倒的な驚愕を与えたが、それは次の画面に切り替わった時にさらなる驚きにより塗りつぶされた。

 

「これは俺が初めて対ネクストのミッション受けた時だ。ネクストは通常兵器などでは、コジマ粒子を応用したプライマルアーマーによって一切ダメージを負わない」

 

ワンドフルボディの搭乗者がなにか喚いているがオーバーキルでブレードで切り裂いた場面が映っていた。

それからも次々と画面は映り替わっていった。

 

───海上に浮かぶ固定砲台ではあるが、こちらを射殺さんばかりに主砲を発射するギガベース

 

───多くの自律型飛行兵器を持ったキャタピラの弱点を狙われたカプラカン

 

───圧倒的な物量を持った固定砲台であるが、ミサイルと主砲が必殺を秘めた一撃を放つスピリット・オブ・マザーウィル

 

───どんな攻撃も外部からは受け付けない重厚壮大な防御壁とミサイルと恐怖と言っても過言ではないガトリンググレネードを持ったグレートウォール

 

───水上を走る変態、アメンボを模して作ったスティグロ

 

───ランドクラブの主砲を空飛ぶ悪魔に替えた変態共が作った特殊なランドクラブ

 

───極めつけは、汚染物質を撒き散らす腹黒と腹黒のコンビで作ったAA(アサルトアーマー)をぶっ放す空飛ぶ変態傘のアンサラー

 

その他にも、ネクスト同士の戦闘もあった。ラインアーク防衛、カーパルス襲撃など多くあったが、遂に終わりが近づいていた。

 

───お前とは、もう一緒にやれんよ

 

───終わったか、首輪付き。まだまだ腐るほどいるがなぁ・・・・・・先は長いぜ、相棒

 

それからはカームから漂う圧倒的な雰囲気に気圧され、誰も言葉を発しない。

 

───私が見込んだのだからなぁ・・・・・・お前にやられるのも、悪くない

 

最後のセレンとの会話が流れた。そこからは友人であったロイとダンをブレードだけで捩じ伏せ、最後のホワイト・グリントとの一騎打ちにて、最後のぶつかる瞬間のホワイトアウトで戦闘ログは終了した。

 

「・・・・・・これが俺が、いや、俺たちが過ごしていた世界だ」

 

誰も口を開けない。目の前の青年は、その世界で人類史上最も多くの人間を殺し、最も多くの人類を宇宙へと飛び立たせ、救った相反する二面性を持ったじんぶつなのだからだ。

戦闘ログにもあった通り、彼はあの世界で圧倒的な強さを持っていたのだ。

 

「俺たちの世界は、企業の支配する世界は既に腐り果てていた。そんな中で三つの答えが生まれた。1つ目は先の戦闘ログに出ていたウィン・D・ファンションの答え。2つ目は俺と相棒だった男が所属していたORCA旅団の答え。そして3つ目が俺たち2人が出した答え」

 

そこで言葉を区切る。上層部の人たちもなんとかショックから少しずつ立ち直したようだ。

 

「あの世界は、きっと答えに正解なんて無いんだよ。あったとしてもどれも間違っていてどれも正解なんだ。だから自分の答えが正しいモノであると信じて、力でそれを示す。それが俺たちの世界だった」

 

それに、と続け口を開き続ける。上層部の人間たちは未だに口を開くことができなかった。

 

「俺は最後に壊れた。何故こうしていられるのか解らない。だから、あとの判断は貴様らに任せよう」

 

そう締め括ると、ストンと後ろにあった椅子に座って目を閉じたまま何も言わなくなった。

 

「諸君、君たちの答えはどうだろうか」

「・・・・・・あんなものを見せられるとねぇ」

「しかし、彼は多くの人物を───

 

カームは聞こえてくる声を総べて右から左へ、左から右へを繰り返していた。その後、難航していたらしいが青年はどうでもいいと言いたげに目を瞑ったままだった。

 

やがて、喧騒は収まり判決を言い渡される時が来た。

 

「さて、カーム・ヘイズ。君への処遇は1年ほど監視付きではあるが基地内で過ごさせてもらうことに決めた。何か、聞きたいことはあるかね?」

「・・・・・・ほう、温情に溢れかえった処遇だな」

 

そこまで言って思案する仕草を見せたカームはいい案を思いついた、と言わんばかりにイイ(・・)顔を浮かべた。

ここで『イイ』を強調したのは察しのいい人ならわかるだろう。

 

「俺を傭兵として雇わないか?」




前書き厨二病こじらせすぎててすみません。見てて恥ずかしくなってきた。

てなわけで前書きとか後書きとか何を書けばいいのか解らないです。すいません。

そう言えば、パズドラ2話目を制作してるんですが、アンケートで3話目に誰にスポット当てようかなと考えているので参加してみてください。出来れば12月2日前後まででおなしゃす。


いやー、IS手が進まない。どう進めればいいか迷ってきてしまった。どうしたらいいですかね?
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