私はその罪を悔やんだ
───彼とともに堕ちた
───彼を苦しませた
───彼を潰してしまった
───彼を壊してしまった
───彼を殺してしまった
私は誇りを持ってしまった
私はそれを歓喜していた
───彼とともに繋がれた
───彼とともに戦えた
───彼と嬉しさを共有した
───彼と強くなった
───彼は生き残った
相反するその感情
それは罪であると同時に私の誇りだ
きっと彼の中でもそであるはずなのだ
だからこそ私は願うのだ
───彼の願いが叶うことを
───彼の志が折れぬことを
───彼の幸福を
───彼の未来を
───それが私であったことを
「俺を傭兵として雇わないか?」
已然として、イイ顔を浮かべながらカームは次の言葉を待つ。
「・・・・・・何故、そのような提案を?」
「ふむ、逆に聞くが俺はこの世界での通貨を一切持っていない。前の世界であれば多くあったが、それでもこの世界から取りに行く事は出来るはずもないだろう?・・・・・・つまり、俺はこの世界での足がかりが欲しいということだ」
「なるほどな・・・・・・」
「それに、どうせ1年ほどは監視付きで基地内で過ごすんだ。金が無ければ、買いたいものも買えないだろう」
確かにそれも一理あるのだが、もし傭兵として雇った時に彼がそれを用いて自分たちを攻撃してきた時はどうするのか、また、その時のリスクリターンを考えると直ぐに判断は下せないのだ。
ただ、それを考えているがカームに筒抜けであったのか声をかけられる。
「別に、共通の敵がいるんだから互いに争わない限り貴様らに干渉なんてしない。それでどうだ」
「ふむ、それではその言葉が破られ場合はどうするつもりだ?」
「煮るなり焼くなり?本来なら既に死んでいる身だ。前の世界があんな世界だから理不尽なんていくらでも耐えてきたさ。今更必死こいて生きようなんて思ってなどいない」
その言葉を聞いて議長を務めていた老人は考えるが、ある言葉に引っ掛かった。
「『傭兵』か・・・・・・それは、ストライカーユニットのことかね?」
「なにやら、面白そうなモノを使っているなと思ってな。・・・・・・しかし、2つ聞いても構わないか?そのストライカーユニットとやらを使用する際に何故、下着姿なんだ?ここの女どもは痴女しか居ないのか?ここに来るまでの間にすれ違った女達は皆下着だったから気になったのだ・・・・・・」
理解不能、そう言わんばかりにカームは首を傾げているが、それと同じように議長や上層部、またアドルフィーネなどのこちらの世界の人たちは首を傾げていた。
「何を言っているのかね?」
「は?いや、だから・・・・・・下半身に着ているものだろう」
「カーム。何を言っているのか知らんが、下着とやらではないぞ?あれはズボンだ」
「・・・・・・はぁ?」
逆に、それこそ意味がわからない、そんな表情を浮かべたと思うとアドルフィーネがその事について言及。流石にこれには人生で一度たりとも無い唖然とした表情を浮かべていた。
「まあ、いい。取り敢えず、カーム。君の適性を見ようか。整備場にストライカーユニットがあるからそこで確かめようか」
「・・・・・・了解した」
第2話
未だに公序良俗は大丈夫なのかと頭上に疑問符を浮かべているが、老人の後ろに着いて行く。すると、アドルフィーネが老人の後ろへと移動しカームの隣へと並んだ。
「おい、あの集まった上層部の人間はどうするんだ」
「彼等かね?彼らはまだあそこで話し合っているでしょうな。なにせ、君のようなイレギュラーは初めてでね」
「俺に言われてもな。言うのであれば、
「ほっほっほっほ・・・・・・それは運が悪かったとしか言えないのでな」
皮肉の篭った言葉をカームに掛ける老人に、カームは特に気にした様子もなく片腕を上げ掌をひらつかせながら言う。その様子に老人は苦笑いを浮かべた。
老人とカームしか話していなかったためか、アドルフィーネはここで先程から気になっていたことを聞くことにした。
「そう言えば、先程見た戦闘ログの声と今の君の声は若干違うように聞こえるが?」
「ああ、それか。俺もこっちで鏡を見た時に驚いたが、この声と姿は数年ほど前のだな。ネクストに乗り始めた頃だ」
「つまり、何かしらの因果によって若返っている、そう言いたいのかね?」
「そういう事だ。ほれ、これがその証拠だ」
自身の血で塗れていたが、こちらの看護婦により洗われ綺麗になったパイロットスーツの胸元から3枚の写真を取り出した。そのうち2枚が違う女性とのツーショットで、もう1枚は男3人が仲良さげに話している写真だった。
「俺が消える1、2年前の写真だ」
その3枚に共通して写っている男性の顔を見てみると、なるほど、確かに今のカームの顔をより精悍にし、幼さを無くした顔をした男性があった。
しかし、カームを認識し唸っているとやはりと言うべきか、共に写っている人に対して興味が移ったようだ。
「む?こちらの男性2人は一体どういった関係だったんだ?」
「そいつらは、ロイとダンだ。同じ、フリーの傭兵仲間だったんだよ。つっても、殆ど一定の企業側の傭兵だったがな。まあ、ホワイト・グリントとの前に戦った奴らだよ」
彼の出す雰囲気が、気にするなと言っているようではあったが、それでも気にしないという事は出来ないだろう。カームについてもそのことは解っていたのか、罪悪感を軽くするためだけに言ったようなものだ。
「・・・・・・では、こちらの美しい女性2人は?」
やはりどこの世界でも『美女』というモノは目を引く事であったらしく、質問してきたのはアドルフィーネではなく老人の方であった。
「セレン・ヘイズとリリウム・ウォルコットだ。セレンについては知っているはずだ。まあ、言わば俺の恩人とか親代わりだな。リリウムは・・・・・・まあ、恋仲にあった関係とでも言っておこうか」
「この方も・・・・・・」
「まあ、な・・・・・・見ただろ?カーパルス占拠の戦闘ログを。最後の2人がセレンとリリウムだ。あの世界に正解は無い。話し合いで解決できる機会はとうの昔に失ってしまっている」
カームは淡々と語る。しかし、アドルフィーネと振り返っていた老人の目には後悔の念を引き摺っているようなカームの姿があった。
だが、それも一瞬で消えた。さて、と閑話休題の声を掛けたところでカームがアドルフィーネに疑問に思ったことを述べた。
「結局、そのストライカーユニットとやらは一体どういうものだ?」
「む、まだ説明しておらんかったの・・・・・・アドルフィーネ君」
「はい。ストライカーユニットの開発の経緯は省くとして、私たち
「
「まあ、そうなるのぉ・・・・・・」
老人の顔には若干の憂慮の影がさしており、無力感に苛まれているようだった。カームはその老人の様子を鼻を鳴らすと同時に一蹴する。
「・・・・・・貴様ら男たち何に悩んでいるかは知らんが、出来ることを全力でこなしていくことしか出来んだろう。貴様ならその事は解っているはずだろう?」
「ほっほっほ・・・・・・いやはや、言葉の重みが違うの。だが、思わずにはいられんのだよ。だがしかし、こちら側の男性諸君とは違う気がするのだよ、根本的ななにかがね」
「そりゃあ、人間という枠組みからだいぶかけ離れているとは思っているが」
「そういうことではないんだがの。まあ、老いぼれの戯言として受け取ってもらっても構わない」
それから移動すること数分、通りゆく人に誰何を問われる目を向けられながらも目的の場所へと辿りついた。流石に、多くの人に目を向けられたのか、若干辟易しているようにも見える。
整備場の中に入ると、自身の中で思っていたよりも小さくこじんまりとしていた。しかし、それもそうだろう。カームの考えていた整備場はネクストや、その武装を格納するための整備場なのだから。
「ほう・・・・・・割と多いのだな」
「でないとネウロイの侵攻がのぉ・・・・・・ここだけの話、視野に入れていた撤退作戦が現実味を帯びてきたかと思ったら、それしかないと言わざるを得ないところまで来ているのだ」
「・・・・・・タイミングを探っているのか?」
「聡いな。その通りだよ」
残念でならない、本気でそう思っているのがわかる程気落ちしている。しかし、だからと言ってカームは声をかけることなんてしないのだが。
「さて、魔法適性の有無を調べるとするかの。本来であればもっと段階踏まなければならないが、手っ取り早くストライカーユニットに足を突っ込んでくれないかね?」
「いっきに適当になったな・・・・・・まあ、いい。言われた通り足を突っ込めばいいんだろう?」
「ああ。あとはまあ何とかなるさ」
「何かしらのコツとかはないのか?」
「その時は教えてやろう」
ニヤニヤと笑い、先のカームのお偉いさんたちへの態度で胃が痛くなる思いをした意趣返しだ、そう目で訴えて来ているアドルフィーネの顔を見て、カームはきっちりとその意図を理解した。先程の態度と言われようとも、カームにとってみれば基本的にあれが普段の姿なのだが知らない人にしてみれば、目の前で行われる問答は精神的に削られる思いをしたのだろう。
カームを連れてきたのがアドルフィーネ自身ということもあるのだろうが。
「そうか」
それに対してカームは、特段気負うこともせずに彼の下にあるストライカーユニットへと目を向ける。ここで反論したところで動かさなければ意味は無いのだ。それを理解した上での行動だったらしく、アドルフィーネはつまらなさそうに顔を顰めた。
ふと、アドルフィーネが周りを見てみると議長を務めていた老人や、周りの男衆たちは、談笑しながらカームがストライカーユニットへ足を入れるその時を待っている。
(別に、罪滅ぼしがしたい訳では無い・・・・・・テルミドール、お前なら勿論手を貸すのだろう?いや、あいつだけではないか。ORCAの連中もウィン・Dやロイ、ダンたちもか・・・・・・)
自嘲気味に口を釣り上げるが、直ぐにその表情を消してもう1度ユニットを見直した。
「さて、どうなるかね」
周りに聞こえないようにそう呟くと、一息に足をユニットへと突っ込む。
───数秒。しかし、何も起こらない。周りは諦めたかのようにその光景を眺めていた。
しかし、カームだけは違った。
(なんだ、これは・・・・・・何に、干渉されている?)
自身の体に何かが入り込んでいるかのような、そんな感覚がカームの頭の中で溢れかえる。例えるならそう、自身を構成する総てを解析しようと試みているような感じだ。
きっと解析しているのだろう。俺が
そう思った途端、彼の感じていた体に対する干渉は既に無くなっていた。不思議なものだと思っていたが、その瞬間だった。
───ふわっ
そう表現するのが適切であろう感覚をカームは感じた。
カームの顔に変化が訪れたのを数人は見ていたらしく、訝しむ様な顔を向けていた。そんな視線に気づきながらも、カームは今の感覚を身体に瞬時に覚えさせると徐々に高度を上げていく。
「お、おい・・・・・・マジかよ」
「う、浮いた・・・・・・」
「夢じゃ、ないんだよなぁ・・・・・・?」
ぽつぽつとあちこちから困惑混じりの声が聞こえてきたかと思うと、それはすぐに喜色1つの声に変わり整備場周辺にいた者たちへと届きお祭り騒ぎへと発展していった。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
男たちの歓声に釣られてやってきたユニットのパイロットたちも、先程の上層部の男たちも開発部のチームもその輪に加わり笑っていた。
ゆっくりと高度を下げて地面スレスレを維持する。すると、人垣の中から先の老人が出てくる。
「本当にユニットを扱えるとは・・・・・・我々男共はどれだけこの日を待ちわびたことか・・・・・・君が傭兵となれたことをここに祝福すると共に、我々と共に戦ってくれることに感謝を」
目の前の年老いた男の頬を一筋の雫が伝う。その組織の中で、一番偉い立場の男が見せたその涙につられ、周りの男たちもそれに従い嗚咽を漏らす。男なのに戦えないことを嘆き、表立って守ろうとする者を自分たちだけの手で護れない。そんな苦渋を嘗め続けたその想いが今晴れたのだ。
だが、カームにはそれが理解できない。なぜ、それだけで喜ばれるのか。それは、圧倒的な強者として戦ってきたからではなく、彼の過ごしていた環境のせいなのだろう。自分たちができなければ、それを全力でサポートして共に戦う。それが常だった。リンクスは数少ない世界の均衡すら壊すほどの存在であったとしても、それを支えているのは、整備したりしている者たちだった。そして、リンクスたちの多くは、そういった者たちに対してとても感謝していたのが事実。
「・・・・・・アドルフィーネ、動きに慣れたいから少し付き合え」
「クッ・・・・・・!扱えたらと言った手前断れないな」
「思い通りにならなくて悪かったな」
相当悔しいのか、アドルフィーネは渋りつつも自分のユニットを取りに行く。
カームは暫く、ユニットを意識した動きを少しずつ始めていた。重心移動と飛行体勢などを確認していく。足以外の部分は生身の身体のため、意識はしやすいがネクストに慣れすぎていたからか慣れるまで時間がかかるだろう。それでも、一定以上の水準には上がったのだが。
「遅くなった、と言いたいがお前はこの時間内に体勢制御も殆どこなしてしまったか・・・・・・もう私が教えることはないのではないか?」
「フン、そんな訳ないだろう。でなければその立場にいないだろう。まあ、よろしく頼むよ、アドルフィーネ」
────────────────
二時間程だろうか。空に飛び立った時には下にいた多くの人間は、本来の役割を全うするためにせかせかと働いている。疎らになった集団の中に、例の老人は未だに木陰に体を休めてこちらを見上げている。
「どうだ?」
アドルフィーネがカームに問う。たったそれだけの質問だったが、カームにはそれがどんな質問なのか深く理解出来た。
「ネクストとは全く違うな。あれに慣れすぎたせいか、すこし時間がかかった」
「あれの仕組みはどうなっているんだ?」
本来なら答えることはしない。仮にだが、もしアレを実現させてしまうことがあったらこの世界は滅んでしまう。それは何としても避けなければならない。可能性がないとは言えない。もし、アレを研究させることを許すのならば、せめて実弾兵器しか有り得ないだろう。それも、動力系は魔法で動かすことを前提にしなければならない。
「教えるとでも?」
「まあ、そうか」
それもそうかと言わんばかりに追求を止めるアドルフィーネ。意外に思いつつも、追求をされずに済んで良かった。
何はともあれ次の段階に進めそうだと判断したカームは、アドルフィーネに問いかける。
「おい、少しいいか?出来れば戦闘慣れもしたいので実践に近い形で相手してくれないか?一対多で頼む」
「む?それは私たちを少し舐めすぎてはいないか?」
「いや、そういうことではない。単に俺が一対多に慣れていること。それと、何処までやれるかの確認と───」
────────────────
「全く・・・・・・。どれだけ言いくるめるのが大変だったことか」
見据えた先には、空中で
「(圧が凄まじいな。・・・・・・流石、という訳か)」
苦笑いが生じてしまうのも仕方ないだろう。きっと、部下たちに刺激を与えるだろうな。いい意味でも悪い意味でも。
これからの苦労を思いつく限り考えて溜息をついた。それこそ仕方ないというものだろう。既にこちらは敵意剥き出しの部下たちがいる。落ち着いているのは・・・・・・、副隊長だけか。
「カーム、そろそろいいか?」
カームがゆっくりと目を開いた瞬間に背筋が凍るような怖気を感じた。問いかけたのは私だと言うのに、だ。副隊長はカームの常識外れのそれを敏感に感じ取ったようで目を見開いている。まあ、それ以下の13人の部下たちは未だに態度は変わっていないようだが・・・・・・。
「ああ、こちらの準備はとっくに済んでいる。お前の合図で開始してくれ」
「了解した。君たち、くれぐれも気を抜かないでくれ給え。では、模擬戦を開始だ」
合図を出す。すると、カームはいきなり体を後方へ傾けて、後へ退りながら高度を下げる。すると、それを見た部下たちが一瞬唖然とし、追うようにして攻撃を開始。瞬時に4つの3人の分隊を作り後を追う。それに、付随するかのように左右と上にそれぞれ別れて回り込む。
しかし、ある程度の距離を移動した途端、次の瞬間後ろへ回していた推力を前方へと最大出力まで上げた。その姿に、カームを追っていた分隊が驚いて一瞬だが攻撃が緩んでしまう。
「
カームは歌い始めた。
それと同時に攻撃を開始。左右のM1919A6とベレッタM1938Aで攻撃の止んだ瞬間を狙っていたかのように3人に数発ずつペイント弾を当てて撃墜判定をだす。そのまま、撃墜判定を出した部下を通り過ぎ次の左右へ分かれた分隊へと標的を変える。
私たち3人は何とかこれ以上、撃墜判定を出さないためにも動き始めた。
「
唄い続けた。
第二小節に入ったまま、今度は左の分隊へと狙いを定め、今度は先程とは立場が逆転し、追いながら攻撃し始める。先の部下たちとは違い、ペイント弾の横殴りの雨は外れることなく第二小節の半分で左の分隊は全員撃沈判定。
カームは途端に体を平行にする。その後、すぐに上に回り込んでいた分隊が後ろにつき銃撃を開始。しかし、その銃撃は当たることなくカームの体を通過していく。
私は驚いた。体を若干斜めにしてスライスさせるように飛行しているからだ。後ろを同じような体勢で追うっていても無意識的に横方向に移動しているため、ペイント弾は当たらないのだ。
すると、カームは後ろに着かれているにもかかわらず速度を上げず、逆にユニットに魔力の供給を辞めた。勿論、慣性に従いながらも高度を下げていく。いきなりの事に驚いた部下たちはそのまま、上を通り過ぎてまう。
カームはその瞬間を待っていたかのように魔力供給を開始。逆に後ろに着き、ペイント弾の嵐を降らせる。
「なッ!」
「チッ!・・・・・・遠いか」
私たちの方からも出し惜しみはしていられないようだ。すこし、今の戦闘で話されてはしまったため、ペイント弾が当たる現実的な範囲ではない。
「
未だに謳い続ける。
まさに悪夢のようだ。歌の二小節のうちに三分隊も撃沈されたのだから。
右に回り込んでいた分隊に狙いを定めて今度は引き撃ちを始める。ペイント弾が全て見えているのか全てを避けるように動く。そして、お返しだと言わんばかりにペイント弾を斉射。右左で交互に撃ち続ける。片方が切れるとすぐにリロードし、その間は切り替えた方の腕で撃つ。
ただただ作業のようなその行動だが、私の部下たちは悉く撃沈判定。私たちの射程圏内に入る頃には残されたのは私たち3人だ。
「・・・・・・ここまでとはな」
ぼそっと呟く。ゆっくりとこちらに向き直るカーム。なるほど、あの世界を切り抜けられた訳だ。この私が、震えるとはな。
「・・・・・・
詠った。
最後の一小節なのだろう。自然とそう思えた。私たちの方へ突っ込んでくる。カームと私たちは同時に引き金を撃つ。
しかし、その瞬間だった。急停止したかと思うと、いきなり横に移動したのだ。ロスタイムなしとは言えないが、限りなくあの動きに近い。あの、ネクストの動き。
その行動に度肝を抜かれた部下の二人はその間に撃沈判定。何とか、私は一発だけで済んだ。
「・・・・・・歌い終わりと同時に、とは行かなかったか」
「・・・・・・は、ははは。本当に度肝を抜かせるのが上手いな、君は。私の部下たちは割と優秀なのだがな」
「ふむ、あのレベルでか。この世界と俺のいた世界とではだいぶ違うようだ」
「当たり前だ。あんな、死がいつも隣にあるような生活など私たちが生きていけるはずないだろう」
「違いない」
嫌味でもなんでもなく、そこにあるのは純然たる事実。不快感も何も起こらず、ただ楽しげに会話を交わす。
「じゃあ、行こうか。見せてみな、お前の力を」
「ああ。では、やろうか」
『───お前達の実力を確かめたい』
同時に後へ退り引き撃ちをしはじめる。カームは普通によけているが、こちらはギリギリだ。掠るだけに留まって入るが、そのうち当たるだろう。しかし、今はこの時間が続いてくれればいい。この心地いい気持ちは久しぶりだ。
十秒、二十秒と時間が経過していく。1分だったか10分だったか一時間だったかなんて覚えてすらいない。私は勝負を仕掛けよう。
前に突っ込む私に、目を見開く彼は。口の端を少し歪ませる。
「これだから面白いんだ。人間ってやつは」
私に複数のペイント弾が炸裂。勿論撃沈判定を受ける。
ああ、やはりか。凄いな、君は。全力が
すみませっ!ホントすみませっ!い、いやぁ、アレですよ、アレ。はい。アレです……。ゲームとかしてました。はい。最近買ったBF1とか友人とやってたら、はい。すみません。いや、コンナハズジャナイノニィ!だったんですよ。友だちとBF1して絶対☆裏切り☆ヌルヌルとかMr.ユナイテッド☆小沢とかやってたんです。はい。