私、二回目の人生にてアイドルになるとのこと   作:モコロシ

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第15話 顔合わせ

あれから私達は武内さんと入れ替わりで部屋の中へと入室し、柔らかい漆黒のソファへと腰をかけていた。千川さんが座らずに入り口付近で立っていたため、私もそうしようとしたのだが、気にしないでいいという事なので少し遠慮しながらもソファを使用している。

 

この部屋の中には現在、私を抜いて十二人いる。一人は言わずもがな千川さんだが、他の十一人は恐らく全員シンデレラプロジェクトメンバーだろう。十人十色のジャンルに別れてはいるが、やはり可愛い子、美人な子が多い。

 

ハグすると柔らかそうな子とツインテールの子達からはふわふわした雰囲気が流れてて微笑ましいし、天真爛漫を具現化させたような、既視感溢れる金髪の子や黒髪のちっちゃい子達とそれに混ざる大きいにょわにょわ言ってる子は見ていて和むし、隣に座ってるみくにゃんにはドキドキするし、膝の上に座っている杏ちゃんは抱き枕だし、音楽聴いてる子はよく分からないし、神崎さんは神崎さんだし、なんだここ。天使でも寄せ集めてきたのだろうか。あ、シンデレラか。

 

しかしその中でも、目の前のソファに座る銀髪の白人らしき子と少し垂れ目の長髪の子。彼女らは私と同じくクール枠に座する者達だと一目見た瞬間確信した。何故分かったかって? 私の目はその人の本質を見抜く事が出来るのだ! 強いて言うならば『深雪の真紅眼(ミユキズ・レッドアイズ)』と言ったところだろうか。『血塗れの真紅眼(ブラッディ・レッドアイズ)』でもいいな。ううむ、我ながら惚れ惚れするネーミングセンスである。

 

というか、先程からその白人らしき子に何故かじーっと見つめられているのがすごい気になる。こうまで見られると流石の私も居心地が悪い。まさに穴が開くほどってやつ。……もしかして自己紹介を促しているのかな? 分からない。それか白人のクォーターである私に何かシンパシーを感じているとか。残念だったね。私の中身は生粋の日本人だ。

 

そしてその隣に座る少し垂れ目の長髪の子。恐らく少し歳上くらいだと思うけど……なんだろう、この御結婚されて何年目でしょうかと問いたくなるくらい妖艶な雰囲気漂う人妻感。厚着だから色気なんて無いはずなのにそこにいるだけで淫靡に感じる。一言で言うとズバリエロい。

 

「Разрешите представиться. ……アー、はじめまして、アナスタシアです。アーニャと呼んでくだサイ。これからよろしく、です!」

 

私の目の前に座る白人らしき子──アーニャちゃんは嬉しそうに破顔させ、私達へと挨拶をしてくれた。顔立ちからして日本人離れしているとは思っていたが、やはりそうらしい。日本語も所々で辿々しいので日本に住んでいたという訳でもなさそうだ。

 

そしてここで残念なお知らせがあります。アーニャちゃんの自己紹介により、私の自己紹介計画は破綻してしまいました。というのも私が計画していた自己紹介というのは『私日本人じゃないと思わせて実は日本人だよ大作戦』というもので、端的に言えば母親の両親の生まれの言語で自己紹介して驚かせてからの日本語ペラペラだよー、というやつである。練習してきただけに少し残念な気持ちが残る。別にやっても構わないのだが、アーニャちゃんの後でやると確実にインパクトが希薄になるだろう。詳しく言うと「へぇ!」が「……はっ(嘲笑)」くらいになると思う。それならばやらない方がマシというものである。……いや、そもそもみくにゃんと普通に会話してた時点で恐らく計画は破綻していた。どっちにしろダメだったということか。

 

それにしてもよく見たらアーニャちゃんは青眼なのか……。さっきの『深雪の真紅眼(ミユキズ・レッドアイズ)』の話に戻るけど、青眼(ブルーアイズ)真紅眼(レッドアイズ)って、組み合わせるとなんだか最強な気がしてこないだろうか。オッドアイ的な感じで。フュージョンとかしたらどうなるんだろう。背丈も近そうだし、戦闘力も似たり寄ったりだろうから、恐らくフュージョンする上では問題はないと思う。名前は、そうだね……『アナスタシア』と『深雪』を合わせて『アナ雪』なんてどうだろう。ははっ、なんだか著作権で訴えられそうな名前だね。

 

「新田美波です。よろしくお願いします。メンバーではちょっとだけお姉さんになるのかな?」

 

茶髪で長髪の子──新田さんはお淑やかに微笑みを混じえながらそう言った。気が効く事に定評のある私だから気付いた事だが、今の彼女の言葉の裏には「困ったら頼ってね」という隠語が隠されていた。直接は言わない奥ゆかしさ、しかしいじらしくありながらもアピールする時はアピールし、決して引き過ぎている訳でもない。もしかしたら大和撫子というのは彼女のような人の事を言うのかもしれない。考えれば考えるほど彼女への評価はうなぎ登り。くっ、私は私の邪な心が恥ずかしい……!

 

「……新田さん、ごめんなさい」

「よろし──えっ? ……ど、どういう──」

「あー! みりあもじこしょーかいするー! みりあはね、赤城みりあって言うの!」

「あっ、みりあちゃんずるーい! アタシは城ヶ崎莉嘉だよ☆ 仲良くしようね!」

 

些か以上に失礼な事を考えてしまった事を反省していると、彼女たち──赤城みりあちゃんと城ヶ崎莉嘉ちゃんに続け様に自己紹介をされた。両名とも元気一杯なので何故だか此方も元気がもらえる。そして城ヶ崎という苗字で確信したが、彼女はロリコンという名の淑女、城ヶ崎美嘉さんの妹だろう。その顔付きには何処か城ヶ崎さんの面影が見える。もしかしたら彼女も……いや、やめておこう。姉がああだからといって下の子もかと言われたらそうではない。邪推は己に対する嫌悪感を生むだけなのだ。

 

「にゃっほーい! 諸星きらりだよ☆ 二人ともよろしくにぃ!」

 

おお、この子聞いてた通り(・・・・・・)大きいなぁ。やはり毎朝コーンフレークでも食べているのだろうか。

 

実はこの子──諸星きらりさんの事は少し知っている。杏ちゃんにMINEの通話で誰かメンバーの中で知り合いとかいるのかと聞いたところ、彼女の事を言っていたからだ。

 

二人が何処で知り合ったのか気になったので聞いてみると、オーディションで知り合ったと言っていた。武内さんの熱心な勧誘で入社? した身としてはまずそこでオーディションなんてものが存在したのかと驚いたが、よく考えなくとも当たり前の事であった。

 

「ぐぬぬ、やっぱりきらりチャンは強いにゃ……」

 

何と張り合っているかは知らないが応援しておこう。がんばれ。

 

「あっ、あのっ、緒方智絵里ですっ。よ、よろしくお願いします!」

「私は三村かな子です。二人共これからよろしくお願いします。あっ、このお菓子手作りなんです。良かったらどうぞ!」

 

ツインテールの少し気弱そうな子と、お菓子を持った明るめの茶髪の子。二人は緒方さん、三村さんと言うらしい。緒方さんはなんとなく兎さんを連想させられる可愛らしい容姿だ。

 

三村さんがテーブルに手作りしたというお菓子を置くと、神崎さんが目を輝かせた。確かに、彼女のお菓子──クッキーは装飾鮮やかで中々に凝った作りになっている。焼きたての良い匂いも漂い、見るからに美味しそうだ。今日まだ何もお腹に入れていないので余計そう感じる。

 

「おお、それは遥かな地獄の炎により抱かれし不定形の粘液(ショゴス)!」

 

多分クッキーの事なんだろうなぁ、知らんけど。そもそもショゴスってなんだろう。

 

「……んあ、双葉杏ー、よろー」

 

杏ちゃんはダラけた態度のまま神崎さんへ挨拶する。自分のことではないにせよ、そのあまりな態度に少しムッと思いながら私は杏ちゃんへ注意した。

 

「流石に初対面でそれは失礼だと思うけど」

「……池乃めだか」

「……」

 

ジト目で見られ、私はそっと目を逸らした。別に初対面で杏ちゃんに新喜劇のネタをやらせたからとか、そんな理由では断じてない。断じてない。

 

「めだか、さん?」

「……」

 

神崎さんは可愛らしく小首を傾げながら問うが、答える気は無い。

 

続いて、ヘッドホンを首に掛けた少女へと視線を向ける。

 

「多田李衣菜。ロックなアイドル目指してます」

 

おぉ、なんだかカッコいいな。夏樹みたいな感じの子だろうか。服にもなんか『rock of mind』って書いてあるし、相当ロック好きなんだろうなー。どんな曲聴くのかな? 聖飢魔IIとか安全地帯とか知ってるかな? 話が合うなら夏樹とか輝子も一緒に話してみたい。

 

さて、それはそれとして、残り三人の自己紹介も聞いたので、これで全員の自己紹介を聞いたことになる筈だ。自己紹介 されたら返す 当たり前。よし、後は私達の番だ。まずは先手! 神崎さん、狙いを定め、熱い鼓動を解き放て! ゴーシュート!

 

私の想いが届いたのか、神崎さんは優雅に含め笑いを始めた。彼女の自己紹介が始まるのだ。

 

「ふふふ……我が名は神崎蘭子。同胞達よ、我等は今一つにならん。快い、喜びに満ちた調べに、共に声を合わせようぞ!」

「(だ、第四楽章……!)」

 

驚いた。まさか彼女からそれ(・・)を聞く事になるだなんて。まるで歌っている(・・・・・)かのように自己紹介をする彼女。ように、と口にはしたが、私のその表現は的を射ていた。何故なら彼女が口にしたその言葉──否、歌詞の正体はベートーヴェンの交響曲第9番 ニ短調作品125、通称『第九』の第四楽章 “An die Freude” なのだから。ドイツ語に惹かれたのか、はたまた今が第九の時期だからなのか分からないが、彼女の知識の幅の広さには身の引き締まる思いである。

 

彼女の自己紹介に対する皆の反応はだいぶ揃っており、目を点にするというものであった。私も初めての時は戸惑ったし、彼女らの反応は見ていて面白かったが、今は自己紹介を終えることが先決だ。私はぽかんとしてる彼女らへ追加攻撃を仕掛けた。

 

「小暮深雪です。四分の三だけ日本人の血が流れています。好きなものは古代中国。好きな食べ物は寿司とシュークリーム、相容れない物はパセリと生のゴーヤです。それ以外は大体食べます。よろしくお願いします」

 

これが私が即興で考えつく最大限の茶目っ気をねじ込んだ自己紹介だ。言ったでしょ? 私アドリブ苦手だって。前々からしっかり考えて暗記しておかないと私はただのポンコツなんだよ!

 

しかし、ここで皆に親しみを持たせないと後で困るのは私だ。中学や高校とは違い此処にいる全員が長い密接な付き合いになるかもしれないのだ。こんな所で壁なんか作っていられない。しかし、私にはもっとマシな趣味はないのだろうか。一体こんな趣味晒して誰が「ええっ!? 古代中国好きなの!? 私も!」と反応するのだろうか。周知されたのは食べ物に関してだけというね。

 

「に゛ゃ!? す、寿司……」

「わお! スシ、ですね♪」

 

良かった、どうやら意外と掴みは上々のようだ。計画が破綻したので神崎さん程のインパクトは出せず普通の自己紹介で終わってしまったが、まあいいだろう。正直私の自己紹介より寿司に反応してた感はあるが気にしない。そう、例え神崎さんが不思議そうな目で此方を見ていたとしても関係ないのだ。

 

しかし、アーニャちゃんとみくにゃんの反応の差が著しい。みくにゃんは嫌そうな反応をしているので、もしかしたら魚介類がお嫌いにあらせられるのかもしれない。対照的にアーニャちゃんは何故か少し嬉しそうだ。

 

「お待たせしました。皆さん、お揃いでしょうか」

 

と、全員が自己紹介を終えたいいところで武内さんが戻ってきた。その手には様々な資料らしきものが存在していたので、これから色々と話があるのだろう。私こういうの苦手だから眠らないように気を付けないと。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

時刻は午後四時。

 

あれから保険や株、会社概要、そして福利厚生などの話を粗方聴き終えて暫くすると、武内さんと千川さんは退散した。本来であれば午前中に健康診断、歓迎会も兼ねての昼食、そして施設の案内があったらしいが、武内さんの様々な都合と人員不足により来週の月曜に持ち越しとなったのだそうだ。恐らく『CP(シンデレラプロジェクト)』自体が発足して日も浅い為、その様な状況に陥っているのだろうと私は感じた。とはいえ、流石に『CP(シンデレラプロジェクト)』に携わる人員くらいは紹介して欲しいものだ。先程改めて武内さんと千川さんから自己紹介を受けたが、思い返せば私はその二人としか話した事がない。もしかすると『CP(シンデレラプロジェクト)』を回している人員って武内さんと千川さんしかいないのだろうか。まあ、流石にないとは思うが、もしそうだとしたら二人の負担は半端なものではない筈だ。それに例え他に人員がいようがいるまいが、二人の忙しそうな様子を見る限り決して楽なものではないだろう。私も出来る限りフォローしよう。

 

そう考えながら帰る準備をしていると、新田さんがふと思い付いたとばかりにその言葉を口にした。

 

「皆で親睦会でもしない?」

 

新田さんは更に「勿論皆の都合が良い日に」と続けた。確かに私たちは知り合ってまだ間もない。互いを知るにはいい機会だし、親睦会を設ける事によりきっと皆の仲は深まる事だろう。これから帰ることしか頭になかった私に対して、新田さんはこれからの私達のコミュニケーションを円滑に進める為に頭を働かせていたのだ。そんな彼女の行動は、年上然とした非常に素晴らしいものだと私は思う。無論、私としては親睦会は大賛成であった。

 

「絢爛豪華、玲瓏たる宴への(いざな)い……血湧き肉踊るとはこの事よ!」

「皆のキャラを知るいい機会……みくも賛成にゃ!」

「みりあも行きたーい!」

「アタシもー!」

「きらりも行っくにぃ☆」

 

他の面々の反応も好意的で満場一致で可決であった。話し合った結果、親睦会は明後日の朝、つまり日曜日の十時にROUND10へ集合との事だ。

 

「らうんどてん、って何処にあるの?」

「みりあちゃんはぁ、きらりが迎えに行くにぃ!」

「きらりちゃんありがとー!」

「あー! アタシも一緒に行きたーい!」

「じゃあ、莉嘉ちゃんは何処住んでるにぃ?」

「アタシは埼玉の……ここ!」

「んー、なら莉嘉ちゃんもぉ、この駅集合!」

「いえーい☆」

 

みりあちゃんと莉嘉ちゃんは太陽すら目ではない程に輝かしい笑みをにぱっと諸星さんへ向けた。良い、笑顔です。

 

ついでに私もみりあちゃん家の場所と電話番号を聞いておく。携帯番号は既に全員から聞いているが、もしも何かあった時の為だ。もちろん、ないに越したことはないのだが。寮から行くついでに丁度拾える場所に住んでいるようなので、諸星さんが無理になっても私が迎えに行ける。

 

「ミユキとランコはドコに住んでますか?」

「私は近くの寮だよ」

「我も!」

「хорошо! ワタシも一緒です!」

 

アーニャちゃんが少し舌を巻きながら神崎さんの名前を呼ぶ。まあ、ロシア語の『r(p)』は巻くやつだからね。仕方ないよね。でも私思うんだけど、『r(p)』じゃなくて『l(л)』を意識したら日本語みたいに巻かずに言えるのではないだろうか。いやまあ、どっちでもいいって言われたら確かにその通りなんだけどね。私もどっちでもいいし。ちなみに彼女がロシア人のハーフだと言うことは先程知った。

 

というかアーニャちゃん寮住みだったんだ。私が出歩かないから気が付かなかっただけかもしれないけど、知らなかったな。

 

「みくも寮住みだから一緒に行くにゃ!」

「──ッ……!」

 

危なかった。思わず「喜んで!」と即答しそうになった。いや、行くけどね? というか、え? みくにゃんも寮住みだったの!? 全く気が付かなかったんだけど。くそっ、寮住みって知ってたらどうにかして知り合いになって部屋に遊びにいってたのに……!

 

「杏ちゃんもぉ、きらりと一緒に行くにぃ?」

「え? もしかして杏も行く事になってるの?」

「あれれぇ、杏ちゃんは行きたくない?」

「いや、まあ、別にいいけど」

 

「李衣菜ちゃんは何処に住んでるの?」

「私は○○の△△辺りだよ」

「わあ、うちと結構近所なんだね! 智絵里ちゃんは?」

「わ、私はその近くの駅の二個前……」

「じゃあ一緒に行きましょう」

 

杏ちゃんは諸星さんと、新田さんは三村さん、緒方さん、そして多田さんと一緒に行く事になったので、奇しくも丁度良く四対四対四に分かれての集合となった。

 

聞くところによると、どうやら諸星さん、三村さん、多田さんは都内出身らしく、諸星さんは杏ちゃんが住んでるマンションの近くに実家があるらしい。新田さんは都内の大学生だったようで、個人的に借りた部屋に住んでいるとのこと。私と同じく地方から来た緒方さんにも何処に住んでいるのかと聞いてみると、親戚の家にお世話になっているという答えが返って来た。実家とか親戚の家から通う人っていいよね。お金貯まりまくりだろうなぁ……。

 

それにしても、此処までの様子から分かってはいたが、皆良い人そうで本当に良かった。いや、もしかしたらまだ本性を隠しているだけの人もいるかもしれないが……あんまり考えたくないな。

 

ま、取り敢えず行動予定は決まった事だし、これからどうしようかな。直帰してもいいんだけど、四時ってだいぶ微妙な時間帯なんだよねー。寮についてもご飯の時間はまだだし……うーん、カフェでも行こうかな。いや、今日は菜々ちゃんアイドルの仕事があるからいないんだっけ? それだと全く行く意味がないしなぁ。カフェに行く理由の九割九分が菜々ちゃん目的だと言っても過言じゃないし。とは言っても今日は勉強もやる気が起きない。どうしたものか。

 

「……そういえば、杏ちゃん冬休みの課題終わった?」

 

手持ち無沙汰だった私は取り敢えず隣でぐだってる杏ちゃんへと話しかける事にした。先程まで私の抱き枕状態だったが「暑い」の一言で腕から離れてしまったのだ。誠に遺憾である。

 

「よゆーよゆー。冬休み初日に終わらせちゃったよ」

「そうなの? ちょっと意外だな。杏ちゃんって課題とか面倒って言いながら結局最後までやらない人かと思ってた」

「いや、杏だってそうしたいのは山々なんだけどねー。それやっちゃうと後々面倒じゃん? 杏は常により楽な道を選んでいるのだ!」

「我が計画に狂いは生じぬ」

 

成る程ね、確かに道理に適ってる。私は気分にもよるけどこういうのは後に回しちゃうタイプだから少し羨ましい。隣に座っている神崎さんは恐らく計画立てて毎日コツコツやっていると言ってるのだと思う。多分。あまり自信はない。

 

「そういえばさ、プロデューサーの話の時は兎も角、なんでずっとニット帽被ってんの?」

「我もそれは気になるところ」

 

ぐっ、この二人急に鋭いツッコミぶっ込んで来やがった……! 疑問持たれないように周囲を確認しながらさりげなーくこっそり被っていた筈なのにどうして気付かれたんだ!

 

寝癖だとバレたら恥ずかしいので私は気にしてない風を装いながら彼女へと返事を返す。

 

「オ、オシャレだけど……?」

「ふーん……まあいいけど。それより今日の深雪の髪っていつもよりウネウネだよね?」

「……ッ」

「その姿、かの(いにしえ)のメデューサ姉妹……!」

「……セットしてきたから」

 

夢の中でな! ウソは言ってない。

 

「そうなの? 別にいつものでも良い感じだと思うけど」

「……まあ、今日だけだから」

 

そう言って私は少し強引に話を切った。これ以上何か言われるとボロが出そうで怖い。

 

 

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