今後は控えます(使わないとは言ってない)。
(あと別に本編で淫夢語録は多用して)ないです。
(する気も)ないです。
「返信するの忘れてたの巻」
いや、今回のは忘れてたっていうよりは気付かなかったって言った方が正しいんだけど。まあ、どっちでも変わらないか。
今の一言で全てを察した人もいるかもしれないけど、纏めるとそれはつい昨日のこと。
帰る途中に前を歩いていた高校生の植木鉢を壊してしまった私。
それを弁償する為に花屋へと赴く高校生と私。
弁償した後、実は知り合いだった花屋の凛ちゃんとMINEを交換する私。
後で連絡すると言う花屋の凛ちゃんに、それを了承する私。
帰って神崎さんとご飯食べて風呂に入る私。
部屋で軽く勉強をした後漫画を読む私。
そして寝る私。
てーれーれーれーてってってーん。
結局彼女からのMINEに気付いたのは次の日の学校もレッスンも終わり、ささやかながら行ったCPの寮組による神崎さんの誕生日会を終えた後だった。ほぼ夜中だ。どうやら勉強をする際に欲望を断つ為に携帯の電源を切っていたのが仇になったらしい。因みに神崎さんは今年度で一四歳となり、名実共に中二病となった訳である。
それより花屋の凛ちゃん、絶対ブロックされたと思ってるよね。電源付けても少しの間は電波が入らないから尚更気付かなかった。見たら未読四件くらいあるし。やばいよやばいよ……。
「既読をつけるのが恐ロシア……」
……ダメだ。ゴミのようなつまらんギャグでも誤魔化せない。これこそ正に使い古された、手垢だらけのフレーズってやつか……。ていうか心臓ばくばく言ってるんだけど。花屋の凛ちゃん、怒るとなんだか凄く怖そうなんだよな……。無表情でとことん詰め寄られそう。もしかしたら外面の取っ付きにくさは私とどっこいどっこいかもしれない。……いや、私の方が高いか。多田さんなんて出会って四ヶ月も経過してるのに未だに話しづらそうにしてるし。個人的に仲良くしたいなーって思ってるから結構話しかけるんだけど、そんな態度されるから地味に傷付くんだよね。
……まあいいや。いや、良くないけど。兎も角既に賽は投げられた。取り敢えず既読だけでも付けるとしよう。私は溜まった四件の未読を開いた。
渋谷凛【こんばんわ。渋谷凛だけど】21:14
渋谷凛【みゆきって、深雪……で合ってるよね漢字】21:14
渋谷凛【あれ、もしかして気付いてない?】21:28
渋谷凛【おーい】21:50
なんで『おーい』だけで諦めたんだ……! もうちょっと粘ってくれれば気付いてたかもしれないのに!
八つ当たり紛いの事を思いながらどういった返信をしようか悩む。今既読を付けるのは早計だったか。内容を考えてから既読すればよかった。
取り敢えず気付かなかったという旨を伝えないと……。
渋谷凛【既読付いてるけど、なんで返信してくれないの?】21:05
「ひィっ!」
文字を打とうとしたら突然連絡がきた。びっくりした私は思わず携帯を取り零してしまう。
こ、怖い! 文字だけで怒りが伝わってくる気がするよ!
これ以上ない程の最悪なタイミングじゃなかろうか。私が既読した直後という、天から見放されたとしか思えない狙ったかの様なタイミングである。最早弁解の余地がない。
……あれ、いや待って。もしかしたらこれって実は……最高のタイミング……? 送信した直後に既読が付いたんだから、初めて見たっていうのが伝わるよね? そうだよね?
渋谷凛【あ、もしかして今気付いたの?】21:06
おしゃ! 狙い通り。天は私を見放してなんかいない。私ってば神崎さんに“天の御使い”なんて言われるだけあるな。
ばくばく鳴っている心臓を抑えながら大きく安堵の溜息をつき、返信を返した。
渋谷凛【気付いてくれたならいいよ】21:07
渋谷凛【こっちこそ責めるような言い方でごめん】21:08
さて、これでなんとか上手く厄介ごとは免れた。それにしても彼女は私と何を話そうというのだろうか。自慢ではないが私はどちらかといえば割と口下手な方だ。そしてそれはMINEでのやりとりであっても例外ではない。
渋谷凛【ありがと。ところで深雪って○○高校だよね?】21:12
渋谷凛【私は××高校なんだけど、制服に見覚えがあって】21:14
渋谷凛【それに○○も入学先の候補に入ってたからね】21:14
渋谷凛【一年】21:18
渋谷凛【この前入学したばかり】21:18
渋谷凛【特には決まってないかな?】21:22
渋谷凛【友達には吹奏楽部に誘われたけど】21:22
渋谷凛【いや、特に何も】21:27
渋谷凛【強いて言うならリコーダーかな】21:27
渋谷凛【あ、分かる?笑】21:29
なんか良い感じに解れてきた気がする。意外とユニークな人なのかな?
渋谷凛【そういえば深雪は何年生なの? 同い年には見えないけど】21:29
渋谷凛【一個上なんだ。三年生くらいかと思ってた】21:30
渋谷凛【お世辞はいいよ笑】21:35
渋谷凛【深雪だって、スーパーで会った時は大学の留学生か何かかと思ってたし】21:35
渋谷凛【あ、気を悪くしたならごめん】21:37
渋谷凛【確かによく言われてそう笑】21:40
渋谷凛【成る程ね笑】21:43
本当に、容姿に関しては話すネタに全く困らない。最早特徴しかないレベルだよこれ。なんなら自分からネタにするまである。
「あれ? 深雪ちゃんがリビングにいるなんて珍しいね」
「あらあら、ほんまどすな〜」
テーブルに置いていた牛乳を飲もうと手にしたら後ろから声を掛けられた。お隣さんの美穂ちゃんと、ビリビリ・バンバンのカバーで一躍有名(私の中で)な小早川さんだ。個人的にはダディダディダドゥダも歌ってみてほしいと思いました。いや、うーん、合わないか。
よく見ると風呂上がりなのか少し髪が湿気を帯びており、艶のある髪が更にツヤツヤになっている。普段から見目麗しい二人の美少女が更に美少女に見えて真に眼福である。美穂ちゃんとかホント冬に抱き枕にして寝たい。美少女といえば神崎さんとも意図してなかったとはいえ一度だけ一緒に寝たことがあるが、彼女は髪が長いので嫌だ。
「美穂ちゃんに小早川さん……お疲れ様です」
彼女らの言う通り、私は現在寮のリビング的な部屋で
「お疲れ様ですっ」
「おくたぶれさんどした♪」
「……?」
「……あっ、今のはお疲れ様って意味、だよね?」
「そうどすえ〜」
そうどすか〜。京言葉を扱う小早川さんの言葉は馴染みのない私には少々難しい。
「10時から見たい番組があるんだけど、いいかな?」
「どうぞどうぞ」
テレビの前の席から退いて隅の方へと座る。
「あっ、えっと、そ、そんなに端に行かなくてもいいんじゃないかな……?」
「私テレビ見ないし……邪魔したら悪いかなって」
「そっ、そんなことないよ!」
「美穂はんの言う通りどすえ。ほらほら、もうちょい近う寄りなはって」
「あ、うん……」
うーん……飲み終わったら上に上がる予定だったんだけど……まあ偶にはいっか。私も彼女らのテレビ観賞にお付き合いするとしましょう。何見るか知らないけど。
私は美穂ちゃんの隣に座り直し、軽く話しながらテレビへと視線を向けるのだった。
☆☆☆
次の日の学校の昼休み、私は杏ちゃんと食堂にて昼食を食べていた。
「このオムライスマジたまらぬ」
初めて食べたけどこのオムライスは四捨五入すれば一世紀にも及ぶ私の長い人生の中でもランク5位に入るかもしれない。シンプル加減が素晴らしい。飯、鶏、卵の三種類という、実に私好みのオムライスだ。因みに2、3、4位は北海道で食べた物で1位は実家の近所にある定食屋。
いつも野菜炒め定食ばかり頼んでたけど偶には違うのも良いね! 来週も食べるとしよう。多分気が変わってるだろうけど。
「あー分かる」
「だよね。後カレーも美味しい」
「うん、分かる分かる」
「おせちもいいけどカレーもねって言葉もあるしね」
「うんうん、分か……って、そんな言葉ないから」
「は?」
「え?」
「…………でもラーメンは残念だよね」
「うん、残念だね」
あ、そういえば杏ちゃんとは同じクラスになれなかったんだけど同じ346プロアイドルのは、は、は……忘れた。後で確認しよう。取り敢えずは何とかさんと同じクラスになった。
まだ話したこともないからあんまり知らないけど、見た目はとてもクールで、身体中から妖艶なオーラを漂わせている人だ。ぶっちゃけた話、ちょっとキャラ被ってない? 早速私というキャラクターの存在価値が危ぶまれてる気がするんだけど。因みに第一印象は胸元セクハラ。私服ならまだしも学校の制服であそこまで胸元を露出させるのはどうなのだろうか。最近の若い子の感性が分からない。というか346プロって特徴的な人しかいないよね。皆キャラ立ちすぎて私の立つ瀬がないよ……。
渋谷凛【346プロって知ってる?】12:17
「わわわっ!」
思わず水をこぼす私。突然でびっくりしたわ。というか前回のMINEから脈絡がなさ過ぎない? まるで私の思考を読み取ったかのようにピンポイントな言葉。びっくりしない訳がない。
「うわっ、何やってんのさ。あー、もうべちゃべちゃだよ」
「……台拭き取って」
「もー、はい」
「ありがと」
周りが空席ばかりだったので被害が杏ちゃんにしかなかったのが幸いだ。と言っても濡れたのはテーブルだけで、制服に被害は及ばなかったので実質被害はゼロ。私は慌てて台拭きでこぼした水を拭き取る。
「驚いたような声出してたけど、何かあったの?」
「……いや、ちょっと」
「ふーん、まぁいいけど」
拭き終えた後、花屋の凛ちゃんからのMINEに返信した。
渋谷凛【ふーん】12:24
渋谷凛【あそこってアイドルもいるの?】12:24
サラッと宣伝する事は忘れない。仕送りがあるとはいえ今の私の飯の種だからね。これを機に彼女も“Unknown Invaders”に興味を持って貰えないかな? なんならCD送るよ。
文面から見てみるとどうやら彼女は私の思考を読み取った訳ではなさそうだ。まあ当たり前だけど。
渋谷凛【意外と詳しいんだ】12:26
渋谷凛【分かった。ありがとう^ ^】12:26
……あ、終わり? 誰か気になる人でもいたのだろうか。もしも佐久間まゆちゃんとかだったら、多分私は花屋の凛ちゃんとは良い友達になれる気がする。
ほんの僅かな期待に胸を弾ませていると、いつの間にか食べ終えていた杏ちゃんがジト目で私を見つめた。
「……なんでもいいけどさ、早く食べないと昼休み終わるよ?」
「いや、杏ちゃんの方が食べるの遅いし」
「キレそ」
☆☆☆
346プロの事務所のとあるレッスンルーム。私達シンデレラプロジェクトのメンバー十二人はその部屋に集合していた。
「そろそろレッスンを始めるぞ」
時計を見ながら声をあげるトレーナーさんに対してCPの面々は各々返事を返した。
「今日は何をするのかにゃ?」
「な、なんだろうね」
「本日は発声に重きを置いた練習を行う」
猫派代表のみくにゃんが緒方さんへと話しかけると、トレーナーさんからそんな答えが返ってきた。みくにゃんは少し不服そうな表情を浮かべた。
「にゃあ〜〜……また発声練習? みくはダンスがしたいにゃー!」
「文句を言うな前川。重きを置くとしか言ってないだろう。ダンスレッスンも無論行う。それに発声練習もダンスレッスンと同等に非常に重要だ。何度も説明した筈だが?」
「うぐ……ご、ごめんなさいにゃ」
「分かればいい」
トレーナーさんは「さて」と、話は終わったと言わんばかりに場を仕切り直して、再び私達の方へ顔を向けた。
「柔軟は終わっているな? では発声練習を行う。まずはこの音とメトロノームに合わせて母音のアで“ロングトーン”だ」
ロングトーンとは単純に長く歌声を響かせることを言う。サビの後の間奏部分で上手く扱えると相当格好良い。これ以上ない程分かり易い例をあげるとするならば“新造人間キャシャーン”のOPだろう。三番終盤のロングトーンは当時、幼心ながらに(と言っても成人済み)憧れを抱いたものである。ささきい○おさんは偉大。
トレーナーさんは言い終えると手元に設置してある電子ピアノで
「1、2、3、はい!」
「「「あー」」」
トレーナーさんはメトロノームの4拍子に合わせて指揮を行い、私達はその指揮に従う。何度か言葉と音を変えながら続ける。低い音だったり高い音だったりと様々な音を声帯を震わせて口から放出させる。私の声は少し高めではあるが、低い声も出せるので中々に高スペックな声帯だ。まあ低いといっても男声並の重厚感ある声は流石に出せないけど。武内さんみたいな感じの。
「こら多田! 集中しろ!」
「!」
「す、すいません!」
わ、私のことかと思った……。危ない危ない。余計な事は後で考えよう。今は集中。
「次は音階だ。イ長調を二拍毎で上げて下げて、言葉はニ、毎回言い直し。これもいつも言っているが、言葉の言い直しはブツ切りにせずレガートを意識しろ。半音の動きにもだ。他に気をつける点はなんだ諸星」
イ長調とは、通常よく聞くドレミファソラシドがハ長調という
これを行うに当たって特に気をつけるべきポイントはトレーナーさんが言った通り、
他の音は全て全音で上がっていくのだが、半音の部分を同じ要領でやっているとピッチが高くなり過ぎてしまい音がズレる。逆に高くならないように意識しすぎると今度は低くなってしまうという、意外と難易度が高いモノなのだ。私も未だに失敗する時もある。
「えっとぉ、いっちばん音がたっかーいところでぇ、声が浅くならないようにする事!」
「よし、その通りだ。イの母音は高くなると幼い声になりがちだ。ではそうならないようにはどうすればいい、赤城」
「はい! えっとねー、お口を横じゃなくて縦に開きます!」
「そうだ、よく覚えていたな。二人共偉いぞ」
「でっへへー♪」
「えへへー♪」
「ただ、やりすぎると不自然になる。自然と、違和感の無いように気をつけるんだ。仏頂面で歌ってると更に酷くなるぞ。これは表情筋を鍛える事にも繋がる。自信の無い者は其処の鏡を見てやれ」
私は些か自信がないのでチューナーを置いて鏡の自分と対面した。因みにチューナーというのはボイス用チューナーの事であり、音程の可視化により正しい音程が理解出来るという非常に優れた電子器具である。
用途は今言った通りではあるがもしかすると「そんなものいらない」「俺の音程は完璧だ」という人もいるかもしれない。そんな人に聞きたい。カラオケの採点機能で出てくる音程で『合っている筈なのに低い、もしくは高い』といったモヤモヤ感を味わった事はあるだろうか。ある筈だ。ない訳がない。そう、あれは機械が悪いのではなく、ただ単純に音程が悪いだけだ。
人の耳というものは長い事音楽に
「よし、次は“半音階”だ。四拍ずつ上がれ。言葉はマ行であればなんでもいい」
半音階とは先程の様なドレミファソラシドの事ではなく、それ以上に細かく分別した音階の事だ。簡単に言うと
「三村、ピッチが少し低いぞ。チューナー見てるか? その音ピッタリではなく少し高めを意識してみろ」
「は、はい!」
「双葉は姿勢が悪い! 背中が曲がって首も前に出ている。それだと出る音も出らんぞ。少し胸を張って顎を引け」
「は〜い」
「緒方ァ! 聞こえないぞ! 声出してるのか!?」
「ひ、ひゃい!?」
「よーしその調子だ!」
それからもトレーナーさんは私達にダメ出しを繰り返す。四ヶ月もの間行ってきたことなので多少は前より発声の仕方が上手くなった自信はあるが、まだまだ素人の域だ。
「さーて、発声はこの程度で良いだろう。十分間休憩を取った後はもう少し踏み込んだ発声練習を行う! 今のうちに水分塩分も補給しておけ」
言い終えるとトレーナーさんは部屋から退出する。出ていくのを見届けると私は壁際まで歩くとペタリとゆっくり座り込む。
はぁ〜、疲れた。練習はずっと立ちっぱなしでやるからね。カラオケみたいに適当な姿勢で歌うわけにはいかないのだ。
ぐっ、と背伸びをした後に自販機で購入したお茶を口へと傾けた。
「ぬふふ、天の御使いよ! これを見るがいい!」
「む、神崎さん……なにこれ」
ペットボトルの蓋を閉めると同時に神崎さんから声を掛けられた。相変わらず少し喧しい。
上から本屋の保護カバーが施された本を渡される。大きさや側面を見る限り少年少女漫画ではないし、小説の類でもない。漫画というのは分かるけど……一体なんだろう。
「って、達人伝の一巻じゃん。買ったの?」
「我が魔力と引き換えに」
「……言えば貸したのに」
「…………い、否! 借り物の力など所詮は虚空へと消え失せる
「それでも少し読んでみてからでも遅くなかったんじゃ……あ、読んだの?」
「……まだ読んでない……」
「……あ、そう……」
神崎さんはその手があったかと呆然としていた。いや、読まずに買って好みじゃなかった時とかさ、買ったお金がもったいないでしょ。私も一回そんな経験があるからさ。なんとなく中古の本屋さんに寄って「あ! これ面白そう!」って漫画を読まずに全巻買って後悔したんだよね……。流石にアホだったわ……。最近流行りの異世界転移物で、話すアイテムと共に敵を倒していくって感じの、割と好きな設定だったんだけど、展開とストーリーがあんまり好みじゃなくてね。
私は達人伝を神崎さんへと返すと携帯を手にした。……あ、花屋の凛ちゃんから通知がある。
渋谷凛【さっき言ってたアンノウンインベーダーズってやつ】17:12
渋谷凛【アワーチューブに載ってたから少しだけPV見たよ】17:13
おおっ、どうやら昼の宣伝が功を成したようだ。どのPVだろうか。“Primal Satisfaction”かな? それとも“氷結の世界”かな? はたまたつい先日に発表したばかりの“エイリアン快進撃!!”かな? どれにしても感想が楽しみだ。批判されるのがちょっと怖いけど……どれも良い出来だし、多分大丈夫! ……およそアイドルのPVとは思えない出来ではあるけども。
渋谷凛【落ち着いて笑】18:32
渋谷凛【本当にファンなんだね笑】18:32
おっと、少し急かし過ぎたか。まあファンっていうか当事者なんだけども! 言えないけど!
渋谷凛【カッコ良かったと思う】18:34
渋谷凛【これがアイドルってやつなんだね】18:35
いや、それはどうだろうか。あれをアイドルユニットと呼んでいいのか当の私でさえ疑問に思っているところだ。一応“ロックアイドルユニット”っていう名目の元、活動してはいるけど……まあどうでもいいか。
ところで「これがアイドル」って事は、あんまり興味は無かったのかな? 確かに今時の女子だったら“
渋谷凛【侵略の軌跡ってやつと氷結の世界】18:37
お、どっちも私がまだベースを担当している時の曲だね。二曲ともカテゴリはJ-POPに類される曲だけど、どちらかと言えばJ-ROCKと言ったほうが正しいかもしれない。その辺りの境界線が未だによく分からないんだけど。
渋谷凛【そうなんだ】18:39
全部といっても数枚程度だし、自分で買ったわけでもないけどね!
渋谷凛【凄いね笑】18:40
渋谷凛【じゃあ借りさせてもらおうかな】18:40
よし、では今度持って行くとしようか。ハマってくれると嬉しいなぁ。……おっと、トレーナーさんが戻って来た。もうそろそろ休憩が終わりそうだから準備をしないと。
私は携帯を片付けて立ち上がり、練習を再開した。
☆☆☆
「トゥートゥトゥートゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥートゥトゥトゥットゥー」
やはり風呂は素晴らしい。まるで口がヘリウムガスの様だ。
「俺の名は〜俺の名は〜♪」
今日も今日とて誰もいない時間帯に風呂へと赴いていた私は、一人専用スタジオで気持ち良く歌を歌っていた。本日のセットリストは特撮祭りである。
「五つの力を〜♪」
この歌もよく歌ってるんだけど歌詞が微妙に無理矢理なんだよね。いくら五色に合わせる為とはいえこじつけ過ぎじゃないかな? いや好きだけど。
いやー、それにしてもゴレンジャーか……懐かしいなー。何年前になるんだろう。懐かし過ぎて内容なんて全く覚えてない。
そういえばこの曲歌ってる人も“ささきい○お”さんだよね? いいよね、ささきい○おさん。歌う曲のどれもがカッコよくて痺れる。“宇宙戦艦ヤマト”や“銀河鉄道999”とかの名作の主題歌も歌ってるし。どっちもリアルタイムで見てたなぁ……偶にだけど。もうその時には仕事してたからね。見る暇がなかったんだよ。
作者繋がりで言えば“宇宙海賊キャプテンハーロック”なんかも好き。作者が北九州生まれということで小倉にはハーロックの像なんかも建ってるし。小倉住みじゃないから実際には見た事ないけど。
キャプテンハーロックといえばのOPは“水○一郎”で、この人もまた様々なアニソンや特撮の曲を歌っている。分かりやすく言えば「ゼーット!!!」で有名なあの人だ。先程の“ハカイダーのうた”だってこの人が歌っている。この曲も中々クセになる曲で偶に何度も再生して聞いたりしてるんだよね。カラオケの定番曲だからよく歌うんだけど、流石の菜々ちゃんでも知らないらしく、分からないって言われてしまった。少し残念。
“人造人間キカイダー”は特撮版は子供向けって感じで楽しく観賞出来るんだけど、漫画版が結構ストーリーが重くて当時は読み切れなかったのを思い出す。今読んだら面白いかもしれない。
ところで“マジンガーZ”といえば“デビルマン”と……いや、やめとこ。これ以上脱線すると収拾がつかなくなる気がする。そろそろ上がるとしよう。
私がバスユニットから立ち上がると、肌に張り付いていたお湯がポタポタと身体中から滴り落ちる。タイル張りの床で足を滑らせない様にしっかりと踏み締めながら私は出口へと足を運んだ。
「……なんかMINE来とる」
身体を拭き終えて扇風機に当たっていると何通かMINEが来ていることに気が付いた。一日に何度も通知が来るのは少し珍しいので新鮮だ。
「……後で読も」
そう思い、着替え終えて部屋に戻り、誰から来たのか確認する。予想はしていたが、相手は案の定花屋の凛ちゃんだった。
渋谷凛【もしかしてさ】21:42
渋谷凛【今放送してる「ブレインキャッスル」っていうクイズ番組も346プロがやってるの?】21:43
……ブレインキャッスル、確か十時愛梨さんと川島さんがMCを勤めてる番組だったか。よく“カワイイボクと野球どすえ”という謎めいた名前のユニットがよくゲスト出演している筈だ。ほぼ毎週出てる事からゲストなのにレギュラー扱いされているって輝子から聞いた。メンバーは同盟相手の幸子と小早川さんと、後は姫川友紀という人物を合わせた三人で形成されている。
渋谷凛【あ、やっぱりそうなんだ】22:17
渋谷凛【じゃあ「生っすか!?レボリューション」ってやつは?】22:18
渋谷凛【ふーん】22:20
そういえば彼女、昼からアイドルの事ばかり聞いてきてるような気がする。聞いてくる割には興味津々って訳ではなさそうだけど。昼に話した“Unknown Invaders”には興味を示してくれているような気がするけど、どうにも真意が見えてこない。名前が分からない好きな女性芸能人でも探しているのだろうか。
渋谷凛【いや、Jupiterは興味ないかな笑】22:25
渋谷凛【別に誰か探してるって訳じゃないけど、少しだけアイドルってやつが気になったから】22:26
いまいち意図を掴みきれない。普通に考えればアイドルに興味を持ち始めたって捉えるのが正解なんだろうけど、何か違和感を感じる。
渋谷凛【気になったというか興味があるというかなんというか……】22:33
やはり要領を得ない回答である。どういう事なのかさっぱり──いや、これは……あー、成る程なるほど。つまりそういう事か! やっぱり、彼女と私は良く
ようやく合点がいった。そうと分かれば彼女の今までの態度にも納得がいくというものだ。いやぁ、今の凛ちゃんみたいな事は私も昔からよくあるんだよねぇ。外見の雰囲気も似てて更に中身も似てるって、私たち良い友達になれるよ。確証はないけど。
花屋の凛ちゃんの心象を掻い摘んで言うとこうなる筈だ。
──興味はあるけど先入観が邪魔してハマりたいと思えないという二律背反が存在している。
……といったところだろう。どんな先入観かは知らないけど中々良い線いってるんじゃなかろうか。世紀の名推理じゃないかなこれ。
つまり私で言うところの『読めば面白いのかもしれないけどマイナー過ぎて読む気がおきない』というやつである。“達人伝”にハマる前なんかは正しくこれであった。この考え方は非常に勿体無い。しかし、ある意味でこの現象はいわゆるツンデレというやつに似ているかもしれない。好きになりそうだけど何故か素直になれない的な。……あ、違う?
兎に角、ここは私が一肌脱ぐべき場面であろう。今ここに、私たちのファンになってくれそうな人がいるのだ。その当事者である私が手を差し伸べないでどうする。PVを見て興味を示してくれたのだ。つまりハマるまであと一歩手前のところまで差し掛かっていると言えよう。もしもここで彼女が“Unknown Invaders”にハマってさえくれれば彼女は毎日が楽しくなるし私は収入源……もとい、身近なファンが増えてくれて嬉しい。正にWin-Winな関係である。という事で説得開始。
よし、言いたい事は全て言った。少し畳み掛け過ぎた気がしなくもないけど気にしたら負け。それにここから先は花屋の凛ちゃんの気持ちの変わりよう次第だから何も言えない。ハマるハマらないは彼女の意思を尊重するよ。でも、少しでも進みたいと思うキッカケにさえなってくれれば私は嬉しい。
渋谷凛【深雪、あんたもしかして】22:47
渋谷凛【ごめんなんでもない。さっきのは取り消し】22:50
渋谷凛【ありがとう。少しだけ考えてみるよ】22:51
いや、こういうのは考えるより勢いの方が大事なんだけど……まあいっか。
渋谷凛【うん、おやすみ】23:00
そして会話が終わり、私は最後に既読をつけるとMINEを閉じてベッドへと横になった。いつもであればまだ起きている時間帯なのだが、今日はもう寝る。そんな気分なのだ。
「あ、いつ渡せばいいか聞いてなかった……」
まあ、聞くのは明日でも構わないか。
部屋の電気を消して目を閉じる。うつらうつらとしてくる意識の中、私は次の仕事の事について考えていた。
(土曜日はCB/DSとして仕事……。夕方から雑誌の撮影だったっけ。表紙を飾るらしいからメイク気合を入れないとね。メイクするのはスタイリストさんだけど……)
オチがついたところで、私の意識は段々と消え去っていくのであった。
実験がてらLINE形式はこんな感じにしてみました。不評であればやめます。