士郎side
「お、お兄ちゃん!?こ、これにはわけが!!」
「・・・・・・」
取り乱すイリヤに少し恥ずかしそうに顔を逸らす美遊ちゃん。
「その・・・なんだ。俺は何も見てないから。この部屋にも来てないから」
「凄く気を使われてる!!?」
取りあえず手に持ったお茶をコップに注ぎ、美遊ちゃんに。
うん、イリヤはただ美遊ちゃんハグしただけ。
息を荒げていたのもたまたまだろう。
よし、大丈夫だ。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。君が美遊ちゃん?」
「え?何で名前を」
驚いた顔をしている。
まぁ、向こうからすれば初対面だもんな。
「イリヤに聞いたんだ。これからも仲良くしてくれるとうれしい」
「はい。イリヤは私の初めて(の友達)ですから」
イリヤside
「はい。イリヤは私の初めてですから」
特大の爆弾が今、私の部屋に落とされた。
お兄ちゃんは笑顔のまま固まる。
「主語が抜けてるよ美遊!」
「え?」
キョトンとした顔でこちら見る。
ああ、美遊って案外天然さんなんだね!
って、そんなことより誤解を解かなくては!!
「お兄ちゃん、今美遊が言いたかったのは・・・!」
「大丈夫だ、イリヤ」
「お兄ちゃん・・・!」
良かった。お兄ちゃんも気づいてくれて。
「セラや親父の説得は俺に任せろ」
「やっぱり駄目だったー!!」
目がぐるぐるしてるよ、お兄ちゃん!
って、そういえば!!
「あ」
ばたりとその場にお兄ちゃんは倒れた。
「「お兄ちゃん/さん!?」」
美遊と声が被るがそんなことは後回しだ。
「熱っ」
思わず額に手を置くとびっくりするぐらい熱い。息も何だか荒く苦しそうだ。
「ど、どうしたら」
「落ち着いてイリヤ。体温計と氷枕何処にあるか分かる?」
「それなら、確か・・・!」
美遊のお蔭で苦しそうな表情はだいぶ和らいでいる。
「美遊、どう?」
「九.七℃。まだ熱が高い。このまま看病するべき」
流石にお兄ちゃんの部屋まで運ぶのは難しく私のベッドに寝て貰っている。
「・・・酷い汗」
時節、何かに苦しむように顔を歪めている。
今、私にできることは・・・・。
美遊side
「イリヤ?」
不意に、立ち上がった彼女を私は目で追う。
何をするのかと思えば彼の手を握る。
「何をしているの?」
よく分からない行動に疑問をぶつける。
「えっと、何だか苦しそうだから少しでも安心して欲しくて」
「手を握ったら安心するの?寝てるのに?」
「うっ。た、たぶん」
言われてみれば少しだけ顔の険が取れたような気がする。なら、
「ちょ、美遊!?」
「?どうしたの?」
私が握れば効果も二倍。
「・・・・いや、なんでもないよ」
「???」
そういって、イリヤはただ彼の手を握りしめた。
温かいというより熱い掌が私の少し冷たい掌で冷まされ丁度良い。
それに・・・
(懐かしいな)
私の大切な人を思い出す。
私に幸せになって欲しいと送り出してくれた本当に大切なたった一人の家族。
彼は彼でないけれど苦しんでいる姿は見たくない。
私は早く治って欲しいと願い、今はただ、その手の温かさに身を委ねた。
■■■side
ここは何処だろう?
右も左も、上も下もない場所にいる。
この記憶は誰のだろう?
炎の地獄。
泣いて喜ぶ男の顔。
満月の夜の誓い。
校庭での死闘。
胸を貫かれる感触。
紅い何かが揺れる。
そして、彼女は・・・・。
『問おう。貴方が私のマスターか?』
青と黄色の鞘。黄金の剣。
「・・・・ん」
視界がぼんやりとする。
ああ、どうやら寝ていた様だ。
身体は朝に比べだいぶ楽になった。
身体を起こそうと両手に力を入れようとして気づく。
「イリヤ、美遊ちゃん?」
両手にはしっかりと自分の手をつなぐ二人。
どうやら、迷惑をかけたみたいだ。
「ふぁ」
そして、何故か睡魔が襲ってくる。
起きなければという思いとは裏腹に目蓋は落ちる。
どうやら、まだ完全に疲れが抜けてないようだ。
寝ては駄目だと思う毎に睡魔は強くなる。
駄目押しに二人の手の温もりが心地良く。
遂に、穏やかな気持ちと共にまた眠りについてしまったのだった。
『いや~、この後の反応が楽しみです』
『姉さん、あんまり大きな声出すと御三方が目を覚ましてしまいますよ』
この後、士郎は文字通り地獄を見るのだがそれはまた別の話である。
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