東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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モヤモヤしていた暗闇を消していく。



それを私の心も同じくやってほしい。







光芒

ヒナミSide

 

 

「どうかな...?」

 

「本のまんま!すごい!」

 

お兄ちゃんが住んでいる6区にある家。

外は真っ暗に暗い中、私は明るいリビングの中でお兄ちゃんに髪を切ってもらった。

少し長かった私の髪は、本に写っているモデルさんのように髪が短くなった。

髪を切るのは得意ではないとお兄ちゃんは言っていたけど、

写真に写っている人と同じ髪型になって嬉しかった。

先ほどまでお兄ちゃんは外に出ていたけど、

どういう内容はわからない。

 

「あ!お兄ちゃん!テレビに卯月ちゃんが出ているよ!」

 

するとテレビにある人が写り、私はとても喜んだ。

それはテレビに“うづきちゃん”の姿が写っていたのだ。

前に言っていた新しい曲"ラブレター”のCMだ。

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「...そうだね」

 

「え?」

 

お兄ちゃんの反応は私とは真反対だった。

まるで暖かかったものが、一瞬にして冷めてしまったように。

 

「あ、ああ、ごめんね。そうだ、今度ヒナミちゃんが行きたかった図書館に行こうか」

 

場の空気が悪くなったことを察したのか、お兄ちゃんは少し慌てた様子になり、私にそう伝えた。

確かに私は以前から図書館に行きたいとお兄ちゃんに伝えていたけれど、それよりも気になることが生まれた。

うづきちゃんが一番会いたがっている人が、輝いている姿に嬉しくなさそうにしていた。

見ていた時のお兄ちゃんの目はとても悲しく、何か抱えているように見えた。

 

 

 

 

 

どうしてなんだろう?

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

凛Side

 

ジメジメと雨が降り続ける今週。

そんな中でも私は事務所に訪れていく。

今日はレッスンだけで、仕事はない。

レッスンルーム前の長椅子に座り、髪を少し手をつける。

梅雨の湿気で髪は少し乱れてしまい苛立つけど、

でも天気予報だと来週には晴れの日が続くらしい。

それを耳にした私は、"あとちょっとで耐えよ"と胸の中で呟いた。

 

(卯月はしばらく受験勉強に励むんだね)

 

そういえば先週卯月が一時休止をして、しばらく経った。

卯月は去年とは違い受験生だ。

流石にアイドルと勉強を両立するのは難しい。

今度未央を連れて、卯月の元にサプライズをする形で行こうと考えている。

 

「凛さん?」

 

ふと気がつくと誰かが私に声をかけてきた。

その声は私と同じ女性の声。

振り返るとある人が立っていた。

 

「あ、文香」

 

私と同じロングヘアーの女性、文香だ。

以前は同じユニットとして交流はあったのだけど、

今は別々になってしまい、こうして出会うのは久しぶりだ。

文香は私の隣に座ったけれど...

 

「「.......」」

 

まるで去年のプロジェクトクローネの時と同じように静かな空気が漂う。

何を話してはいいのかわからない。

私と文香は金木とは知り合っている共通点はあるけど、中々話す機会や会う機会がないせいか口が開かない。

 

「ひ、久しぶりに話すよね...私たち」

 

「はい...あの時のライブ以来、会うことありませんでしたよね」

 

「そりゃ、仕事が増えて会う機会が減っちゃったから仕方ないかな」

 

「そうですよ...」

 

「ははは.....」

 

会話が途切れてしまう。

次の話題が浮かび上がらない。

 

(とりあえず...何か最近あった出来事でも聞こうかな)

 

次にあげる話題を仕事やプライベートのことをあげることにする。

 

「そういえば、文香」

 

「..はい?」

 

「最近何かあったかな?私だったら仕事だったり、卯月が休止したとかあるよ」

 

「.....最近ですか?」

 

文香はそう言うと人差し指を口元に当て、考え始めた。

 

「そうですね...実は以前、CCGの人からのお話が...」

 

「え?CCGから?」

 

それを耳にした瞬間、思わず疑ってしまった。

CCGは確か喰種を駆除するところだけど、なぜ文香の元に訪れたのか?

 

「なんでCCGが文香を?」

 

「.........」

 

文香は全く話そうとはしない。

口は開かずの扉のように固く閉ざしていた。

すると文香は自分の腕時計を見て、

 

「あ、すみません...このあとお仕事がありますので...」

 

「あ、うん...またね」

 

そう言うと文香はこの場から立ち去ってしまった。

どこかパッとしない終わり方だった。

 

(一体何を聞かれたのだろう...?)

 

CCGが文香に話をする理由が見つからない。

文香が言わなかったせいか、ムズムズして仕方ない。

まるでお父さんが前に言ったお客さんのように、答えが見つからない話ようだ。

もやもやした私は気晴らしに窓に視線を向け、雨が降り続く外を見渡す。

しばらく見ていると厚い雲の隙間から陽の光が現れ始め、徐々に雨が止んでいく。

雨で暗かった東京は、徐々に陽の光を染まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

でも私の胸の中は、外の天気のようには表してはくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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