遊戯王ARCーV get back in the game 作:眉キー
「私のターン!」
そう宣言してカードをドローした瞬間、今度は私のディスクが点滅する。
「ーーセルゲイ? 着信だと?」
デュエル中に、全くもって面白くもない。
「デュエル中だ! 貴様は走っていた訳ではないのか!?」
「ーー終わった。帰るぞ。置いていく」
ディスクから、奴のテンションの低い声が聞こえる。
「待て! 5分待て!」
そう返事をするが、電話は勝手に切られる。
「ーーッ 馬鹿者め!」
王の右腕になるべき者があんな好き勝手にしおって。
ーーっと、危ない。デニスにばれるところだった。
「ーーミスター?」
「おっと、お見苦しいところを失礼しました。しょうがない。メインフェイズ! ギャラクシー・サイクロンでバリア・バブルを破壊!」
態度を繕いつつ、攻めの盤面を作る。
「さらに《スクラップ・ドラゴン》の効果でemトラピーズ・マジシャンとヴァルハラを破壊!」
スクラップ・ドラゴンが口からブレスを吐き、トラピーズ・マジシャンを消しとばす。
「ーーぐぅぅぅっ! emトリック・クラウンの効果発動! 1000ダメージを受け、このカードを特殊召喚する! さらに墓地のサウザンドブレードの効果発動! ダメージを受けた時、このカードも攻撃表示で特殊召喚できる!」
デニスLP3250→2250
すぐさまリカバリーに入ってくるデニス。だが、既に遅い。
「《スクラップ・ドラゴン》で《emトリック・クラウン》を攻撃!」
「守備表示のトリッククラウンは破壊されても痛くないね」
「ならばオーディン! サウザンドブレードを消し去れ!」
神の攻撃が、H.Cサウザンドブレードに直撃する。
「ーーOH! NOOOOOOO!」
デニスLP2250→0
衝撃で吹き飛ぶデニスは、足を引っ掛けて近くの椅子をひっくり返す。
デニスが吹っ飛ぶその様子をみて、私は密かに心の中に歓喜を感じた。
ーー勝った。融合なしでーー勝った!
こんなに自力でデュエルをして達成感を得たのは何年振りだろう。
アカデミアでは全く得られなかった歓び。そしてシンクロ次元でも僅かしか得られなかった魂の叫び。
「よっと……! いやぁー、お強いですねぇ ミスター。ペンデュラム召喚を見せられず、申し訳ない。もしも明日良ければ、本物のペンデュラム召喚を黒咲相手にお見せしますけど」
デニスがもぞもぞと、起き上がってくる。
「いえいえ、エクシーズを見せて頂けただけでも嬉しかったです。お見事でしたよ」
私は拍手する。
ーー先ほどの戦闘中、私のディスクには相手のディスク内を読み取る装置を装備させていた。 ーーだからあのデュエルの中で、デニスのディスク内のデータは読み取れたはずだ。
故にデニスが過去使ったカード、そしてスタンダードやエクシーズ次元や融合次元で目にしたカードをもをこれからデータを元に錬成することが出来る。
フフ、そう思えば我ながらいい仕事ができた。まだシンクロ次元内にないカードの情報、そして融合次元内で私が居なくなったあとに追加されたカードについても、これでいくらかは知ることが出来るだろう。そして、エクシーズとペンデュラムについてもだ。
あとは気取られずに撤退をするだけだがーー。
「ーー先ほど電話が掛かってきてしまったように、どうやら会議の予定が入ってしまったようなのでーーとりあえず、小切手をお渡ししておきましょう」
Jean-Michel Rogerとサインした略式の小切手を渡す。本物のトップスは一々金にケチケチしないもの。これだけの対価を渡す価値があることをしてくれて有難いものだ。
「ありがとうございます、これで仲間を探すまで飢え死にしなくてすみそうですよ」
デニスはその小切手を、礼を言いながら受け取る。ーー君からは、もっと大切な情報を頂いたから別に構わないのだがね。
「いえいえ、また困った事があれば治安維持局へとお越しください。その時は、手厚く歓迎しますよ」
右手を差出し、握手を求める。
今度はデニスはその手を、恭しく握ってくれた。
ーー全ては、計画通り。
私の真の王、そして王をも超える道は、やっと始まったのだ。
いい気分で、私はこの日を終えられるーー。
ロジェがいなくなった後、デニスはデッキの一番上をそっとめくった。
「ーー《ブラック・ホール》……ね。マストではないけど、中々惜しかった。んー、あと1ターン早くお前がくれば反撃できたんだけどなぁ。ま、しょうがないか。負けるのもサービスだしね! さて、このお金で権ちゃんにごちそうしてあげよっと!」
鼻歌交じりに、デニスは、権現坂との合流へ急いだ。
ーー明日は黒咲ともデュエルしたいし、色々やりたい事もあるーー。