遊戯王ARCーV get back in the game 作:眉キー
「ーーロジェ」
「ーーなんだ、セルゲイ」
私は帰りの車の中、助手席から後ろのシートを塞いでいるセルゲイに向かって応答する。
奴の図体はでかいので、ルームミラーを使っても後ろが見えない。
「珍しく機嫌が良く見えるぞ」
「ーーそう、見えるか? 私からすればお前から私に話し掛けてくる事のが余程珍しいと思うが。地下でいいデュエリストでも、見付けたか?」
「まぁな」
セルゲイはそう頷く。
こいつはデュエルマシン。それだけに、私が治安維持局長官であるにも関わらず、物怖じせず普通に話し掛けてくる。
ーー多少気に入らないかといえばそうでもないが、むしろそれはそれでよく、私が私として無理に敬語など使わず本音で喋られる相手だ。
ホワイト・タキのような行政評議会の老いぼれどもとやりあうような態度で普段からいては、こちらが疲弊する。
「成程、それではお前にとっても収穫はあったという事か」
「ーーそうだな」
「ならば良い。フレンドシップカップへの仕込みもしなければならない。あの黒咲隼、デニス、それに権現坂と言ったか。彼らを早急にこちらに引き込む事によって、セレナと柊柚子を手にし、ランサーズを瓦解させるーーそして、我々もデニスのディスクを解析して得られたデータから、数々のカードを量産する必要がある」
「ーーカードの量産?」
セルゲイの片目が、光った。
「あぁ。そもそも私の使う《簡易融合》。これはそもそも融合次元にしか存在しないカードだ。 それと同時に、こちらの世界にあるチューナーモンスターは、シンクロ次元固有のカード。つまり、セキュリティの使う《ゴヨウ・チェイサー》などはこちらの世界にしかない」
「ーーでは、何をするというのだ」
「決まっている、融合、シンクロ、エクシーズ。あらゆる戦い方を選べるよう、セキュリティのデッキや我々のカードのプールを広げるのだ」
「ーーそのような事をする必要は」
「では考えてみろ。お前の戦った黒咲隼。 あれがシンクロ召喚を使えるようになったと仮定してーーどう思う?」
セルゲイは少し考えたような顔になってーー。
「……美しい!」
満面の笑みでただそう、言った。
「そうだろう。だとすれば我々もさらに美しくなれるというもの。貴様にとっては悲願であったジャック・アトラスですら軽く屠れるようになれるぞ」
「ーー面白いぞ、それは。少なくとも退屈ではない」
「ーーそう分かったら、私に協力しろ。分かったな、セルゲイ」
「ーー俺はどうすればいい?」
「取り敢えずは、だ。明日ランサーズの半分と面会する。それまでは科学者どもの使うディアブロ相手にデュエルをしていろ」
「ーーディアブロ?」
「オベリスクフォース相手にぶつけるデュエルマシンだ。時間がくれば呼ぶから、後はお前の好きにすればいい」
「ーーデュエルマシンだと? そんな物なくとも、俺で充分ではないか? それとも俺の実力に疑問でも?」
珍しく、疑念を持つセルゲイ。だが、そこへ
「ーーお前には役目がある。アカデミアでのエリート、ユーリという男を討ち取る役目が。ディアブロは、デュエルチェイサーと連携し雑魚掃除を行う為のシステムだ。私がアカデミアを離反し、叩き潰すと誓ったからにはお前に是非ユーリを潰してもらわねばならない」
ーー捕食植物と言ったか。特性すら解明出来ていないが、圧倒的な強さだった。
あれを消し去るには、セルゲイしかない。奴のデュエルパワーならば、潰せる。
「なるほど。ならば分かった。お前に協力して、明日はそのマシンとやらの調整を手伝おう……美しさの為ならば、耐えてやる」
セルゲイは鼻息荒く、後ろの座席にどっかりと体重を落とした。