遊戯王ARCーV get back in the game 作:眉キー
「ーーさて、今日は地下の大会の邪魔はせず、普通にやるとしましょう……DC達への命令は、まずはセレナ達の確保だけをやっておくように最優先。そして今回は馬鹿な看守にやらせず、直接私の元へと連れてくるようにしなくては。ーー計画のミスを全てへし折る事で、より良い未来を選ぶ必要がある」
長官室に腰掛け、立体ディスプレイに小さく映るセルゲイを片目に、本日の予定を整理する。
本来ならば今日まずセレナ達の確保が成功し、徳松とランサーズの接触がある。そして明日には刑務所内で水泳大会……いや、デュエル大会が行われるはずだ。
時間の猶予はあるはずではあるが……予定を切り詰めて考えねば、悪い事も起こりかねん。
脱走を即座にされるようでは職務怠慢としか言いようがないし、捕縛隊も近いうちに強化せねばなるまい。エクシーズの対策が全く出来てない時点で、そもそも駄目だ。
……しかし本当に我ながら今までのシティの体制はザル過ぎだ。チェスで遊んでいる場合ではない。突然来た異邦人にあっさり脱出されるのは、いくらなんでも馬鹿極まりない。
えぇい……まずはこのシティの防御面を上げて守らねば、私自身の王への道が断たれてしまう……だとすれば、このままシティを要塞化して、名実ともに支配者になるしかあるまい……。
まずはこの保身の為にシティの存続を得る対策を考えよう。……コモンズに自衛の為のデュエル教育をさせるか? いや、過度な教育をコモンズにさせる事は反乱に繋がりかねん。これはダメだな。
そうなると別案として、徳松をこちらのデュエルチェイサーの教育係として招き、利用するという手もあるかーー。いやいや、奴には奴の場所がある。徳松が監獄の模範的主としているからこそ今の監獄の治安が成り立っているとも言える。徳松を外したら恐らくは脱走を企てる愚か者も増えるだろう。
ーーはて、それならばいっそ……囚人を対アカデミアに充てるか?
囚人からメンバーを選抜し、独自にシンクロ次元としてのランサーズを作るか。勝てばトップス入りという餌をチラつかせるなどすれば、まぁ……いけるだろう。
ーー私の知るアカデミアは恐らくコモンズが一人突っ込んだくらいで倒せるほど軽くはない。
だが、囚人により消耗させたところで、デュエルチェイサーに突っ込ませれば少なくともこちらの損害は減るはず。もしも囚人が敵を討ち取れれば、儲け物として考えられる。
だが何処から調達する……? ーーそうか、地下労働との選択制にすればいいのだ。
囚人の中でも飛び切り罪が重い者。それらに地下で労働を選ぶか、異次元との侵略者と戦う尖兵となり、私の部下になるかを選ばせる。それならばなんら問題はない。
そして、フレンドシップカップはその大会での篩として不足もなし。
やれるではないか。
片手でポーンをくるくるしつつ、そう結論付ける。
そうと決まれば……。
「ーー長官!」
その時、言葉と共に人が駆け込んでくる。白衣の部下だ。……セルゲイの調整を時間が戻る前の世界でもやらせていた者。
「何ですか、騒がしい。ノックくらいしたらどうです?」
「ディアブロが、脱走しました!」
「……何ィ!?」
慌ててセルゲイの居た部屋を見ると、共に調整していたディアブロが居ない。折角新たな武器の一つになり得ると思ったものが、何故。
『ーーセルゲイ!』
「ーー既に追撃に入っている。ディアブロはデュエルチェイサーのホイールを奪い、逃走している」
セルゲイのメットに通信を送ると、そうセルゲイが返してくる。どうやら、外か。通信にエンジン音が混ざるので、既にDホイールに乗っていると見える。
『何故私に連絡を取らなかった!』
「貴様は自分の都合の良い時しか連絡しないだろう」
「ーーッッ」
拳に力が入る、耳に痛い言葉だ。
『セルゲイ、奴を壊すなよ!』
「……保障は出来んな。それに、むしろ俺が本気でやっても壊れないぐらいでなければアカデミアには勝てないのではないのか?」
「ーーっ、いいだろう、やってみるがいい! 貴様に任せるぞ、セルゲイ!」
戦闘メカデュエリスト……ディアブロは私のポケットにいつの間にかあったフラッシュメモリのデータにあったもの。それを再現したものだ。
AIデータは本部PCに蓄積しているが、今のセルゲイのデータはディアブロと何回か対戦した事により認識されているはず。
セルゲイが勝てる確率は低いが……どうやるものか、見ものだが……。
いや、予定を崩されてはまずい。私はそろそろ、黒咲やデニス達へと接触せねば。
えぇい、私はなんて運が悪いのだ……!
……負けてくれるなよ、セルゲイ。