ラブライブ ー鬼纏人と響く女神の歌ー 作:ニックネームは忍者
「今日も遅くなっちゃったわ……」
ファーストライブの前日の夜、絢瀬絵里は学校から家に向かって一人歩いていた。
理由は明日の新入生歓迎会の最終確認。同じ副会長の東條希と残って途中まで一緒に帰っていたが、誰でも方向が違うので今は絵里一人だ。
「(そう言えば希からあの日の事を訊かれたわね)」
tttt
「ねえ絵里ち、少し前やけど何か怖い事あった?」
「え? 怖い事? ……特に無いけど、どうしたの? 」
帰り道……絵里と希は一緒に歩いていた。そして希はあることを質問してきた。絵里は少し前、怪物に襲われて怖い思いをしたが、あの人が助けてくれた。
余り希を心配させずに誤魔化した。
「そう? 少し前の夜に何か怪しいのをを感じてな。その怪しいのがどうしてか絵里ちにも触れたような物を今になって感じてな」
「……」
絵里は希の言葉にとても凄いと感じる。希の言う事は正直嘘を誤魔化せないことを言う。
「でも逆に絵里ちを守ってくれる存在がいるんやね」
「え……」
流石に今の言葉には絵里は驚く。そのまま希は言葉を続ける。
「怪しいのがあるけど、逆に守ってくるのもあったんよ」
「そう…なの?」
「そうや……きっと通りすがりの妖精がいるんじゃないかな?」
希は笑顔で言ってくる。絵里も笑顔で返したが、やはりあの日の事は話せなかった……話したくないと言うより話せなかったのだ。
――――約束をしたからだ。
「それじゃあ絵里ち、うちはこっちやから」
「え、えぇ……また明日」
あの黒い人との約束を……。
tttt
「そう言えば怪物と黒い人、あの日以来見てないわね……不可解な事件も起きていないし……」
バサッ
「え――」
「…………
アグゥゥ……」
突然、絵里の少し前に黒い何かが空から降りてきた。
それは全身が黒く、鰐のような体つき。腕の先には鋭い鎌があり、蜻蛉のような羽をして、顔は鰐のように口には鋭い牙が無数あった。
その怪物は以前絵里に襲ったのと種類は違うが同じ仲間に見えた。
「(逃げなきゃ!!)」
「アグゥゥ!!」
絵里は反射的に逃げようとしたが怪物は素早く絵里に近付いてきた。
絵里の目に映ったのは怪物は口を開けて右手の鋭い鎌を上に上げてる光景だった。
絵里はこのあと起きることは理解した。
「(私ここで――)」
「アグゥゥ!」
怪物は鎌を振り――
「――――見つけた」
「えっ――」
絵里は目の前の事が理解できなかった。
絵里の後ろから少し前に聴いた声が響き、その声は絵里の前に現れた。
鎌を振り下ろす怪物は後ろへ吹き飛んだ。
そしてその背中とフードには見覚えがあった。
「あなたは――」
「…………」
そして絵里は理解したのだった。
――――黒鬼だ……。
「……下がっていろ……」
「えぇ……」
絵里は後ろに下がった。
それを確認した黒は起き上がった怪物と向かい合った。
「やっと見つけたぞ」
「グゥゥ……」
黒は一言呟き、構える。怪物も構えるが警戒しているのかにらみ合いが続いた。
そして先に動いたのは――――
「…………」
黒だった。
「アグッッッッ!!」
黒が先に動くと怪物は鎌を構え、黒が近付くと鎌を降り下ろした。
たが黒は降り下ろした鎌を避けて左足で怪物の脇腹に蹴りを当てる。
怪物には当たったが、怪物は動かず、立ったままだ。まるで効かないかのように。
「グァッ!」
怪物は黒の無防備を見たか右手の鎌で切り刻む。
「くっ」
黒は無防備の体勢だが左足を後ろ回転しながら下がった。
「グアアァァ……」
「……」
体勢が悪かったのか、左肩に鎌を軽く切り刻まれた。怪物も切り刻んでいることに鳴いていた。黒は傷を気にせず前を向いた。
「アグッ!」
怪物は黒にそのまま切り刻む為に突っ込む。それに対して黒は太ももの側面にしまってあるナイフを取り出した。そのナイフは絵里がこの前見たものとは違い、少し大きくコンバットナイフの形だった。
黒はナイフを構え怪物向けた。
「くらえっ!」
「アッグッ! ゥゥ……」
そのナイフは素早く怪物の身体を切る。その攻撃に怪物は怯み黒は腕や足に高速に切り刻む。
「アグゥ!」
「ッ!」
だがナイフでは怪物は致命傷まで負わせず怪物は黒にタックルする。黒は後ろへ吹き飛ぶ。そして怪物は羽を広げて空へ飛ぼうとする。
「逃がすか!」
黒は逃がさない為にもう一本少し前に使ったナイフ――ファイティングナイフを取り出し怪物に投げる。
「アグッ!」
だが、怪物はそのナイフを鎌で弾き返し空へ逃げる。
「絶対に――――」
「あ――」
黒はコンバットナイフを仕舞い追いかける。
絵里は声をかけようとしたが遠ざかり、一人になる。
「…………?」
絵里はどうしようとかと考えていたがある物を見つける。
――――黒が投げたナイフだ。
「これ……」
絵里はそのナイフを見つめ、手に触れる。
手に触れた時――
『おばあ様……私――』
『あなたは頑張ったわ……だからもう――――』
「ッ!――――」
絵里はわからなかった……。
ナイフに触れた時に見えたあの光景を……
「…………」
絵里は触れてあるナイフを掴み持ち上げる。
「あの人……あっちに走ったよね……」
絵里はナイフを鞄のサイドに入れて黒が走った方へ追いかけた。
――――――――――――――――――
「貴様は……何者だ……」
「え……」
場所は土手の水際……。
黒鬼の黒は蒼鬼のライに殴りかかった。
「う……」
「…………」
黒はライの頬に殴る。ライは後ろへ倒れる。
「ま、待ってください! 僕はあの怪物とは――ッ!」
ライは立ち上がり黒に話し掛けるが黒は立ち上がったライの顔に左足蹴りをする。ライは右腕を上げで守ったが腕に痛みを感じた。
「(さっきの鎌で腕が――仕方ない!)」
「う……」
ライは左手で黒の右足を掴み足を持ち上げる構えにする。右手も掴み黒をライの後ろの地面へ叩きつけ、草むらの方へ投げる。
黒は草むらの方へ飛ばされたが体勢を直し着地する。そしてライの方へ素早く近付く。
「(早いが……そこ!)」
ライは黒の歩いてくる方向を探しその方向へ左手の拳を向けるが黒はギリギリに避ける。ライは右手で殴りかかるが黒はライの体に連続に拳をぶつける。
「うッ!(何だ……この動き…速い!)」
ライが思ってるなか、黒は蹴りを交互に肩や腕に攻撃してきた。
「ッ!」
「…………」
ライは攻撃の間の隙を探し、左手で黒の首を掴もうとする。
……が、黒は左手からコンバットナイフを取り、ライの腕に切る。
「くっ!(ナイフ……だと…!)」
「…………」
ライはナイフだとわかったが、黒はナイフでライの身体中に切り刻む。
いくら鎧でも肩の痛みや黒の攻撃の格闘とナイフにかなりのダメージが入る。
「ッ!」
黒はライの身体正面にキックをして後ろへ飛ばされる。
ライは立ち上がるが、すぐにバランスが崩れ前へ傾き膝が地に付く。
「う……(立てない……)」
「…………」
ライはもう戦えない状況ではあるがナイフをしっかり握って近付いてくる。
――――――――――――――――――
「ハァハァ……」
海未は走っていた。
ライが黒い怪物と空へ飛んでいき、その方向へ走っていたが何処に行ったのかがわからなくなったのだ。
「ライ……一体何処に……ッ!」
海未は何処に行くかわからなくなっていたが突然突風が吹く。
風がやむと海未は前を向いた。
その方向は一つの道で風が吹いていた方向だ。
「この方向は――」
海未はその方向へ走り出す。どうしてかわからないがライはこっちにいると感じたのだった。
――――――――――――――――――
「ど、どうしてです……僕とあなたは同じ人を守る存在ではないのですかっ!」
「…………」
ライは黒に問い掛けるが黒は黙ってライに近づく。
そして黒はライの前に立ち止まり答えた。
「……貴様の力は何なんだ…」
「何…… ?」
ライの言葉に黒はナイフを振り上げる。
そしてライの頭は下に向き、目の前が真っ暗になる……。
――まだ何もわかっていない……
この力も……怪物も……自分自身を……
「ライ……」
「――――――!!」
サッ! ――――
「なん……だと…」
ナイフを降り下ろす筈だった黒は脇腹を押さえて後ろに下がり膝を付く。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
一方ライは息切れをしていた。圧倒的に不利であったのに黒が膝を付いる事に理解していなかった。
左腕が横になっていた。
手は拳になっていなく、“何かを握っている”形になっていた。
「僕は一体……どうなっている?」
ライ自信も目の前が真っ暗になっていたのに目の前の状況がわからなかったのだ。
「貴様……ッ!」
黒は息を切らせながら立ち上がりライを見つめる。まるで怒りを感じさせる声だ。
そしてナイフを仕舞い、右腕を前に曲げ、左手で腕輪に触れようとする。
パシュッ!
「…………」
黒の足元に何かが弾いた。黒は足元をしばらく見つめてる。
そして黒は腕を下げ、後ろへ下がる。
「ま……待ってください!」
「…………」
ライの言葉を無視し、黒は後ろの草むらへ下がる。
闇から現れ、闇へと消えていったのだ。
「…………」
そしてライは鎧を解除して立ち上がり、黒が見つめていた足元を見る。
「……弾、痕?」
その形は弾痕のような形だった。だがどうしてこの形ができるのかライはわからなくなったのだ。まるでこの場所に三人目がいた証になる。
「ライッ!」
「海未……か?」
ライが考えていたが海未が土手を降りて近付いてくる。
「ライッ! 大丈夫ですか?」
「海未……どうしてここが?」
ライはまず海未がどうしてここまで来たのかがわからなかったのだ。空を飛んで見失う状況だったのに。
「えっと……私もどうしてかわかりませんが……風が教えてくれました」
「風?」
その言葉にライは弾痕と風のキーワードが頭に浮かんだのだ。
「それよりも怪我は……」
「大丈夫だよ海未、ちゃんと歩けるよ」
鎧を着ていた時はとても痛みを感じたが鎧を解除するとその痛みはだいぶ無くなったのだ。
まるで鎧が痛みを持っていったのだ。
「それよりも明日は大事な日だから早く帰ろう海未」
「はい……わかりました」
そう言ってライと海未は歩き出す。だが海未はライの表情が気になったのだ。
「(いつもと何かが違う……きっと何かがあった筈です……でも――――無事で良かった)」
海未は気になるが、今はライが無事でいる事に安心したのだった。
「……何とかなったか……」
二人の様子を見ていた第三者の男……紅い鎧を纏い二つの銃口がある銃を握ってる男……レオン・エーカーだ。
「さてと……アイツ何処にいった?」
紅鬼は風にまみれ姿を消す……。
――――――――――――――――――
「ハァ……あの人……一体何処に……ハァハァ……」
その一方、絵里は黒を探していた。
あの後、黒い人を追いかけていたが気が付けば裏路地でわからない道に入り迷子になっている状況だ。
「もうこんな時間……帰るしかないわね……」
絵里は拾ったナイフを持ち帰るのは嫌な気分であるが仕方なく帰るのだった。
その時……
「あれ? こんな場所にどうしたの?」
「え……」
絵里は振り返ると一人の男が立っていた。
いや、その後ろに二人立っていた。三人ともだらしない格好をしてピアスを着けて、一人はタバコを地面に捨てた。三人は絵里を見ていた……顔よりも身体を見ていた。
「うおっ! 可愛い子! 俺の好みだわ」
「おいおい落ち着けよ……まだ焦るな」
「この時間に一人は……家でかな?」
「道を間違えただけです……失礼します」
「ちょっと待てよ!」
絵里はとにかくこの三人から離れたく、遠ざかろうとするが前に居た男が絵里の肩を掴んだ。
その同時に絵里は嫌な匂いをした。とても香水が強い匂いで鼻がいたくなりそうだった。
「そんな怖がらないで、一人じゃ危ないよ。俺たちが道案内してあげるよ」
「結構です、一人で帰れますので……」
そう言って絵里は捕まれていた肩を離して離れるが、すぐに手首を掴まれる。
「!? 離してくださいっ!! 」
「そう嫌がるなよ……すぐ済むからさ」
「そうそう、楽にしてれば痛くしないよ」
「今日は何だかいい日だな!」
三人は下品な笑いをして絵里を囲んだ。
絵里は何とかして逃げようとするが男三人に女の子一人が何とか出来る状況ではなかった。
「い、嫌――――」
「おい……」
男三人が現れた道からもう一人の男が現れた。男は一人の男が捨てたタバコの火を靴で消して睨み付けた。
「男三人が女の子に何してる……」
「あ? 何だテメェ……妙な格好しやがって……」
「!? (あの人――)」
現れた男は黒い鎧とスーツを着て、黒いフードを被っている男……絵里が探していた男――――黒鬼の早乙女黒だ。
「おいテメェ……邪魔するんだったら後悔すんぞ!」
「そうだな! とっととどっか行け!」
「コスプレみたいな格好しやがって何だテメェはよ!」
男三人は絵里から離れ黒へ近付く。そして黒は言った。
「……状況から見て女の子に嫌がる事をしていた……女の子も証言してくれる……ならいいよな」
黒はそう言ってコンバットナイフを出した。男たちは笑っていた。
「何だお前? コスプレにその玩具はよ」
「マジだっせー!」
「うける!」
男たちは笑っていたが黒はナイフを壁に捨てられてるのか掛けられてるかわからないがレールの柱にナイフを上から下へと下ろす。
バチバチバチバチ……
「傷だけではすまさないぞ、中に火傷もして傷の痛みと熱さの痛みの二つが入るぞ……」
「――――!!」
男たちは逃げ出した……ナイフが恐ろしかったのか痛みが恐ろしかったのか……
「……実際こんなことしたら俺も不味いんだがな……」
「あの……ありがとうございます」
黒は一人呟いた中、絵里は黒にお礼を言った。
「君は何故ここにいる」
「それは……あなたに渡す物があったのよ」
絵里は鞄から黒が投げてそのままにしたナイフを黒に出した。黒は少し見つめ、ナイフを戻した。
「感謝する。もう遅い時間だ、早く帰るんだ」
「…………」
絵里は帰りたいが道がわからない……この年で迷子は恥ずかしいのだ。
「…………こっちから行けばおそらく君の知っている道に出る……ついてこい」
「……」
絵里はそのまま黒に着いていったのだった。
――――――――――――――――――
「(本当にこの人は何者かしら)」
絵里はあの時と同じように歩いている。
だが、今回は亜里沙が居なく二人で歩いている。
すれ違う人とは会うことなく、明るい方向へ歩いている。
「すまないな…」
「え……?」
黒は絵里に謝っていたが絵里はどうして謝るのかがわからなかった。
「俺がナイフを拾っていれば君は早く家に帰れて、怖い思いをする事は無かったんだ……すまない」
「そ、そんなこと……私が勝手に拾ったのだから…」
確かにナイフを拾っていればすんだことなのだが、それよりも大事な事があったのだ。
「それにあなたが助けに来てくれたのだから私は平気よ」
そう……絵里は怖い思いをしてしまったが、通りすがりでも助けてくれたのだ。
「そうか……」
黒の言葉に二人は無言のまま歩いた。
そして一つの通りに出てその方向の先は人の多い道だ。
「ここまで来れば大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫よ……ここまでありがとうございます」
絵里は黒に頭を下げてお礼を言って大通りへ進む。
「最後に質問をいいか」
「? えぇ……何でしょうか?」
絵里は少し前へ進んだが、黒に質問され絵里は後ろへ振り向く。
「…………ナイフに触れて何か感じたか」
「え……」
絵里はどうしてその質問をするのか疑問を感じた。
ナイフに触れて……その質問をどうしてするのだろうか。
「特に何もなかったわよ」
「…………そうか…うッ!」
「? あの……大丈夫ですか?」
黒は脇腹を抑えて痛みを堪えていた。絵里も突然の事に側に寄った。
「(あの時の奴の行動……一体何が……)……大丈夫だ。なるべく早めに帰るんだぞ」
「あのッ!!」
絵里は叫ぶが黒は後ろを向き、絵里とは反対の方向へ進んでいった。
「…………」
絵里も黒の姿が見えなくなるのを確認し、大通りへ進んだのだった。
――――――――――――――――――
「特に何もなかったか……」
絵里と離れた黒は一人歩いていた。そして一人の男が現れた。
「やっと見つけたぜ……何処にいたんだ?」
男は紅鬼のレオンだ。
「落とし物を拾いに言っただけだ……そっちは――」
「おいおい……俺が言いたいことはわかるよな」
レオンは前半笑っていたが、後半は鋭い目付きで見た。
「…………わかっている……もうしない」
「……ならいいさ……それよりも――――」
レオンは黒にまだ訊きたいことがあったが、黒は姿を消した。
「やれやれ……この様子だと――……俺も明日に備えて休みますか」
レオンは鎧を解除して、家に帰ったのだった。
「……それよりもアイツを膝を付かせる状況にするとは……何があったんだ…」
――――――――――――――――――
・・・
・・・
・・・
・・バシャンッ!
・・・バチャ、バチャ、バチャ・・・
「……アグゥゥ…」
……その一方、川へ落ちた怪物は陸に上がった。体がふらつき、倒れそうになるが膝が付きバランスを保つ。
「…………
オ、ノ……レ……オニ、ドモ…ガ…」
――――デスペリア、デスイーターは言葉を発したのだった……。
――――――――――――――――――
次回予告
とうとう迎えたファーストライブの日。
ライたちは講堂に生徒を集める為、最後の大詰めに入っていた。
「負けてられないな……」
そして今までの努力を見せるのだが……
「レオン先生……」
そして蒼と紅と黒は――――
次回『ファーストライブ』
その歌を聴いた蒼は……