まどろみの日常に訪れた転校生。
中立のコロニーでは珍しくもないコーディネーターの彼は、持ち前の穏やかさで友達を作っていく。
そんな平和の中、切り落とされた戦いの火蓋。

親愛と憎悪。
生存と殺戮の中、束の間の休息での一幕。

少年たちは友情を取るのか、それとも隔意となるか。



※コーディネーターのオリ主が出てきます。
※ナチュラルというか少年組をディスってます。
※キラは出番なし。
※短いです。
※続きません。



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決別、あるいは始まりの一幕

 

 

 

 

その日は一度にたくさんの事があった。

本当に、たくさんの事が。

 

 

 

 

少年たちにとって、初めての戦争。

巻き込まれてしまった戦争。

中立の筈のコロニーで当然始まったソレは、軍人と民間人を区別する事無く、

ナチュラルとコーディネーターを差別する事無く、

大人と子供を選別する事無く、全てに等しく降りかかった。

 

為す術も無く、流されるままに流されて、

彼らは今、広大な宇宙を漂う、ちっぽけな艦に乗っている。

その艦―――アークエンジェル―――は、今回の戦争の原因とも言えたが、

彼らにはその艦に乗る以外に選択肢は無く、また選んでいられる様な状況でもなかった。

 

長い様で短い戦闘が終わり、彼らには漸く休息の時が訪れた。

張り詰め続けていた緊張の糸が解れ、誰しも気が緩んでいた、そんな時。

 

アークエンジェルに“保護”された少年たちは食堂に集まり、

ぐったりした姿勢で体の力を抜き、今回の事件について其々ぼやいていた。

その中で、ふと紡がれた言葉。

 

 

「キラには『大変だった』、で済んじゃうんだよな。」

 

 

カズイの何気ない言葉が、少年たちの口を閉ざす。

彼の顔に、羨望と嫉妬が見え隠れするのも仕方が無い。

何故なら彼はナチュラルで、キラはコーディネーターなのだから。

しかし彼らは、そんな事は承知の上でキラと友達になった。友達になった筈だ。

だから、その嫌な沈黙を破る様に、少年の一人が口を開く。

 

 

「何が、言いたいんだよ?」

「別に……。」

 

 

サイの咎めるような問いかけに、カズイは顔を伏せて返答を避ける。

元々、深い考えや言いたい事があって紡いだ言葉ではない。

ただ、ふと漏れただけの言葉だった。

 

しかし、その言葉を“何気ない”で済ませる気の無い者が一人居た。

ナチュラルばかりのこの艦に、たった“二人”のコーディネーター。

その内の一人が。

 

まさに運命の日である今日、たった十数時間前にキラたちの学校転校してきた少年。

彼らと友達になったばかりのルシル・ラグナが。

 

彼は人見知りしない性格と穏やかな物腰で、すぐに彼らと仲良くなった。

何より、小さなコロニーでは数少ない同世代のコーディネーター同士という事で、

キラとは会ってすぐ打ち解けた。

 

その彼が、今や美しい顔に皮肉気な表情を湛え、カズイを睨み付けていた。

ゆっくりとイスから立ち上がり、彼は口を開いた。

 

 

「なら俺が言ってやるよ。

 『流石コーディネーター。僕たちナチュラルとは違うね。』」

「な……っ!?」

 

 

今まで静かに温和に微笑んでいたルシルの口から、突然沸いて出た悪意に驚くサイたち。

中でもカズイは顔を青くする。

そんな周りの様子を眺めながら、ルシルは更に続ける。

 

 

「そして次に、こう言うんだろ?

 『あいつはきっと心の中で、僕たちをバカにしてるんだ!』」

「そんなっ……そんな事ない!!」

 

 

耐え切れず否定の叫び声を上げるカズイ。

しかし、ルシルの口は閉ざされない。

 

 

「お次は

 『人に造られたバケモノのくせに』か?」

「ルシル!言い過ぎだぞ!!」

 

 

サイが堪りかねたように制止の声を上げるが、やはりルシルの言葉は止まらない。

 

 

「そして、最後はこう言うんだろ?

 『蒼き清浄なる世界の為に!!』」

「……っ!!」

 

 

その言葉にカズイは青い顔を真っ青にし、視線を床に這わせる。

他の者たちも程度の差こそあれ、視線を宙に巡らせて誰一人ルシルの瞳を見る事はない。

 

彼らの様子を無表情に見遣り、誰も何も言わないのを確認し、ルシルは出口へと歩を進める。

そして、扉をくぐる瞬間、ぽつりと一言漏らした。

 

 

「―――何だよ。友達になれたと思ったのに……っ。」

 

 

その言葉は、今までの悪意に満ちた言葉より、確実に少年たちの心を震わせた。

それが恐怖なのか怒りなのか、羞恥なのか悲哀なのか、

絶望なのか、はたまた希望なのか、それは彼ら自身にも解らない。

ただ、確かにその一言は彼らの心を響かせた。

 

この後、彼らがどう行動するかは、彼らの気質次第。

彼らが再びルシルに“友”と呼んで貰えるのか、それとも“敵”と呼ばれるのか、

今はまだ判らない。

 

しかし、どうやら悪い未来にはならないようだ。

何故なら彼らは、考えるより先に行動していたのだから。

“友達”に謝るべく、後を追いかけるという行動を。

 

 

 

 

 

 







 何故今になってSEEDなのか?
 何故この場面なのか?
 何故短編なのか?

 ……。

 TV観てた時、ちょっとムカついたんだよね……。
 まあ、それだけの話。





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