デジモンぶらすと!   作:アドゥラ

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というわけで番外編第一話。本編のその後の感じで書いていますが、本編がこうなるというわけでもないのでご了承ください。


カノンIN文月学園 その1

 春。それは出会いの季節。新しいことが始まる節目の季節だ。まあ、こと日本においてはと付くのだが。

 新学期を迎える今日、清々しい朝であることには違いない。いい天気だ。ああ、快晴である。それが、あの野郎が暗躍さえしていなければだが。

 あの野郎……人の振り分け試験のデータ消しやがって…………絶対に汚職を暴いてやる。

 証拠がないから捕まえようがないが、絶対に生まれてきたことを公開させてやるからな。

 

「フハハハハハ!!」

「カノン、魔王みたいな感じになってるよ」

「おおっといけないいけない……冷静に冷静に。よし。それじゃあドルモン、留守番頼む」

「おーけー。適当にやっておくよ。あと、マキナが近いうちに遊びにくるって言ってた」

「分かった……あー、アイツらに見つからないようにしないとな。厄介だし」

 

 なんで嫉妬だけであそこまで阿呆になれるのか。いや、学生のうちはそういった経験をしておくほうが……やっぱやり過ぎだわアレは。

 とにかく新学期だ。隣の部屋に住んでいる同級生はどうせ寝坊しているか何かで遅刻するだろうが……また今年もクラスメイトになるよしみだ。起こしてやろうか悩んだ結果――面白そうだから放置で。

 

「橘カノンはクールに去るぜ」

 

 2007年、4月。僕は高校二年生となった。月日が流れるのは早いもので、デジタル機器の進歩と共にデジタルワールドでも色々なことが起こった。まあ、その話は色々と割愛させてもらおう。一言でいうならば……マジ疲れた。

 モバイル事情もそろそろ目まぐるしく変わる予感がしており、そのうちまた大きな騒動があるんだろうなと思う今日この頃。また借り出されるのはご勘弁願いたい。イリアスの方も忙しいんだけどな……

 しかしお台場から離れて一人暮らし……いや、ドルモンもいるから二人暮らしか。たまにマキナたちが遊びにくるから案外賑やかなものであるけど。前にその光景を隣に暮らしているバカに見つかって色々と大変だったこともあるが……まあそれも割愛しておく。

 と、そこで電子音が鞄の中から聞こえてきた。なんだろうかと取り出してみると、ディーターミナルにメールが届いたらしい。

 

「ヒカリちゃんからか……そういえば、みんなは今年から高校生だっけか」

 

 ヒカリちゃんとタケルに大輔。3人は同じ高校に入ったんだっけ? ありあの小学校の入学式を見に行ったけどそっちは確認していなかったのわすれていたわ。コンビニには寄ったから京には会ったんだけど、なんだかんだで連絡を取り合っている都合上会いに行くのが億劫に……

 とりあえず入学おめでとうと。こっちは教頭がアレな人物で汚職の証拠を探していたりとまあいつも通りな日常ですが問題ありません。そちらも頑張ってくださいと……その直後、それ絶対変な日常だよとツッコミのメールが届いたがわかりきったことである。愚痴らないとやっていられないのだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 アポカリモンとの決戦でデジモンは多くの人の目に触れた。そして、ディアボロモンとオメガモンの戦い。デーモンやベリアルヴァンデモンの引き起こした事件。その他、諸々の出来事。

 今ではデジモンという存在はネットで調べれば色々と知ることが出来る時代となった。パートナーデジモンを持った人たちも増え続けており、あと10年もすれば完全に認知されるのではないかと思う。今は確か……1万超えたあたりで数えるのはやめた。光子郎さんも『数えるの馬鹿馬鹿しくなっていくのでコミュニティサイトを立ち上げてデジヴァイスを使った認証システムか何かを搭載しておきます』と言ったきり、件のサイトのことは聞いていない。

 一応ページを見た限り運営はしているのだが……各国に散らばっている上に数も多いので色々と面倒になったなコレ。とりあえず言語や地域ごとに分ける方向にシフトすることを進言しておこう。

 

「おい橘。前を見て歩け」

「ん? ……ああ、鉄人先生。おはようございます」

「ハァ……まったくお前は。成績はいいくせに時折休んでいなくなったり、教師を敬わなかったり。ある意味あいつらよりも問題児だぞお前は」

「――そんな馬鹿な!?」

 

 あいつらよりも問題児とはまことに遺憾である。秀吉はともかく他の3人と一緒にしてほしくない。

 今日だって生徒では一番はやくに来たはずだ。開校5分前ぐらいだろう。

 

「いや、速すぎるだろう……それに、真面目というなら休まず学校にこい」

「いや、こっちも色々と忙しいんですよ。それに、例の件もありますし学園長は納得していますよ」

「その結果いらないことに首を突っ込んで試験結果があんなことになったんだろうが」

「あ、あはは……またうっかりやっちゃいまして」

 

 昔からここ一番とかで大ポカすることがあるから笑えないが。一度死んでいるだけにホント笑えない。笑っていないとやっていられないが。

 僕の表情を見て鉄人――西村先生はまた一つ溜息をついた。

 

「とにかく、お前はFクラスだ。一年頑張れよ」

「いざとなったら転校してまた転入し直します」

「するな!」

 

 冗談ですよ。

 もらった封筒を開けずに校舎の中に入る。

 ここ、私立文月学園は一風変わったシステムを導入した学校だ。デジモン関連の何かが関わっているかもと思い、調査のためもあって入学したのだが……

 デジモン案件ではなかった。件のシステムはデジタルワールドのパワーソースになっていた世界にはかかわりがあるようなのだが、デジタルワールド自体には関わっていなかったことが分かった。もっとも、今後影響がないとも限らないので調査は継続している。

 ここの学園長はデジモンについても調べており、こちらからコンタクトをとった結果色々と取引をしている。まあ、デジモン関連の事件の解決などだが。

 この学園で導入されているシステム――試験召喚獣システムは、電子データの空間投影プログラムか何かとオカルト的要素、召喚術が偶然融合してしまったことで誕生したシステムだ。

 テストの点を召喚獣の生命データとして扱い、互いに戦ってクラス間の戦争を行い教室を奪い合う。そうやって学力向上を図っているのだとか。

 このあたりデジモン関連の事柄じゃないかとも思っていたのだが……ウィッチェルニー関連の方だった。それも生命データというより、魔法プログラムだけが混ざっているらしい。危険度はごく低いものだったのは幸いだけど、まだまだ未知の部分が多い。

 

「マキナも心配するほどではないと思うけどって言っていたが……」

 

 この学園の生徒、変人奇人、変態に大馬鹿に度し難いバカ。頭はいいのにぶっ飛んだ性癖の持ち主やノリの良すぎる連中ばかりだからちょっとしたことで大騒動になりかねないんだよなぁ……去年は色々な意味で大変だった。

 しかも、僕の体質が影響して召喚獣があんなバグを起こすなんて思いもしなかったし……

 

「何とかマキナの戸籍を作ってアイツも入学させて巻き込むか?」

 

 学歴なしだとこっちの世界だと不便だし。まあ、将来的に必要かと言われると微妙なところなのだが。僕もマキナも色々と忙しくなりそうだし、早いうちに色々と進めておいた方がいいかもしれない。

 と、色々と考えているとAクラスの教室が見えてきた。

 クラスはAからFまでがあり、それぞれがランク分けされている。年度末に振り分け試験が行われ、その成績で自分の入るクラスが決まる。ちなみに一年の時は普通のクラス分けだ。召喚獣を用いた戦争、試験召喚戦争も行われずに普通の学園生活を送る――まあ、周りの面子のせいで普通ってなんだっけ? って気分だったけど。

 

「うわぁ……Aクラス引くわぁ」

 

 リクライニングシートって奴だろうか? それに冷蔵庫が備え付けられたり色々と設備が充実……いや、おかしいだろ。ココはホテルなのか?

 ちなみに、本来ならば僕もAクラスレベルではあったのだが……ある一人のクソ野郎のせいで試験結果のデータが消えたためFクラスとなってしまった。いつか絶対ブッ飛ばす。

 とりあえず他の教室ものぞきながら進むが……Bクラスは金あるなぁって感じの教室。C、Dはまあ普通な感じ。Eは過疎地域はこんな感じだろうか? って感じの教室だった。

 そして、Fクラスはというと――――いや、ないわー。

 

「……ないわー」

 

 そしてまだ誰も来ていない。この、畳にちゃぶ台の教室には。窓ガラスはひびが入っているし、畳もこれ腐ってるんじゃないだろうか?

 流石にこれは色々と問題だと思う……あのクソ野郎が横領でもしているのではないだろうか? どうせFクラス連中は気が付かないだろうとか思っていやがるとか――しかし、墓穴を掘ったな。というかバカなんじゃないだろうか。どうせ腹いせか何かだとは思うけど、僕をFクラス入りにするよう仕向けておいて気が付かれないとでも?

 …………そういや、ベクトルは違うけどこの学校バカばっかりだったわ。

 

「席順は……適当に座れということかね」

 

 とりあえず一番前の窓側あたりでいいだろう。

 椅子はない。座布団があるのみ。しかも綿がほとんど入ってねぇ……

 本当に転校してしまおうか……でもなぁ、この学校のこと放っておくとデジタルワールドに何かありそうで怖いんだよなぁ……痛いのは慣れているからいいけど、気疲れも多いし……

 とネガティブな思考に陥っていると教室の扉が開いた。Fクラスに入る人物でこんな朝早くにくる人がいただろうか? 僕の知っている範囲ならほとんど遅刻寸前か遅刻してからやってくる人なんだけど。

 まあその疑問も教室に入ってきた人物を見て解けたが。

 

「おや、まだ一人しかおらんようじゃのう……やはり早くきすぎたようじゃ」

「おはよう秀吉。部活の朝練をしようと思ったら今日は無かったの忘れてたな」

「ははは、その通りじゃ――ってカノンではないか!? なぜFクラスに!?」

 

 木下秀吉。この学校では数少ない常識人の部類に入るであろう1人。去年できた友人の1人でもある。

 見た目は中性的――いや、女性よりも可愛らしい容姿でありながら、男性だ。双子の姉がいて容姿は瓜二つなのだが……二卵性なんだよねと疑いたくなる。

 もう一つ特徴的なのはその爺言葉。男らしさを模索した結果なのだろう……ギャップ萌えの要素にしかなっていないが。まことに悲しいことに。

 

「何やら不名誉な気配が……」

「あっはっは。気のせいだ。それと、僕がここにいる理由だけど……試験結果のデータが消えた」

「…………それは、何といえば」

「別に笑ってくれてもいいよ。この程度腹をぶち抜かれたり右腕を斬りはなされるよりましだし」

「それは比べていい事柄ではないじゃろう……」

 

 冗談ぐらいにしかとられていないだろうが、悲しいことにどちらも実話である。

 

「まあそんなわけで、あと一人二人ぐらいは成績優秀者がいるんじゃないかな? 風邪をひいて休んだりしたとかインフルエンザとかでこれなかった人とかいるかもしれないし」

「なるほどのう……確かにいそうじゃな。しかし、酷い教室じゃのう……ワシは自業自得じゃが」

 

 秀吉は頭が悪いわけではないのだが、部活に専念し過ぎて勉強がおろそかになっているのである。ちなみに演劇部。どこの怪盗だと言わんばかりの声帯模写が可能というびっくりスキルを持っている。

 

「後はどのような者たちがくるんじゃろうな?」

「明久、雄二、康太、あとは美波あたりはFクラスだろうな。雄二はわざと点数調整してFクラス代表を狙っていると思う」

 

 去年のクラスメイトたちを頭に思い浮かべるが……どいつもこいつもスペックはいいのにどこか残念な連中なのだ。というより、全員性格に難ありという評価が付く。

 

「あとは須川だな。失恋数トップの」

「……ほっといてあげた方がいいと思うのじゃが」

 

 顔は中の下、成績は下の下――のさらに下。性格は下の下。それでいて自分はモテると思っている。まあ、数学の船越先生なら貰ってくれるだろう。うん。

 なんだ秀吉、首を必死に横に振って……それだけはやめろ? 大丈夫だ。流石にそれは僕もやらない。

 

「さてと……今日中に間に合わせないとなぁ」

「いきなりパソコンを取り出して……教師に見つかったら怒られぬのか?」

「大丈夫。学園長から許可は貰っている。授業中にまでは使わないし」

「前から思ってったのじゃが、おぬし何者なんじゃ……」

 

 まあ、色々とあるのよ色々。

 今年も8月にはお台場に帰るし、光が丘のこともあるから調整が大変なのだ。ゲートも前よりは開きやすくなっちゃったから事故のないようにしないと……他のえらばれし子供も色々と忙しくなったから自由に動けるのが実質僕だけってのも厳しいものがある。

 

「まあなんにせよ、退屈しない日々がまた始まるんだろうなぁ…………」

 

 この数十分後、退屈しないどころか騒がしい日常が幕を開けることになるのだが……それをまだ、僕は知らなかった。というか知りたくもなかった。




時系列は飛ばし飛ばしだったりしますが、とりあえず冒頭だけ。
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