まあ早く来すぎたため色々と作業を進めることに。
デジメンタルの製作も追いついていないし……っていうか、作ったとしても使えるデジモンが今後どれだけ増えるかがわからない。
D-3やデジヴァイスXの所有者も以前と比べると着実に増えてはいるのだが、やはり初期型が一番多いのが現状なのだ。この周辺のパートナーデジモンがいる人にも会ったことはあるが、やはり初期型だったし。
「必要が無ければいいんだけど、備えておくに越したことはないからねぇ」
「おぬし、どんなタイプ速度をしておるのじゃ」
秀吉が呆れているが、そんなレベルじゃないのだ。並行して魔法使いながらだから実際は手を四本動かしている感じに――って、これじゃ余計に変態的か。言わない方がいい。
「さて、作業はここまでにしておくか」
「いつも何をしておるのか……それでよく学校の成績が落ちぬの」
「まあ高校生の範囲は小学生の時に終わらせたし」
「…………何か理不尽なものを感じるのじゃ」
自分で言うのもなんだが、僕は理不尽の塊だからね。
中学生の時の事件でさらに拍車がかかったし。いや、古代から帰ってきたあたりですでに人間卒業しまくっていたから今更だったわ。
「何十回も死にかければ楽勝よ」
「本当、おぬしは一体何者なのか……」
「まあ気にしない方がいいってね。数年もすれば知る機会もあるんじゃないかな?」
「それはどういう……」
と、そのタイミングで教室のドアが開く。
眠気眼で入ってきたのは、荒々しい野生動物の様な印象を与え少年――友人の一人、坂本雄二だった。
「なんだ、まだお前らだけか」
「おはようさん。雄二、今日は一人で登校したのかい?」
「明久もムッツリーニもまだ寝てるんじゃないのか」
いや、そっちではなく……
「きりし――」
ガッと口元をふさがれ、雄二は必死の形相で僕を睨む。
瞳からするに、なんで知っていやがるんだってところだろう。
「分かったわかった。あえて言わないでおくよ」
「マジでなんで知っているんだお前……」
「何の話じゃ?」
「いずれ分かる。いずれな……運命からは逃れられないのだから」
「何不吉なこと言ってんだお前は! むしろお前の性格なら理不尽な運命なんて変えてやるって奴だろうが!」
「確かにそれは僕の座右の銘さ。だけどな、雄二君は素直になれないのが原因で」
ガッ! ←雄二が僕を蹴る音
ガキンッ! ←なお、体の硬化中
「――ッ、お前金属板でも仕込んでいるのか!?」
「別にそんな風には見えんがのう」
「そんなもの仕込んでなんかいませんっての」
魔法で体を金属化しただけだ。普段は滅多に使わないが、痛がる雄二の顔が面白いのでつい使ってしまった。いや、反省反省。
しかし、一つ言うならばそこらへん確定し過ぎていて変えようがないのだ。赤い糸的なアレである。なのでどうあがこうが雄二は人生の墓場一直線なのだが……面白いから黙っていよう。
「コイツ、相変わらず謎すぎる……」
「とまあそんなあたりで次が来たぞー」
「はぁ? 次って……」
ガラガラと扉を開けて入ってきたのは土屋康太。通称ムッツリーニ。とんでもないドスケベである。
「…………誠に遺憾である」
「事実だろうに」
「というかおぬしらはなぜ毎回顔を会せるとその会話から始めるのじゃ」
「…………様式美」
「お約束、的な」
「ハァ、もういい。それにしてもムッツリーニはいつもより早いな」
「…………これでも遅くなった。やはり、最初が肝心」
「あんまりアレなことしているとしょっ引くぞー。警察の知り合いいるからな僕」
伊織経由だからちょっと遠いが。いや、一条寺も知り合いがいるって言っていたからそっちからでもいいか。他の知り合いだと癖が強すぎてアレだし。
僕の政府への連絡網だと悪乗りしかねない人もいるからなぁ……ハァ。
「むしろ一介の高校生がなんで国家権力に話を通せるのかが知りてぇよ俺は。お前去年も色々とやっていたみたいだけど、どうやって知り合ったんだ?」
「うーん……無人島で一か月黒髪ロングの美少女と過ごしてから出直してくれ」
「なんじゃその話は」
「…………むしろ俺が挑みたいッ」
しかし、雄二は顔を真っ青にして震えるのみだった。いや、気持ちはわからないでもないが。
僕も今のアイツと無人島で二人きりになったら色々とまずい予感がする。せめて18になるまで待ってほしい。あと、アイツまだ戸籍がないのを忘れていないだろうか。
「雄二、セッティングできないこともないが――どうする?」
「やめろ!!」
「分かった。僕も面倒だしやめておくよ」
「面倒じゃなかったらやっていたのかよ……」
「あの人に借りがあるんだよね、少しばかり」
「最悪だ……最悪の二人がタッグを組んじまっていやがる」
大丈夫だって。本当に少しばかりだから。デートプランの相談に乗るぐらいだから。まあ、面白そうだから黙っているけど。そのうち役に立つ日が来るはずだと僕は睨んでいる。
と、そんなこんなでさらにもう一人追加。
ポニーテールを大きなリボンで作っている活発そうな女子が入ってきた。なお、一部が――やめておこう。関節技を決められたら流石に痛い。
「何よ、まだアンタたちだけなの?」
「島田か、おはようさん」
「おはようなのじゃ」
「…………おはよう」
「明久ならまだ寝てるぞー」
「べ、別に吉井のことなんて気にしてないけど!?」
いやあ、去年のクラスメイト的には分かりやすすぎてね。
彼女の名前は島田美波。ドイツからの帰国子女で日本語がまだ苦手なためFクラスに入ってしまった子だ。頭は悪くはないので、日本語の読み書きができたらC以上には入れたと思うけども。
あと、アイツと一人称が同じなため個人的には時折ヒヤッとする。
「そういえば葉月と橘って知り合いなの?」
「まあ、ちょっと前に色々とね」
「ふーん……アンタっていつも色々と隠しているけど、危ないことに巻き込んでいるんじゃないでしょうね?」
「むしろ僕はその危ないことから遠ざけるために色々と奔走しているんだけどね。ホント大変なんだよこっちも……雄二、試召戦争やるんならどこかで学校に来れない日があるかもしれないから注意してね」
「おう……っていうか、そこまで学校あけて大丈夫なのか?」
「平気平気。学園長お墨付き」
「だから何者なのよアンタ」
肩書はなんていえばいいんだろうか。デジタルワールドの門番? 調整員……迷子相談所、色々と呼ばれているからなんていえばいいのかわからん。
学園側のことも召喚システムのことにも少し関わっているから色々と便宜を図ってもらっているだけだし。まあ、持ちつ持たれつってわけで。
ちなみに、先ほどの葉月というのは美波の妹の島田葉月ちゃんのことである。実は、この付近のパートナーデジモンのいる人ってのはこの子のことだ。出会ったのはデジタルワールドでのことだけど。
「それにしても、よく俺がいきなり戦争するつもりってわかったな」
「雄二のことだから点数調整して代表になると思ったからね。どうせ男のツンデレをこじらせてこくは――」
再び口にガッとされる。
「だから、言うな」
「……」
コクリと、一つだけ頷いておいた。
◇◇◇◇◇
まあ、後に続く生徒たちだが……これまた男ばかりである。
女子でFクラスに入る方が珍しいとはこれまた偏っているなぁ……一輪の花が島田の時点で色々とあれな気もするが。いや、僕のように何らかの事情でFクラスに入る人もいるだろうから今のところ一概には言えんのだけども。
お隣に住んでるアイツはまだ来ていないみたいだが……どうせギリギリか少しアウトになってから来るんだろうな。そんなことを考えていた時だった。雄二が教卓のところに立ったのは。
「……何してんだアイツ」
「これから自分の兵隊となる生徒をみるのじゃと言っていたぞ」
「指揮官にしちゃダメなタイプだと思うんだけどなぁ……傭兵とかやらせたら似合うだろうに」
「分からなくはないが……」
と、益体もない話をしているとガラガラと扉が開いた。先生かと思ったが――入ってきたのは、緩い顔をした男子生徒だ。というかよく見知った顔である。
「早く入れウジ虫野郎」
「何を言うんだ貴様!」
「お前ら相変わらずだな……」
入ってきた生徒の名前は吉井明久。僕の住んでいる部屋の隣に住んでいる。あと、とてつもないバカだ。勉強を手伝ったりもしたのだが……案の定Fクラスに入っていた。
色々な事情で恐ろしい補習時間もあったはずなのになぜFクラスに入ってしまったのか。
「僕はとてつもなく悲しいぞ、明久よ」
「何を心にもないことを……雄二もなんで教卓からみんなを見回しているのさ」
「俺がこのクラスの代表だからな。それと、カノンには文句は言わなくていいのか? 馬鹿にされているぞ」
「……そっちはもう慣れた、っていうか言い返せないから仕方がないよ」
そりゃ勉強手伝ってFクラス入っているんだから当然である。
事情があるやもしれんが、何をやらかしたんだろう。世界史とか結構な点数取れるんじゃないかと思ったんだが……
「間違えて、名前のところにアレキサンドロス大王って書いちゃって……」
「君は実にバカだなぁ」
「ぐうの音も出ないッ」
一応成長はあったんだろうが、毎度何かやらかす男である。なお、女装が似合いそうな男子生徒ランキング一位であることは黙っていよう。
ちなみに秀吉は反則としてランキングに入っていない。
「そのランキング、おぬし二位じゃよ」
「ガハッ!?」
「…………諸行無常」
「ちなみに、ムッツリーニは三位じゃ」
「…………バカなッ!?」
やはり、去年の文化祭で女装コンテストなんてやったのが原因なのか!? Tと呼ばれている生徒が暗躍していることまでは突き止めたのだが、それ以上はまだわかっていない。というか該当者が多すぎて犯人が不明すぎる。
『アキちゃん、可愛かったよなぁ』
『ああ、いいよな』
『いい』
『まて、カノちゃんも捨てがたいぞ』
『俺はコウミちゃんが……』
「「「悪寒がする……」」」
僕ら三人は肩を抱きかかえて、震えあった。
というかなんてクラスメイト達だ。色々と腐っているんじゃないか?
雄二も苦笑いしながら席に着いたところで、先生がやってきた。なんだか覇気がない感じだが……大丈夫だろうか。って、福原先生か。変わり者の多い文月学園の中で最も普通な人なんだが……いかんせん、影が薄い。
「えー……私が担任の福原です。それでは、皆さんそれぞれ自己紹介をお願いします」
というわけで席順で自己紹介をすることに。
といっても特に変わり映えがあるわけでも――いや、ゴメン。このクラス舐めていたわ。変わり映えがあり過ぎる。色々とドギツイ人も多い。なんか眼帯つけた中二病卒業できてない方もいるし、金髪で鼻提灯をして寝ている女子が――って他にも女子いたのかよ。
「なんじゃ? 見かけぬ顔じゃのう」
「…………かなりの美少女。だが、俺も見たことがない」
「なんでアイツがいるんだよ……」
「知り合いのようじゃが、何故そんな苦虫をかみつぶした顔をしておるのじゃ」
「雄二にも後で言っておくが――アイツ、明久よりもバカだぞ」
秀吉とムッツリーニは信じられないと言った顔をしたが、本当のことだ。
語学だけは優秀なのだが、他が圧倒的にアレなんだよ……頭はいいのに勉強ができないので、仲間内からは勉強のできない天才と言われている。大輔あたりの担当だったんだけど……忘れてた。バカ過ぎて勉強が一周遅れだっただけで僕と同い年だった。
「あの、羽原さん?」
「ふぇぇ……ああ、自己紹介ネー! ミーは羽原アリス。よろしくデース……zzz」
そのまま再び眠りだすアリス。これ、マキナを連れてきた方が良かったかもしれない。
ちなみにアリスと知り合ったのはチョコモン事件の時なのだが、それについては大輔達の方が詳しいし、ちょうどその時他に色々とやることがあったから顛末ぐらいしか知らないので割愛する。いつか語る機会もあるだろう。
「大丈夫なのか、あやつは」
「後で知り合いに連絡とって対応聞いておくわ。なんでこの学校にいるんだよアイツ……」
数少ないデジヴァイスXの所有者が同じ学校にとか……光子郎さん、連絡来ていなかったんでしょうかねぇ…………あとで問い詰めておこう。
まあそんなこんなで自己紹介は続くわけだが、島田が趣味は明久を殴ること(まあ照れ隠しだろうが、物騒である)とか言い出したり、ムッツリーニが特技と趣味で盗撮盗聴とか言い出しそうになったりと色々とあったが、特に問題はないのでスルーしておく。
いちいち言い出したらキリがないのだ。この変人の巣窟では。
「えっと、吉井明久です。気軽にダーリンと呼んでください!」
『『『ダーリィィィンッ!!』』』
「……すいませんでした。普通でいいです」
「アイツは何をしているか。そして、島田……ぷふっ」
「――ッ!?」
小声で言っても僕の耳には聞こえるぞ。しっかりダーリンと言っていたことを。顔を真っ赤にして鬼の形相で睨まれているが……うん、からかいすぎたか。
しかし明久は明久で想い人がいたり――と、そんなことを考えたのがフラグだったんだろうか。
「す、すいません遅れてしまいました!」
ふわふわとした印象の少女――学年トップクラスの成績を誇る、女子生徒が息を切らせて教室に入ってきたのは。
その少女の名前は姫路瑞希。明久の想い人である。
「…………これ、また騒がしい一年が始まるんだろうなぁ」
「んみゅ? 懐かしい声が聞こえたと思ったらカノンじゃないかデース! お久しぶりデスね」
「ああ久しぶり久しぶり」
「イッツ淡白ッ」
だって君の相手すると疲れるし。
ハァ……前途多難すぎる。色々と癒しが欲しくなってきた。
羽原アリスさんは02からの追加キャラになります。
カノンがいることでえらばれし子供になる子もいるわけで、この子はその一人になります。
次回更新があるとすれば、バカテスではないかもしれない。