皆さんは、闇は好きですか? 闇は嫌いですか? 闇は苦手ですか? 興味ないですか?
自分は、闇は好きであり、同時に嫌いです
闇自体は好きです。だけど、闇に潜んでいるアイツらは嫌いです。近づいてきたモノを引きずり込むアイツらは好きになれない
水と油? いいえ、違います
熔鉱炉と原子炉です
これは、今日も平和な鎮守府での出来事である。
「ぽい~」
「どうしたんだい?」
「あっ、時雨」
「提督さん見なかった?」
「提督なら、島風と一緒に工廠まで競走してたよ」
「わかったっぽい」
工廠を目指して走り出す夕立とそれを見送るジムキャノ、じゃなかった……時雨だった。
「提督、はっやーい!」
「お前が俺に勝とうなど、未だ早い!」
「ムゥ」
「俺に勝ちたければ、質量を持った残像が出現するくらいの速さを手に入れろ」
「いや、無理だから」
「無理だと思うから無理なんだ! 出来ると思ってやれば出来る筈だ! タブン」
「物理的に無理があるから!?」
「しかも、最後の方に小さな声でタブンって言ったよ!」
「気のせいだ」
「絶対に気のせいじゃないよね!?」
「全く煩いな~」
「いやいやいや、そうさせてるの提督だからね」
「そこまで言うなら、お前らのフィールドである海上で競走してやるよ」
「……提督って人間だよね?」
「当たり前だ」
「……どうやって海上で勝負する気なの?」
「そりゃ~お前」
「アレに乗ってに決まってるだろ」
狐の指差す先には、空中分解に定評のある蒼い機体が工廠の入口に立っていた。
「オゥ!?」
「流石の俺も生身で水の上に立ったりや、走ったりは出来ないからな」
「……う、うん。そ、そうだよね。提督も一応人間何だよね」
「一応って、お前な~。俺はこれでもれっきとした人間だからな?」
「………」
「おい、何で黙る」
「……普通の人が艤装を装備した状態の私たち艦娘に一対一で勝てる時点で本当に人かどうかを疑うレベルなのに対して」
「複数を相手に余裕で勝ってる提督を人として見るのはムリがあるから」
「やれば出来る。可能性は無限大だ」
「誤魔化せてないよ」
「……そんなことよりも、さっさと勝負するぞ。夕張が待ちぼうけ状態になってるしな」
「え? あ、本当だ」
そんなやり取りをしながら夕張の元まで走っていく二人。
「到着~」
「ってなわけで、早速やるか」
「オゥ!」
「っとその前に、夕張~」
「はい、なんでしょう? 試し撃ちご所望ですか?」
「取り敢えず、審判任せた。そして、撃たなくていいから」
「わかりました」
「ぽい!」
「「!?」」
「……お前いつからそこにいた?」
「いま来たっぽい」
「「(き、気付かなかった)」」
「まあいいや」
「「(いいんだ)」」
「んじゃ、気を取り直して」
「いざ、尋常に勝負!」
「速きこと島風の如し、島風には誰も追い付けないよ!」
狐は機体乗り込んで、島風は艤装を装備して、スタート地点に移動した。
「それでは、両者位置について」
「ヨーイ、ドン!」
夕張の合図と共に同時に走り出す両者。最初のうちは互角だったが、徐々に差が開き始めた。
『えー、実況解説の夕張です』
『最初は互角かと思われていた二人ですが、徐々に提督と島風選手の差が開き始めました。このまま島風選手の敗北で終わるのか!』
「負けないよっ!」
『おーっと、島風選手なんとここで、提督が作った試作型V.O.B.を展開!』
「ホウ、ソレを使うか。よろしい、ならばこちらも本気を出させて貰う!」
「リミッター解除!」
『提督が本気を出したことにより、縮まった差が再び開き始めたー!』
「ポンコツのクセに速い!?」
「ソレを使っときながら貴様はそのポンコツにも追いつけないか?」
「機関最大! 今度こそ提督に勝つ!」
「
『ちょっ、提督! それフラグ! 死亡フラグですから!』
「死亡フラグを乱立させれば、生存フラグに成ることもあるから問題ない」
『確かに死亡フラグを乱立させといて当たり前のように生きてる人も居ましたけど。大丈夫なんですか?』
「大丈夫だ。問題ない」
『(更にフラグ建ててる)』
「追いつけないッ!」
V.O.B.から火が吹き出した。試作型でまだ耐久テストをしていないのに、無理をさせ続けたせいでエンジンが暴走を始めた。
「エンジントラブル!? そんな!」
「このままじゃ爆発しちゃう!?」
『暴走警報!?』
『少佐! エンジンカットを!』
夕張は狐のネタを理解してか、然り気なくノッテいる。
「この歴史の真実は」
「何人たりとも消せはしない」
その言葉を言い終わると狐の乗っていた機体と、島風の使用しているV.O.B.が同時に爆発した。
『少佐ーーー!!』
……狐死す。
………
………………
………………………
「人外染みた強さを誇っている提督でも、流石にもこれは死んじゃいました…よ……ね………?」
夕張は狐が今の爆発で死んだと言い切れずにいた。心の何処かで、提督なら普通に生きてるんじゃ?という考えが頭から離れないために。
「提督さん、死んじゃったっぽい?」
「たぶん」
「おいお前ら、勝手に殺すな」
「「!?!!?」」
「幽霊じゃないですよね?」
「生きてたっぽい?」
「お前ら、そんなに俺を死んだことにしたいか?」
「え、いや、だって、乗ってた機体爆発してましたよね」
「まぁ、盛大に爆発したな」
「ならなんで生きてるの?」
「そりゃお前、爆発する瞬間に脱出したからに決まってんだろ」
「「(いつの間に脱出したの?)」」
「そんなことよりも、コレ入渠させといて」
そう言いながら、途中で回収したんだろう島風を夕張に押しつけた。
「あ、はい」
夕張は押しつけられた島風を持って、入渠ドックを目指し走っていった。
「んで、夕立」
「ぽい?」
「お前はいったいなにをやろうとしてんのかな?」
「バトルだよ。今日こそ提督さんに勝って、夕立のお願いを叶えてもらうっぽい」
「……諦めろ。俺はロリコンになる気はない」
「ムゥ~」
「剥れてもダメだ」
「……なら、一緒にお風呂に入るっぽい」
「憲兵=サンのお世話になりたくないから却下だ」
「……そしたら、何なら良いっぽい?」
「う~ん、そうだな~」
「今日の夜一緒に寝るとかはどうだ?」
「……わかったっぽい」
「よし、掛かってきな」
「最高に素敵なパーティーしましょ」
今度は狐と夕立による闘いが始まった。
「HAHAHA ! その程度の攻撃が当たると本気で思ってるのか? ぽいぬ!」
「だから、夕立は犬じゃないっぽい!」
「そこだ!」
「もぅ、バカぁ~。これじゃ戦えないっぽい」
が、すぐに決着がついた。
「取り敢えず、お前もさっさと入渠ドックに行ってこい」
「ムゥ」
「はいはい、拗ねんな」
「………」
「ハァ~、一緒に寝てやるから機嫌直せって」
「……一緒にお風呂」
「それは無理な」
「………」
「だから拗ねんな」
「………」
「………」
「………」
「……ハァ~」
「お~い、しぐ」
「お風呂入ってくるっぽい!」
狐が時雨の名前を呼ぼうとしたら、慌てて入渠ドックに走っていく夕立だった。
「提督、呼んだ?」
「ああ、呼んだな」
「何か用かい?」
「夕立からのお願いで、今日はお前らの部屋で一緒に寝ることになったから」
「用はそれだけだ」
「そうなんだ。わかったよ、提督」
「(提督と寝れるなんて、幸運艦の名は伊達じゃないみたいだね)」
狐にバレないように心のなかで喜んでいた。
次の日から、お願いすれば提督が一緒に寝てくれるかもしれないといった噂が艦娘たちの間で、まことしやかに囁かれ始めるのであった。
今日も(狐を含む一部が暴走しなければ)平和な鎮守府の一日が過ぎていくのであった。
「さ~て、これからの身の振り方どうすっかな~」
「俺もずっと此処で提督をしとる訳にもいかないし、どうしようか」
「(此処での生活は楽しいっちゃ、楽しいんだけど、ホントどうしたもんかね~)」
狐は独り、これからのことを誰もいなくなった堤防で空を見上げながら思案に暮れていた。
「まぁいいや」
「好きなように生き、好きなように死ぬ。それが一番俺らしいな」
「つ~訳で、これからもアイツらをカラカウか」