艦娘と自称狐   作:矛盾者

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人はよく、死にたいと口にするが、本当に死ぬ勇気なんてないのに死にたがる。それは何故?

本当に死にたいなら、周りを巻き込まずに一人で死ねばいいのに、何で周りを巻き込む?

そんなに死にたければ、まだ死にたくないと、生き続けたいと渇望するヤツを巻き込まずに勝手に死ねばいいのに何故巻き込む?





第28話

 

 

それは、何気ないやり取りから始まった。

 

「暑いな」

 

暑いと愚痴を溢しているのは、本日の秘書艦である木曾。

 

「そりゃぁ、夏だしな」

 

少しバテながら答える狐。

 

「そういや、夏といえば何があるんだ?」

 

「ん~、かき氷、アイス、花火、海水浴、夏祭りとかだな。そして、最後にどうしても外せないのがある」

 

「何だ?」

 

「肝試し」

 

「へ?」

 

「肝試し」

 

「いや、聞こえてるからな」

 

「ってな訳でやるか」

 

「やるって何を?」

 

「話の流れからして察しろよ」

 

「……あー、夏祭りでもするのか?」

 

「残念ハズレ、無念後年また来年、サイナラバイバイ。そして、ヤツは二度と帰ってくることはなかった」

 

「帰ってこない時点でもう死んでんじゃねえのか?」

 

「くっ、木曾よ!」

 

「……何だ?」

 

「……お前は……何故………何故死んだんだ!? まだお前で新技、ハイパースイングラリアットボンバーアルティメットサンダーホールドを試していなかったのに!」

 

「いまのってオレのことだったのかよ!? ってか、ちゃんとお前の目の前に居るよな!?」

 

「しかも、後半のハイパーなんたらっていったい何なんだよ?!」

 

「まあいい、過ぎたことを気にしていても何も始まらない。俺は、俺達は進まなきゃならいんだ。あの壁の外の世界をこの目で見るまでは進み続けると決めてるからな」

 

「アイツとの約束もあるし」

 

「さっきからオレの扱いが酷いくないか! そして、俺達って他にも居るのかよ!? しかも、壁の外の世界って何だよ!? そんで、誰と何を約束したんだよ?!」

 

「さぁ、ヤツらに目にものを見せつけてやるか。いくぞ、野郎共!」

 

「ヤツらって誰だよ!? そして、野郎共って言ってるけどお前しかいないからな?!」

 

怒濤のツッコミを繰り広げるも、狐は止まらない。

 

「目標! 前方約三千万海里の味方多分がいないであろう場所!」

 

「目標が適当過ぎるだろ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

色々と面倒になってきた木曾によるダイレクトアタックが決まった! 狐は大ダメージ受けた。

 

「……なんという強力な一撃。これが、ツッコミスキルだとでもいうのか。……ガクッ」

 

狐は何かを言いながら倒れた。木曾のレベル上がった。

 

おめでとう、木曾は新しくツッコミ一閃を覚えた。

 

「……提督?」

 

「………」

 

「……死んでないよな?」

 

「………」

 

「まさか本当に死んじまったのか?」

 

「………」

 

「お、おい提督!」

 

「……返事がない、まるでただの屍のようだ」

 

「……お前が言うのかよ!?」

 

「ちょっまっ!」

 

木曾の追い討ち(ツッコミ)がキレイに鳩尾に決まった。こんな具合にくだらないやり取りが暫く続いた。

 

「し、死ぬかと思ったぜ」

 

「そのままくたばれば良かったのにな」

 

「辛辣だな~」

 

「それよりも、結局何すんだ?」

 

「ん? ……あぁ、肝試しだ」

 

「……マジか」

 

「もしかして、幽霊が怖いのか?」

 

「別に幽霊は怖くないが、提督が関わると怖いを通り越して、不気味としか言えない」

 

「……お前、喧嘩売ってんのか?」

 

「今までのしてきたことを振り返ってみろよ」

 

「過去は振り返らない主義なんでな」

 

「よし、一発殴らせろ」

 

「だが断る」

 

「歯ぁ喰いしばれ!」

 

木曾は右ストレートを繰り出した。

 

「危ねぇな~」

 

だが避けられた。

 

「ちっ、避けんなよ」

 

「あんまりフザケんなよ。面倒だし」

 

「お前が言うなよ」

 

「ちょっと黙ろうか」

 

「お前がな」

 

「よし、ツラ貸そうか」

 

「断る」

 

「胸を揉みしだかれるのと、今すぐ表に出るのとどっちがお望みだ?」

 

「別に俺は前者でも構わんぞ。いや、前者の方を選べ」

 

「……先に外に行ってるぞ」

 

木曾は自分の胸を手で隠しながら、狐をまるでゴミを見るような目で執務室から出ていった。

 

「やれやれ、冗談の通じないヤツだな~」

 

そんな事を呟きながら執務室から出て、先に外で待っていた木曾を脇に抱えて何処かに移動を開始した。木曾は抱えられる際に抵抗したが、効果はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IN大本営

 

 

「……なあ」

 

「何だ?」

 

「何でオレは大本営に拉致られてるんだ?」

 

「大本営で肝試しをするからに決まってるだろ」

 

「いや、態々大本営でやらずに普通に鎮守府ですればいいだろ」

 

「おいおい、それだと元帥を巻き込めないだろうが」

 

「何で当たり前のように海軍のトップを巻き込む気で話進めてんだよ!?」

 

「知らなかったのか?」

 

「何を?!」

 

「元帥と言う存在は、常に()と言う名の存在に振り回されるのが世の中の常識と言うことを」

 

「絶対にそんな常識は世の中に存在しないからな! その内に元帥の胃に穴が開きそうだな」

 

「世の中に存在しないならば、作ればよかろう。そして、胃薬の用意も忘れずにな」

 

「胃薬用意するくらいなら、最初から巻き込むなよ」

 

「だが断る。それだと面白くないからな」

 

「(絶対に近い内に元帥の胃に穴が開くな)」

 

「そんじゃ、電話するか」

 

「………」

 

狐は携帯を取り出して何処かに電話を掛け始めた。そして、木曾は何処と無く遠い目で明後日の方を見ていた。

 

 

狐sideout

 

 

 

 

ジリリリリリィ───……ン

 

ある部屋の固定電話が鳴り響いた。

 

「もしもし?」

 

『私メモリアルサンダー』

 

「そこはメリーさんじゃないのか?! そして、メモリアルサンダーとはいったいなんじゃ!?」

 

電話相手の最初の一言目に対して思わずツッコんでしまった。

 

『私いま、大本営前にいるの』

 

「何、どういうことじゃ?」

 

相手はツッコミを無視して自分がいまいるらしい場所を告げた。それに対してどういう事かと聞き返すも、

 

『ツーツー』

 

一方的に通話が切られた。

 

「……悪戯電話か」

 

深く考えずに悪戯電話として片付ける事にしたようだ。そして、仕事を再開した。

 

ジリリリリリィ───……ン

 

少しして、また、電話が鳴った。

 

「……もしもし?」

 

『私メラトニン』

 

「さっきと名前が変わっておるぞ!?」

 

『私いま、防波堤で釣りしてるの』

 

「……そ、そうか」

 

『ツーツー』

 

何と言えばいいかわからずにいたら、通話が切れた。

 

「……何だったんじゃ、いまのは?」

 

ジリリリリリィ───……ン

 

また、電話が鳴った。

 

「……もしもし?」

 

『私メイル』

 

「ネットバトルでもしておるのか?」

 

『プラグイン!』

 

「いまから!?」

 

『ツーツー』

 

今度は何処にいるか等を告げずに切れた。

 

「……何をしたかったんじゃ?」

 

ジリリリリリィ───……ン

 

電話が鳴った。

 

「……もしもし?」

 

『私メザイア』

 

「……そうか」

 

もはや、突っ込む気力すらなくなっていた。

 

『私いま、海で釣れたたい焼きを持って廊下を移動中なの』

 

「……待て、何で海で鯛じゃなく、たい焼きが釣れるんじゃ!? おかしいじゃろうが!」

 

「完全に常識が仕事しとらんぞ!」

 

『ツーツー』

 

流石にもいまの発言に対してツッコミをいれるも、その頃には切れていた。

 

ジリリリリリィ───……ン

 

再び電話が鳴った。

 

「………」

 

が、電話に出る気になれない様子である。先程から電話に出る度に、内容が可笑しな方向に向かい続けていれば誰しも進んで出ようとは思わないだろう。

 

ジリリリリリィ───……ン

 

だが、そんな思いとは関係なしに電話が鳴り続けている。

 

「……もしもし?」

 

諦めて電話に出た。

 

『私メアリー』

 

「……そうか」

 

『私いま、父の仇である幼女と戦闘中なの』

 

「幼女が幼女しない世界に帰れ」

 

『ツーツー』

 

ツッコミをいれた所で切れた。

 

「………」

 

ここまで来ると誰が電話を掛けてきているのかが何となく予想出来ていた。その人物を浮かべ、無言で頭を抱えていると、

 

ジリリリリリィ───……ン

 

また、電話が鳴り響いた。それを見て完全に諦めた雰囲気で電話に出た。

 

「……もしもし?」

 

『私メリーさん』

 

「マトモか」

 

『私いま、執務室前で』

 

そこで一度、言葉を句切り。

 

『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を準備してるの』

 

「全然マトモじゃなかった!」

 

マトモだと思っていたら、マトモではなかった為にツッコミをいれた。その直後、執務室の扉が盛大に爆発した。それを見ていた部屋の主は、

 

「(扉の修理代ってそれなりにするんじゃがなぁ。今度の扉は爆破されんように、鋼鉄製にでもしようかのぅ)」

 

次の扉をどうするかを考えていた。そして、爆破される前までは扉が存在した場所から入ってきた男を見て、内心でタメ息を吐きながら今日は何をしに来たのかを質問した。その質問に対して返ってきた答えが、

 

───肝試ししようぜ、元帥

 

 

 

元帥sideout

 

 

 

 

 

「今日は何をしに来たんじゃ?」

 

「肝試ししようぜ、元帥」

 

「断る、帰れ」

 

「そんなつれない事言わずに一緒に肝試ししようぜ~」

 

「煩い帰れ」

 

「なら肝試ししよぜ」

 

「帰れと言っとるじゃろうが」

 

「まったくノリが悪いな~」

 

肝試しする事を諦めたのか、狐は執務室から出ていった。元帥は窓から狐が連れの艦娘と共にラバウル基地に帰っていくの見ていた。

 

「やっと帰りおったか」

 

狐が帰った事を確認した元帥は、途中の仕事を終わらせるべく再開した。

 

 

狐が帰ってから暫くして、大本営に毎日欠かさずに悪戯電話が掛かってくるようになった。精神的に疲れてきた元帥は、疲れを癒す為、色々と忘れる為に温泉旅行に出掛けるのであった。

 

 

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