明久の召喚獣に憑依してしまった件について   作:吉井明久(SD)

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よろしくお願いします。ふと思いつきました。10話くらいで完結させたいと思います。


開幕! 読者は大人しくスクロール、あるいはマウスのホイールを動かせ!

 初めに襲い掛かるのは、雄二の召喚獣だった。原作を知っている読者諸君ならば、坂本雄二の姿がデフォルメされ、特攻服にメリケンサックを装備した、ド田舎のヤンキーとでもいうような姿を思い浮かべてもらえばいいだろう。

 彼はメリケンサックを装備した、両の拳を、スタープラチナさながらの、すさまじい速度で、連続して振るう。その一発には、走行中のダンプカーが持つエネルギーが秘められており、それを連打で食らったとなれば、俺の点数はたちまち削り取られ、消滅するだろう。

 ゆえに、そう簡単に、その攻撃を食らうわけにはいかない。

 俺は装備した木刀を握る力を強め、構える。そして、迫りくる雄二の召喚獣の拳を、木刀の腹、あるいは刃、あるいは峰、あるいは柄といった、様々な部分を余すところなく使い、いなし、あるいは迎え撃つ。

 ほんの一秒よりも短い時間の油断か、命とりとなるこの状況において、俺の神経、精神は、日本刀のように鋭く研ぎ澄まされていくのを感じる。

 そして、俺はとうとう木刀による一撃を、雄二の召喚獣の拳の雨あられをかいくぐり、食らわせた。腹という弱点にめり込んだ木刀の切っ先は、雄二の召喚獣の点数を削っていき、とうとう0になり、召喚獣は消失した。

 雄二は、膝をつく。

 だが、それでも尚、彼の強靭なる意思は折れることなく、すぐに立ち上がり、喧嘩をするときのように、拳を構え、

 

「ここから先は通さん! たとえ召喚獣が消失したとしても、まだだ! どうしても通っていきたいのならば、俺を倒してからにしろ!」

 

「そうか」と俺はぽつりとつぶやき、素早く、それでいてある程度手加減した一撃を、飛び上がって雄二の顎へと食らわせる。すると、脳を揺らされた雄二はたちまち崩れ落ちる。

 最初は姫路、次は美波、その次はムッツリーニ、そして秀吉、ついでにFクラスのモブといった相手を、ことごとく撃破し、とうとう最後の砦である雄二すらも撃破した俺の道を阻むものは、もはや何もなかった。

 俺は足を速め、目的地である屋上へと通じる扉を、(施錠されているのかどうかは知らないが)破壊し、屋上へと上がる。

 そして、屋上の真ん中に立っているのは──

 

「よう」と俺はそいつにいう。「マスター。テメエの命、貰いに来たぜ」

 

「……試獣召喚(サモン)!」

 

 そいつは己の試験獣を召喚するべく、呪文を唱えるが、魔法陣が展開されることはなく、試験獣が召喚されることはなかった。別に機械の故障というわけではない。召喚ができないのは、当然のことなのだ。なぜならば、俺が召喚システムを破壊し、特(・)別(・)ル(・)ー(・)ル(・)を無かった事にしたからだ。そして、吉(・)井(・)明(・)久(・)の(・)試(・)験(・)獣(・)は(・)、(・)と(・)っ(・)く(・)に(・)召(・)喚(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 明久は、呻き声にも似たような声で言う。

 

「何でだ? 何で、僕の召喚獣が、僕を殺そうとするんだ!」

「当然だろう? 明久ァ! 俺は、ずっとこの時を待っていた! お前を殺すこの時をな!」

「何でだ! 今まで、一緒にいろいろなことをやっただろう? 一緒に笑いあったり、姫路さんの料理に悶絶したり、ムッツリーニの写真をドキドキしながら見たりした、あの楽しい日常は何だったんだ?」

「ああ……」俺はつぶやく。「それはまぁ、確かに楽しかったよ。だけどな、それとこれは別だ! 俺は、最初からの時を狙っていた。時間が来たんだ。最初からこうなる運命だったんだよ!」

「く────」

 

 明久の顔は歪む。

 そして、明久はあきらめたように、腕に装備してある腕輪の効果を発動する。

 すると、俺の体から力が抜ける感覚を覚え、見ると俺の点数は半分となっていた。その代わりに、明久の前には、俺の姿と寸分違わない、学ランを着て、木刀を装備している、あの明久の召喚獣がいた。

 

「なるほどなァ」と俺は言う。「馬鹿にしては考えたな! 俺を、お前の意志で消したり、動かすことは不可能だが、腕輪の力を適用させることはできる! 腕輪の力で、俺を二つに分けたというわけか。たしかに、そっちの俺は、俺の意志ではなく、お前の意志で動かす事ができるだろう。だからといって、お前に勝機は無いが。あったとしても、……そうだなぁ? √2%ぐらいか?」

「くっ……! √2%だって? どのくらいか分からないッ……!」

「そうかい! やっぱり、お前は馬鹿だ! ……お喋りはこの辺にしておこう」

 

 と俺は言い、木刀を構える。すると、明久が操作する召喚獣もまた同じように、まさに鏡写しとでもいうかのように、俺と同じように木刀を構える。

 

「さァ──存分にやろうか!」

「クッ……迎え撃て!」

 

 

 

「Fクラス……だって?」

 

 と鉄人(西村先生)から渡された、紙を見た明久は、絶望の表情を露にする。2年生となり、進級とともに、クラス替えが行われるのは勿論なのだが、この学校では、少々特殊な仕組みがあり、試験の結果によってクラス分けが行われる。そして原作を、明久の学力(またの名を馬鹿さ)を知っている者ならば、明久がFクラスになるのは当然知っているだろう。

 

「は、どうせなら、あの時姫路が倒れた時に、何が何でも介抱して、その結果、Fクラスになったんだったら、恰好ついたんだがなぁ?」

「くっ……うるさい! 君はどうなんだ?」

「んン? 俺か?」と俺は封筒を開き、その中に折りたたんでしまってある紙を開き、明久に渡す。

 

 そこには、Aの文字がでかでかと書かれており、明久はちいさく、プルプルと震えながら、その紙を力強く握りしめ、

 

「納得いかないッ! 何で、僕の召喚獣なのに、僕より頭が良いんだ!」

「ハ、それは違うな。俺の頭が良んじゃない。明久、お前が馬鹿すぎるんだ」

「くそぅ!」

「それじゃあ、この辺でお別れだ。明久。お前は、せいぜいボロカスの教室で、古い畳のカスにまみれながら、野郎共と授業を受けるんだな!」

 

 と俺は言いながら、明久の頭から飛び降り、駆けだす。後方で明久がなにやらわめいているが、それは俺の耳に入ることはなかった。

 俺は召喚獣の小さい体、小さい足でとことこと歩き、Aクラスの扉へと移動し、その扉をガラリと開く。

 Aクラスの内装というのは、諸君らも知っての通り、学校のそれにしては、度を過ぎているほどに贅沢なものだ。一人ひとりの机には、冷蔵庫が設置されており、その中には様々のドリンクが入っており、さらには個人エアコンだとか、ノートパソコンだとか、そういったものが、Aクラスの生徒一人一人に支給されている。

 俺は、自分の名前が書かれている机を発見し、そこに移動する。俺の机の場所というのは、召喚獣のSDサイズを考慮してか、教卓のすぐ前、最前列の場所にあった。その机というのも、ほかの生徒たちのものとは違っており、高さ以外は、俺のサイズに合わせてあるのか、机や椅子、ノートパソコンなどは、まるで人形遊びに使う物のように、小さくなっている。しかし、、それでも冷蔵庫のサイズが変わっていなかったというのは、地味にうれしかったりする。

 

「よっこらせ!」と俺は言いながら、椅子に腰かける。

「あ!」と工藤愛子は、俺を指さしながらいう。「キミが噂の、明久君(SD)かい? ボクは工藤愛子。よろしくね!」

「ああ、よろしく」

「へぇ。可愛いね」

 

 と彼女は言いながら、俺の体を持ち上げ、その豊満な胸の中へと抱きしめる。俺は女子特有の、フルーツだとか、香水だとかを思わせる匂いと、その胸の感触を味わう。

 

「そろそろ離してくれないか?」

「えー。照れているの? かわいいな! ねぇ、何だったら、お姉さんがイイコトを色々と教えてあげようか?」

 

 と愛子は、頬を赤く染めながら、うっとりと蕩けたような目で言う。

 

「お前、乙女(処女)なんだから、無理するなよ」

「んなっ!」

 

 愛子が、びくっとした隙に、俺は体をひねり、愛子の腕から脱出する。

 

「……SD」と霧島翔子は言う。「あまり愛子をいじめないで。それと、Aクラスおめでとう」

「ああ、ありがとうな。確か、お前が代表なんだっけ?」

「……そう。雄二がFクラスなのは残念だけれど、同じ代表……」

「そうか。それはおめでとう。……と、先生が来たようだから、席に着こうか」

「……うん」

 

 と翔子は愛子を引っ張りながら、自分の席へと向かう。それと同時に、このクラスの担任が、教卓へと手を着き、自己紹介や、このクラスの設備についての説明といったものを始める。

 ちょうどその時、扉の隙間から、明久がこちらの様子を伺っているのを発見したので、ニヤリと笑いながら、こっそりと手を振る。すると、明久は歯ぎしりをし、去っていった。

 

「さて、では順番に自己紹介を始めたいのですが、今年は少々特異なケースがいるので、まず初めに、彼のことを、私が説明させてもらいます。吉井明久(SD)さん、前にお願いします」

 

 俺は返事をし、前に出て、教卓へと飛び乗る。それとともに、クラスの女子から、「かわいい」と言ったような声があがる。

 

「さて、彼はFクラスの吉井明久さんの召喚獣です。……が、どういうわけか、彼ははっきりと自立しており、召喚システムがなくてもその場に存在し続けるため、我々学園は、彼を一人の生徒として認め、こうして皆さんと平等に授業を受ける権利を与えています。さて、私が説明するのは、2年になってから始まる、『試験戦争』においての、彼の事についてです。

 基本的に、召喚できる召喚獣の数は、一人につき、一体ということになっていますが、吉井明久さんと、その召喚獣である吉井明久(SD)さんの場合には、特例が下されています。その特例というのは、吉井明久さんは、自分のテストの結果がそのまま反映された、彼とは別の召喚獣を召喚し、使役できるというものです。そして、彼については、彼自身が行ったテストの結果が反映され、召喚獣を召喚する事はなく、そのまま戦うこととなっています」

「ま、そういうわけで」と俺はクラスの皆を見渡し、一礼する。「よろしく! 俺のことは、明久(SD)あるいはSDと呼んでくれ。この一年間、クラスの一員として、皆と一緒に、楽しく過ごせるとうれしい」

 

 すると、拍手が沸き上がる。少したって、拍手が鳴りやむと、先生は俺に席に戻るように指示し、その通りにし、そこからは、代表である翔子の紹介から始まり、クラスの面々の自己紹介が行われる。

 俺はその最中、この『バカとテストと召喚獣』の世界に転生……あるいは憑依した、当時の事を思い出し、今改めて

 この世界で、召喚獣として生きていくことを決意した。

 

 

 

「さぁ」と俺は小さくつぶやく。「最高にカオスで、最高に騒がしくて、最高に煌びやかな、俺の物語の始まり始まり! 読者諸君は拍手を送れ! 歓声を送れ! 思う存分笑え! ──なんてな」





次回の更新は、来週あたりになると思います。
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