明久の召喚獣に憑依してしまった件について 作:吉井明久(SD)
【問 正三角形の定義を一つ答えよ】
吉井明久(SD)の答え
『3辺が等しい三角形』
教師のコメント
正解です。これは基本なので、簡単ですね。きっと、明久くんでも答えられる問題です。
吉井明久の答え
『正三角形であること』
教師のコメント
……その条件を聞いているんです。貴方は、自分の召喚獣の爪の垢を煎じて飲んでください。
放課後になり、俺たちと、木下優子、祥子、愛子、そして久保利光といった、Aクラスの面々と、交流の意味も含めて、集まり、お茶会をすることになった。
翔子の机を囲むように皆集まり、俺は机の上に座って、
「それにしても、早々に戦争を始めるとはな。あのクラスの設備がよっぽど嫌だったのか?」
と俺は、冷蔵庫の中に入っていたポテトチップスやたけのこの里といった菓子を、袋のなかから取り出し、口の中に放り投げながら言う。
「ま、あのクラスの設備はボクも見たけれど、酷いものだったからね」
と愛子は、俺と同じように、ホテトを一枚つかみながら言う。
明久がいるFクラスの設備というのは、ボロボロの、古びた教室に、腐りかけたちゃぶ台、そして綿が抜けた座布団といった、環境としては劣悪なものだった。しかし、それらを覆す方法として、試験戦争という制度がある。この戦争はクラスとクラスが戦う戦争であり、勝利したクラスは、敗北したクラスとの設備を入れ替えることができるというものだ。これを用いて、彼らFクラスの面々は、われらがAクラスの設備を目指すために、Dクラスとの戦争を始めた。
そして、今日FクラスとDクラスとの戦争が行われ、本来ならば、Aクラス並みの学力を持つ姫路の活躍によって、Fクラスは無事Dクラスに勝利した。しかし、彼らは設備を入れ替えることはなく、Bクラスに勝利するための布石を一つ整えただけに終えた。
「そうね」と優子は言う。「私もあの環境で授業を受けるとなると、ぞっとするわ。それにしても、何で設備を入れ替えなかったのかしら?」
「……きっと」と翔子は言う。「雄二には何か考えがある。たぶん、次の戦争のために、Dクラスに何かの指示を与えたのかも」
「へぇ。その通りだとしたら、あの神童の二つ名は現役ね……きっと、あいつらの事だから、最終目標は
「そうだな」と俺は言う。「俺も同じく、明久を思う存分ボコボコにしてやるか……」
「ねぇねぇ、そういえば、吉井君って、観察処分者なんだよね? 確か、召喚獣が受けたダメージが、自分に反映されるとか……ボクだったら、そんなものなりたくないなぁ。マゾ趣味はないし」
「そうそう。あいつ鉄人の本を売ってな。それとは別に、それまでの行いのせいで、無事観察処分者になったんだよ。それ以来、召喚獣を使って先生の雑用、主に荷運びとかをやらされているんだよ。……だから、お前たちよりも召喚獣を扱いなれているからな。油断していると足元をすくわれるぞ?」
「ひゃぁ、怖い怖い」
と愛子は肩をすくめる。そのあとは、趣味の話になったときに、優子が挙動不審になったり、好みの異性の話になったときに、翔子の、女子を見る目が厳しくなったり、勉強方法や好きな教科など、そのほか色々とあたり触りのない話をし、ある程度お互いの性格や趣味を把握し、解散となった。
ちょうど校門を出るときに、明久とばったり会い、俺は明久の頭に飛び乗る。明久も慣れたもので、特に抵抗することはなく受け入れた。
「よ。Dクラスに勝ったみたいだな」
「……まぁね」と明久は言う。だが、その声に覇気といったようなものはなく、明久は元気なく、どこか遠くを見ているだけだった。それを見て、俺は原作を思い出し、すべてを理解する。
「んン? 元気がないみたいだな? 姫路に告って振られでもしたのか?」
「いや、まだ告白はしていないよっ!」
「へぇ、『まだ』ねぇ?」
「はっ! しまった! 謀ったな!」
「いやいや、だれが見ても、お前の態度は、姫路の事が好きだと理解できるぞ? 何なら、弁当でも作ってもらったらどうだ? 今日の晩飯は、ベランダで栽培しているニラだし、明日の朝飯は、水道の横で栽培ているもやしだしな。そういった環境なら、姫路は優しいから、同情なりして、作ってくれるだろう」
「ふふん!」と明久はふんぞり返り、言う。「それなら、とっくに約束しているさ! 明日、持ってきてくれるんだよ」
「へぇ! だったら、真っ先に飛びついて、美味しそうに、一気に食らいつけ。女子というのはな、自分の作った飯を、そういう風に食べてくれる男が好きなんだよ」
「そうなの?」
「ああ、そうなんだよ。俺の経験と、テレビや本で見た知識を合わせて、そういう推測が立ったからなァ! 間違いない!」
「そうなんだ! だったら、そうしてみるよ! ありがとう」
「いや、いいさ。応援しているぜ! ……ま、Aクラスの設備は渡さないがな?」
と俺はにやりと笑う。その笑みには、二つの意味が含まれているが、明久は後者の意味だと見て取り、
「いいや! 絶対に勝ってやるよ! たとえ、相手が僕(SD)だったとしてもね」
「そうかい! だったら、せいぜい勉強するんだな」
と俺たちは、お互い不適な笑みを浮かばせながら言い、マンションへと帰る。
夕飯を食べ終え、俺は明久と並んでマリオカートやストリートファイターといったような、対戦型のゲームをプレイする。これらは、明久が自身の
ゲームを終えると、俺たちは風呂に入り、明久の部屋で勉強時間へと移る。が……
「畜生! 訳が分からない!」
と明久は、椅子に座りながらのけぞり、問題が書かれているプリントを投げ出す。
「……確かソレ、高校1年の復習だったと思うが?」
「そうだよ。でも、わからない……」
「馬鹿だな。前々から言っているだろうが。テストに出る問題は、授業で習ったところ以外出ないんだから、最低でも、板書だけしっかり取って、その内容を覚えれば、ある程度の点数は取れるんだよ。別に、参考書だとか、店で売っているドリルをやる必要はない。ま、数学と英語はある程度、いくつか問題をやって、解く力が必要だが……勉強なんて、最低でもそれだけだろうが」
「それで十分なら、僕は今頃Fクラスにいないから……」
と明久はうんざりとしたように、机に突っ伏す。
「ったく」と俺はため息を吐く。「俺にも宿題があるんだから、少しだけ、さわりだけ教えてやるよ……いつまでもあーあーうーうー唸られても迷惑だしな」
と俺は、段ボールでできた、小さな俺専用の机から離れて、明久の勉強机に飛び乗り、突っ伏す明久の髪を軽く引っ張り、そう言う。そのあとは、寝る時間ぎりぎりまで、明久に勉強を教えた。
「朝だぞ!」と俺は叫ぶ。「とっとと起きろ! 飯はとっくにできているんだ! 起きないのならば、俺が全部食べて、お前の飯は砂糖と水だけになるぞ!」
「うわぁぁ! 起きる! 起きた!」
と明久はがばりと、布団を捲り上げて、その身を起こす。
顔を洗った明久は、食卓に着き、両手を合わせて、俺が作った朝飯を頬張る。とはいっても、その内容というのは、カレー粉を使って炒めたもやしと、公園の水だけという、なんとも情けないものであった。
その原因というのは、諸君らも知っての通り、というか、先ほど上に少しだけ書いたように、明久は仕送り金のほとんどをゲーム、もしくはエロ本などに変えており、食費がとても少ない。俺にとって、食事というのはただの娯楽であり、基本的には不要であり、食べないので、それを止める事はない。
何よりも、ゲームを購入するのは、明久自身の意志であり、それを俺が止める理由が無いからだ。むしろ、俺がいることにより、原作のように砂糖や塩を舐める頻度は少なくなっている。
「で」と俺は、食事を終え、自分の食器を洗う明久に、食器を拭きながら言う。「姫路の料理は楽しみか?」
「え? ああ。うん! 勿論さ!」と明久は言う。「だって、あの姫路さんの料理だし、きっと美味しいんだろうな」
「ああ。絶対に美味いぞ! ああいう女子の料理は、大体が美味いと相場が決まっているからなァ」
「そうだよね!」
そして、すべての支度を終えた俺と明久は、明久の頭に乗り、学校へと行く。
Aクラスの扉を開けると、俺よりも早く到着した数人の生徒たちのざわめきで、教室は埋め尽くされていた。1年のころから親しかったもの同士や、昨日の交流会で親しくなったもの同士で話したり、ノートパソコンで動画を見たり、自分の机で自習をしている者など、様々な生徒がいた。
「あ」と愛子は俺を見つけ、言う。「今日の3時間目、数学のテストみたいだから、気を付けた方がいいと思うよ」
「あ、そういやそうだったな」
と俺は昨日の、FクラスとDクラスとの戦争の最中に流れた放送を思い出し、少しばかり戦慄したように言う。
数学の先生というのは、ある程度年の行った独身であり、とうとう単位を盾に、生徒に迫るまでになったという人物であり、原作を余すところなく読んでいる読者諸君ならば知っての通り、昨日の試験戦争の時、Fクラスが行った放送により、間違いなく、少しばかりのごたごたがあると、俺は少しばかり憂鬱な気分になる。あの教師ならば、明久の召喚獣である俺に迫ってくることが予想される。
「まぁ」と愛子は言う。「先生がキミに手を出そうとしたりした時は、ボクたちが止めるから、心配しなくていいよ」
「そうか?」と俺は言う。「ありがとうな」
「いいってことさ! 何だったら、最終的には西村先生を呼べばいいんだしね!」
と彼女は微笑み、この話を聞いていたほかのクラスの生徒たちも一同に頷く。
「……少し良い?」と、そのあと愛子やほかの面々と雑談をしていた時、翔子が俺にそう言う。「理事長と廊下であって、君を理事長室に呼ぶように言われた」
「お、そうなのか? ありがとうな! 皆も、途中で悪いけれど、抜けるわ」
と俺は言い、Aクラスから、廊下をとことこと歩き、理事長室へと移動する。
ノックを数回すると、入ってもよしという旨の言葉が聞こえ、俺は「失礼します」と言いながら、その扉を開く。
「おはようさね」と理事長は言う。その容姿、性別、年齢、性格といったものは、読者諸君が知っている通りである。「早速で悪いけど、今日は、午前中全ての授業を特別に免除するさね。その代わりに、その体を検査させてもらうさね」
「本当に早速ですね」と俺は言う。「でも、検査といっても、それは前に散々やったはずだと思いますが? 忘れました?」
「遠回しに、ババアと言っていないかい? 何、ちょっとある企画が持ち上がってね。今少し、それに詰っているから、何かヒントがないか調べるだけさね」
「へぇ? で、その企画というのは、どういったもので?」
「内緒さね。でも、召喚システムの、根本を覆すシステムとだけ言っておくさね」
「あーあー、さいですか。俺としては、こう。明久と同じ等身になれたらうれしいんですけどね?」
「それは、まぁ。おいおいやっていくさね。さ、移動するよ」
「了解しましたよ」
と理事長は椅子から立ち上がり、無言で理事長室から出る。俺も、また無言で理事長のあとをついていく。
そのあとは、様々な検査が行われ、理事長に礼を言われ、解放された。その時間というのは、ちょうど、昼休みが始まる時間だった。俺は、原作と、昨日の明久との会話を思い出し、真っ先に屋上へと向かう。
次回は、来週の日曜日に投稿します。