一年以上投稿ストップしてましたが、何とか都合がついたので(できる限り)週1ペースでの投稿を頑張ります。
文章力はあれですが、楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ!
「んじゃ、また今度。そん時はちゃんと会おうな。」
「うん。とりあえず次が何時になるかは分からないけどその時はちゃんと会おうね。まあ、今はお互い立場があるし、何より何処も彼処もピリピリしてるから、一先ずはそれを片付けてからかな。私は来月にはクロスベルに入ってる予定だからリオは帝国をよろしく。」
「ん、まあこっちは何とかなるだろ。サラもいるし今のとこ不自然な事も起きてないし。それよか、クロスベルのが何倍も心配だわ。近々大きい事件起きるぞありゃ。」
トランクに座り、缶コーヒーを飲みながら会話する2人は本部で見た真面目な2人と本当に同一人物なのかと疑うほど態度が違った。
「それは…まあだろうね。正直クロスベルとか万年ゴタゴタだらけな気がするけど。でも、そのための私のクロスベルへの異動だし大事になる前になんとかするよ。」
苦笑を浮かべるソーマの目元は、口と違い一切笑っておらず自体の深刻さを物語っている。
「まあ、そうであって欲しいけど…ぶっちゃけお前ポンコツだしなぁ。信じてないわけじゃないけど心配だわ、やっぱ。んー…今後連絡取ることも増えるだろうし式だけじゃあれだから【伊吹】遣るからそれ使ってくれ。あいつなら多少の戦力にもなるだろ?てか、お前【鬼童丸】筆頭に他の奴らとあんま仲良くないだろ。」
飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に捨てながら呟いたリオのそばにはいつの間にか紅いモッズコートを着たセミショートの銀髪が特徴的な少女が立っていた。
ソーマより少し高い程度の身長に一見すると15-6歳程度に見える、どこにでもいる普通な少女だ。
ただし、彼女は異様な気配…鬼気を放っていた。
「おーい【伊吹】さーん。鬼気抑えてくれ。いくら一般人でも気がつくから、それだけ殺気じみた鬼気放ってたら気がつくから。というか逃げるから。」
伊吹と呼ばれた少女は、はっとした表情ですぐさま周囲に振り撒いていた鬼気を抑えてリオに一言「すみません」と謝る。
「つーわけで聞いてただろうけど連絡係としてソーマに付いていてくれ。何かあれば戦闘に加わることも許可する。ただし基本は不干渉だ、お前が関わると余計悪い方向に事が動きかねない。期間は未定だがソーマに形代を預けるからその間はソーマを主人として行動してくれ。」
そう言ってリオは小さなチェーンの付いだ鍵をソーマに投げて渡す。
取り落としそうになったソーマは一瞬ムッとし「なんで投げるのさ」と言いたげな顔をしつつもそれをブレスレットのように手首に付ける。
「まさか、こんな小さな鍵1つであんな大きい力が左右されるなんて…っとリオそろそろ時間なんじゃない?人も増えてきたしそろそろ行きなよ。」
気がつけば時刻は正午を過ぎ先程まで静かだったのが嘘のように人が溢れていた。
そんな中でも特に人でごった返したホームでリオは短い別れを告げて列車へと乗り込む。
時刻が時刻なだけに朝とは違い活気のある車内で、ソーマが取ってくれていたコンパートメントを1人で占領する形で座ると寂しくなった左胸のポケットを覗く。
今まで短いながらも苦難を共にした自分の身分証明ともなる手帳、それが無くなったのはリオ本人が思っているよりも、なかなかに重大な事だった。
謎の空白感を抱えつつ、リオは衣紋掛けにコートを吊るすと、そのままコンパートメントの鍵を閉めて眠りについた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
鉛色のどんよりとした雲が空一面に広がり、今にも雨が降りそうな草原を3人の男女が気配を消して駆けていく。
その動きには一切の無駄がなく最小限の動きで目的の場所へと向かっていく。
一向が草原を駆け抜け左右に高く切り立った断崖絶壁が現れた頃ぽつりぽつりと雨が降り出す。それは一瞬のうちに豪雨となりついには雷鳴が轟き嵐となる。
しかし3人はそんなことは一切気にせず眼前に迫った洞窟へと一目散に駆けていく。
「…でこのクソ寒い雨の中
裾についた水滴を払いながら空色の髪をした少年が側のフードを被った人物に話しかける。
「ん、まぁ流石にここまで来るとね。裏も取れたし、実際中には気配がある。今回までハズレってことは無いよ。というか、もし外れたはそれ私のせいじゃなくてリオの式神のせいだからね?…それになんだろう、変な胸騒ぎがするんだ。」
声色からして女性、それもまだ幼い少女はそう告げると足に付けたポーチから小さな銀色の懐中時計を取り出し腕を地面と平行に伸ばしてから指先で吊るす。
ダウジングの一種であるこの所作はしかし、一般的なそれとは全く違う効果を示す。
文字盤が淡い光を放つと秒針のみがグルグルと時計回りに回ったかと思えば次の瞬間には反時計回りに、忙しなく動き回っている。
「やっぱり…ここは色々と乱れてる。恐らく…いや、確実に大崩壊以前の何かに関する研究が行われてる場所だよ。」
「その
壁にもたれかかり、二人の会話を静かに聞いていたもう1人の白髪の青年はそう言い残すとすーっとその場に溶け込むように気配を消す。
ソーマはムッとしつつも一瞬で意識を切り替え洞窟の奥から聞こえてくる「侵入者だ!!」という声へと注意する。
指ぬきの手袋を身につけ横に立つリオに目配せをすると準備完了とでも言いたげに不敵な笑みを浮かべる彼が目に入る。
「さっ裏方はレヴィに任せてこっちは陽動と行きますか。まあ、洞窟が崩れない程度に暴れようや。」
その言葉を皮切りにリオとソーマは奥から向かってくる黒衣の集団へと向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そこからは一方的だった。
10人単位で向かってくる黒衣の集団を次々と薙ぎ倒していく2人の周りにはいつの間にか血溜まりと死体の山が築かれていた。
一切息を切らしていない血塗れの2人と周囲の人だった物との間には如何ともし難い差があった。
「さてっと…向こうも終わったようだぞ。」
「そうらしいね。それにしてもレヴィが駆け足なんて珍しい。普段ならお前らもう少し静かにやれないのか、これだから…とかガミガミ言ってくるのにね。」
談笑を繰り返す2人は、残敵の掃討も終わり丁度集中力が切れていたのだろう。
レヴィの言葉を聞いた時に咄嗟の状況判断ができなかった。
「こっちに来い!!奴らの研究内容が分かったぞ!!」
遠い遠い昔の忘れてはいけない、忘れることの出来ない、しかし一方で心の奥底に無意識にしまい込んでいた記憶は夢という形でリオの前に現れる。
そして
「…なんだよこれは」
リオはここで現実世界へと意識を無理やり戻される。
重要な、これからの生活を左右する最も重要なシーンを見ることのないまま。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「っつ…何が起きたんだ?人がせっかく気持ちよく…はないが寝てたってのに。」
急ブレーキを踏んだ時のような甲高い雑音と直後に襲ってきた何かにぶつかったような激しい衝撃により、リオは夢の世界から強制的に連れ戻される。
しかし、その後の行動は迅速だった。
遊撃士として磨いた、というより勝手に身についた技能のおかげでリオは列車が止まった次の瞬間にはコートと得物を手に取って列車の先頭の機関部へと向かっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「いや、マジでなんだこれ」
リオの目の前には驚愕の光景が広がっていた。
眼前には一部がくり抜かれたように消失している鉄橋と車体の半分が乗り出した列車、そして今にも崩れそうな岸壁という普通に生活していなければ目にすることのない、異常なのは誰の目から見ても明らかでありそれ故に近くにいた機関士も放心している。
そして、微かに残る呪の痕跡がより一層この場の異様さを掻き立てていた。
「っと、放心してる場合じゃねぇ…。機関士さん、乗員乗客の避難と近隣の駅への連絡を。」
なるべくパニックにさせないように落ち着いた口調で話しかけたリオの言葉によって我を取り戻した機関士はすぐに列車内の放送を利用して乗員乗客を車外へと避難させる。
「き、君はどうするんだい?!」
ふと思い出したように自分に声をかけた少年…リオを探す機関士だがその目に彼の姿は写らない。
そこには切符とメモ用紙に一言
「自分はここで下車します。」
という添え書きが残されていただけだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「はぁ…ったくどこのどいつだよ、いきなりテロじみた行為しかけてくるやつとか。おかげで無駄な労力がいっただろうが…。オマケにこの辺の脈を軒並み乱していきやがった。おい【茨木】、ちょっと
事故現場から少し離れた森の中、額に手を当てため息を吐いたリオの側にはいつの間にかいつの間にか淡い黄色の髪をした少年が立っていた。
「はいはい、
気怠げな少年はおもむろに手を地面に当てると目を瞑り何やら呪文を唱え始めた。
それに呼応するかのようにリオもまた独特の舞のようなステップを踏み…そして次の瞬間その場から消えた。
背後から迫る謎の気配を一瞥して…。
「こりゃ、退屈しなさそうだ。」
誰に向かって呟いたのだろう、その言葉は風に乗って彼方へと消えていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「やれやれ、彼は本当に感がいい。オマケに禹歩と来たもんだ。こっちとしては脈を乱して移動を封じたはずだったんだがねぇ。」
「いや、あれは君のやり方がぬるいんだよ。どうせなら橋の上に来た時に落とせばよかったのに。」
「まあ、いいじゃないか【滝夜叉】コチラとしても退屈しなさそうだしね。何より彼の元には何かと厄介事が集まりそうだ。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
最初の試練まであと数日、寮に戻ったリオが最初に見かけたのは開口一声「おみやげ」と呟くフィーの姿だった。
誤字脱字の報告は感想までよろしくお願いします。
次回もまた、よろしくお願いします!!