審神者は人外になってもいいらしい   作:ラルファ

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説明っぽい内容になります。
一番最後だけ見てもいいかもしれない




さようなら、人生。こんにちは、霊生。

契約から1週間後。

私は審神者になるために政府機関のある一室にいた。

 

契約では1ヶ月以内に身辺整理を済ませ、政府機関に出向くようにとあったのだが、この世界の両親はすでに他界しており、別れを告げる人間もいなかった。持ち物も少なく身辺整理など三日ほどで終わったのだ。

 

政府側は予想外らしく、目の前でいつぞやの黒服が冷や汗を掻きながら上司であろう人物に連絡しているが。

 

「はい、はい。例の審神者様がすでにこちらに・・・!」

「そうです!自分には荷が重過ぎます。何とか・・。ですが・・。」

 

 

―――この人大丈夫だろうか。この焦りようは問題ありますって言ってるようなものだが。

 

隠すのも面倒になり、呆れた視線を黒服に向けるが、こちらに気づく様子もなく、目の前で会話を続けている。

中間管理職は大変だなぁ、と思いながら待つこと10分。

 

「・・・・分かりました。お待ちしてます。」

 

ようやく、何かしらの結論が出たらしい。

黒服がはっとしたようにこちらを見て、慌てて頭を下げた。

 

「っ。お見苦しい所をお見せしました。専門的な説明が必要になりますので、説明のものが来るまで少々お待ちください。」

「・・・・わかりました。」

 

どうやら黒服は説明責任を押し付けることに成功したらしい。

心なしか達成感に満ちている。

 

さらに待つこと5分。

その間、黒服はコーヒーを差し出してきたり(残念、私は紅茶派だ)、菓子を出してきたり忙しない。

さぞかし居心地が悪いのだろう。先ほど明るくなった顔色も徐々に青ざめてきてる。

 

コンコン。

 

「っ。はい!」

「失礼します。」

 

カチャ。

 

黒服の顔が輝いた。が、入ってきた人物を見て青を通り越して白になった。

 

入ってきたのは、40代後半であろう柔らかな表情をした男性である。ただし目は笑っていない。

黒服の顔色が変わった理由がよくわかる。今までの経験からして、こういう人物は要注意だ。気づけば丸め込まれて、あちらの都合がいい方に話しを持って行く、煮ても焼いても食えそうにない古狸の類だ。

 

「私はこちらにいる元木の上司をしている古谷と申します。この度は契約からすぐに来て頂いたのに、このようにお待たせしてしまい、申し訳ございません。」

「・・・いいえ、私もアポイントを取らずに来ましたので、お気になさらず。まさかここまで慌てられるとは思いませんでしたが。」

「さすが審神者様ですね。とても寛大でいらっしゃる。ありがとうございます。元木はパニックになり易い性分でしてね、ご迷惑をおかけしました。」

 

ハハハ。フフフ。

表面上は穏やかに微笑みあう。

隣にいる黒服が今にも卒倒しそうな顔色になっているが、気にすることでもないだろう。

 

「早速ですが、審神者について説明しても?」

「はい。」

 

ジャブのような皮肉な挨拶が終わり、ようやく審神者業の説明になる。

黒服の目がうつろになっているが。

 

古谷氏による説明内容自体は、簡潔かつ合理的でとても分かりやすいものだった。さすが古狸(?)である。

 

曰く、

・審神者業の詳細はマニュアルがあり、またサポート役として管狐のこんのすけがつく

(広辞苑並みの本と端末が渡された。こんのすけは本丸移動前に引き合わせるとのこと)

・今回渡す本丸は、ほぼ全ての刀剣男士が揃っており、引継ぎという形となる

・引継ぎのため1年は政府からのノルマは全て免除となり、本丸及び刀剣男士に慣れる期間となる

・刀剣男士への霊力供給があるため、この後すぐに本丸へ行ってもらう

 

大まかに言うとこんなとこだろうか。

もはや、超優良物件かブラックの両極端しかない。そして99%後者だ。

 

「前任者の方から直接業務をお聞きしたいのですが、どちらにおられるのでしょう?」

「・・・申し訳ございません。前任者はすでに審神者を辞めているためお会いできません。」

「前任者の方が辞めた理由は何ですか?」

「健康上の理由です。」

「ほぼ全ての刀剣男士が揃っているのですよね?新米にまかせるよりベテランに任せるべきでは?もしくはバラバラに引き取ってもらうこともできますよね?」

「・・・そうですね。ですが、」

「化かしあいはやめません?面倒になりました」

 

腹芸は向かない。質問を重ねてみたが、古狸は表情を崩すことなくのらりくらりと返答してくる。そうそうに面倒になったので直球を投げた。

 

「・・・ハハハ。いや、失礼。審神者様はお若いのに豪胆でいらっしゃるのですね。」

古狸、もとい古谷氏は一瞬驚いた表情を見せた後、面白そうな目をこちらに向けてくる。

 

「・・・曰く有の物件なんでしょう。どちらにせよ審神者にはなるのですから正確な情報を求めます。」

「・・・そうですね。貴方には聞く権利がある。」

古谷氏はほんの少し、目に暗い影を落とすが、一瞬で消え去りまっすぐにこちらを見た。

 

・・・この人は古狸ではあるけれど、性根が腐った人ではないんだろう。

なんせ初対面の私のこれからを案じたのだから。

 

長い話になります。

そう言って、古谷氏が話した内容で全て吹っ飛んだが。

 

結論から言って、黒い所しかないブラック本丸だった。

しかも、前任者が刀剣男士に殺され、本丸自体が祟り場となって、ようやく政府が現状を把握したというお粗末なものであった。政府が把握しているだけでも荒御魂に落ちかけた刀剣が10振り以上、本丸も政府から干渉ができないほど強力な祟り場となっている。

政府が出した結論は、審神者を派遣し、あわよくば浄化、浄化できなくても霊力の高い者がいけば荒御魂を鎮められるだろうとのことだ。まごうことなき生贄である。

 

―――死ぬ未来しか見えない。なんとも好都合だな。

 

「なるほど。生贄ですね。」

「そう、なります。」

黒服―元木だったか(敬称をつける気は無い)―は鎮痛な顔をしている。古谷氏もさすがに顔色が悪い。

 

普通の人であれば、ここで泣き喚いたりするのだろうが、生きるのも死ぬのも面倒な私には渡りに船だ。心配してくれているらしい二人には悪いが。

 

「お気になさらず。少し確認したいのですが、、」

「・・え?」

「あぁ、別に死ぬかもしれない、というか死ぬでしょうけど、どうでもいいのです。」

いい大人が揃ってポカーンと間抜けな顔をしている。

その後、なぜ怒らないんです!と逆切れされ30分もめることとなった。

解せぬ。

 

なんとか宥めて話し合うこと1時間。

私は満面の笑顔、古谷氏は苦虫を噛み潰したようなしかめっ面をしている。元木?最初から最後までうつろな目をしていた。

こうして、幾つかの契約内容を変更することとなった。

 

・政府からのノルマ免除は5年とする

・審神者の生死に関わらず、本丸及び刀剣男士による影響が本丸内から他へ及ばない限り、10年間政府はノルマ以外の干渉をせず、支給品は送り続ける

・審神者側からの変更要求が無い限り、政府と審神者の連絡は全てこんのすけを仲介とする

・10年以内に審神者からの連絡が無い場合、本丸及び刀剣男士に関する権限は全て政府に移行される

 

ノルマ免除はかなり渋られたが、何とか5年を勝ち取った。

これで私が万が一生き延びても5年間ニート生活である。まあ多少は刀剣男士への同情もあり、少しでも干渉されなければいいとも思った部分もある。

 

「これで、本当にいいんですね?」

「えぇ。」

もはや古谷氏は表情を隠そうともしない。本当に性根の優しい人のようだ。

 

だからだろうか。がらにも無く、慰めるようなことを言った。

 

「意外とどうにかなるかもしれませんよ。どちらにせよ、貴方が背負うことではありません。」

嘘ではない。ほんの少し、本当に少しだけだが頑張る気になったのだ。

 

「・・・分かりました。どうか、どうかよろしくお願いいたします。」

元木と古谷氏が深く頭を下げた。

 

その後、こんのすけを紹介され、魅惑のもふもふで、一方的にシリアスな空気はぶち壊されたのは余談である。

 

 

 

 

そして今、私はこんのすけを肩にのせ、ばかでかい本丸の門前にいた。

門からは禍々しい雰囲気が漏れでている。

 

「見事な祟り場だねぇ。」

「申し訳ございません。」

こんのすけがしょげた声で告げてくる。

 

―――なにこれかわいい

心の中でもだえまくりである。

 

内心を悟られないうちに、門を開け、中に入る。

 

ある程度予想はしていたが、中は酷い有様だった。

庭の草は枯れており、木には葉一枚ない。辺りには水の腐ったようななんとも言えない腐臭が漂っている。遠くにある純日本屋敷風の建物は、黒く霞がかかっており、遠目からでもぼろぼろなのが見て取れた。

 

そして。

 

殺気を隠そうともせずにこちらに向かってくる数人の影があった。

 

とっさに、こんのすけを鷲掴み、門の外に放り投げる。門を閉じ、己の身を前にして開けれないようにする。

 

「審神者様!審神者様!」

こんのすけが懸命に呼びかける声が聞こえる。

 

が、今はそんなことは気にならない。

すでに目の前に殺気を放っている人物が来ていたのだ。刀剣だろう、光などないのに、ギラリと光る刃物が振りかぶられる。

 

ザシュ。

首を落としたにしては、やけに軽い音だった。

 

最後に目に写ったのは。

憎悪にギラギラとさせた真っ黒な目で、涙を流す青い刀剣男士の姿だった。

 

 

そして私の人生は幕を閉じた。

 

 

―――で、終わりのはずだったんだけどなぁ。

なぜかふよふよと漂い、自分の死体を見下ろしながら思う。

 

審神者などがいる世界だからだろうか。

死んでも意識が残っているらしい。

 

 

さようなら、人生。こんにちは、霊生。

 

 

 

 




今日はここまで。

まったり投稿していけたらいいな。
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