『IS The plunderer has a dream』 作:NORTH
もう嫌だ、帰りたい
本当だったら今頃、藍越学園で高校生をやっていたはずなのに、何でこんな目に・・・・
現在、一限目のIS基礎理論授業が終わった後にある10分間の休み時間
普通ならば新しくできた友人や昔から中の良い友人、もしくはこれから友好を深めようとして色々な人に話しかけるのも良いし
次の時間の授業の予習をするのだっていい
しかしながら、教室は異様なまでの緊張感に包まれ、変な雰囲気となっている
私以外は全員女子、教員に至るまでと聞いているが、一人、年配の事務員さんが男性だと風の噂で聞いた
本当か判らないけど
何が言いたいかというと学園全体が女子ばかりなのだ
そして、困ったことに私は『世界で唯一ISを使う事のできる男』として世界的ニュースとなって報道されており有名人となっている
しかも、全世界に私のプロフィールは公開されてしまっており、元日本代表で全女子憧れの的のお姉さまの実の弟だと言うのだからますますややこしい
そんなわけで、現在、廊下はそんな私を見ようとする上級生及び他クラスの同級生で大渋滞が発生している
しかし、IS学園は女子高、男子に免疫の無い方ばかりなので私をちらちらと見るだけで話しかけてはこない
いっその事話しかけてくれたほうがまだ気分が良いのだが、
クラスには『あなた話しかけなさいよ』と言うのと
『まさか抜け駆けするんじゃないでしょうね?』と言う相反する派閥が存在するみたいで誰も動こうとはしていない
ちらっと隣で私のことをガン見していた女子に視線を向けると慌てて逸らされた
ほんのりと悲しみを胸に抱いたが
隣の席の彼女は、『話しかけて!』と言うオーラを出しているのを見たとたんに何も感じなくなった
本当に誰でも良いから助けて欲しい
ふと親友の一人、『五反田(ごたんだ)』が羨ましいとぼやいていたのを思い出し、
今からでも遅くないからすぐに変わってくれ!とSOSを心の中で発していると
「ちょっといいか?」
行き成り話しかけられた
「はい?」
もしかして、女同士の競り合いに勝ったのだろうか?
いや、どうもクラス全体に広がるざわめきと言うかどよめきからして一人だけ思い切った行動をとったようだ
容姿は黒髪のポニーテール、長さは肩下近くある
身長は女子の平均くらいであると思うが、姿勢がとても良く、背が高いように感じられる
目つきは悪く、少し不機嫌そうに見え無駄に親近感が沸いた
最終的な評価としては美人、ただどこか抜き身の日本刀を思わせる鋭さと凛とした美しさを持っている
と言ったところ
ただ、気になった点は彼女の瞳には期待と恐怖が半々と言った感じだったことだろうか
「・・・・・・」
返事をしたのに何も言われず睨まれた
もしかして勝手に人物評価をしたのに気が付いて怒らせてしまったのだろうか?
と、少し怖がりながら
「あの・・・・なにか御用でしょか?」
と言葉を紡ぐ、うん、声には動揺は出ていないはず、大丈夫だ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・えっと、何か御用でしょうか?」
沈黙に耐え切れなくて同じ質問を繰り返す、うん、実は私の声が聞こえていなかったと言う可能性もあるわけだし
問題ない
問題ないとも
「・・・・話がある・・・・廊下で良いか?」
「わかりました」
そう言って彼女の後に続いて教室を出ようとすると、廊下に集まっていた女の子達がザアアっと道を譲っていく
そして、廊下に出て向かい合う私達
ただ、私達を囲むように5メートルほどの距離を開けて女子が包囲網を形成している
しかも、聞き耳を立てているのが良くわかる
正直、教室を出た意味が無いと思う
「・・・・・・」
しかも、話しかけてきた本人は無言で睨みつけてくるだけ
これは一体どうすればいいんだろうか
廊下にまで歩かせておいて自分から話さないという随分な態度を取る日本刀みたいな少女
「・・・・・・」
「・・・・・・」
チラッと腕時計を見るともうすぐチャイムが鳴る、相手の女の子はコチラを睨むだけ、というか段々殺気さえ篭められた恐ろしい視線へとなっているんだが私はなにか悪いことをしただろうか?
した覚えが無い、というかする暇も無かった気がする
もうしょうがないので、コチラから話しかける
「あの、もうチャイムが鳴るんで用件を言っていただけないでしょうか?」
「なに?」
スウ――と細まる眼
なにか、私は不味いことをいっただろうか?
今までの言動を振り返っても、最初の観察以外心当たりが無い
なので黙っていると
「覚えていないのか?」
「何をでしょうか・・・・」
「っ!」
パン!と言う心地よい音と共に頬に熱を感じる
「は?」
意味がわからない、
いや、頬を叩かれたと言う事はわかるんだが何故叩かれたか皆目見当もつかない
そして、叩いた本人の彼女は私に視線も向けずそのまま教室に入っていく
後に残されたのは頬を押さえてわけが分からないという表情の私と、固まっている女子で
とりあえずもう一回、呟いた
「は?」
そして、チャイムが響く
自然と周りを取り囲むようにいた女の子達も教室に入っていく
しかし、未だに私は何故叩かれたのかわからず、もう一回呟いた
「は?」
「なにをやってるお前は、席に着け」
「・・・・・・は?」
「・・・・・・」
バシン!といい音と共に出席簿が私の頭に直撃した。
「―――――であるからして、ISの基本的運営は現時点で国家の認証が必要でして、枠内を逸脱したIS運用をした場合は刑法によって罰せられており―――」
痛む頬と頭を気にしつつ山田先生がすらすらと読み上げていく教科書の内容と予習してきた内容との違いについてノートを取っていく、まず間違いなく予習していなかったら授業について行けなかった
うん、面倒がらずに読んでよかった参考書
電話帳と同じくらい分厚い上に文字のオンパレードで目に優しくなかったけど
というか、なんで私は叩かれたんだろう
さっきからノートを取りつつ考えているんだが未だにわからない、しかもあの子は覚えていないのか?と言ってきた、つまり過去に会ったことがある?
いや、会っていたら覚えているはずだ、美人だし、まず忘れない
もしかして、主人公君、
私が憑依してしまった一夏が過去に会っていたのかもしれない
一時とはいえアルバムとか見て必死こいて織斑一夏になろうとしたが途中で姉さんにぼこぼこにされて以来、過去を振り返ると言ったことはしていない
これは、姉さんに後で聞いたほうが良いだろうと、考えていると
山田先生が私に話しかけてきた
「織斑君、大丈夫ですか?分からないことがあったら言ってくださいね?なんて言ったって私、先生ですから」
えっへん、といわんばかりに胸を張る山田先生
姉さんがやたら優しい声を出す理由がわかった気がした、なので自然と優しい声が出る
「ありがとうございます、今のところは大丈夫ですよ山田先生」
「はうう!え、笑顔が・・・・ああ、そんな笑顔を浮かべながら頬を撫でられたら・・・・」
はて?笑顔とな?笑顔になっていたのだろうか?
「・・・・何をやっている織斑」
「いえ、笑顔を浮かべていたのか確認を・・・・」
そう言ってペタペタと自分の顔を触っていた手を止める
「・・・・授業に集中しろ、あと山田君いい加減に戻ってこい」
「ふえ?」
一瞬だが姉さんの頬が緩みかけた気がする、と考えたところで
バシン!
と言う音と共に脳天に一撃
恥ずかしかったんですね?わかります、でも照れ隠しにやっていい威力じゃないと思うんですが
あと人の頭の中を覗かないでください、エスパーですか?エスパーちふゆんですか?
そこで、可愛らしい白いフリフリが一杯ついた服を着た姉さんが頬を赤らめ、狼のように鋭い目を明後日のほうに向けモジモジしながら
え!えすぱーちふゆん!ここに参上!
とかって言っていたら爆笑だなと考えたところで
ズガン!と良いのをもう一発貰った
「んん!ISはその機動性、攻撃力、制圧力と従来の銃火器を大きく逸脱した兵器となっている、そう言った兵器を深く知らずに扱うと必ず事故が起こる、それらが起きないようにするための基礎知識と訓練だ、理解が出来なくても覚えろ、そして守れ、規則とはそういうものだ」
ああ、全く持って正論だ
しかし、私は基礎を疎かにするつもりは無いものの早く実戦的なことを学びたかった
此処、IS学園で私が学びたいことはISについて、と言うよりも『現存する生きた最強兵器』となるための方法である
簡単に言えば姉と同じ世界最強になりたいと言うこと
最初は日本政府保護の下、世界初の男性IS操縦者と言う肩書きになる予定だったが
姉さんのおかげで三年間の猶予と、自分の意思を貫くことが出来る可能性を貰うことが出来た
私の人生はISによって狂わされたと言っても過言ではない
いや、その前に神様に狂わされていたか
話を戻そう、私の人生はISによって狂わされた、そしてISによって進む道を決めることの出来る可能性を貰った
そう、簡単な話なのだ
強くなればいい
ただ強く、何者にも頭を垂れる必要の無い、かつて姉がいた頂点
世界最強に
それだけで良い、
簡単だ、
まあ、言うのは簡単だが実際にはかなり厳しいだろう
諦めるつもりなんて毛頭無いが
今、世界では私を旗印として男性の地位向上を唱えようとしている輩がいる
その中には私の細胞を使いクローンを生み出し、それらを解剖、研究をすることによって全世界の人間がISを使えるようにする等とほざく奴だっている
というか居た、実際に
それらの言いなりになりたくなかった私は姉さんから言われた
この書類にサインをすれば三年間は身柄の自由は保障してやれる
との言葉に飛びつきサインをした
そして、私がサインをすると同時に姉さんは私に頭を下げながらこう言ったのだ
許してくれ、私にはお前をたかだか三年しか守ってやれない
と、そのとき思ったのだ、いい加減この人を守る人が居なければこの人が報われないと
だから、強くなる、世界最強という肩書きがあれば現世界最強の姉を泣かせずにすむのではないか?
姉が作ってくれた『たかだか三年』がどれほど有難く私にとって大切だったか
それを世界に証明する、そして姉にわからせる
貴方のおかげだと
我ながら青いなーと思うが、それらが私が此処、IS学園で帰りたいとぼやきつつも頑張っている一番の理由だ
だってねえ?家族は守ってあげたいじゃん
と言うことで、頑張ってノートを取りますか、まあ、もう暫くは頭部の痛みで動ける気がしないけど。