Fate/kaleid liner エドモン☆ダンテス 作:雛宮メリー
上手い言い回しを見つけたら書き直します。
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怠惰を貪ったことはあるか?
成し遂げるべき事の数々を知りながら、立ち向かわず、努力せず、安寧の誘惑に溺れた経験は?
社会を構成する歯車の個ではなく、ただ己が快楽を求める個として振る舞った経験は?
心を覗け、目を逸らすな。
それは誰しもが抱くがゆえに、誰ひとり逃れられない。
怠け、働かず、享楽に浸るもの。
怠惰の罪。
復讐鬼は監獄塔に哭く『第三の扉 螺湮城の怪』より一部抜粋。
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加速する。
まずは思考。止まった時の中、頭の中が動き始める。
加速する。
次に目。視界の中がゆっくりと時を止めていく。
加速する。
最後に全身。止まった世界の中を唯一、俺だけが進み始める。
俺の認識は酷くゆっくりとしたものだ。
周りにいた海魔を片端から1匹残らず焼き払う。
青黒い光弾で、黒き焔を纏った両手で、プラズマの如きビームで。
一切合切、容赦なく。
「消し飛べ、禁書の海魔ども!」
その姿は誰にも見えない。
だが、もし今の重戸を見ることのできる人がいたなら彼をこう呼んだだろう。
悪魔、と。
ものの1秒足らずで海魔を殲滅した重戸はその状態のまま、海魔を辿って
「絶望せよ、怠惰の化身よ。
お前の
突撃する勢いのまま重戸の認識の中では停止しているジル・ド・レエの顔面を掴む。
黒炎を纏った右手でそのまま顔を焼きながら、地面に叩きつける。
「終わりだ!」
顔面を掴んだまま光線を放つ。
なんだか
「宝具解除」
轟ッ!と今まで俺が通り過ぎた場所がさざめく。
先程まで隣にいたはずの美遊からしたらきっと何が起こったのか分からず、今頃目を白黒させているだろう。
擬似的時間停止。超高速思考を肉体に当てはめる。それが巌窟王の宝具。
時間や空間すら脱するほどの鋼の如き精神力。
今の俺が使うにはおこがましいほどの圧倒的な宝具だろう。
本来ならば彼のようにシャトー・ディフで10年以上かけて培った果てに昇華された精神性からなるはずのそれを俺が使えるのはひとえに魔力量の為せる技だ。
枷を外す。イリヤスフィールも同じことをやってのけたが俺の場合は彼女とはまた異なる。
一時的な魔力切れを起こし、俺は崩れ落ちるようにその場に倒れる。
だが、問題ない。今夜は1人じゃないからだ。
「メル子……いるか…?」
「は、はい!」
事前の言いつけ通り、変装としてローブに仮面を付け、ヘリウムガスで変声までさせた不審者スタイルのメル子が木の上から器用にスルスルと降りてくる。
うわぁ、自分で指示したとは言え怪しさMAXだ、コレ。
メル子は若干引き気味の俺を気にせず背中に担いだ。
俺は疲れながらもメル子に話しかける。こうでもしていないと意識が無くなりそうだからだ。
「予想、通りだ。
宝具の、使用、には今、出せる、全魔力を、消費する」
「エドさん、顔が真っ青ですよ…!大丈夫ですか…!?」
既に変身も解けてしまっているだろう。
本格的にマズい。
「メル子、教えた通りだ。出来るな?」
「ま、任せて下さい。
半径2メートルで反射路形成……鏡界回廊一部反転…
すぐさま逃げよう。美遊や、外にいる2人から。
俺とメル子はそのまま鏡面界から姿を消した。
3枚目のカード、
ーーー
「…ッ!?」
海魔が一瞬で壊滅していた。
恐らく先程の黒いナニカが宝具を使ったのだろう。
空を見るとヒビが入っていくのが見える。
『美遊様、鏡面界が……』
「うん、分かってる」
周囲を見回す。黒いナニカはどこにもいない。
「まさか、さっきの黒いナニカは鏡面界を自由に出入りできるの…?」
明らかな異質。二枚目のキャスターといい、黒いナニカといい、別の事件がカード回収に絡んでいるようにも思える。
『それを語る必要はない。
だが一つだけ確実に言えることは、
いや、あの言い方だとわたしたちの方とはまた別件なのだろうか?
思索しながら鏡面界から離界する。
ーーー
この日、
これが後々、どういう意味を持つのか?そのことをまだこの時は誰も知らない。
重戸の魔力について
3つの制限をかけられており、一つ目と二つ目は任意タイミング。それぞれ通常戦闘時、宝具使用時のみ解放する。
無限の魔力を保有しているという自覚があり、またそこまでの魔力量は日常生活に返って邪魔になると判断した重戸自身が神様マニュアルの指示を参考にして自らに制限をかけた結果このように任意開放型の封印がかかっている。